雄大な三国山脈が色付き始め、ようやく秋の到来を感じた10月26日「#サステナアクション 産経新聞社×J-POWER ダム見学ツアー」(協力・J-POWER [電源開発]) が実施された。親子11組24人が新潟県湯沢町のJ-POWER 奥清津発電所を取材し、新聞作成のワークショップを開催するという行程である。小学生記者が日本最大級の揚水式水力発電所の仕組みやサステナブルな理由を現地担当者から実際に聞き出し、自分だけのオリジナル号外新聞を発行した。
2つの池をパイプでつなぎ水が落ちる力でクリーンな発電
一行は上越新幹線越後湯沢駅からバスで現地へ向かった。事前に奥清津発電所・同第二発電所の総発電出力は160万キロワット、50万世帯分の電気が作れるとの説明をバス車内で受け、参加親子は数字の大きさに「びっくり!」。でも「揚水発電って?」などの声があがり、疑問を抱きながらも興味津々の様子だ。
まずは揚水式水力発電の全体像を把握するため田代ロープウエーに乗車。まもなく左手にエメラルドグリーンに輝く山の麓側の二居湖(二居調整池)が見えてきた。子どもたちから「わーっ、きれい!」と歓声が上がった。さらに進み、その上の山の斜面には巨大なパイプ(水圧鉄管)が滑り台のように設置されているのが見える。パイプ露出部分の斜度は32度、ウオータースライダーならほぼ垂直と感じる角度である。地中では実際に垂直の部分もあり、その水圧のすごさが容易に想像できる。
ほどなくして、高度差約600メートル、標高約1400メートル強のロープウエー山頂駅へ到着。奥清津発電所の中村悦幸事務所長の案内で、親子たちは山の上側にあるカッサ調整池へ向かった。
池のほとりで中村事務所長は「この下をパイプが走っていて、さっき見た湖(二居調整池)へ水を流して、その力で発電します」と説明した。首を縦に振るお母さんと「?」と疑問が湧く子どもたち。下りのロープウエーに乗り、再び見えてきた巨大なパイプを指さし、「さっきの池の水があの中を流れているんだ」と実際に全景を見ることで水の流れを理解した様子だった。
次に二居ダムの堤体へ上がった。ロープウエーから見えた湖が目と鼻の先にあった。その後、Okky(オッキー)ミュージアムへ向かった。ここは発電のことが学べる体験施設である。第2発電所の直径10メートル近い巨大な発電機の上部がガラス越しに見える。工事中で入れないため、通路にある模型で、この下に直径5メートル以上もある巨大な水車があって、水の力で回るとの説明を受けるが、まだ実感が湧かない子もいたようだ。
ならば、「実物を見てみよう」と水圧鉄管が見られる場所までつづいているトンネル(水の路)へ向かった。入り口に直径5メートルほどの巨大なコマが置かれている。これはコマではなく、J-POWER の別の発電所(奥只見発電所)で使われていた水車であり、奥清津発電所のものはさらに大きいと説明を受ける。
薄暗いトンネルを歩くこと5分、突き当たりを高さ5メートル以上ある巨大なパイプが横切っている。
「触っていいよ」と中村事務所長の案内で子どもたちは実際にパイプに触れた。
「冷たい」
「この中には1秒間に約150トンの水が流れるよ」
「150トンって?」
「大型トラック15台が1秒ごとに流れている計算だね」と、
中村事務所長と子どもたちの間でコミュニケーションを交わすことで、さきほど見た巨大な水車を回す水の力を実感し、発電中は二酸化炭素を出さない、地球にやさしい発電だと理解できたようだ。
一連の発電所施設内の見学が終わり、参加者たちは事務所に戻り、中村事務所長の説明が始まっ た。
揚水式水力発電所とは?
中村事務所長は写真や図解を交えながら、
「電気は余っても、たくさんの電気をためておくことはできません。特に近年は太陽光発電所が増えて、昼間は電気が余ってしまうことが増えました。その時、余った電気でポンプを回し、下の池の水を上の池へくみ上げます。夜になって、太陽光発電ができなくなり、電気が足りなくなりそうになると、すぐに上の池から水を落として発電します。そうやって、いつでも必要な電気が作れるのです。水を何度も繰り返して使うので、水も電気も無駄にしません。余った電気で水をくみ上げて、上の池へためる。いわば、電気を水の形にして、巨大なバッテリー(蓄電池)にためている、といえます」と子どもたちにも分かりやすい言葉で説明した。
ワークショップ実施。ほんものそっくりの新聞完成
取材が終わり、新聞記事を書き起こし、号外新聞を作成するワークショップが始まった。
産経新聞の篠原那美記者が記事の書き方を説明した。
「皆さんは小学生記者です。新聞記事は、大事なことを一番先に書きます。今日取材して、すごいなあ、とかびっくりしたこと、みんなに伝えたいことなどをまず書いてみてください」
「見出しは記事の看板です。中身が分かるよう、みんなが読みたくなるような見出しを考えてね」
子どもたちはまず隣のお父さん・お母さんのアドバイスを受けながら、原稿用紙を埋めていった。中村事務所長に追加取材する子どもたちは真剣そのものだ。
新聞は、産経新聞社が開発した号外新聞作成オリジナルアプリ「かんたん号外くん」を使った。本物そっくりの新聞が完成し、その出来栄えに参加者は感心していた。
子どもたちは興味を持ったポイントがそれぞれ異なり、「水の力で発電する」「二酸化炭素を出さない」「安定した電気を作る」などの記事が並んだ。中には、石を積み上げて造ったロックフィルダムを取り上げたり、二居貯水池が東京ドーム15杯分の総貯水量があることに驚いたりした子どももいた。
完成した新聞はその場で印刷され、それぞれの参加者に手渡された。篠原記者からは「関心を持った点をきちんと調べて、しっかり表現されていました。皆さん、大人になったら産経新聞の記者になってくださいね」と総括した。
参加した山口裕凜さん(14)は「揚水式水力発電所の仕組みが理解できて、とてもエコであることも分かった。また見学してみたい」と話していた。
再生可能エネルギーを積極利用
J-POWERでは70年以上にわたって、水力発電所をはじめとする再生可能エネルギーを用いた発電所を多く開発、稼働させている。
・水力発電所は今回の奥清津発電所のほか、佐久間発電所(静岡県)、奥只見発電所(福島県)など61カ所で運営しており、総発電出力は857.7万キロワット。国内の水力発電設備において2割近いシェアを占める(発電出力ベース)。現在、リパワリングと称し、老朽化した発電所設備を一括更新し、最新の技術を用いた設備を導入したり、使用水量を見直したりすることで出力増を図っている。
・風力発電所は、せたな大里ウィンドファーム(北海道)、にかほ第二風力発電所(秋田県)など全国に24カ所、発電出力は56.0万キロワットにのぼり(持分出力ベース)、国内に占める風力発電出力シェアは、第2位で約15%を占める。また、他企業と共同で大型の洋上風力事業にも取り組んでおり、北九州響灘洋上ウィンドファーム(福岡県)は2025年度に国内最大の洋上風力発電所として稼働予定だ。
・地熱発電所は、地下に浸透した雨水がマグマの力で加熱されてできた蒸気(いわゆる温泉の蒸気)を利用して発電するため、気象の影響を受けずに安定的に発電が可能な電源だ。J-POWERでも、東北地方に複数拠点を有しており、2024年3月には他企業と共同で安比地熱発電所の運転を開始した。
・海外でも国内で培った知見を生かして、再生可能エネルギーを用いた発電所を開発・運営中だ。当時世界最大級といわれた英国のトライトン・ノール洋上風力発電事業に建設段階から参画し、同事業で獲得した知見を国内の洋上風力発電プロジェクトに生かしている。また、豪州では、揚水や風力発電、太陽光発電の開発を行うGenex社を子会社化し、同国の再生可能エネルギー拡大に貢献している。そして、米国でも太陽光発電の開発に参画中だ。
2015年7月に発表された「長期エネルギー需給見通し」では、2030年度までに国内の再生可能エネルギーの比率を22~24%に引き上げることとしている。
J-POWERは、エネルギー源の多様化や低炭素化に向け、積極的に再生可能エネルギーの拡大利用を進めている。
◇J-POWER の目指す未来
日本では戦後もしばらくは産業や国民生活に必要な電気が不足していた。この問題を解決するため、1952年、「電源開発促進法」が作られ、特殊法人として設立されたのがJ-POWER だ。
以後、佐久間発電所など大型の水力発電所や火力発電所を建設し、電力会社へ電力を供給している。地域間を送電線でつないで電力の安定供給に貢献しているほか、海外の発送電事業の支援や発電所開発も実施している。
持続可能な未来社会に向けては、2050年の「カーボンニュートラルと水素社会」の実現を進めることで、気候変動問題の解決に貢献しようとしている。一方で、電力の安定供給も根源的な使命である。この2つの命題を両立させるべく、現実的な「解」を希求し、チャレンジを続けている。
提供:J-POWER(電源開発)