立憲民主党などが法制化を提案している選択的夫婦別姓制度が導入されると、家族の墓地のあり方はどう変わるのか。少子化を背景に、一人っ子同士が結婚した際などに婚家と実家の両方の家名を刻む「両家墓」が増えているが、別姓の法制化が進めば「夫婦別姓墓」の登場も想定される。
「両家墓」認めぬ墓地も
両家墓は現在、主に一人娘が婚家の墓に入り実家の墓が維持できない場合などに建てられる。1つの墓石の墓碑に「田中家」「鈴木家」など2つの家名を併記したり、敷地が広い場合はそれぞれの家の墓を並んで建てたりしている。
近年は両家墓の一種で、墓石だけ2つに分けたり、墓石と納骨室までそれぞれ2つに分けた「二世帯墓」も販売。「お墓の二世帯住宅」と呼ばれている。
墓地埋葬法では、同じ墓地にどの範囲の人を埋葬できるかの制限はなく、たとえば事実婚など別姓の配偶者でも同じ墓に入ることができる。
ただ、氏が複数になると「墓の承継時に混乱が生じる」ことなどを理由に、墓地によっては別姓者は埋葬できなかったり、両家墓に複数併記を認めないところもあるという。
選択的夫婦別姓制度に前向きな公明党の支持母体である創価学会が管理・運営する学会員向けの墓地の場合はどうか。
学会では「仏法の真の平等観」から、すべて同じ大きさやデザインで同一規格の墓石が広大な芝生に整然と並び、「墓地公園」と呼ばれる。北海道から沖縄まで全国15カ所にあり、墓碑はすべて単一の家名だ。
学会は「利用者の申し込みに沿って対応している」(本部広報室)と説明。両家墓といった要望は現状、あまり多くはないものの、別姓の併記を望む場合は、墓石の裏面に刻むなどして対応しているという。
「無縁墓」の可能性
一方、葬送業界関係者は「仮に夫婦別姓が2代、3代と続けば、両家墓どころか、氏の違う三家墓、四家墓が乱立する事態も生じる」と指摘。「そうなれば、家名や家系の連続性は失われ、祖先の祭祀や墓の維持、継承にも重大な影響を与える」と話す。
そもそも、夫婦別姓が進めば、家単位よりも個人名の墓が増えることも想定される。別の業界関係者は、別姓夫婦の子供が増えると、もはや祖先という言葉自体が死語となり、「ご先祖さまのお墓を守る」という気持ちも廃れてしまうと懸念し、こう続けた。
「そうなれば、墓は単なる骨の収容施設になる。無縁墓のような、誰もお参りに来ることがない荒れた墓が増える可能性もある」