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観客上限1万人 規模縮小でも有観客に踏み切った首相

菅義偉首相=21日午後2時33分、東京都港区(代表撮影)
菅義偉首相=21日午後2時33分、東京都港区(代表撮影)

東京五輪の観客上限が、21日の五輪・パラリンピック組織委員会などの代表者による5者協議でようやく決まった。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家が慎重姿勢を示す中、組織委は「収容率50%、上限なし」を要求。最終的に「上限1万人」としたのは、規模を絞ってでも観客を入れての開催にこだわったからだ。

「最大1万人でどうだろうか」。菅義偉首相は15日午前、丸川珠代五輪相とスポーツ行政を所管する萩生田光一文部科学相を官邸に呼んだ際に、こう切り出した。組織委はあくまで「50%」を希望していたため、板挟みとなった丸川氏は困惑の表情を浮かべた。丸川氏は会談後、周囲に「かなり厳しい」と漏らしたという。

この直前、首相は西村康稔経済再生担当相ら新型コロナ対応の関係閣僚と会談し、緊急事態宣言が明ける21日以降のイベント制限について協議。西村氏からは、期限を前に尾身氏ら専門家が「無観客が望ましい」とする厳しい提言を出す予定であることが伝えられた。

政府内では一時、有観客とするため「上限5000人」も検討されが、最終的には「上限1万人」に決定した。宣言も蔓延(まんえん)防止等重点措置もない状態での従来の制限は「50%」のみで、国立競技場(収容人数6万8000人)であれば3万4000人が入場可能となるはずだった。これに対し1万人は「かなりスカスカ」(政府関係者)と受け止められる。

首相は21日、ワクチンの職場接種会場を視察後、記者団に「緊急事態宣言が必要になった場合は無観客というのも臨機応変に行う」と自ら言及した。一方、重点措置を延長した場合の無観客については明確に答えず、有観客へのこだわりがにじんだ。

首相は五輪を「人類がウイルスに打ち勝った証し」と位置付けてきた。無観客となれば〝敗北感〟が強くなり、政権の浮沈にも影響しかねない。五輪後には自民党総裁選や衆院選も控える。無観客に比べれば感染の恐れがあるというリスクをとって、首相は賭けに出た。(市岡豊大)

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