国民民主党の地方選での勢いが止まらない。自民党市議の辞職に伴う横浜市議補選が9日投開票され、国民民主新人が立憲民主党と日本維新の会、共産党の野党3候補を制して初当選を果たした。国民民主は1月の北九州市議選などでも議席を獲得し、夏の参院選に向けて野党内での「1強」が鮮明になってきた。国民民主の連勝は他の野党内の路線対立も刺激しそうだ。
国民民主の古川元久代表代行は10日の党会合で、市議補選の勝利について「大きな成果だ。わが党に対する期待の重みをしっかりとかみしめたい」と評価した。選挙では玉木雄一郎代表(役職停止中)や榛葉賀津也幹事長が街頭に立ち、国政選挙並みの応援態勢で臨んだ。
横浜市議補選は自民が候補者擁立を見送ったため、主要野党同士が争う「バトルロイヤル」の様相を呈した。立民は野田佳彦代表を、維新も前原誠司共同代表を現地に投入した。
政府・与党との政策協議や夏の参院選を控える中、国民民主が直近の地方選で連勝している意味は大きい。幹部の一人は所得税が発生する「年収103万円の壁」の引き上げなどの政策が有権者に浸透していると分析し、「どこに応援演説に行っても想像以上の反響だ。こんなに反応が良いのは、政権交代前の民主党以来だ」と驚く。国民民主を支える労組幹部も「手応えを感じる」と喜ぶ。
立民内で勢い増す「減税派」
他の野党は対照的だ。第三極の立ち位置を国民民主に奪われた維新は最下位に甘んじた。青柳仁士政調会長は10日、記者団に「今回の選挙一つをとって党勢が上向いているとか、下向いているとかは考えていない」と述べるにとどめた。
立民内には衝撃が走っており、旗幟(きし)を鮮明にすべきだとの意見も出始めた。自民、公明両党は衆院で過半数割れし、立民は「熟議と公開」を掲げて今国会に臨んでいるが、政権交代への迫力を欠く。国民民主や維新が進める政策ごとの与野党協議でも後れを取る。
党内には地方選での敗北や国会論戦での埋没は消極的な経済政策にあるとし、消費税減税を訴える減税派が勢いを増す。野田氏ら主流派は財政規律を重んじており、路線対立に発展する可能性もある。
立民重鎮は「消費税減税とかふらふらしているから選挙に負ける。選挙で強い人はみんな財政規律派だ」と、党内の減税派を牽制(けんせい)した。(永原慎吾)