Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

豚の骨がもろくなる?その考えられる原因について 2024年9月号

出荷先の屠場から枝肉のあばら骨が脆い、砕けやすいなどのクレームを言われることがあります。すべての農場で見られることではないとは思いますが、昔からその発生数は決して少なくはないように感じています。近年は多産系品種の登場もあって、生産された子豚たちの成長速度も著しく早くなり、飼料効率の改善に加速が掛かっている状態です。この改善効果は大変喜ばしい結果なのですが、その一方では加速し過ぎる成長に対して栄養バランスが間に合っていないのではないかとの声も聞こえています。
 

あばらが脆くなる原因として考えられているもの

①リンとカルシウムのバランスの乱れ
②カルシウムの代謝と拮抗する2価の陽イオン(鉛、カドミウムなど)の混入
③フッ素の混入
④シュウ酸の混入(カルシウムと不溶性の塩を作って吸収を阻害する)
⑤ビタミンDの不足―ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収に必要
⑥紫外線照射量の不足(紫外線は皮膚でのビタミンD合成を促進する)
⑦腎臓の障害(腎臓は体内のビタミンDを不活性型から活性型に変換する)
⑧薬の過剰投与や長期投与により腎臓に負担がかかっている
⑨飲水量の不足により腎臓に負荷がかかっている
⑩腎臓に負担がかかるような物質(異物)が餌や水に含まれている
⑪その他
 
今回は上記①リンとカルシウムについて少し考えて見たいと思います。リンとカルシウムは、体を作る、そして動かすことを担っている重要な成分です。リンは、骨や歯、細胞、遺伝子などの成分であり、体を動かすときや細胞が働くときのエネルギーを作り出しています。カルシウムは、そのほとんどが骨や歯の成分であり、血液や細胞内にも存在し、心臓の機能を調整したり、筋肉の動きにかかわったりしています。リンとカルシウムは、血液中でバランスを保って存在していますが、リンが過剰になると血液中のリン濃度が上昇し、バランスが崩れてしまい、骨から血液中にカルシウムが放出されるため、カルシウム量を減少させます。さて、皆さんは使用している飼料のリンとカルシウムのバランス(比率)を確認されたことがあるでしょうか。このリンとカルシウムのバランスに乱れがあった場合は、答えが見つからない様々な症状の起因になっている可能性もありますので注意が必要です。
 
飼料分析検査による飼料成分の診断は、疾病診断検査と同様、とても重要な位置を占めます。今回テーマとしたあばらが脆い以外でも、足回り関係のトラブル、繁殖関係のトラブル、子宮脱や直腸脱や悪露などのトラブル、損耗事故のトラブル、子豚の発育と事故に関するトラブルなども、飼料成分とバランスが影響しやすい項目となります。弊社でも依頼やお問い合わせの数が増加傾向にあります。多産系品種を使いこなすためには、日本飼養標準での指標をクリアはしていても、それだけでは足りない栄養成分が多い現実があります。この飼料分析検査では、アミノ酸類、リンとカルシウムなどを測定することで、現在使用されている種豚群に見合った栄養バランスになっているのか、いないのかを判断、修正することが可能となります。もし、皆さんの農場で気になる点が少しでもあった場合は診断されることをお薦めします。
 
(株)食環境衛生研究所 菊池雄一
 
>>その他「ピッグジャーナル」記事はこちらから