政府が、海上自衛隊の最新鋭護衛艦「FFM」(もがみ型)を近くオーストラリアに派遣する方針を固めたことが11日、分かった。オーストラリア海軍が導入する新型艦の共同開発計画で日本とドイツが最終候補に残っており、実物を現地に送ることで売り込みにつなげたい考えだ。受注できれば、日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機に次ぐ防衛装備品の大型輸出案件となる。
複数の政府関係者が明らかにした。日本はもがみ型をベースに共同開発する案をオーストラリアに提示している。受注した場合は、海自よりもオーストラリア海軍への配備を優先する意向も水面下で伝えた。
オーストラリアは老朽化したフリゲート艦を新型艦11隻に置き換える計画で、総額は111億豪ドル(約1兆円)を見込む。11隻のうち3隻を先に共同開発国で生産し、残りをオーストラリア国内で建造する。今年中に共同開発国を決め、2029(令和11)年の納入開始を予定している。
もがみ型は、従来型護衛艦の半数の約90人で運用できる点や、オーストラリアの同盟国である米国の兵器を搭載しやすい点が有利との見方がある。一方、日本と受注を争うドイツは、オーストラリア海軍が現在配備するアンザック級フリゲート艦の能力向上型を提案しており、運用面での継続性から現場レベルで一定の支持を集めている。
オーストラリアとの共同開発を巡っては、日本は16(平成28)年に潜水艦の受注競争でフランスに競り負けた苦い思い出がある。それだけに日本政府内では、「今回も逃せば防衛装備品の海外輸出が停滞してしまう」(防衛省幹部)との危機感があり、売り込みに余念がない。
防衛省は昨年12月に受注獲得に向け、関連企業と官民合同推進委員会を設置した。また、若宮健嗣防衛相補佐官を今月11~16日の日程でオーストラリアに送り、政府要人らと会談させる予定だ。