特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

ロシナンテスからの活動情報をご案内します。

女性の活躍が期待されるスーダン

2019年もロシナンテスへの応援をありがとうございました。

激動の年となったスーダン

昨年末に地方都市ではじまった物価高騰の抗議デモは、瞬く間に全土に広がりました。経済悪化の原因が政府にあるとされ、大規模な大統領退陣デモへと繋がり、30年間独裁体制を敷いていたバシール大統領が4月11日に退陣する形となりました。

大統領退陣後、政治的主導権を握りたい軍部と民主化を目指す民衆との協議は難航。そして6月3日、民衆側が占拠していた軍本部前で軍による強制排除が行われ、100名を超える犠牲者がでました。

私は2002年からスーダンにいますが、今までで最悪の治安状況となりました。

日本人スタッフの危険性を感じ、彼らの緊急帰国をオペレーションしました。幸い外務省、在スーダン日本大使館の協力により2人のスタッフが無事に帰国できました。ご協力いただきました皆さまに、心より感謝申し上げます。その後数か月間、試行錯誤しながらではありますが、日本から遠隔操作で現地人スタッフと一緒に事業を継続させることができました。

暫定統治機構の誕生

8月末、難航の末に暫定統治機構が生まれました。軍人5名、民間から5名、双方が認める民間人1人の計11名から構成されます。ここに一枚の写真があります。


これを見て大変驚きました。イスラム色の強いスーダンでは、過去要職を占めていたのは男性でしたが、民間からは2人の女性が選ばれています。さらに一人の女性はイスラム教ではなくキリスト教です。イスラム原理主義と言われ、女性と非イスラム教徒の登用は、他を排除する傾向にあった旧政権では考えられなかったことです。民衆、とくに若い世代がいかに新しい国家像を求めていたのかが理解できます。

暫定統治機構が首相、各省の大臣を任命していきますが、外務大臣には女性が就任しました。スーダン政府史上初めての女性外務大臣です。外務省米国担当局長も女性の事務官で、米国とのハードな交渉は女性が中心となっていきます。米国はいまだスーダンをテロ支援国家に指定したまま、指定解除に向けた交渉が行なわれていますが、考えていたよりも早いタイミングでの指定解除になることが期待されます。

再びスーダンへ

現在治安状況はかなり改善されており、外務省の危険度レベルも3から2へと下がったことから、10月そして今月と2回、スタッフとともにスーダンに行ってきました。

全体的な印象として、私たち国際NGOへの対応がかなり好意的になったように感じています。国際NGOに対して、前政権は内政干渉への疑念を持っており、NGOの活動を厳しく監視するシステムでした。しかし新政府になってからは、復興への手助けとなると考えているのか、歓迎のムードを感じるようになりました。以前はスーダンに到着してから活動地への移動許可を取得するのに1週間ほどを要し、ひどいときには移動許可が却下されることもありました。しかし新政権になった今、到着した翌日に活動地に出発することができました。検問所がいくつかありますが、パスポートや許可証のチェックもありませんでした。

今年完成した給水所を再び視察

今年完成した給水所ですが、問題なく綺麗な水が出ています。現地スタッフが素晴らしい活躍をしてくれ、事業が継続できたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

地域住民による水管理委員会というのが設置されていますが、聞くと委員は全員が男性です。10月に訪問した際には、一緒に行った政府の女性スタッフが「委員会にも女性を入れたらどう?男性は村の外での仕事も多いでしょうから」と上手に女性の参加を促しました。

地域のリーダーたち(すべて男性)は「わかった!」とだけ言いましたが、今月再び現地を訪問すると、リーダーたちから「水管理委員会の構成は全員で13名、男性が7名で女性が6名になった」と言われました。嬉しい驚きです。この地域の女性たちがしっかりとトレーニングを受け、委員として活躍されることを期待します。

下の写真は別の地域の会合ですが、ここでも女性に入ってもらっていました。様々な場面で、変化を感じます。

スーダンの復興には、女性が活躍することが鍵になるのではと思っていますので、これからがますます楽しみです。

 

現在は、来年の事業計画を立てているところです。新しくなった政府は国際NGOに協力的と思われ、今まで以上にしっかりと支援事業が行えると信じています。

ロシナンテスはザンビアにも事務所を開設しました。来月、ザンビアに行く予定にもしています。今度はザンビアに関しても報告したいと思います。

最後になりましたが、ロシナンテスへの応援を重ねて御礼申し上げます。
みなさま、良いお年をお迎えください。

川原尚行