台湾有事などで米中が軍事衝突した際、中国が在日米軍基地など米空軍の拠点をミサイルで攻撃して作戦行動を妨害する可能性があることは、米国防総省や研究者がかねて警戒してきた。では実際に、どの程度の影響があるのか。米シンクタンク「スティムソン・センター」の報告書は、アジア太平洋地域において、米空軍が自由に行動できる「聖域はもはやない」と警鐘を鳴らした。
米空軍にとって、海外の基地は敵からの攻撃を受けることがない「聖域」だった。1991年の湾岸戦争では、中東諸国の基地から出撃した戦闘機がイラクに攻撃を加え、圧倒的なスピードで戦闘を終結させた。2001年のアフガニスタン戦争でも、03年のイラク戦争でも米空軍は自由を謳歌(おうか)した。
しかし、イタリアの軍学者ジュリオ・ドゥーエが指摘したように「飛ぶ鳥を空中で撃ち落とすよりも、地上で巣や卵を破壊するほうが簡単であり有効」であることは自明の理だ。中国が大量の弾道ミサイル、巡航ミサイルを配備しているのは、米軍機を撃墜するよりも、滑走路を使えなくすることが有効であると判断しているからでもある。