日本航空は、サイバー攻撃を受け、国内外線の運航に大きな影響が出た。多くの便に遅れが生じたほか、発券にも支障が出た。年末年始の繁忙期に公共交通機関の混乱を狙ったサイバー攻撃は極めて悪質だ。
捜査機関は一刻も早い全容解明と犯罪者の摘発に全力を挙げてもらいたい。同時に各企業や公共団体はサイバーセキュリティーの強化を推進するとともに、政府・国会には「能動的サイバー防御」の実現に向け早期の法整備を望みたい。
日航によると、26日午前7時25分ごろから社内外をつなぐネットワーク機器にサイバー攻撃があり、システムの不具合が起きた。大量のデータを送りつけてサーバーに負荷をかける「DDoS攻撃」を受けた可能性が高いとされる。日航は、標的となった疑いが濃厚なルーターを一時的に遮断することに成功したものの、復旧までに約7時間を要した。
サイバーセキュリティーに詳しい専門家は、「企業へのサイバー攻撃は年々高度化している。防護体制が比較的しっかりしている基幹交通機関が被害を受けたことは、深刻に受け止めねばならない」と指摘する。
令和6年版情報通信白書によると、大規模サイバー攻撃観測網(NICTER)で昨年確認されたサイバー攻撃関連の通信数は、約6197億パケットにのぼり、平成27年の約10倍になった。今年3月には光学機器メーカーHOYAが、身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」に攻撃されるなど企業や中央官庁を狙った攻撃が拡大している。中国やロシアの軍や情報機関と密接な関係にある組織の関与が疑われているケースもある。
こうしたサイバー攻撃に対する日本の防御態勢は、欧米など諸外国に比べ極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。
サイバー攻撃を止めたり、未然に防いだりするため攻撃側のサーバーを無力化する「能動的サイバー防御」ができないのも大きな要因となっている。
政府の有識者会議は11月、一定の条件下で国が民間の通信情報を収集・分析できるよう法整備すべきだとの提言をまとめた。石破茂首相は来年の通常国会に関連法案を提出する方針だが、国会も真摯(しんし)に論議し、早期に成立させてほしい。危機は、いまここにあるのだから。