災害発生時に海から被災者を助ける国内初の「医療支援船」を使った本格的な訓練が行われると聞き、広島市南区の広島港へ向かった。波に揺れる船内へ次々と運び込まれる患者役。突然鳴り出す「船内で煙が発生」との警報音…。陸上の病院とは異なり、思わぬトラブルが続発する緊迫の船上医療訓練に密着した。
多機能装備
広島港に停泊していたのは、今年から本格運用が始まった医療支援船「パワーオブチェンジ(略称・POC)」(3593トン)。母港は愛媛県今治市にあり、国内外の災害現場で医療支援活動を展開する特定非営利活動法人(NPO法人)の「ピースウィンズ・ジャパン」(広島県)が運用する。
長さ68メートル、幅17・4メートル、船室は49人分。船の2階中央部分にベッド4床分の治療室を備えているほか、レーダーアンテナやヘリパッド、上陸支援のためのゴムボード4隻、トラック2台以上の物資を積めるスペースもある多機能ぶり。もともとマレーシアで活動した海洋調査船だった。船体の錆が、これまで越えてきた波を物語る。
11月29~12月1日に行われた訓練には約100人が参加した。広島県周辺で震度6強を観測する地震が発生し、広島市沖の江田島で負傷者が多数発生-との想定で、ピースウインズ・ジャパンの登録医師や看護師らのほか、災害派遣医療チーム(DMAT)とNPO災害人道医療支援会(HUMA)、台湾やフィリピンの救急医療チームがPOCに乗り込んだ。