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第2号 令和5年2月10日(金曜日)

会議録本文へ
令和五年二月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    井原  巧君

      池田 佳隆君    石橋林太郎君

      石原 宏高君    岩田 和親君

      尾崎 正直君    大野敬太郎君

      川崎ひでと君    工藤 彰三君

      小寺 裕雄君    塩崎 彰久君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      田野瀬太道君    平  将明君

      土田  慎君    中野 英幸君

      長坂 康正君    平井 卓也君

      平沼正二郎君    堀内 詔子君

      牧島かれん君    松本  尚君

      中谷 一馬君    太  栄志君

      本庄 知史君    馬淵 澄夫君

      山岸 一生君    岩谷 良平君

      堀場 幸子君    河西 宏一君

      福重 隆浩君    浅野  哲君

      塩川 鉄也君    仁木 博文君

      たがや 亮君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 谷  公一君

   国務大臣

   (共生社会担当)

   (男女共同参画担当)   小倉 將信君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (新しい資本主義担当)

   (新型コロナ対策・健康危機管理担当)

   (全世代型社会保障改革担当)

   (経済財政政策担当)   後藤 茂之君

   国務大臣

   (経済安全保障担当)

   (科学技術政策担当)   高市 早苗君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (国際博覧会担当)    岡田 直樹君

   内閣府副大臣       和田 義明君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   環境副大臣        小林 茂樹君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   内閣府大臣政務官     尾崎 正直君

   外務大臣政務官      秋本 真利君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   国土交通大臣政務官    清水 真人君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  飯田 陽一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大西 友弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  廣瀬 健司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  宮本 康宏君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部審議官)      谷村 栄二君

   政府参考人

   (内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局審議官)          榊原  毅君

   政府参考人

   (内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長)     井上  学君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   松浦 克巳君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   三浦 章豪君

   政府参考人

   (内閣官房こども家庭庁設立準備室次長)      小宮 義之君

   政府参考人

   (内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局審議官) 鹿沼  均君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  吉川 徹志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政策立案総括審議官)       長谷川秀司君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 畠山 貴晃君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 吉岡 秀弥君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中澤 信吾君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総合政策推進室室長兼政策統括官)      笹川  武君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房故安倍晋三国葬儀事務局長)    原  宏彰君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房経済安全保障推進室次長)     品川 高浩君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            岡田 恵子君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官)            奈須野 太君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            井上 惠嗣君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        北波  孝君

   政府参考人

   (内閣府日本学術会議事務局長)          三上 明輝君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    渡邊 国佳君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    原  和也君

   政府参考人

   (警察庁サイバー警察局長)            河原 淳平君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            柳瀬  護君

   政府参考人

   (総務省統計局統計調査部長)           岩佐 哲也君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 坂本  基君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 石田  清君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   前田  努君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   嶋田 俊之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官)     田中佐智子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           野村 知司君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 田部井貞明君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 安藤 敦史君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     石橋林太郎君

  田野瀬太道君     堀内 詔子君

  中山 展宏君     土田  慎君

  牧島かれん君     長坂 康正君

  緒方林太郎君     仁木 博文君

  大石あきこ君     たがや 亮君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     岩田 和親君

  土田  慎君     塩崎 彰久君

  長坂 康正君     牧島かれん君

  堀内 詔子君     井原  巧君

  仁木 博文君     緒方林太郎君

  たがや 亮君     大石あきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  井原  巧君     田野瀬太道君

  岩田 和親君     川崎ひでと君

  塩崎 彰久君     中山 展宏君

同日

 辞任         補欠選任

  川崎ひでと君     池田 佳隆君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官飯田陽一君外四十四名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮路拓馬君。

宮路委員 自由民主党の宮路拓馬でございます。

 久しぶりに、この質疑の場にマスクなしで立たせていただきました。感慨深いものがあるなと思っております。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 私は、一昨年になりますが、衆院選におきまして、多様で公正な社会の実現ということを政治信条として掲げ、そして、女性活躍、障害福祉、そして子供、子育てを政策の柱として訴えさせていただきました。

 岸田内閣においても、多様性を尊重し、包摂的な社会を実現していくということを施政方針演説において掲げております。

 では、なぜ岸田内閣が、あるいは我が国が多様で包摂的な社会を実現しなければならないのか。もちろん、日本国憲法第十一条、基本的人権の項には、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」、あるいは幸福追求権、第十三条、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とあります。

 したがって、基本的人権の観点から、あるいは個人の尊重の観点から多様性が認められなければならない、包摂的な社会でなければならない、そういうことだと思います。

 ただ、その上で、私は、国家戦略の柱として、この多様性、ダイバーシティーを追求しなければならないというふうにも思っております。

 我が国は、人口減少社会に突入いたしました。昨年生まれた出生者数、新生児の数は、ついに八十万人を切ったと言われております。このままでは国家の存立すら危うい事態。岸田内閣においても、異次元の少子化対策を実行していくということを宣言しています。

 ただ、少子化というのは、すぐにとどまるわけではありません。少子化対策を打ったとして、その効果が出るのはやはり時間がかかります。とすれば、我が国は、しばらくの間は人口減少が進むということを前提に、様々な社会制度が見直されていかなければなりません。

 人口イコール国力だと言われています。あるいは地域の力だと言われています。ローマ帝国が滅びるに至った理由も、人口減少が最大の要因だったと言われています。

 さらに、我が国は、人口減少のみならず加速的な少子高齢化が進んでいく、つまり、支えられる側が増え、支える側が減っていくという危機的な状況にあります。

 そうした中で、多様で公正な社会を実現しなければならない。なぜか。人口が減少する中で、社会の活力を維持していく、あるいは経済力を維持していく、そのためには、イノベーションを引き起こさなければなりません。生産性を高めなければなりません。古今東西、イノベーションを引き起こすその土台には、ダイバーシティーが必要だと言われています。

 以前、イギリスのロングボトム大使の話を聞いたことがありました。外交官の大使ですから、イギリスの外交戦略についてが主な話題でしたが、しかし、その背景にあるイギリスの国家戦略は、その柱は、やはりダイバーシティーの確保でした。私からすると、イギリスは多分に多様性が確保されている社会のように見えます。人種、民族的にもしかり、あるいは性別の問題しかり、あるいは障害をお持ちの方の活躍しかり。しかし、そのイギリスにおいても、昨日より一ミリでも多く多様性を確保するために社会を挙げて臨んでいる、そういうお話でした。

 やはりどの国においても、イギリスはまだ人口減少局面には入っていないと思いますが、それでも、いかにしてダイバーシティーを確保し、イノベーションを引き起こすか、それが国家戦略の柱に据えられている。

 あるいは、人口が減る中で、では、我が国はどうやって活力を維持していくのか。

 一つの方策として、海外から人や投資を呼び込む必要性が更に増していると思います。しかし、閉鎖的で多様性の認められない社会に、人は魅力を感じるでしょうか。海外から人や投資が舞い込んでくるでしょうか。私は、国家戦略の柱として多様で公正な社会を実現しなければ我が国に未来はない、そう強い危機感を持って、地元鹿児島、保守王国と言われます、最も男尊女卑の空気が色濃く残る地域だ、女子の大学進学率が全国最下位だ、そう言われます。しかし、その鹿児島においても、多様で公正な社会の実現を政治信条に掲げ、活動しております。

 その中で、お伺いいたします。

 昨今世間をにぎわせているLGBTQの問題です。前総理秘書官の発言の問題もありました。社会の機運がこれまでになく高まっていると感じています。我が党としても、LGBTQの理解増進法の提出に向けて議論を再開させたところであります。

 そうした中、本年は日本がG7議長国でもあるというわけでありまして、各党各会派の議論の下、理解増進法の成立を早期に実現しなければならないと私自身は思っておりますが、しかし、その成立を待たずして、政府の方でもLGBTQの問題についてしっかりと対応していく必要があると考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

小倉国務大臣 お答えいたします。

 まず、LGBT理解増進法につきましては、宮路委員も言及されましたとおり、自民党においても提出に向けた準備が進められていると承知をしておりまして、総理も申し上げておりますとおり、政府としては、まず、こうした議員立法の動きを尊重しつつ見守っていきたい、こう考えております。

 性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと強く考えております。政府といたしましては、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向けて、これまでも、それぞれの分野を所管をする各府省庁において適切に対応されてきたものと承知をしております。

 引き続き、様々な国民の声を受け止めまして、しっかりと取り組んでいきますと同時に、G7サミットや関係閣僚会合を控え、こうしたことを改めて国の内外に対して丁寧に説明をしていく努力を続けていかなければならず、政府全体としても取組を進めてまいりたいと強く思っております。

宮路委員 差別の根源には、無理解、知らないことがあるというふうに言われています。差別があってはならない、差別を許さない社会とするためにも、一刻も早くLGBTの問題について、社会全体が、国民一人一人が理解をする、そのための方策に、政府のみならず我々立法府も力を合わせて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 続きまして、多様性のもう一つのテーマである選択的夫婦別姓についてお伺いをしたいと思います。

 この問題については、以前、法務省においても法制審議会で議論をされ、政府の試案のようなものも策定された。私も、選択的夫婦別姓の問題について議論をする自民党の議員連盟に属しまして、勉強を続けております。

 様々言われます。現憲法において、姓はどちらの方か選択できるではないかと。しかし、実態的にはやはり、婚姻した後、女性がほぼ姓を変えることになっている。その弊害として、パスポートの記載の問題、あるいは、女性が旧姓の中で築き上げてきたキャリアが損なわれてしまうのではないか、とりわけ、我が国が最も数を増やしていかなければならない研究者、その研究者の功績、実績が、姓が変わることによって正当に評価されづらくなってしまうといったようなことも言われます。

 そうした具体的な支障が生じるケースを基に議論される場合において、通称使用を認めれば何とかなるのではないかといったような議論もなされます。技術的にはそれで解決できる点もあろうかと思います。

 しかし、私は、自分の姓を名のれる、あるいは他人から呼ばれる、これは、人格の問題、人権の問題でもあるというふうに思っています。基本的人権の尊重あるいは幸福追求権、そこからくる帰結として選択的夫婦別姓が認められる社会が到来してほしい、私はそのように思っています。

 改めて政府に伺いたいと思います。

 選択的夫婦別姓は、人格権、人権に関わる問題だと考えますが、大臣の見解はいかがでしょうか。

小倉国務大臣 政府は、これまで二十年以上にわたり、旧姓の通称使用の拡大に取り組んできたところであります。引き続き、その拡大や周知に取り組んでまいりますが、男女共同参画会議の下の計画実行・監視専門調査会におきましては、有識者委員から、旧姓を通称として使用できたとしても限界があるとして、個人の尊厳の問題であり、旧姓の通称使用拡大は根本的な解決策にはなり得ない、結婚後も自らの姓を名のれるかどうかは人権に関わる問題である、人が自分の名前を使う、呼ばれることは人格の本質的な権利であるなどの指摘が行われております。

 選択的夫婦別姓制度は、広く国民全体に影響を与えるものであり、現在でも国民の間には様々な議論があると承知をしております。それゆえ、この制度の導入については、しっかりと議論をし、より幅広い国民の理解を得る必要があるとも考えております。

 男女共同参画担当大臣といたしましては、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方について、十分な理解の下で国民の皆様方に充実した議論をしていただけるよう、議論の土台となる情報提供等を行うことで後押しをしてまいりたいというふうに考えております。

宮路委員 どういった情報が議論の前提として提示されるか、これは大変重要な点だと思っております。男女共同参画担当大臣として、男女共同参画に資する姿勢で、是非議論をリードしていただきたいというふうに思っています。

 続いて、女性の政治参画の推進についてお伺いをしたいと思います。

 大臣はもうこちらで大丈夫ですので、離席をいただければと思います。

 我が鹿児島においても、今春の統一地方選挙、県議会議員選挙が行われますが、自民党から五人の立候補予定者が予定されています。かつてと比べると、倍増、それ以上と言われる数の立候補予定者が手を挙げている。自民党のみならず、非自民の各党各会派から多くの女性候補が名のりを上げています。それ自体、あの保守王国と言われる鹿児島で起こっていることですから、大変時代が変わってきたな、そして、女性活躍を掲げ活動してきたかいがあるなというふうに思っておりますが、しかし、一方で、女性の政治参画は、いまだ道半ばどころか、始まったばかりとも言える状況だというふうに考えております。

 様々、その参画を妨げている要因が挙げられていますが、改めて、政府としての所見をお伺いしたいと思います。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 政治分野における男女共同参画の推進は、政治に民意をより一層反映させる観点から極めて重要と考えてございます。

 我が国では、衆議院議員に占めます女性の割合一〇・〇%、参議院議員に占める女性の割合二五・八%となってございます。他のG7の国々では三割から四割となっておりまして、日本は国際的に見ましても非常に低い水準にございます。

 令和二年度に、私ども内閣府男女共同参画局におきまして地方議会議員を対象に行った調査によりますと、議員活動を行う上での課題につきましては、女性の回答が男性の回答を大きく上回ったものとしまして、一つ目として、議員活動と家庭生活との両立が難しいこと、二番目として、性別によります差別やセクシュアルハラスメントがあることなどが挙げられてございます。

 以上でございます。

宮路委員 そうした課題が挙げられる中で、政党としても、女性の候補者を、政治家を輩出するための不断の努力が求められます。一方で、政府としても取り組めることが、国や自治体としても取り組めることがあるというふうに考えております。

 そうした中で、現時点、政府としてどのような取組を行っているか、お伺いしたいと思います。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が、令和三年六月に改正されております。そこでは、内閣府を含む関係行政機関等が適切な役割分担の下でそれぞれ積極的に取り組むこと、また、国及び地方公共団体は、議員活動と家庭生活の両立支援のための体制整備や、セクハラ、マタハラ等の発生の防止に資する研修の実施等の施策を講じる旨が規定されてございます。

 まず、議員活動と家庭生活の両立支援のための体制整備につきましてでございます。

 内閣府では、第五次男女共同参画基本計画に基づきまして、地方三議長会に要請を行い、各標準会議規則の改正をしていただきました。それを受けて、各地方議会におきまして、会議規則の改正が行われています。令和四年七月一日時点で、都道府県議会では、育児及び家族の介護を欠席事由として明文化している議会が全体の約九割となっており、また、市区町村議会では、育児、家族の介護のほか、本人の疾病や配偶者の出産、家族の介護、看護につきましても明文化している議会が約八割となるなど、大きく増加しております。

 また、政治分野におけるハラスメントの防止につきましては、内閣府では、昨年、政府における初の取組といたしまして、政治分野におけるハラスメントの防止のための研修教材を動画で作成いたしました。全国の地方議員から寄せられた千三百二十四件の実例を基に作成しておりまして、ハラスメントが発生する動機や人間関係等の背景につきましても描いた上で問題点を解説するという工夫をしております。

 本教材につきましては、内閣府から、国会を始めまして、都道府県、市区町村会の議会、地方三議長会、地方公共団体の所管部局等に対して情報提供等を行い、それぞれ活用いただいているところでございます。

 このほか、各政党の取組状況の見える化、諸外国の取組事例の情報提供などの取組を通じまして、政治分野における男女共同参画の取組を後押ししてまいります。

宮路委員 私が政務官時代、その動画が配信され、多くの反響を呼んだところであります。

 ただ、やはりまだ社会の全体の関心が薄い、そして女性が政治の場に出るものかという空気がいまだ残っている。これは、男女問わず、あるいは性別問わず、社会全体でやはり空気を変えていかなければならないというふうに思っております。

 続いて、私のライフワークの一つでもあります女性の健康課題の問題について問いたいというふうに思っております。

 少子化の前提に、一つ大きく女性の健康課題があるというふうに思っております。事実として、医学的に、女性は三十五歳を超えると妊孕性が格段に低くなってしまうというふうに言われています。しかし、そうした医学的な事実というのはなかなか知られていない。

 かつて、女性が、二十代前半には結婚し、そして二十代前半のうちに子供を産み始めるという時代には余り考えなくてよかったのかもしれません。しかし、平均初婚年齢がおよそ三十歳になり、そして平均初出産年齢が三十代前半になっている昨今、こうした事実、医学的なデータについて知られていないことが要因となって、大体、今は、多くの女性も大学を卒業し、社会人となり、一人前となり、そろそろ結婚をと考えた頃には三十近くになり、そして結婚し、そろそろ子供をと考えたときに三十半ばになっているということなんでしょう。妊孕性のことについて理解していればもっと考えることができたのに、もっと人生設計を、家族計画を考えることができたのにという声は多々寄せられます。

 そうした中で、妊孕性について、あるいは女性の月経や月経前症候群、これは、しっかりと適切な医療につなげることができれば相当程度軽減することができる。つまり、女性にしっかり活躍していただける環境を整えることができる。そうした意味において、まず、女性自身が、そうした女性の健康課題、生理や妊娠、出産、あるいは更年期、そういった問題についてリテラシーを高めることが前提として必要であるというふうに考えています。

 私が政務官時代、内閣府において、新採職員、男女併せ、研修の一環として、女性の健康課題について研修を行っていただきました。こうした取組を霞が関全体にも広げていくべきだと考えます。そして、お堅いと言われる霞が関が、女性の健康課題について、男女問わず、性別問わず研修を行ったとなれば、経済界も動き出すのではないか、そういうふうに期待をしています。

 そうした中で、現在、政府が行おうとしている、行っている取組について、和田副大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

和田副大臣 宮路先生にお答えを申し上げます。

 女性の就業率が上昇する中、仕事と女性特有の健康課題との両立が課題となっております。働く女性が自らの体に関心を持ち、自らの体のことを知るとともに、男性も含めて、企業、職場や社会全体が、年代ごとに女性の健康への理解、関心を深めることにより、男女共に女性の健康に関する知識を向上させていくことが極めて重要だと考えております。

 このため、昨年六月に決定しました女性版骨太の方針二〇二二において、女性の健康に関する知識向上について、国が率先して取り組むため、国の職員を対象に、研修などの様々な機会を通じて関連情報を周知することを検討するとしたところでございます。

 内閣府では、今年度初めて、女性の健康に関する新採用職員向け研修及び管理職研修を実施したところであり、研修実施に向けて参考となるよう、研修実施の成果等について他省庁に共有することを予定しております。

 以上です。

宮路委員 ありがとうございます。

 官が始めれば必ず民に広がっていく、霞が関が行えば各地方自治体も意識が高まってくる、そのように思っておりますので、男女共同参画を担当する内閣府として、まず率先して行っていただきたいというふうに思っております。

 今は社会人になってからの話でありましたが、やはり、本来、教育段階、教育課程においても、しっかり、女性の健康課題、生理や妊娠、出産、更年期について、性別問わず学ぶ機会が与えられなければならないというふうに思っています。

 そうした中で、教育段階でありますので文科省の所管かもしれませんが、しかし、これまで、金融教育や納税者教育、これは金融庁あるいは国税庁が議論をリードし、そして、文科省もそれに倣い、教科書などで金融教育あるいは納税者教育の推進が図られてきたというふうに理解をしております。

 したがって、内閣府としても、文科省に働きかける、あるいは一体となってそうした環境をつくっていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 生涯にわたる健康の基盤となる心身を形成する時期である十代から二十代前半に、男女共に女性の健康課題に関する知識を身につけることは極めて重要であります。

 このため、第五次男女共同参画基本計画においては、施策の基本的方向として、健康教育の充実や月経周期等の重要性の理解、月経異常の見極めによる疾患の早期発見、栄養、体重管理及び運動と女性ホルモンへの影響等のヘルスリテラシーの獲得など、保健の充実を推進することとしております。

 学童、思春期から健康教育に関する事項に関する知識の向上が進むよう、基本計画も踏まえまして、厚生労働省や文部科学省といった関係省庁としっかりと連携をして必要な取組を進めてまいりたいと思います。

 なお、こういったヘルスリテラシーの向上は極めて重要であり、内閣府としても、現在、厚労省のホームページで、女性の健康推進室のヘルスケアラボというホームページがあるんですけれども、これを内閣府の男女局のSNSでも広報することをしっかりと検討させたいと思っております。

宮路委員 副大臣のリーダーシップも発揮していただき、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 残り時間が僅かになりました。引き続き、障害者に関する質問を幾つか用意をしていたところでしたけれども、一問のみ、させていただきたいと思います。

 改正障害者差別解消法が成立をし、その施行まで残り一年半を切る状況になってまいりました。差別解消に関する相談について、どこが最終的な担当省庁なのか分からないといった問題がこれまでもありました。

 例えば、私が障害をお持ちの方から直接聞いたケースとして、エステの問題です。車椅子ユーザーが入店を拒否された。では、これはどこに相談すればいいのか。自治体に相談してみた。しかし、そのエステ店は全国展開であった、それは本部からの指示であったと。自治体がどうこうできる問題ではないというふうに言われてしまった。では、都道府県なのか。いや、本部からの指示であれば国だろうと。では、国のどこに言えばいいのか。エステ、厚生労働省の所管なのか、はたまた内閣府なのか。

 私は、十年、霞が関で働きました、そして議員としても今九年目になりますが、最初に聞いたとき、どこが所管省庁なのか分かりませんでした。答えは、経済産業省。

 最終的に、その方は、何とか何とか、たらい回しにされながらも、経済産業省が所管だということにたどり着き、最終的には経産省が動き、そうした状況が解消されたわけですが、こうしたケースは今後、合理的配慮義務が民間事業者にもかけられるようになると、多々出てくることになろうかと思います。

 そうした意味では、いわゆるこうした迷子問題、これを解消するためには、障害者差別に関する相談を一元的に受け止められるような、いわゆるワンストップ窓口が必要だと考えますが、政府の見解をお伺いしたいと思います。

笹川政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者差別に関するワンストップ窓口ということでございます。

 おっしゃるとおり、障害を理由とする差別の解消を推進するためには、相談をしっかりと受け止める体制の整備が大切だと思っております。本当に一人一人の方には深刻な問題なんだろうと思っております。

 このため、障害者政策委員会において、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針の改定案、これまで議論してまいりました。その中でも、内閣府において、事業分野ごとの相談窓口の明確化を各省に働きかけ、当該窓口一覧の作成、公表を行うほか、障害者や事業者、都道府県、市区町村からの相談に対して法令の説明や適切な相談窓口等につなぐ役割を担う国の相談窓口について検討を進め、どの相談窓口等においても対応されないという事案が生じることのないようにという規定が盛り込まれているところでございます。

 宮路先生からも、政務官在任中には、こうしたワンストップ窓口の重要性、必要性、常々御指摘いただきまして、我々としてもどういったことができるか考えてまいりました。

 そうしたこともありまして、内閣府においては、令和五年度、六年度、二か年事業といたしまして、障害者、事業者、地方公共団体などからの相談に対して、内閣府が直接適切な相談窓口につなぐ役割を担う、そういった相談窓口を試行してみて、その効果、課題などについて把握することにしたい、そういったことを目的とする事業を実施することとしております。

 どうぞ引き続き御指導いただければ幸いでございます。

宮路委員 障害者団体の皆さんの期待も大変高まっております。適切な対応を改めて求めたいと思います。

 質問が残ってしまいましたが、答弁を御用意いただいた皆様方におわび申し上げますとともに、質問の機会をいただいた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

大西委員長 次に、平沼正二郎君。

平沼委員 おはようございます。自由民主党の平沼正二郎でございます。

 質問の機会をいただきましたこと、心より御礼を申し上げます。

 まず初めに、トルコ南部に発生した地震によりお亡くなりになった方々に心より哀悼の意を表します。また、被害に遭われた方々に対してはお見舞いを申し上げますとともに、政府においては引き続き全面的な支援を是非ともよろしくお願いを申し上げます。

 さて、質問に入らせていただきます。

 昨今、防衛力の強化及び消費者対策拡充において、財政に関する議論が多くされるようになってまいりました。非常に世間の関心も高いこの二つのテーマでございますが、この二つのテーマの裏になくてはならないのが、やはり私は経済であると思っております。

 防衛力の強化に当たっても、我が国の経済的優位性が高ければ、実質的な兵器での抑止だけでなくて、経済的優位性による相手国の抑止というのも可能であると考えております。

 また、少子化においても、経済が好調に循環し、所得も増え家計が潤えば、将来不安が解消して、結婚しようとか子供をつくろう、またもう一人子供をつくってみようかとか、そのようなことになるかなと思っております。私も、八歳と三歳の子供の子育てをしておりますので、その好循環があればもう一人増やしてみようかと、そういうことも大変実感しているわけでございます。そうしたことからも、やはり日本の強い経済力を取り戻していかなければなりません。

 現在、岸田政権においては、新しい資本主義を実現しようということで様々な施策を行っております。賃金アップ、企業の投資拡大、そして、スタートアップなどの今まで日本にはなかった新しい成長分野を創出して、そして、そこで得られた新たな富をまた分配し、更なる成長を促していくというサイクルを生み出す。つまり、このようなプラスサイクルを生み出していくことこそが、岸田総理のおっしゃる新しい資本主義の一つのものではないかなと思っております。

 そして、その上でお伺いしたいのが、経済成長とセットになっているのが、やはり財政の話でございます。経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして財政健全化に取り組む、その順番を間違えてはならないとかねてから岸田総理はおっしゃっていると思いますけれども、岸田内閣の言う、成長と分配の好循環を生み出し、経済を活性化した後に財政健全化に取り組むという認識でよいか、後藤大臣にお伺いいたします。

後藤国務大臣 経済財政運営の基本は、従来から申し上げてきたとおりでありますけれども、今委員御指摘のとおり、経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして財政健全化に取り組んでいくというものでございます。この基本に立って、物価高など足下の経済状況に機動的に対応するとともに、歳出歳入両面の改革を続けております。

 引き続き、必要な政策対応に取り組み、経済の再生を図るとともに、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることのないように、責任ある経済財政運営を行ってまいりたいと思います。

平沼委員 ありがとうございます。改めて再認識をさせていただきました。

 後藤大臣、こちらで大丈夫ですので、退室いただいて結構です。

 であれば、経済成長をしっかりとやっていくというのが私は第一義であると捉えておりますけれども、しかしながら、やはり財政の担保も必要であるという主張も根強くあると認識をしております。

 その上で、先般発表されました内閣府における今後の指針に関してお伺いをいたします。

 内閣府の試算、中長期の経済財政に関する試算によると、二〇二二年度の税収は六十八・四兆円で、当初予想していた六十五・三兆円から三・一兆円ほど上振れをしております。この上振れの主な要因は何であると考えていらっしゃいますでしょうか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の中長期の経済財政に関する試算におきましては、二〇二二年度の税収、御指摘のとおり、令和四年度第二次補正予算における補正後税収である六十八・四兆円を反映してございます。この六十八・四兆円に関しましては、当初予算における六十五・二兆円から三・一兆円上振れてございます。

 その要因に関しましてでございますが、見積りの土台となった令和三年度の税収が決算において上振れをしたという、いわゆる土台増が一つでございます。それと、足下の課税実績、雇用、賃金の伸び、企業業績の見通し、これらを踏まえまして行ったものということで認識してございます。

平沼委員 ありがとうございます。

 先ほど御説明いただいたとおり、上振れがあるということで、そこで、内閣府が発表された中長期の経済財政に関する試算のベースラインのケースでは、二二年度の税収が先ほど申し上げたとおり六十八・四兆円、二七年度には七十二・七兆円となります。今後五年間の試算では、税収が四・三兆円ほど増えるということが示されております。

 そして、財務省が月次公表している租税及び印紙収入、収入額調一覧を基に、既に実績が分かる二二年四月から二二年十二月までの税収の前年比を計算すると、二二年四月から十二月の税収は、平均で前年比一一・四%ほど拡大をしております。まだ統計が公表されていない今後の二三年の一から三月の税収は、二二年四月から十二月の増加率で増加すると仮定すると、実績ベースの月次税収額、二二年四月から十二月の実績と、二三年一月から三月の想定した税収を合計すると、二二年度の税収が七十三・〇兆円程度になります。これは、内閣府の試算、六十八・四兆円より四・六兆円多い計算になります。

 この七十三兆円をベースに将来の推計をもう一度することが私は適切ではないかなと考えておりまして、その場合、今後五年間で、内閣府の試算どおり税収が、先ほど申し上げたとおり四・三兆円程度拡大すると考えますと、二七年度の税収というのは七十七・三兆円になります。そうすると、修正した二七年試算、七十七・三兆円と、現在の試算、六十八・四兆円の差が約八・九兆円となるわけですけれども、そうすれば、将来の防衛費の倍増に必要な四から五兆円というのを優に上回るような税収が見込まれるという見方もあるわけですけれども、この辺りの試算予測に基づく見解をお伺いできますでしょうか。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 中長期の経済財政に関する試算におきましては、令和四年度に関しましては先ほど申し上げたように二次補正予算における補正後税収、令和五年度の一般会計税収に関しましては令和五年度予算案、政府案の税収見積りを反映してございます。令和六年度以降の一般会計税収に関しましては、マクロ経済の姿と整合的な形で推移するというふうに見込んでございます。

 委員御指摘の更なる税収の上振れに関しましては、令和四年度の年度全体を通じた税収といいますのは、今後の経済動向等に影響されます。足下の税収実績はございますが、一方で、世界的な金融引締めに伴う海外景気の下振れといったリスクもございます。こうしたこともございますので、現時点で確たることは申し上げられないということで御理解いただければと思います。

平沼委員 ありがとうございます。

 様々な今後の予測というのも、ぶれる部分もあるかなとは推察をいたしております。

 その上でもう一つ、次に、六十年償還ルールに関してお伺いいたします。

 この度の防衛費の拡大において、六十年償還ルールが防衛費財源確保において非常に議論になっております。もし六十年償還ルールを撤廃すると、政府説明では国債の信認が失われるとの説明になっておりますけれども、具体的にはどのような状況が生まれることを想定しているのか、教えていただけますでしょうか。

石田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国債の信認が失われる状況ということでございます。一般的には、市場において、将来にわたる国債の償還可能性や債務の持続可能性などの点で財政に対する信認が失われる状況を指しております。具体的には、市場からの円滑な調達が困難になったり、調達コストが上昇するといった状況が考えられます。

 その上で、御指摘の六十年償還ルールについて申し上げれば、国債の償還財源を確実に確保しつつ、償還のための財政負担を平準化するといった観点から定められているものです。財政健全化の精神を体現するものとして定着したものであり、これを見直すことについては、市場の信認への影響に留意する必要があり、慎重な検討が必要と考えております。

平沼委員 信認が失われる様々な要因があるということなんですけれども、しかしながら、私が知る限り、過去、この償還ルールを停止していた期間も実はございまして、そのとき国債の信認も失われていないという現実もございます。現在と当時の状況は異なっているというのは、停止した時期と現在が異なっているというのは私も認識をしておりますけれども、私としては、やはり、本質問の最初にさせていただいたとおり、経済と財政の順番を間違ってはならないと思っております。

 まだまだ企業の投資も伸び悩み、家計への賃金アップもこれから、そしてコロナから本格的に脱却してしっかり経済等を回していこうというところにおいて、増税の話というのが前面に出てきてしまうと、せっかく生み出そうとした好循環、さっき私も申し上げたとおり、好循環のプラスのサイクルというのがやはりちょっと頓挫をしてしまうような状況を生み出しかねないかなと思っております。

 補正予算等で措置した、経済成長を後押しするようなアクセルに対して、増税の見込みというのは、ブレーキをかけるような状態でございます。アクセルとブレーキというのはやはり一緒に踏めないわけでございますから、引き続き様々な工夫と議論を重ねて、経済と財政の運営を是非ともお願いをいたしたいと思っております。

 済みません、質問の順番を変えさせていただきます。先ほど財政の中でも触れましたけれども、少子化対策について伺います。

 少子化対策については、内閣委員会から特別委員会へメインの議論は移ったと認識をしておりますけれども、内閣府が扱う重要な案件であると思いますので、質問させていただきます。

 少子化対策においては、子供を持つことが負担にならないというマインドを持てることが非常に重要ではないかと考えております。児童手当や教育費用の無償化など、直接的な手当ても当然重要だと認識をしております。その中で、私は是非、家計の負担の大きな部分を占める住居に関する観点も少子化対策の中に入れていただきたいと思っておりますが、現在の少子化対策における住まいに関する観点はありますでしょうか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 若者、子育て世代が結婚、出産、子育てに適した住宅を確保しやすい環境を整備すること、これは少子化対策としても重要であると認識をしております。

 国土交通省においては、若者、子育て世代が良質な住宅を取得する際の補助や融資金利の引下げなどの支援を行っております。また、子供がいることを理由に入居を拒まれない、良質な賃貸住宅の供給の拡大などにも取り組んでいるものと承知をしております。

 内閣府としては、結婚に伴う家賃、引っ越し等の経費の支援などの地方公共団体が行う取組を、地域少子化対策重点推進交付金によって支援をしております。この交付金については令和四年度第二次補正予算において前年度の約三倍に増額をし、結婚に伴う家賃、引っ越しの経費の支援に関するメニューについては、対象世帯の所得要件を緩和したところであります。

 子供政策の強化に関するたたき台の取りまとめに当たっては、社会全体の意識を変え、子供、子育てを応援するものとなるよう、個別の施策ではなく、ライフステージを通じた施策のパッケージを示す必要があると考えております。今後、幅広く議論を進め、様々な御意見に耳を傾けながら、三月末を目途として、子供、子育て政策として充実する内容を具体化するべく、力を尽くしてまいりたいと思います。

平沼委員 ありがとうございます。

 パッケージの中に是非、住宅という観点もしっかりと入れていただきたいなと思っております。

 和田副大臣、こちらで結構でございます。ありがとうございます。

 済みません、またちょっと質問の順番を入れ替えさせていただきます。次に、セキュリティークリアランスに関してお伺いいたします。

 昨年、経済安全保障法が成立いたしましたけれども、現在法案からは漏れているセキュリティークリアランスを私はしっかりとやるべきだと思っております。今後、半導体、将来的には光電融合、量子コンピューターなど、官民一体となって国家的に推進しなければならない技術や産業がありますけれども、国内だけではなくて、同志国とも連携をしなければならないことが多くなってくると思います。その中において、やはりセキュリティークリアランスが整備されなければ、日本がデカップリングされるような可能性もあるわけでございます。

 セキュリティークリアランス導入に当たって、現状の障壁は何であるのか、改めてお伺いさせていただきたいとともに、それに伴う取組の意気込みをお聞かせくださいますか。

高市国務大臣 セキュリティークリアランスにつきましては、昨年末に閣議決定した国家安全保障戦略においても、「主要国の情報保全の在り方や産業界等のニーズも踏まえ、セキュリティ・クリアランスを含む我が国の情報保全の強化に向けた検討を進める。」と記されました。重要な課題だと認識しております。

 先進諸国では、一定の経済に関する事項を含む重要情報を取り扱う者にセキュリティークリアランスを付与する制度がございます。日本では同様の制度となっていないこともあり、海外における政府調達や民間企業間の取引においても、日本企業が不利な状況に直面するケースもございます。例えば、日本企業の従業員にセキュリティークリアランスがないために、ビジネスに必要な重要情報を得られないといった例もございます。

 今後は、日本企業がビジネスチャンスを失ったり、共同研究から外されるようなことはあってはならないと考えております。

 クリアランスという制度の性質上、検討すべき論点があるということ、それから、友好国との間で通用する制度に仕上げなければならないということから、今、丁寧に議論を進めております。これまでも、民間を含む幅広い関係者から御意見を伺ってまいりました。さらに、今後、有識者の方々のお知恵も賜りながら、望ましい制度を可能な限り速やかに検討してまいります。

平沼委員 高市大臣、ありがとうございます。是非ともしっかりと推進をしていただきたいなと思っております。

 高市大臣、こちらで結構でございます。ありがとうございます。

 次に、北朝鮮のミサイル発射の問題についてお伺いをしようかと思っております。

 持ち時間がちょっと少なくなってまいりましたので、少し飛ばしていきながらさせていただければと思いますけれども、二〇二二年において、北朝鮮が我が国に向けた、発射したミサイルの発射回数と本数を改めてお伺いさせていただけますでしょうか。

田部井政府参考人 お答えいたします。

 防衛省として発表いたしました昨年一年間の北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、弾道ミサイルであった可能性があるものを含め三十一回、少なくとも五十九発に及んでおります。

 金正恩委員長の父親であります金正日氏が最高権力者としての地位を継承してから死去するまでの間、発射した弾道ミサイルの数は十六発でございましたが、北朝鮮は昨年一年間でこれを大きく上回る数の弾道ミサイルの発射を強行いたしました。これらの中には、極超音速ミサイルと称するものや、変則軌道で飛翔するもの、我が国上空を通過したものや、新型のICBM級弾道ミサイルなど、様々なものが含まれます。

 一連の発射を通じ、北朝鮮がミサイル関連技術、運用能力を急速に進展させていることは間違いございません。

 北朝鮮は一貫して核・ミサイル能力を強化していく姿勢を示しており、今後も、各種ミサイルの発射や核実験の実施など、更なる挑発行為に出てくる可能性があると考えているところでございます。

 以上でございます。

平沼委員 かつてない頻度と回数で行っているということで、中には日本の上空を通過するといったものもありまして、なかなかこれはほかの国では考えられないような、非常に危機的な状況であると思っております。

 そして、ミサイル開発、また核開発なども継続して行っておりますけれども、これを維持している資金源が北朝鮮において一体どうなっているのか。北朝鮮のGDPというのは推計で三から四兆円ぐらいではないかなと推察されておりますけれども、その中においてかなりこの開発費などが占めるのではないかと思っております。

 こういったものの資金源の一つとして、今、北朝鮮は非常に、暗号資産、こういったもののハッキングによってその資金を得ているのではないかと推察されているわけでございます。その中には、一部発表されているものでは、新しい、DeFiと言われるような分散型金融取引、こういったものから不正に資金取得をしているのではないかという疑いもかなりかかっているわけでございます。

 なかなか今こういった取締りというのも、政府の方も金融庁を含めていろいろ頑張っていただいているとは認識をしております。しかしながら、やはり、こういったところをしっかり止めていかないといけない。

 先ほど述べたようなDeFiのような取引は、海外のサービスを利用するというのがメインとなっているか、ほぼそれしかないという現状でございます。よって、このような北朝鮮の不正資金取得を防ぐには、各国の連携が私は非常に重要になってくると思っております。現実、このような暗号資産などにおいて不正に資金を取得しているという実態があるのならば、各国と連携して、北朝鮮の暗号資産関与を徹底的にたたくなどの働きかけを是非行っていただきたいと思っております。

 こうした暗号資産関与に関する制裁強化を徹底し、北朝鮮に対する実質的な制裁を強化し、これらを拉致解決に向けた交渉のカードに使うということなども考えられます。

 今年から日本は非常任理事国となっております。拉致問題解決に向けて、国連安全保障理事会での積極的な関与を期待したいと思っておりますけれども、政府の意気込みをお聞かせ願えますでしょうか。

秋本大臣政務官 お答えいたします。

 北朝鮮が前例のない頻度と態様で弾道ミサイル発射を繰り返していることは、我が国の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であるとともに、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものでもありまして、断じて容認できません。

 我が国は、安保理理事国として、拉致問題を含む北朝鮮への対応に関する議論に積極的に参画し、米国を始めといたします他の理事国と緊密に意思疎通を行いつつ、安保理が本来の役割を果たしていくよう努力してまいります。

平沼委員 政務官、ありがとうございました。是非ともよろしくお願いを申し上げます。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。

 今日は、共生社会担当大臣、また男女共同参画担当大臣である小倉大臣を中心に質問をさせていただきたいと思います。小倉大臣には、是非、思いを込めて、熱情を込めて、御自身の言葉も交えて御答弁いただければというふうに思います。よろしくお願いします。

 先日の大臣所信におきまして、小倉大臣は、多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にして、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向けて取り組んでいきたい、こういった旨の発言をされました。

 多様性を認め合っていくことが強靱な社会をつくっていくことになります。そういった社会こそが、経済的にも安全保障的にも強靱なものになります。この多様性に相反するもの、それが差別や偏見であります。

 小倉大臣は、所信表明におきまして、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない、こうも述べられました。

 そこで、小倉大臣に伺います。そもそも、なぜ差別や偏見は許されないのか、どのような悪影響があるとお考えか、お伺いいたします。

小倉国務大臣 お答えをいたします。

 まず、差別とは、正当な理由なく劣ったものとして不当に扱うこと、また、偏見とは、偏った見解、中正でない意見などとされます。

 他者を差別することや他者に対して偏見を持つことは、共生社会の実現を阻害するものと考えております。こうしたことから、政府においては、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないというものであります。

 人は誰もが人と違うものだと思っております。私自身も、やはり四十年の人生を振り返ってみますと、人と違うところはたくさんありますし、人と違うことによって悩んだり苦しんだりすることもありました。そういう意味では、こういった差別や偏見というのは人間誰しにも降りかかるものでありまして、こういった差別や偏見、不当なものを助長してしまうと、やはり一人一人が生きづらい社会になり、自分の能力や思いを発揮できない窮屈な社会になってしまうと思います。

 まさにそういう社会が経済のイノベーションを損ねたりとか、あるいは国民や社会の分断を生んでしまうということでもありますので、委員御指摘のとおり、まさに多様性を尊重することが、いろいろな意味で、経済や安全保障も含めていい影響を及ぼすものと思いますし、逆に、差別や偏見に満ちあふれた国や社会というのは、経済や安全保障の面においても非常に大きな悪影響を及ぼし得るものだというふうに考えております。

國重委員 大臣、御自身の思いもこもった答弁、ありがとうございます。

 差別や偏見というのは、差別される人に不安や緊張感などの心理的負担、こういったものをもたらします。また、健康を害する行動に走る傾向を高めたりすることにもつながる、こういったことも言われております。積もり積もって、心身の健康を害して、生命さえ緩やかに脅かしていく、そういった危険性もあるというふうに言われております。また、人々を分断して、社会全体にも悪影響を及ぼします。

 ただ、差別や偏見があってはならない、そうはいっても現実にはあります。なぜ差別や偏見が生じるのか、小倉大臣はその原因についてどのようにお考えか、お伺いいたします。

小倉国務大臣 お答えいたします。

 理解の不足に起因した誤った思い込みが結果として差別や偏見に当たる言動を招き、当事者の方につらい思いをさせていることもあるんじゃないかと思っております。

 私は、当事者の方々の多くが社会生活の様々な場面において困難に直面している大きな原因として、性的指向、性自認の多様性に関する理解が国民に広く普及していないことが考えられるのではないかというふうに思っております。

國重委員 今日は時間の関係で詳しくは言いませんけれども、差別や偏見の原因については、ステレオタイプによるカテゴリー化、一般化を始め、社会心理学においてこれまで様々な研究がされております。私も、今日の質疑に臨むに当たって書籍を数冊読ませていただきました。原因の把握なくして改善はないというふうに思っております。

 是非、そういった心理的なメカニズムについて、担当大臣である小倉大臣については、より深掘りをして見識を深めていただいて、これからの施策に当たっていただきたいというふうに思います。

 その上で、差別や偏見というのは必ずしも悪意から生じるものではなくて、先ほど大臣のおっしゃったとおり、理解不足による誤った思い込み、こういったものから生じるものも多いと思います。では、そのような差別や偏見をなくしていくためにどのような取組が必要と考えるか、お伺いします。

小倉国務大臣 國重委員、この質疑に臨むに当たってかなり勉強されたということでございますので、心理的な原因も含めて、是非私どもに御教授をいただけるとありがたいなというふうに思います。私どもも、しっかりと調査研究をしてまいりたいと思います。

 差別や偏見をなくすための方策ということでありますが、社会において性的指向や性自認に関する理解増進を図ること、これが差別や偏見をなくし、当事者の困難の解消につながるものと考えております。

 具体的に申し上げれば、政府においては、性的指向、性自認について、職場や学校などを始めとして社会での理解増進に向けた啓発活動の充実、適切な相談対応や人権救済等を行っていく必要があると考えており、それぞれの分野を所管をする各府省庁において適切に対応されてきた、このように承知をしております。

國重委員 性的指向や性自認に関する理解増進をしっかりと図っていく、このことは重要であります。ただ、その前提として、まずは正しい知識、誤りのない情報をしっかりと提供していくことが重要になります。

 そこで、次は政府参考人に伺っていきたいと思います。

 性的指向とは、恋愛や性愛の対象がどの性別に向かっているかを示す概念です。また、性自認とは、心の性、つまり、自分が自分の性別をどう認識しているかということですけれども、このような性的指向や性自認は個人の趣味や嗜好なのか、そうではないのか、お伺いします。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 性的指向や性自認は、共に、本人の意思で選んだり変えたりすることができるものではなく、個人の趣味や嗜好の問題ではないと承知しております。

國重委員 趣味や嗜好ではないということでありました。

 では、同性愛は病気なのか、また治療の対象になるものなのかどうなのか、お伺いいたします。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 性的指向や性自認がいわゆる典型とされる在り方に当てはまらないことは、医学的には病気として取り扱われず、治療の対象となるものとはされていないと承知しております。

國重委員 そのとおりですね。

 世界保健機関でも、一九九二年に、同性愛を疾病分類から削除するとともに、同性愛はいかなる意味でも治療の対象にならない旨宣言をしております。また、我が国の精神医学上も、同性愛を精神疾患とはみなしておりません。

 その上で、更に確認をしたいと思います。

 現在、我が国の精神医学に関わる大部分の専門家団体また心理学の主たる見解では、性的指向は自らの意思にかかわらず決定される個人の性質であると言え、性別、人種などと同様のもの、また人の意思によって選択、変更できないものとされております。

 これについて政府も同様の見解かどうか、お伺いします。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 性的指向や性自認は本人の意思で選んだり変えたりすることができるものではなく、その意味で、性別や人種などと同様のものであると認識しております。

國重委員 そのとおりだと思います。

 人事院のホームページを見させていただきました。この中にも、「専門家によると、「性的指向・性自認は、人間一人ひとりの人格に不可欠な「性のあり方」であるとともに、性に関する尊重すべき個性であり、趣味・嗜好の問題ではなく、また、変更が難しく、変更する必要もないもの」」、このように記載をされております。

 つまり、同性愛、これは気づくものであって、なるとか選ぶものではありません。例えばストレートの男性が自然に女性を好きになるのと同じことで、これは、やめろと言われても、またやめたいと思っても、やめられるものではないということであります。

 このことは、私、当事者の方から伺ってまいりました。私の地元、大阪市の淀川区というところなんですけれども、そこは全国で初めてLGBT支援宣言というのを出したところでありまして、私も、議員になった当初、それほど、この性的マイノリティーに関する知識、必ずしも深いものではありませんでした。ただ、区役所の中、また様々な場所で、そういった当事者の方々と懇談をし、またお話を聞かせていただく中で、少しずつ理解を深めてきたところであります。

 性的指向や性自認は、生まれながらの個性です。異性愛、同性愛のどっちが上とかどっちが下とか、そういったことではなくて、優劣のない、等しい価値の中に違いがあるだけです。

 にもかかわらず、特定の性的指向や性自認についてのみ否定したり抑圧したりする、こういったことは、生まれながらのその人の個性を否定することであって、その人の存在自体を否定することにもつながります。

 一方で、悪意はないんだけれども、正確な知識がないがゆえに、無邪気に当事者を傷つけるような発言をしてしまっている人たち、またそういうケースもあります。

 こういったことは、加害する側が誤りのない情報を身につければある程度防げるものだと思います。だからこそ、やはり正しい知識の提供、適切な理解の促進に力を入れていくことが極めて重要であると思っております。

 これに関して、これまで超党派で理解増進法の議員立法が検討をされてまいりました。我々公明党としても、この法案成立に最大限汗をかいていきたいと思っております。また、私自身も精いっぱい努力をしていきたいと思っております。G7首脳会議に先立って法案を成立させて、日本としての意思を明確に示していくべきだと私ども公明党も思っております。

 そこで、小倉大臣にお伺いいたします。

 これは最終的には議員立法でやるものですけれども、小倉大臣はこの法律を必要と考えるかどうか、お伺いいたします。

小倉国務大臣 今までの國重議員のやり取りにあったLGBTQプラスに関する基本的な認識であっても、まだ国民の皆様に広く広がっていないというような思いを感じております。

 だからこそ、先ほど申し上げたように、政府といたしましても、啓発活動の充実、相談対応、さらには人権救済等の取組を一層強化をせねばならないというふうに考えております。

 その上で、LGBT理解増進法につきましては、各党において提出に向けた準備を進められていると承知をしております。御党及び國重議員の御努力を多としたいと思いますが、政府といたしましては、先ほども申し上げたように、まずは、こうした議員立法の動きを尊重しつつ、しっかり見守っていきたいというふうに考えております。

國重委員 議員立法ですから、大臣としてはそのように答えざるを得ないのかなと思います。

 その上で、性的マイノリティーに関する理解促進は、本来、法律があろうとなかろうと進めないといけないものです。そのことは政府も認識してきました。

 例えば、二〇一二年の改正自殺総合対策大綱にはこのように書かれてあります。自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティーについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、理解促進の取組を推進する、また、教職員の理解を促進する、こういったことが明記をされております。これは昨年十月の改定でも引き継がれています。そして、法務省、また厚労省、文科省などがそれぞれの分野で理解促進の取組を進めてきたこと、こういったことも、私、それぞれ聞いております。

 その上で、先ほど大臣もおっしゃったとおり、残念ながら、正確な理解は大きく広がっているとは言えない、民間や自治体、様々な調査結果によってこういった現状が浮き彫りになっております。

 施策を総合的かつ効果的に推進するために、やはり政府として、旗振り役となる、連絡調整窓口となる担当大臣や組織を定めていくことが重要になってくると考えます。このことにつきましては、昨年六月に、我が党の性的指向と性自認に関するプロジェクトチーム、同性婚検討ワーキングチームで松野官房長官にも申入れをさせていただいたところであります。

 これにつきまして、小倉大臣の見解を伺います。

小倉国務大臣 政府におきましては、性的指向、性自認について、職場や学校などを始めとして社会での理解増進に向けた啓発活動の充実、適切な相談対応や人権救済等を行っていく必要が、先ほど申し上げたとおり、あると考えておりまして、それぞれの分野を所管をする各府省庁において、現時点においても適切に対応されていると承知をしております。

 その際、確かに、広範に及ぶ対応でありますがゆえに、御指摘のとおり、関係府省庁がお互いに協力、連携することにより政府全体として取組を進めていくことは大変重要であるとも考えております。

 言及のありました理解増進法案におきましては、関係行政機関の施策の総合的かつ効果的な推進のための仕組みや、内閣府の所掌事務に基本計画の策定、推進を追加すること等の検討があったと承知をしておりまして、こうしたものも含めて、先ほど申し上げた議員立法の動きを尊重しつつ、政府としても見守っていきたいというふうに考えております。

國重委員 議員立法の成立に向けては我々努力をしてまいりますけれども、見守るというか、この法律は成立していきますし、また、法律が仮に、今みたいな状況にならなくて、なかったとしても、やはりそういった司令塔となる組織また担当大臣というのは私は必要だと思いますので。しかも、私、この分野については、現在の共生社会担当、男女共同参画担当大臣である小倉大臣が担当するのがいいのではないかと個人的には思っております。是非、着々と準備を進めていただきたいというふうに思います。

 本年六月には、G7広島サミットにおける男女共同参画・女性活躍担当大臣会合が栃木県の日光市で開催をされます。日本語では男女共同参画大臣ですけれども、英語だとジェンダー平等担当大臣、男性と女性という性別だけではなくて、性的マイノリティーを含めたジェンダー平等と理解をされているというふうに聞いております。小倉大臣もそういった認識であると、去年の十月ですか、記者会見の折にそのようなことを言われたというふうに聞き及んでおります。

 昨年ドイツで行われたG7エルマウ・サミット、その成果文書であるG7首脳コミュニケでは、ジェンダー平等のパートでLGBTQIプラスにも言及をされております。

 そこで、小倉大臣、今回のG7男女共同参画・女性活躍担当大臣会合においても、性的マイノリティーについての議論を深め、性的マイノリティーに関する理解の促進や権利擁護の重要性について世界にしっかりと発信していくべきと考えますが、小倉大臣、いかがでしょうか。

小倉国務大臣 まず、現行の第五次男女共同参画基本計画においては、性的指向、性自認を始め障害、国籍等、多様な属性の人々の人権が尊重される社会をつくることは、それ自体が極めて重要なことであると同時に、結果として、女性が複合的な困難を抱えるリスクが減ることにもつながるものと位置づけております。

 政府といたしましては、この基本計画に基づき、男女共同参画の視点に立ち、多様な困難を抱える全ての女性等に対するきめ細かな支援を行うことにより、女性が安心をして暮らせるための環境整備を進めているところであります。

 御指摘のありました、本年六月に栃木県日光市で開催をされますG7男女共同参画・女性活躍担当大臣会合におきましては、これまでに私自身が実施をしたG7各国の関係閣僚との意見交換等を踏まえて、女性の経済的自立、コロナ禍で顕在化した課題への対応を中心的なテーマとして議論を行いたいと考えております。

 國重議員がおっしゃいましたとおり、昨年の十月に私がドイツのG7に参加をしましたときに、当然、英語で言えばミニスターズ・フォー・ジェンダーイコーリティーでございまして、女性の問題だけではなくて、様々な性的マイノリティーの方についてもステートメントも含めて言及されたところであります。しっかり、これまでのG7プロセスを、本年の議長国である日本としても引き継いでいかなければならないと思っております。

 担当大臣会合の詳細につきましては現在検討中でありますが、今申し上げた観点も踏まえつつ、性的マイノリティーを始め様々な市民社会の声を反映した議論を行うことができるよう、プロセスを進めていきたいと考えております。

國重委員 世界が日本を注目しております。大臣も、先日の所信表明において、冒頭の共生社会のパートで、あえてこの性的マイノリティーのことを特出しされて述べられております。大臣の本気度、これを表したものと私は感じておりますので、是非、G7の会合におきましてもよろしくお願いいたします。

 その上で、性的マイノリティーの課題の解決を考える上で、当事者の声を聞いていくということは不可欠であります。G7の男女共同参画・女性活躍担当大臣会合までまだ時間もあります。もちろん、この会合に限る話ではありませんけれども、小倉大臣にはこれを契機に、当事者の生の声、有識者の意見、また先進的な取組をしている自治体の声など、現場の聞き取りに更に取り組んでいっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

小倉国務大臣 政府としては、共生社会の実現に向け、引き続き、様々な国民の声を受け止め、しっかりと取り組んでいきたいと思います。その際、御指摘のとおり、当事者を含め社会各層の様々な御意見を受け止めることが大切であるとも考えております。具体的に誰からどのような形で話を伺うかについては、政府全体として検討を進めてまいりたいと思っております。

國重委員 どのような方から聞き取りをするというのは、しっかり検討していただいたらいいと思うんですけれども、その上で、やはり大臣もG7の会合に参加されるわけですので、少なくとも大臣はしっかりとそういった現場からの聞き取りをしていっていただきたいと思います。当事者がどんなことに困っていて、どんなことに苦しんでいるのか、この急所を外して、本当の意味での施策はあり得ないと思います。

 政府、自治体で今様々な取組が進む一方で、先ほど申し上げましたとおり、性的マイノリティーの方々への理解が大きくは深まらず、権利が守られていない、こういった状態は、単なる国内問題のみならず、国際社会における日本の成長戦略にとっても大きな障壁になっています。

 例えば、国際金融都市としての地位を確立するに当たって、日本以外のG7では認められている性的マイノリティーの権利擁護の仕組みがないことが、魅力的な投資先また勤務先として日本が選ばれることの障壁となっております。このことは、在日米国、欧州、またオーストラリア商工会議所からも意見書として表明がされております。政府としてしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。

 その上で、これまでるる述べてきましたとおり、性的指向や性自認はあらゆる人に共通する事項であります。だからこそ、性的マイノリティーの課題の解決には、少数者に権利を認めるとか与えるとか、こういった視点ではなくて、元々同じ権利があるんだということを前提に、人権保障を阻む障害を除去するという視点で取り組むべきものと考えます。小倉大臣、いかがでしょうか。

小倉国務大臣 お答えします。

 一番最初の質問で申し上げたとおり、人はそれぞれみんな違うものであります。その違いによって、あらゆる人が悩みを抱いたり苦しんだりするわけでありまして、まさに、全ての人に降りかかる差別や偏見といったものに対して、ひとしく、何か障害があれば除去していくのが我々の役割ではないかというふうに思っております。

 その意味では、共生社会は、全ての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利、あるいは人間が人間らしく生きる権利で生まれながらに持つ権利が尊重される社会でありまして、特定の方々を理由なく特別扱いするものであってはいけないと思っております。

 差別や偏見のない共生社会の実現に向けて、引き続き、様々な国民の声をしっかり受け止めながら、真摯に取り組んでまいりたいと思っております。

國重委員 二〇一一年十二月十日、当時アメリカの国務長官であったヒラリー・クリントンさんが、ジュネーブの国連ヨーロッパ本部で性的マイノリティーの人権についてスピーチをされました。こういった内容です。

 世界人権宣言が採択されたときには、LGBTの課題については、それが人権課題であるとは考えられていなかった、しかし、それが人権課題であると考えるべきときとなった、そのことは、LGBTのために新しく特別な権利を創出することではなく、むしろLGBTの人たちが今までもずっと持っていた権利を尊重することを知ったと言うべきである、こういった演説でありました。

 性的マイノリティーの方たちを含む全ての人は、当然ながら、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とについて平等であります。特別な恩典として権利を与えるというのではなくて、これまで差別にさらされたり権利を制限されていた状況をなくしていく、このことこそが性的マイノリティーの人権保障である、こういった視点で取り組んでいくことが大事であると思います。

 これからの日本は、複雑な課題がたくさんあります。解決は一筋縄ではいきません。どれだけ優秀でも、同質性が高い組織だと盲点が多くなります。だからこそ、多角的な視点で解決能力を高めていく必要があります。そのためにとりわけ大事なことは、我が国の政治や行政において意思決定に関わる層がより多様性に富んだものとなっていくことが大事だと思います。

 しかし、今、そういった意思決定層は、中高年の男性が多くて、女性や若者、性的マイノリティーの方たちの割合が少ない、これが現状であります。

 意思決定をする層が、多様性に富んだもの、また多様性に寛容なものにならない限り、社会全体が大きく変わっていくことはできません。そして、多様性に寛容な社会では一人一人が感じている幸福度が高いということ、これも様々な調査で結果が出ております。

 課題先進国だからこそ、多様性を生かし、創造性と幸福度の高い社会をつくっていく、そのために、政治や行政の意思決定に関わる層が女性や若者、性的マイノリティーを含めたより多様性に富んだものとなるような仕組みや制度を構築していくべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

小倉国務大臣 私も國重議員の御意見に全く同感でありまして、やはり我が国の経済社会が長らく停滞にあえいでいた原因の一つというのが、非常に単調な社会であったのかなと思います。単調な社会であれば、リスクを十分に避けることもできませんし、新たなアイデアも生まれにくくなるということもございます。

 そういう意味では、性的マイノリティーだけではなくて、女性の活躍、あるいは幅広い年代層がその意思決定に参画をできる社会というのが大変重要だと思っております。

 女性のマネジメントにおける割合を伸ばすということにつきましては男女共同参画の第五次計画にも書かれておりますが、それに限らず、多様な社会こそが我が国の経済社会の発展のエンジンであるという認識の下で、共生社会担当、さらには男女共同参画担当大臣として、しっかりと職責を果たしてまいりたいというふうに思っております。

國重委員 多様性を生かした創造性と幸福度の高い国づくり、私もしっかりと頑張って進めてまいりたいと思います。

 以上で私の質疑を終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 立憲民主党の馬淵でございます。

 今日は、質疑の機会をいただきました。今日は、官房長官としっかりと真摯な討論をさせていただきたいというふうに思っております。

 今日は、天皇の退位等に関する皇室典範特例法に対する附帯決議に関する有識者会議の報告書について、これについて、大きくは三つ、この報告書に対しての政府の姿勢、また、国会の議論との関係性、そして三点目には報告書の内容についてという、大きくはこの三点について質疑をしてまいりたいというふうに思います。

 皆さんのお手元には、二〇一七年六月に成立いたしました天皇の退位等に関する皇室典範特例法、その附帯決議をお配りをしております。

 ここでは、この附帯決議として、一つ目に、「政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題である」ということについて、これは、「検討を行い、」、そして「速やかに国会に報告すること。」、こう記されているわけであります。ここは、まず、政府はという主語に、そして検討を行って、その結果を速やかに国会に報告するということが、この附帯決議の一つ目の、これが意思であります。

 そこで、官房長官にお尋ねをしたいんですが、二〇二一年の十二月の二十二日に、有識者会議から、この附帯決議の要請を受けた報告書が政府に提出をされ、手交され、そして国会へと報告となったわけであります。

 まず、速やかに国会に報告するということになっておりますが、岸田内閣は有識者会議の報告書を受け取った後にどのような処理を行ったのか、すなわち、内閣でその内容を吟味したのか、お答えいただけますでしょうか。

    〔委員長退席、神田(憲)委員長代理着席〕

松野国務大臣 馬淵先生にお答えをさせていただきます。

 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議は、菅内閣時の令和三年三月から議論を開始し、同年七月の第十回会議において、「今後の整理の方向性について」を取りまとめました。

 岸田内閣発足後、同年十一月の第十一回会議には岸田総理と私も出席をし、岸田総理から、この方向性を基に、最終的な取りまとめに向けて引き続き十分に議論していただきたい旨述べ、有識者会議も、「今後の整理の方向性について」に基づいてその後の議論を進めたと承知をしており、同年十二月二十二日の第十三回会議で報告書を取りまとめ、岸田総理に手交しました。

 政府としては、この報告書を尊重することとし、令和四年一月十二日に岸田総理から国会に報告をしたところであります。

馬淵委員 総理に手交され、そして一月十二日に国会に報告、すなわち、十二月の二十二日から一月の十二日という期間でありました。

 私が伺っているのは、総理に手交されてからのプロセスを聞いています。すなわち、これは総理は確認し、検討されたんでしょうか。そして、所管のまさに松野官房長官は検討されているわけでしょうか。更に申せば、長官は総理とこの内容について話し合い、あるいは検討したという事実があるんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 有識者会議の報告書は、先ほどお答えしたような経緯で取りまとめられたもので、バランスの取れた内容となっていると判断されるものであります。これは総理を始め官邸内での議論の下に得た話でありますけれども、安定的な皇位継承を確保するための方策については最終的には国会で御議論いただくことになることも踏まえて、政府としては、その報告書を尊重して、国会に提出することが適切であると考えたところであります。

馬淵委員 繰り返しお尋ねです。

 バランスの取れた報告書ということを判断された、すなわち、内容について吟味し、そして検討した結果、報告されたということでよろしいんでしょうか。

松野国務大臣 先生の御指摘のとおりであります。

馬淵委員 検討された結果、この内容についても検討された結果、国会へ報告されたという御答弁をいただきました。

 その上で、改めて確認をしますが、重要な施策は閣議決定で決められる、ここで決定するということが多く行われます。この有識者報告書については、先ほど官房長官のお話からも尊重するというお言葉がありましたが、これは閣議決定はされておりません。これはどういった理由からでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 有識者会議の報告書は、政府としては、この報告書を尊重することとし、岸田総理から国会に報告したものでありますが、先生からの御指摘のとおり、政府として閣議決定は行っておりません。

 有識者会議については、附帯決議に示された課題について、皇室制度や歴史の専門家などのお考えをお聞きしながら、予断を持つことなく議論を行っていただくのにふさわしい、高い識見を有する方々に様々な分野からお集まりをいただきました。このような方々に十三回にわたって大変丁寧に議論を尽くしていただき取りまとめられた報告書は、バランスの取れたものとなっており、政府としてはこれを尊重することとしたものであります。

 いずれにいたしましても、具体的な制度内容をどのようなものとするかは、国会での御議論を経て、今後検討されていくものと考えており、政府としては、その結果を踏まえて必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

馬淵委員 今のお話ですと、有識者会議の中での議論ということでの内容である、そして、これは、予断を持ってということよりも、尊重して国会に報告したと。しかし、これはもちろん検討されたと先ほど答弁されました。

 つまりは、閣議決定をなしていないということは、この報告書の内容が確定ではない、検討の、その中途段階だということから閣議決定は行っていないという理解でよろしいんでしょうか。

松野国務大臣 国会に提出をさせていただきましたこの報告書に関しましては、国会の御議論に資するものという性格のものと理解をしております。そのために、閣議決定も行わなかったということでございます。

馬淵委員 ありがとうございます。

 つまりは、政府は、中身を検討し、もちろん中身のことはよく承知をしている、しかし、予断を持ってそれを閣議決定とするのではない、すなわちは途中段階、国会の議論に委ねているんだということを今、官房長官、御答弁の中でおっしゃったということになりますね。よろしいですね。それでよろしいですね。

松野国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、国会に提出をさせていただきましたこの報告書は、国会で御議論をいただくに当たって、それに資するようにという趣旨で提出をさせていただいたものであります。

馬淵委員 その理解でいいという御答弁をいただいたというふうに理解いたします。

 そして、その上で、この附帯決議には、先ほど、冒頭私が読みましたように、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題である」との記載があります。

 このような先延ばしすることはできない重要な課題というのは、当時、安倍政権下で、また前総理である菅総理が官房長官時代に、この附帯決議というのは、立法府の総意を受けて、私もその一員として、この内容について、附帯決議、これは詳細に政府とも詰めました。これは、速やかに、まさに先延ばしできない課題だという認識は当時からもあったわけであります。

 しかしながら、この附帯決議から六年が経過しようとしている。政府としては、まさに先延ばしできない課題だということであれば、国会に委ねるとしても、その期限はいつまでと考えておられるんでしょうか。お答えください。

松野国務大臣 附帯決議におきましては、政府の報告を受けた場合、「国会は、安定的な皇位継承を確保するための方策について、「立法府の総意」が取りまとめられるよう検討を行うもの」とされておりまして、現在、衆参両院議長の下で検討が行われているものと承知をしております。

 国会の御議論、また立法府の総意が取りまとめられ、政府として適切に対応してまいりたいと考えております。

馬淵委員 つまりは、お手元に配った附帯決議、この一の段階は終えて、現在は二、「一の報告を受けた場合においては、」というところで、国会での議論、すなわち立法府の総意がまとめられるよう検討を行う、この段階に入っているんだ、こういう理解でよろしいでしょうか。

松野国務大臣 先生からお話をいただいたとおりでございます。

馬淵委員 つまりは、これは国会に委ねているというところだということだと思います。

 しかし一方で、政府としてもやはり実現化のプロセスを考えなければ、この附帯決議を決めた当時、皇族方の御年齢を考えてもということでありますから、ただ委ねたというだけではこれは意味がありません。かつての天皇の退位等の特例法に関しましても、これは当然ながら立法府もスケジュールを決めていきましたし、また、政府とそれは一体となって進めてきたわけであります。このような進め方と今回は大きく異にする進捗の状況であるというふうに言わざるを得ません。

 重ねてお尋ねをいたしますが、松野長官は、これは国会が決めることなんだから、政府としても、その期限云々というのは、これはもう全くそこに言及することはできない、そうお考えでしょうか。いかがでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 附帯決議に示されている課題への対応に係る期限については、国会においても特段示されていないものと承知をしております。

 いずれにしましても、先生からお話をいただきましたプロセス等も含め、政府としては、お尋ねの具体的な制度化のプロセスについては、国会における検討の結果を踏まえて、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

馬淵委員 これは、国会でその報告をされた後に立法府の議論を行うとして、衆参の両院の議長の下に各党各会派が集まって、この取扱いについての議論がありました。その中でも、当時も、日程が示されていないのではないかということを、我が党の野田佳彦元総理からも指摘をさせていただいたところでありました。確かに、国会でもそこには言及をされておりません。しかし、政府としても、そこは国会に委ねるんだという御答弁をいただきましたので、ここはそのことをまずは確認をさせていただきました。

 その上で、では、国会の議論、これから行われるわけですが、今行っているという状況なのかどうか、これはなかなか判断しづらいところがありますが、各党各会派での議論はあるのかと思いますが、少なくとも、立法府からの問いかけというのはございません。

 その上で、この附帯決議を御覧いただきますと、一の段階は終わり二の段階、そして、三の段階は、これは元号を改める場合についてということでありますから、この附帯決議の要請である、安定的な皇位継承の議論とは別の話であります。すなわち、この附帯決議には、一の段階、政府がそれを検討し、二の段階、国会で立法府の総意をまとめる。そして、具体的に、三の段階として、本来ならば、その実現プロセス、立法化についても当然ながら考えなければならないはずです。しかし、この附帯決議にはその記述はありません。

 過去の、皇位の、いわゆる退位の皇室典範の特例法のときは、あらかじめ、立法府の中では、法案の骨子やあるいは要綱など、これは草案を作って丁寧な議論を行いました。また、これは水面下ではありましたが、政府との様々な調整も行ってきたわけであります。

 そこで、改めてここも質問させていただきます。

 立法府の総意がまとめられた後の実現化のプロセスについては、政府としてはどう考えているのか。すなわち、前回の天皇の退位等に関する皇室典範特例法は閣法でありました。官房長官、これは、実現プロセス、この附帯決議には記述はありませんが、閣法としての提出となるのか、お答えいただけますでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 政府といたしましては、お尋ねの具体的な制度化のプロセスにつきましては、国会における検討の結果を踏まえて、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

馬淵委員 中身は、当然、国会で審議してくださいということなんでしょうけれども、すなわち、そこも委ねるという御答弁でありました。

 であれば、前回は、閣法というのがある意味既定路線であったわけです、安倍政権下では。しかし、今回はそうではないとなれば、議員立法の形式を取ることも容認されるということでしょうか。いかがでしょうか。

松野国務大臣 プロセスに関しましては、先ほど答弁をさせていただいたとおりでございますが、現在、各党各派において御議論されている方向性が総意としてまとめられて、その過程において、議員立法で進めるべきものであるか、閣法で進めるべきものであるかについても、また国会の御意見を伺いながら決めさせていただきたいというふうに考えております。

馬淵委員 国会の議論に委ねる、そして、必ずしも閣法に縛られるものではないということは、確認させていただきました。

 その上で、この報告書の内容について、今度、確認をさせていただきたいと思います。

 この附帯決議の要請である、安定的な皇位の継承を確保するためということでありますが、この報告書では、実は、お手元には配っていないんですが、まずは、皇位継承の問題と切り離して、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題だ、このように記されています。つまりは、附帯決議の要請する、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、そして女性宮家の創設、ここには全く触れずに、提言となっていないということになります。つまり、この報告書では、検討の本質が附帯決議の要請から外れてしまっている。この附帯決議の示した重要な課題について無回答になっているのではないか。

 先ほど、政府としても検討されたとおっしゃいましたが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 有識者会議の報告書においては、附帯決議で示された課題、先生から今御指摘いただきました、安定的な皇位継承を確保するための諸課題ということでございますが、皇位継承の問題と皇族数の減少の問題と整理した上で、皇位継承につきましては、今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、次世代の皇位継承資格者として悠仁親王殿下がいらっしゃることを前提に、この皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない、悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承について具体的に議論するには現状は機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させるとも考えられる、悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承について、将来において悠仁親王殿下の御年齢や御結婚等をめぐる状況を踏まえた上で議論を深めていくべきとし、まずは、皇位継承の問題と切り離して、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題であるとして、皇族数確保のための方策が示されています。

 このように、有識者会議においては、附帯決議に示された課題について、大変丁寧に議論を尽くしていただいたものと考えております。

馬淵委員 これを丁寧と果たして呼ぶかということなんですよね。

 確かに、現在、秋篠宮様、皇嗣としていらっしゃる、そして悠仁親王まで、その意味では皇位継承というのが見えている、見据えられているという状況ですが、附帯決議の要請は、安定的な皇位継承です。すなわち、何世代か見通せるというどころではない、我が国において、まさに我が国の統合の象徴たる天皇、この皇族、皇室、どのような形で安定的に皇位継承できるか、そのことに意を尽くせというのが附帯決議の要請なわけですよ。

 おっしゃっているのは有識者の会議の中身のことでありますが、これは、あくまでも悠仁親王殿下、これはゆるがせにしてはならないということをおっしゃっていますが、しかし、それで、機が熟していない、あるいは皇位継承を不安定化させるといって先送りしてしまえば、安定化ということとはかけ離れてしまいます。つまり、おっしゃっているような丁寧な議論ではなくて、全く本質を無視して、そしてその上で安定化ということの議論が進まない状況を生み出しかねない、こういう状況ではないかということも一つは指摘されていることだと思います。

 長官、改めて確認しますが、おっしゃったこの有識者報告書の中での、機が熟していない、そして皇位の継承が逆に不安定化するのではないかといったところで、問われている本質からかけ離れた議論になってしまうことは、むしろ逆ではないのか、皇位の安定化から大きく離れることにはならないのか、このように思うわけですが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 国会に提出をさせていただきました報告書の内容は、先ほど答弁をさせていただいたとおりであります。

 私たちも、この有識者会議の報告というのを尊重して、そして、これは政府から国会へという意味で、国会に提出をさせていただきました。是非、国会において御議論をいただくに、先ほど来申し上げていますとおり、資する内容をということで提出をさせていただきましたので、国会での御議論を更にお進めをいただければと思います。

馬淵委員 立法府の議論というのは各党各会派で行っているという前提で、まだ衆参両院議長から何らかのアクションがあるわけではありません。しかし、私から見れば、この附帯決議の要請から、本質から外れてしまっているということについて、当然ながらこれは今後の立法府の中での議論を行っていかなければならないとは思っております。政府としてはそれ以上お答えできないんだろうということは容易に想像できますが。

 その上で、改めてですが、私は、かえって皇位の安定化を妨げるようなことになるのではないかという意見があるということも、これはこの場にてお伝えをしておきたいというふうに思います。

 そして、この報告書の内容についてという部分では、もう一つございます。

 女性皇族が婚姻後も皇室に残る案ということで、これも、お手元の資料に配りました二枚目に、皇族数確保の具体策、ここではこういう言い方になってしまっていますが、これは有識者会議の報告書でありますが、この二枚目の下段のところ、下の部分で、皇族数確保の具体策方策、1として、内親王、女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとして、いわゆる女性皇族が結婚された後も皇籍から離脱するのではなく皇族として残るという案が出ているわけであります。

 そして、この場合には、これは配っておりませんが、この後に続く報告書の中には、もしそのような形で女性皇族が一般国民の男性と結婚をされる、連れ子であり、お子様が生まれる等、あるいは、お子様がいらっしゃるという状況の場合に、配偶者、すなわち女性皇族の夫と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利義務を保持し続けるもの、このように記載をされています。

 こうした場合に、これは一般国民としての権利を保持するということです。女性皇族が皇族のまま婚姻をされ、そして、その夫と子は一般国民。このときに考えられることというのは、すなわち、配偶者やお子様が、例えば様々な皇室のブランドなどを利用した経済活動や、あるいは特定の宗教活動や、あるいは政治活動を行うという可能性も、これは否定はできません。

 すなわち、この報告書の案では、こうした権利の行使を制約することは憲法上可能なのか、これについては、長官、どのようにお考えなんでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 有識者会議の報告書において、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することについては様々な考え方があることも踏まえ、配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利義務を保持し続けるものとする考え方が示されていると承知をしております。

馬淵委員 つまり、皇族方と結婚された一般国民は、これは、その権利の行使に関しては当然ながら憲法上の制約は受けない、こういうことをここでは示しているわけです。

 そうなりますと、先ほど申し上げたような、皇族の家族である方が、一般国民として憲法上の制約を受けなければ、当然、職業選択の自由も含めて、様々な職業を行うことができる。皇室の家族であることを利用したビジネス、あるいは信教の自由ということでの宗教の布教活動、また、当然ながら政治信条、こうしたものも何ら制約を受けないわけですから、政治家への立候補なども自由にできるということになります。

 そのことも、政府としては、そうだというふうに理解をされているということでよろしいでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど申し上げましたとおり、配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利義務を保持し続けるものとして報告書を提出をさせていただいておりますが、先生からの御指摘も含めて、具体的な制度内容をどのようなものとするかは、国会での御議論を経て、今後検討されていくものと考えております。

馬淵委員 長官、私は、制度内容のことを言っているんじゃないんですよ。先ほど検討したとおっしゃっていますから、すなわち、これは追認されているわけですね。

 このような憲法上の制約を受けない一般国民としての権利が保障されるということは、今申し上げたようなことが現実に起こり得るということ、そのことを理解されているということなんでしょうかと聞いているんです。いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほど申し上げましたとおり、政府から国会に提出をさせていただきました報告書につきましては、今後、国会で各党各会派が御議論をいただくに当たって資するものという性格、そういった目的で提出をさせていただいたものでございます。

 そういった目的から考えまして、政府として、現状、国会の御議論に対して資するという観点からいえば、先ほど申し上げましたとおり、配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、一般国民としての権利義務を保持し続けるものということを政府として提出して、さらに、具体的な制度内容をどのようなものにするかは、国会で御議論を経て、御検討をいただくという理解でございます。

馬淵委員 今重要な答弁をいただきました。

 つまり、憲法上の制約は受けないんだということ、そのことについて繰り返し言われたわけですから、つまり、この報告書に書かれているように、皇族方と婚姻された一般国民の配偶者並びに子、ここには基本的人権の制約は受けないんだということ。

 そして、制度の中身に関しては国会で議論してくださいということですから、繰り返しになりますけれども、政府としては、この報告書を尊重して提出をしたという段階で、自由権と制約ということに大きな問題をはらむかもしれない問題があることというのを認識はされている、問題があるというか、少なくとも、憲法上の制約は受けないということを、憲法上で守られた権利の制約は受けないんだということを認識されているということを今御答弁でいただいたというふうに私は理解をいたしました。よろしいですね。今うなずいていただきました。

 しかし、やはり、ここはかなり問題が私は大きいと思います。先ほど来申し上げたように、社会通念上、夫婦及び家族というのは、親子、これを含めて家族というのは一体と見られがちであります。そして、天皇陛下は、日本国の象徴であり国民統合の象徴でもある、したがって、一定の自由が制約されるということになっている。また、皇族方も同様であります。

 一方、この配偶者やお子様が制限されるということでの、やはり、一体であるにもかかわらず、憲法の制約が及ぶ及ばないというところでの問題というのは、ここはまさに、官房長官が言われるように、国会で議論をしていかなければならない点ではありますが、ここは相当の課題がある、こういうふうに言わざるを得ないと思います。

 そして、もうあと時間がありませんので、少し飛ばしてお話を伺いたいと思いますが。

 もう一つは、この有識者会議の中で、有識者のヒアリングというのを行われてきました。二〇二一年五月十日、宍戸常寿東京大学大学院の教授は、この有識者会議で、養子案、これについて意見を述べられました。

 お手元に配った二枚目のところには、先ほど女性皇族の話がありましたが、2に、養子縁組を可能とする、男系の男子を皇族とするということ、あるいは、皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする、この二つが記されている。

 ここに対して、宍戸先生は、このヒアリングで意見を述べられています。ここは、皇族ではない皇統に属する男系男子との養子縁組については、仮に制度化するにしても整理すべき論点が多岐にわたると考えている、それは何かといえば、養子たり得る資格を皇統に属する男系男子に限定するならば、一般国民の中で門地による差別に該当するおそれがある、そして、さらに、仮に旧十一宮家の男系男子に限定する場合には、皇統に属する男系男子の中での差別に該当するという問題も生じる、こう語られています。

 お手元の資料の三枚目に、憲法の十四条一項、全て国民は法の下に平等であってという中で、社会的身分又は門地により差別されないと、この一項で明確に記されている。ここに抵触する問題が出てくるということを宍戸先生は御指摘をされました。

 そこで、官房長官、お尋ねをしたいんですが、この養子案というのは、この有識者会議の2、3に当たりますが、これは憲法十四条一項の門地による差別を禁じる平等原則に反するのではないかという、こうした御意見に対してどうお考えでしょうか。

    〔神田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 有識者会議の報告書においては、「皇族が男系による継承を積み重ねてきたことを踏まえると、養子となり皇族となる者も、皇統に属する男系の男子に該当する者に限ることが適切である」とされており、政府としては、この報告書を尊重することとし、昨年一月、岸田総理から国会に対して報告を行ったところであります。

 先生の御指摘につきましては、具体的な制度内容をどのようなものとするかは、国会での御議論を経て、実際に制度化が図られる際に検討されていくものと考えております。

馬淵委員 ここも、私、記載内容を問うているのではなく、憲法上の平等原則の関係で問題とならないかということをお尋ねしているわけであります。制度の中身に関しては、これから立法府で議論することはよく承知をしておりますが、これは憲法の解釈ですよ。

 このような形で、ここに書いてあるのは、報告書では、「皇族が男系による継承を積み重ねてきたことを踏まえると、養子となり皇族となる者も、皇統に属する男系の男子に該当する者に限ることが適切である」と。これは憲法上の解釈ではないんです。元々、皇統に属した男系男子だったから皇族になるというのは適切だという、ある意味これは、ただ結論をとんと載せているだけなんですね。憲法との関係性はここには何ら記載されていません。

 つまり、有識者会議では、宍戸先生からの御指摘もありましたが、それに対する憲法上の議論もなく答えを出しているんです。

 私が今お尋ねをしたのは、憲法の平等性の原則、これについての解釈は全く触れられていませんが、政府としては、ここはどのように考えられるのか。先ほど、女性皇族方との婚姻関係にある一般国民は憲法上の制約は受けないんだという政府の御意見がありました。

 では、この養子縁組、この養子案については、平等原則の憲法の論旨にのっとったものではないのではないかということに対して御見解はないんでしょうか。いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 もちろん、有識者会議の御議論の中に、憲法上の問題も含めて御議論をいただいたと承知をしておりますが、この有識者会議の趣旨としての、附帯決議によるところからのスタートでございますので、皇位継承という観点においての御議論をもちろん憲法問題も含めてお進めをいただいた結果、こういった報告書になったという理解でございます。

馬淵委員 いや、だから、私は申し上げているんですよ。先ほど、政府としても、総理に手交されて国会に報告する前に検討もされた、尊重している。有識者の先生方の議論ですから、それは尊重するのは当然だと思います。

 その上で、政府は、憲法との関係性というのは常に確認をしていかなければならない責務がありますよ。だから、私、先ほど伺ったじゃないですか。女性皇族方と婚姻する一般国民には憲法上の制約がかかるのかと言ったら、かからないとおっしゃった。

 ならば、養子案も同様です。この養子案に係る皇族方、旧皇族の方々が養子となるということが門地差別には当たらないのかということについて何ら見解がないということはおかしくないですか。先ほど、女性皇族方のところは、憲法との関係性をお答えいただいたじゃないですか。平等性原則にこれはのっとっていないということになりませんか。いかがですか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 報告書におきましても、六、終わりの項目におきまして、憲法を始め現行の法制度と整合を取りながらどのような制度設計にすべきかなどについて真剣に考えたと記載をされているところであります。

 先生御指摘の課題につきましては、条文作成の時点において、どういった制度設計になるのか、その御議論において整理されていくものと考えております。

馬淵委員 国会に投げて、まあ、委ねているということだと、それを繰り返しおっしゃっていますが、やはり、先ほどの繰り返しになりますけれども、女性皇族との婚姻の場合、憲法上で制約がかかるかということに関しては、それはない、一般国民として自由権はしっかりと保たれるんだということの御答弁がある一方で、この養子案に関しては、この平等原則について何らお答えをいただけないというのは、私は、ここは、政府として果たして本当に真摯に向き合っていただいているかというのは少し疑問を覚えるわけであります。

 この皇位の継承の問題というのは、繰り返しになりますが、安定的な継承ということが最も重要だということの認識の下に附帯決議が記され、また、立法府としても、両院の議長からのお声がけがあった、こう理解をしているわけであります。

 ここは我々の責任として行っていかなければなりませんが、改めて、先ほど、その法の在り方、閣法か議員立法かも含めて国会に委ねているということでありましたから、我々の責任は重く受け止めつつも、一方、岸田内閣として、予断を持たずに、安定的な皇位継承とは何かということを真摯に検討いただくこと、受け止めていただくということ、これを重ねて私からもお願いを申し上げて、時間となりましたので、私の質疑とさせていただきます。

 最後に、官房長官、何か一言、コメントいただければ。お願いできますか。

松野国務大臣 先生からお話をいただきましたとおり、この皇位継承に関する問題は極めて重要な課題であることはもう当然のことであります。

 内閣としても、国会の御議論をいただいて、その御議論を受けて、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

馬淵委員 終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。

 まず、中国の気球について、気球撃墜問題について官房長官にお伺いします。

 アメリカ本土の上空を飛行していた中国の偵察用と思われる気球を、米軍が今月四日、洋上で撃墜をいたしました。この気球に似た飛行物体は日本でも、三年前宮城県上空、二年前青森県でも目撃をされました。昨日の記者会見で官房長官は、昨年一月、九州西方の公海上空で確認されたということを発表されました。

 そこで、幾つかお伺いをいたします。

 我が国上空に他国の気球が許可なく侵入した場合は、これは領空侵犯に該当するか、お伺いします。

松野国務大臣 稲富先生にお答えをさせていただきます。

 外国の気球であっても、我が国の許可なく我が国領空に侵入すれば領空侵犯となることに変わりはありません。

 その上で、領空につきましては、国際法上、国家の主権が及ばない宇宙空間との関係で、その境界は明確になっていませんが、航空機が通常飛行している高度までの空間を領空と呼ぶことについて、各国に異論があるとは承知をしていません。

 こうした点を踏まえれば、御指摘の気球に関しましては、上空一万八千メートルの空域に外国の気球が我が国の許可なく侵入すれば領空侵犯に当たると考えています。

稲富委員 ありがとうございます。

 続きまして、この四日、アメリカの東海岸で撃墜された中国の気球が、北米に至る間、我が国の領空を侵犯したという事実はあるかどうか、お伺いをします。

木村大臣政務官 お答えいたします。

 政府として、平素から警戒監視に万全を期すとともに、大きな関心を持って気球の情報収集、分析を行っていますが、事柄の性質上、情報の一つ一つについてのお答えはできないことを御理解ください。

 いずれにせよ、いかなる国であっても、他国の主権を侵害することは許されません。政府として、我が国の主権を守り抜くためにも、引き続き同盟国等とも連携しつつ気球の情報収集、分析に全力を挙げてまいります。

稲富委員 官房長官に伺います。

 この気球に関して、中国から許可の申請があったという事実があるのか。先ほど答えられないということだったんですけれども、申請があったという事実があるか。過去、軍事、研究など、用途を問わず、中国から領空に侵入する気球の許可を得るような申出はあったのか、官房長官に伺います。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 我が国の領空で気球を飛行させる場合は、航空法に基づいて許可の申請又は通報が必要でありますが、お尋ねの気球に関して、これらの手続は確認されていません。

 また、記録が保存されている過去一年間の範囲においても、中国の気球に関して、これらの手続は確認されていません。

稲富委員 ありがとうございます。

 官房長官に最後に伺います。

 領空侵犯をした気球が仮にあったときに、我が国は撃墜ができるのかということなんですけれども、これは法律上できるのか、あるいは技術的に、現実的にそれが可能なのかということをお伺いいたします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 外国の気球が我が国の許可なく我が国領空に侵入すれば領空侵犯となることに変わりはありません。対領空侵犯措置の任務に当たる自衛隊機は、自衛隊法第八十四条に規定する必要な措置として、武器を使用することができます。

 個別具体的な状況にもよることから、一概にお答えをすることは困難でありますが、無人のものによる領空侵犯の場合の一般論として申し上げれば、国民の生命及び財産を守るために必要と認める場合には、所要の措置を取ることができます。また、当該措置を取るに当たっては、具体的な状況に即し、適切な装備品等を用いることとなります。

 なお、今般の米国における事例においては、米軍は戦闘機から空対空ミサイルを用いて対応したものと承知をしています。

稲富委員 御答弁ありがとうございました。しっかりとこれは対応いただきたいというふうに思います。

 以上でこの問題は終わりますので、官房長官そして関係の方、御退室どうぞ。ありがとうございました。

 続きまして、ちょっと順番を変えて、ギャンブル依存についてお伺いをいたします。

 昨年の当委員会で、依存症対策について岡田大臣に質問させていただきました。基本法に基づいて、ギャンブル依存症対策推進基本計画を三年ごとに検討を加えるということになっております。その三年目に当たるということで、是非このタイミングでこの質問をさせていただきます。

 まず、前回も質問させていただいたんですが、公営競技のインターネット投票についてであります。これを見てみると、非常に増えているのではないか、そして、容易にこのインターネット投票がやりやすくなっているのではないか、そういった声をいただいております。是非、どれぐらい投票が増えたのか、依存症への影響など、現状について大臣の見解をお伺いします。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 稲富委員御指摘の、公営競技におけるインターネット投票とギャンブル等依存症の関連については、現時点で明確な因果関係は立証されておりませんが、こうしたインターネット投票の利用が広がる中で、ギャンブル等へのアクセスが容易になることにより依存症の増加につながることがないように、しっかりと対策を講じていく必要があると認識をいたしております。

 現在、各公営競技において、本人や家族の申請に基づきインターネット投票の利用停止を行う制度や、利用者本人の申請に基づき購入限度額を設定できる制度が導入されるなど、様々な取組、特にのめり込みを防止する取組が展開されているところであります。

 さらに、ギャンブル等依存症対策推進基本計画に基づいて、これらの制度について一層の周知を図るために、インターネット投票サイトにおいて視覚に訴える新たな注意喚起表示を、令和六年度を目指して導入することといたしております。

 こうした取組を着実に進め、公営競技のギャンブル等依存症対策にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。

稲富委員 ありがとうございます。

 大臣、売上げに占めるインターネット投票の割合が随分と増えているという、是非その現状の推移について数字を御説明いただければと思います。

榊原政府参考人 お答え申し上げます。

 売上げに占めるインターネット投票の割合の推移でございますが、上昇傾向にあるということでございます。例えば中央競馬会の場合ですと、令和元年は七〇・四%であったのが、令和二年には九二・七%になるなど、上昇しているところでございます。

 以上でございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 上昇傾向どころか急上昇していまして、今、売上げに占めるインターネット投票の割合は、中央、地方競馬が約九割以上。そして、オートレース、競輪、モーターボート、どれも平成二十九年に比べて令和二年はプラス三〇ポイントぐらい増えていて、オートレースは八割、そしてモーターボートも約八割ということで、急激にこの数年間で上がっているわけです。

 それで、先ほど大臣は対策をするということなんですけれども、私も、このサイトを見ると非常に、私は公営競技そのものは、当然、楽しむことは否定するわけではもちろんございませんが、若い人がどうアクセスするのか、あるいは依存症の方がこれによってどうなるのかというのは、当然、御家族の方、あるいは我々子供を持つ親としては、やはりちょっと心配になるところではあります。

 先ほど、これからそういうサイトにアクセスをする方法について一定の規制といいますか告知といいますかをされるということでありますけれども、やはり更に強い規制のようなものが必要ではないかというふうに思うわけですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、公営競技におけるインターネット投票の利用状況、先ほど稲富委員が御指摘になり、また政府参考人からもお答え申し上げましたように、かなりの角度で伸びてきているという現実もございます。

 こうした利用状況等をしっかりと把握した上で、今後の状況も注視しながら、関係省庁、例えば競馬なら農水省、競輪、オートレースならば経産省、またモーターボートならば国交省といったところと連携をいたしまして、依存症の増加につながることがないように必要な取組を進めてまいりたいと存じますし、先ほども申し上げましたが、視覚的に訴える新たな注意喚起表示のイメージということで、注意喚起表示を出して、それをクリックすればアクセス制限等の案内画面へ移行する、そういった今の時代に適応した注意喚起の方策というものも、各省庁とも連携を取って更に検討し強化してまいりたい、このように存じます。

稲富委員 ありがとうございます。

 オンラインカジノについても同じようなことがございまして、これも非常にアクセスがしやすい。これはもう完全な違法である、犯罪であるということで、前回も、これは是非周知をしていただきたいということを申し上げました。是非、この点も併せてお願いをしたいと思います。

 それで、今日は児童手当のことを少し、家族の方々から切実な声としてあるので、その点を、是非改善をいただきたいということで問題提起をしたいと思います。

 こういった事例がございます。ギャンブル依存症の親御さんの口座に児童手当が振り込まれる、それが使い込まれてしまうという問題が発生をしているということです。

 例えば、児童手当もそうですけれども、コロナ禍において一人十万円という給付金もありました。そういった形で各個人の家庭に給付をするということがこれからあり得るわけで、継続的に児童手当のようなこと、そして臨時的にそういうこともあり得るということで、口座について、御家族が変更ができない、依存症の方から御家族に、是非、そうではない家族に変更ができるようにしてほしいという要望でございます。

 それで、調べてみますと、確かに児童手当は、更に言えば、これから児童手当を拡充する、あるいは所得制限をどうするという議論はありますし、いわば、もっと給付を拡大するという議論を国会ではしている途上にあります。ですので、そういった意味でも是非ちょっと考えていただきたいことなんですけれども、お手元の資料をお配りをさせていただいております。

 児童手当制度は、支給対象は児童を養育している方となっております。そして、児童手当制度では、一番下の方ですね、私がマーカーを引いているところでは、「以下のルールを適用します!」というところで、「児童と同居している方に優先的に支給します。」となっている。その前に、父母が離婚協議中などにより別居している場合は、同居している親御さんに支給をされるということなんですけれども、これだけだと、普通に考えれば、所得が多い、あるいはお父さんの方に支給をされる。しかし、そのお父さんが仮にギャンブル依存の場合は、そこの口座にある、それをお母さんに変えることが、この今のルール上だと、離婚協議中など別居している場合じゃないとできないということになっているということなんですよね。

 ただ、ギャンブル依存症対策基本法では、基本理念の三条一項にこう書いてあります。ギャンブル等依存症である者等及びその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援すると。つまり、ギャンブル依存症の方のみならず、その御家族が日常生活を円滑に営むことができるようというのは基本理念にうたわれております。ですので、この運用のところ、法律は改正する必要はないと思います、運用のところで、「父母が離婚協議中などにより別居している場合は、」というところのみならず、今のような場合に、振り込み先をギャンブル依存ではない方の親御さんに、仮に同居していたとしても振り込めるように、そういう運用に改めていただきたいというのが趣旨なんです。

 これは各市町村によって恐らく対応が違うのではないかと思います、運用自体も。したがって、国として、大臣は所管ではないけれども、ギャンブル依存の所管の大臣として、担当する大臣に働きかけをしていただきたいというふうに要請をしたいのですが、大臣の見解を伺います。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 私は、ギャンブル等依存症対策推進担当大臣として、依存症で苦しんでおられる本人や御家族がどのような悩みを抱えているかをしっかりと把握して対策を講じていくことが必要であると考えておりまして、この点において、稲富委員の御指摘をしっかりと受け止めたいと存じます。

 委員御指摘の児童手当については、本来の目的に沿って子供のために使われることが重要であると考えておりまして、委員の問題意識、よく理解できるというふうに存じます。

 先ほどもおっしゃっていただきましたけれども、私は児童手当制度を所管しておりませんが、今後、機会を捉えて、児童手当の担当大臣、こども政策担当大臣やその担当部局ともこうした認識をしっかりと共有をしていきたい、このように存じます。

 ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をなくし、健全な社会を構築していくために、関係省庁としっかり連携をしながら、必要な取組を着実に前に進めてまいりたいと考えております。

稲富委員 前向きに御答弁いただいたものと思います。是非、御趣旨を酌んでいただいてお取り組みいただければと思います。ありがとうございます。

 それでは、岡田大臣、ここで結構です。ありがとうございました。

 次に、政府の目玉であります賃上げについて、後藤大臣、幾つかお伺いをしてまいりたいと思います。

 前回も、十月の委員会でも、ちょっと途中になってしまいましたけれども、賃上げのことを少し伺わせていただきました。それで、まず、賃金がなぜここ三十年間も上がってこなかったのかということをお伺いしたいんです。

 一昨年末、令和三年の十一月に、我が党の議員が質問主意書でこういう質問をしております。年間賃金データによると、三十年前と比べると、日本は四%増である、OECD平均は三三%増である、日本は横ばいである理由はどうかということに対して、政府としては、様々な要因があると。その一つの要因は、相対的に賃金水準の低い女性や高齢者の労働参加が進んだことが賃金の平均値を下げているということを、質問主意書で政府として答えられている。

 昨年二月、財務金融委員会で、私の質問に対して鈴木大臣は、今のことと加えて、デフレマインドが浸透してしまい、投資や賃上げに向かわなかった、消費者も将来不安で消費を抑え込んだ、両面から賃金が上がらなかった、こういう御答弁をされております。

 少し、一年時間がたって、是非大臣の、なぜこれまで賃金が上がらなかったのかという見解を伺いたいと思います。

後藤国務大臣 今委員が御議論になったのは、我が国の一人当たりの賃金のことだろうというふうに思います。

 総雇用者所得は伸びながら、どうして下がったのかということについては、そういう現象もありますけれども、しかし、過去三十年間の他の先進国と比較して伸び悩んできたのは事実でございまして、この要因については、諸外国では経済成長とともに賃金が上昇してきた一方で、我が国について言えば、バブル崩壊以後、長引くデフレと低成長を背景としまして、企業が賃金を抑制する、そして家計は消費を抑制した、その結果、需要が低迷して、デフレと低成長が継続する悪循環に陥ったことが挙げられると思います。こうした悪循環の中で、企業の行動も慎重化いたしまして、収益増加や生産上昇に見合う分配が行われず、賃金が伸び悩んできたということだと認識いたしております。

稲富委員 恐らくその問題意識は、二〇一三年ですね、第二次安倍内閣の最初の骨太の方針でも、同趣旨の多分問題意識が示されているのではないかと思います。

 それで、その際には、再生の十年を通じたマクロ経済の姿とその道筋と高らかにうたっているわけです。その中でこのような趣旨が書かれております。中長期的に、二%以上の労働生産性の向上を実現し、物価上昇を上回る賃金上昇につなげる。

 二〇二〇年頃までに国内総生産六百兆円を達成する目標を掲げ、このため、年約三%程度の賃上げが必要ということで、これを基に春闘での賃上げを要請しているということなんですよね。

 いわば、そういう課題があって、この十年、ちょうど十年前の骨太の方針、第二次安倍内閣の発足から、いわばアクセルを踏んで、賃金を上げるようにということで取り組んできたと思うんですね。その結果として、マクロ経済としての対策は効果があったのかということについては、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 アベノミクスの御指摘のときに、六百兆円のGDPを目指すという目標でありまして、新型コロナが流行する前の段階において、相当の程度GDPは回復してきたということだろうと思いますけれども、二%の物価の問題だとか、あるいは実質賃金の問題等は目標に達していなかったというのは事実だろうというふうに思います。

 そういう意味で、今回、実質賃金をしっかりと引き上げていく、そういう形の新しい資本主義の経済運営や雇用政策に取り組むということで、今、必死になって取り組ませていただいています。

稲富委員 その二〇一三年の骨太の方針以来、いわば賃上げとしての政策を政府として取ってきた、それの効果はあったのかということについてはいかがでしょうか。

後藤国務大臣 そのときに、例えば所得拡大税制をやっていくとか、それなりに経済の刺激政策をやってきました。また、企業が生産拡大ができるような様々な措置も講じてきておりますけれども、結果として言えば、御指摘のような、一人当たり実質賃金の上昇が十分に行われていなかったということは、率直にお認めをしたいというふうに思っています。

 それは、先ほども申し上げたみたいに、やはり、長引くデフレの中で、そして低成長の中で、企業は賃金を抑制する、そして投資がなかなかできない、そういう行動の中で、マクロ経済自身をきっちりと好循環で回していけなかったことが問題だろうと思います。

 そういう対策を行うためには、やはりサプライサイドにおいて、きっちりとした労働政策や、あるいは新しい生産性を生む企業の投資、そうしたものにしっかりと対応していく必要があるというふうに思います。

稲富委員 大臣、ありがとうございます。

 結構率直におっしゃったので、ちょっとびっくりしたんですけれども、要するに、効果がなかった、非常に薄かったという御答弁だったかと思うんですね。そのとおりで、かなりその問題意識を持って政府として取り組んだけれども、なかなか十分な効果が得られなかった、だからこそ今からやるんだ、そういう御答弁かと思ったんですね。

 その際に、私、幾つか思うのは、まずサプライサイドのということと、同時に、生産性を上げるということは当然GDPを上げるということとつながる話で、つまり需要も拡大しなきゃいけない。したがって、そのためには、子育て支援だとか、これから人口減少をストップさせるような政策も必要だということは、それはもうまさにそのとおりだと思うんですね。

 これから賃上げを進めるに当たって、賃上げをやらなきゃいけないことに当たって、中小企業についてどうするのかということは非常に難しい課題だと私は思うんですね。

 と申しますのは、これだけ物価が上がって、賃上げだと世の中が言っていたとしても、当然、私の地元にいる社長さんに、賃上げするんですかと、そんなのは政府が決めるものじゃない、それは、今の現状からすると、そんな簡単にすぐ上げられるものじゃないというのが率直な声だと思うんですよね。しかし、どうやって国として上げていくのかということを考えなきゃいけない。

 そこで、大臣に伺いますが、どういうふうにして中小企業の働いている方々の賃金を上げていくのか、政策としてどういうことを考えられるのか、お伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 まずは、構造的な賃金引上げにしっかりと取り組むことによって経済全体を動かしていくということは前提となると思います。その上で、中小企業の賃上げについて特に注意すべき点をお答えするとするなら、御指摘のとおり、我が国の雇用の七割は中小企業が占めていまして、中小企業の賃上げが鍵になるという認識は持っています。

 このために、中小企業が賃上げできる環境整備に向けて、生産性向上に強力に支援を集中する、そして、足下の物価高騰を踏まえた価格転嫁対策にしっかりと取り組むことが必要だろうというふうに思っています。

 具体的には、中小企業における生産性向上支援策として、令和四年度第二次補正予算において、ものづくり補助金を始めとする生産性向上のための補助金二千億円、事業再構築補助金五千八百億円を措置したところであります。また、給与支給総額を六%以上増加させるなどの意欲的な賃上げに取り組まれた事業者に対しては、補助上限や補助率を上乗せする措置などもやっております。

 また、価格転嫁対策としては、取引先とサプライチェーンを通じて共栄共存をしていくというパートナーシップ構築宣言、一月末時点で一万八千社がパートナーシップ構築宣言をしていますし、経団連のうち四百九十社もパートナーシップ構築宣言をしました。こうした宣言をより拡大して、そういう社会的な条件を整えていくこと。

 それから、価格転嫁対策について言えば、公正取引委員会や下請Gメンの大幅な増員による体制強化とか、それから、価格転嫁あるいは価格交渉の状況について、中小企業庁が親事業者約百五十社の交渉、転嫁の状況を一覧にして初めて公表する等、取組を強化いたしています。

 さらに、三月に迫る次の価格交渉促進月間においても、これまでの体制強化を生かして、交渉や転嫁の状況がよくない親事業者に対する指導助言を徹底的に行うことにいたしております。

 これらの取組によりまして、適切な価格づけを通じてマークアップ率を高めて、物価上昇に負けない賃上げや、コスト上昇の転嫁のできる適切な支払いを確保していくこととしたいと思います。

稲富委員 ありがとうございます。

 私、価格転嫁対策、これは大事だと思います。その他おっしゃった、様々な補助金のメニュー、御説明もいただきました。ただ、先ほど申し上げたように、二〇一三年から、賃上げが必要だと政府は言って、様々な取組をして政策も打ったけれども、大きな成果は得られなかった。これは多分そのとおりで、だから、この延長線上で考えてはもう賃上げというのは起こらないんじゃないかというのが私の問題意識なんですよ。

 だから、補助金を出す、その他様々な施策をするということによって、当然、短期的に、今のこの物価が急上昇している、上がっているときに、それに負けない賃上げをということをおっしゃっているわけですよね。短期的にそんなことができるのかと思うんです。

 もう一つ言えば、先ほど言ったように、今の延長線上の、これまでやってきた延長線上の額を積み増すとか、これまでやってきたことを更に大きな額でやる、大規模にやるのではもう駄目なんじゃないかというのが私の問題意識なんですよ。

 そこで、やはり内部留保の問題に触れざるを得なくて、これはどうするのか。五百兆円にももう積み上がってきているわけですよね。これだけ賃上げだ、あるいは投資に向かわせてほしいと言っているけれども、どんどんどんどん積み上がるばかりで。それに対して、いやいや、こうするんだとおっしゃるかもしれないけれども、これをどうするんですかと。ここをいわば企業が賃金やあるいは投資に吐き出さない以上は、賃金というのは上がらないんじゃないかと思うんですよ。だから、今のアプローチの延長では駄目なんじゃないかと思うんです。

 しかし、内部留保については、二重課税だから課税は考えない、そして、それに対して具体的にどうするのかということをお伺いしたいと思います。端的にお伺いします。

後藤国務大臣 企業収益が現預金として保有されるだけではなくて、賃金や人への投資、これにしっかりと結びついていくことが重要です。それが成長と分配の好循環につながります。

 そういう意味で、意欲ある個人の能力を最大限生かして、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつなげる構造的な賃上げをしていくために、従来の政策とは異なる、そもそも三位一体の労働市場改革に取り組む必要があると思います。意欲ある個人に対するリスキリングをしっかりと行って、職務に応じてスキルが適正に評価され賃上げに反映される日本型の職務給の確立、それから、成長分野への円滑な労働移動が進められる、そういう労働市場改革に官民で連携して取り組んでいく。

 それからもう一つは、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DX、こうした重点分野に、官の投資を呼び水にして、そして民の投資を大胆に喚起していく。

 そういうような形の政策をしっかり行うことによって、生産性や付加価値の向上を、的確な価格づけを通じたマークアップ率上昇で、物価上昇に負けない賃上げやコスト上昇の転嫁のできる適切な支払いをしっかり確保することで好循環をつくっていく、そういう形で内部留保に対応していきたいというふうに思います。

稲富委員 ありがとうございます。

 何かを呼び水に更に民間に投資を促すというパターンはよくあって、雇用促進税制のときも、例えば一千億円の呼び水にして、そして雇用に対して、労働者に対して給料を上げるということの呼び水にしたいと言ったけれども、起こらなかった。だから、その発想は私はもう駄目なんじゃないかと思っているんです。

 最後に、法人増税をしますよね。これはもう決まっている。ただ、時期は決まっていない。防衛費の五年間四十三兆円を調達するために、再来年度以降に法人増税をすることは政府として決めている。法人増税をすることと、先ほどもどなたかから御質問ありましたけれども、企業に対し投資促進をするということは、相矛盾するメッセージなのではないかと私は思うんです。

 当然、増税をするわけですから、そうしたら、企業は更にため込む方に動くのであって、投資意欲はなくなるのではないか。今の増税をするということと投資促進をするということは矛盾する政策じゃないかと思うんですが、お伺いします。

後藤国務大臣 法人の負担が増えることが、一般的に見て、例えば法人の活動に対してプラスの影響を与えるものとはもちろん思いませんけれども、ただ、防衛力の強化によって、例えばサプライチェーンの維持がしっかり行われるとか、シーレーンの確保を通じた交易条件の改善だとか、抑止力強化による市場攪乱リスクの低減など、円滑な経済活動に、やはり安定的な防衛力の強化、そういう国際情勢はプラスになる、直接資する面も多いものだ、それが国の在り方全体の問題だというふうには思っています。

 また、昨年末決定された与党税制改正大綱では、防衛力強化に係る財源として法人税の御負担をお願いすることになっていますけれども、その際にも、地域経済や雇用を支える中小企業への配慮を大幅に強化していまして、全法人の九四%は対象外とされているものというふうに思っています。

 いずれにしても、先ほど申し上げたように、賃金の引上げ等に向けて、生産性向上、価格転嫁にしっかりと取り組むとともに、三位一体の労働市場をしっかりつくって、構造的に好循環の中で賃金が引き上げられていく、そういう経済をつくっていくということが重要だろうというふうに思います。

稲富委員 なかなかちょっと今のままでは、延長線上では、賃上げは難しいのではないか。やはり、十年間の政策の総点検をした上で、次の賃上げに向けての政策が必要じゃないかと思います。

 ありがとうございました。以上で終わります。

大西委員長 次に、山岸一生君。

山岸委員 東京都練馬区からやってまいりました、立憲民主党の山岸一生です。

 今日は、ちょっと時間の関係でお昼にかかるということで、委員長を始め皆さんもお疲れかと思いますけれども、もう一席おつき合い願えればというふうに思います。

 政治は言葉の芸術だという言葉があるそうでございますけれども、やはり、何を語るのか、何を語らないのか、あるいは、同じことを語るにしてもどういうふうに語るのかということが極めて大事なわけで、つい先週には、言葉をめぐる非常に残念な出来事もあったわけでございます。

 その言葉、いろいろな言葉がありますけれども、やはり当委員会で、つい二日前に各大臣の皆さん方から所信をお述べいただきました。この所信、私もつぶさに読ませてもらって、非常に議論すべきテーマがたくさんあるというふうに思いました。

 ただ、今日は、ここまで先輩方の議論を伺っていても、所信に対して直接質疑をするというふうなやり取りは余りなかったわけでございまして、もちろんそれぞれ問題意識はあると思うんですけれども、ちょっともったいなかったかなというふうに思うんです。というのが、やはり所信というのは膨大な官僚の皆さんの努力によって作られていて、そして、この政権、各大臣がこの国会でどういう仕事をしようとしているのかということを端的におっしゃっていることですので、この所信というものに忠実に触れながら、少し今日は議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、松野官房長官とお話をしていきたいというふうに思うんですけれども、私、官房長官と今週予算委員会で議論をさせていただきまして、官房長官は非常に言葉を重んじていらっしゃるなという印象を受けました。私が荒井前秘書官の発言に関して三つに分類して御質問したら、官房長官は、きちんと三つの分類に従って、これはこうですと非常に論理明快に整理をされて御答弁をいただきました。

 そんな官房長官だからこういう議論を多分お分かりいただけるんじゃないかなと思うんですけれども、今回の長官の所信からは非常に大事な表現が削除されていたというところが一か所ございます。お手元に資料をお配りをしておりますけれども、沖縄に関して触れた部分でございます。

 昨年の当委員会における松野長官の所信にはこういうくだりがありました。「沖縄の基地負担軽減は、政府の大きな責任であり、担当大臣として、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、目に見える形で負担の軽減が図れるよう、全力で取り組みます。」。今年、水曜日におっしゃったことは、全く同じ部分ですけれども、こういう表現になっています。「沖縄の基地負担軽減は、政府の大きな責任であり、担当大臣として、目に見える形で負担の軽減が図られるよう、全力で取り組みます。」。ほぼ同じ表現なんですけれども、大事な大事な一文が抜けておりまして、「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、」というくだりが丸々削除をされております。

 官房長官にお伺いしたいんですけれども、この「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、」という表現を削除した経緯と理由を教えてください。

松野国務大臣 山岸先生にお答えをさせていただきます。

 復帰から五十年を経た今もなお沖縄の皆様に大きな基地負担を負っていただいていることを、政府として重く受け止めています。

 また、地元の皆様と様々な形で意見交換、意思疎通を図ることによって、沖縄の方々のお気持ちに沿って、また基地負担の問題を我が問題として受け止めながら、目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げていくという考えに何ら変わりはありません。

 今回の所信表明では、沖縄の基地負担軽減は政府の大きな責任であり、担当大臣として、目に見える形で負担の軽減が図られるよう全力で取り組むと申し上げ、そのような思いをここに込めさせていただいたつもりでございます。

山岸委員 ちょっとよく分からなかったんですけれども。

 この沖縄の方々の気持ちに寄り添うという表現がなくなったというのは、官房長官が初めて使った表現ではなくて、総理の施政方針でもなくなったということが話題になりました。時系列的には総理の方が先ですけれども、ただ、当然、総理の施政方針は、いわゆる短冊方式で、各役所が作ったものを束ねていくという作業ですから、恐らく、長官の方での作成というのが先にあって、それが総理のところに上がって同じような表現になったんだろうと思いますので、これはやはり長官の御判断というか意思決定なんだろうというふうに思うんです。

 まず、確認ですけれども、これは総理のところじゃなくて、基地負担軽減担当大臣として松野長官の御判断としてこういう表現にした、そこはまずよろしいですか。

松野国務大臣 基地負担軽減大臣としての所信で申し上げさせていただいたものでございますので、当然のことながら私の判断でございます。

山岸委員 分かりました。

 委員の皆さんには資料をお配りしていますけれども、済みません、多分ネットで御覧の国民の方も多くいらっしゃると思いますので、私のSNSに資料をアップしておりますので、そちらを御覧いただければなと思います。

 そこで、長官から、真意は変わっていないという御説明があったんですけれども、やはり冒頭申し上げたように、政治は、同じことを言うのにも、どういう言葉を使うか、どういう表現を使うか、どういう言葉を入れてどういう言葉を削るかというまさにそこに非常に本質があると私は思っていまして、なぜ、寄り添うという言葉をあえて抜いたのか。

 これは二つ見方があると思うんですね。一つは、もう寄り添いません、寄り添うことをやめたので寄り添うという言葉を抜きました。あってもらったら困るんですけれども、もちろんそういう理解もあり得る。もう一個は、この間、寄り添うという表現を使っていることに対して様々な角度から批判もありました。つまり、現に寄り添っていないじゃないか、民意に寄り添っていないのに、寄り添っているという強弁をするのはおかしいじゃないか、こういう意見もありました。

 こういった言葉を削るというときに、私はこの二つしか理由というか可能性を思いつかないわけなんですね。寄り添うのをやめたのか、あるいはそもそも寄り添っていなかったから言葉を外したのか。ほかの説明があれば長官からお聞きしたいと思うんですけれども、この二つの解釈のどちらかなのか、それとも違う考えなのか、御説明をお願いいたします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 言葉の解釈というのは、人それぞれの考え方、また立場によって変わってくるものであろうかと思います。

 寄り添うという言葉が今回所信の中になかった理由として、先生から二つの分析をいただきました。先生の分析もおありだと思いますし、加えるとすれば、通常の言葉をしっかり、繰り返し私も、沖縄に寄り添うということを、沖縄の現地において、また国会において繰り返し繰り返し使わさせていただきました。また、政治は言葉の芸術だという先生のお話もあって、そのとおりだと思いますが、もう一つは、やはり行動がどうその言葉に伴っていくかという観点が重要ということであろうかと思います。

 そういった意味におきましては、一昨年十月に着任以降、私自身、これまで五回、公務として沖縄を訪問させていただきまして、地元自治体の皆様や住民の皆様と対話を重ねるなど理解を深めてきたという自負がございます。また、様々な機会に、沖縄の皆様の御意見、御要望を可能な限り直接お会いしてお話を伺うこととしてきました。

 そういった意味においては、先ほど先生が挙げられた二つの分析に加えて、その言葉が自分自身の行動として示されてきたかな、具現化されてきている部分もあるのかなということの繰り返しの中で、直接的に、もう一度この寄り添うというのを所信の中で加えさせていただくかどうかという判断があったんだろうと思います。

 例えば、こうした沖縄に対する活動を通じて、キャンプ瑞慶覧の一部住宅地の土地利用が早期に実現するように道筋をつけるなど、沖縄の皆様の声に真摯に向き合い一つ一つ取り組んできたところであり、寄り添っていないとの批判があるから表現を変えたということはないと考えております。

 大事なことは、沖縄の基地負担軽減について目に見える成果を一つ一つ着実に積み上げていくことだと思います。担当大臣として、先生からの御指導のとおり、言葉も大事にしながら、引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

山岸委員 長官、今、大変率直な御答弁の中で、寄り添うという言葉を加えてみてもよかったのかなというふうなくだりがあったようにお見受けしましたけれども、ちょっと、今振り返ってみて、削らなくてもよかったんじゃないかな、やはりそこは率直にあった方がよかったんじゃないかなと少し後悔されるお気持ちがあるのであれば、ちょっともう一回お話しいただけますでしょうか。

松野国務大臣 先ほど答弁させていただきましたとおり、所信の中で述べさせていただいた表現で、沖縄に対する寄り添うという強い思いを表現できたのではないかなと思っております。

 でも、この寄り添うという言葉は大変大事な気持ち、表現だと思いますので、また今後の様々な機会の表現の中に考えさせていただきたいと思います。

山岸委員 是非、言葉を大事にした上で、それで有言実行をお願いしたいというふうに思います。

 さて、次に、長官、逆に入った言葉というものがあります。昨年はなかったんだけれども今年は入った表現というものがございます。同じ資料一の左側でございますが、多様性という言葉が加わりました。

 これは、官房長官の所信の中で、各大臣と協力しながらこういうことを進めていきますということを箇条書でぽんぽんぽんぽんとおっしゃるくだりがあるんですけれども、昨年はそこは、新型コロナ、新しい資本主義、経済安保、こども家庭庁ということを端的に名詞を挙げていらっしゃるんですね。

 今年も同じように、新しい資本主義、経済安保、新型コロナと三つは名詞で入っているんですけれども、そこに突然長い一文が挿入されていまして、「多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現、」というのが入っていて、ちょっと日本語としてはこなれていないといいましょうか、突然、ぽんぽんぽんと単語がある中に長い一文が入っているということで、私、非常に不思議な思いをして眺めたわけなんでございます。

 この多様性が尊重され云々というくだり、ちょっと所信の中身としては、日本語のつくりとして違和感を感じるところがないわけでもないんですけれども、なぜこのくだりが入ったのか、その経緯と趣旨を御説明願えますか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 私が所信表明演説で申し上げた、「多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現、」につきましては、これまでも国会等の場で答弁させていただいている政府の基本方針であり、今回の所信表明演説においてもその方針を示したところであります。

山岸委員 その詳しい経緯をお聞きしたいんですが、これは、先週金曜日、ちょうど一週間前になります、荒井前秘書官の非常に残念な発言があって大きな問題になったその後に、やはりこういう表現があった方がいいだろうということでつけ加わった、こういう経緯で理解してよろしいんでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 所信表明演説の中で申し上げた多様性という表現の中には、性的指向、また性自認の多様性も当然のことながら含まれておりますが、私が所信表明の演説の中で申し上げたこの表現に関しては、先ほど申し上げましたとおり、国会の場で度々答弁をさせていただいている内閣の基本方針として申し上げたところでございます。

山岸委員 もちろん、このくだりは基本方針ということはよく分かっています。しかし、基本方針だけれども、これは明らかに文脈上違和感のある形で挿入されているわけですね。こういうことをやりますといって短い単語でぽんぽんぽんぽんと書く、これはそういうパーツなんですけれども、その中に突然、いわば日本語としてこなれていない形で、長い文章が非常に丁寧な表現で書き込まれていて、当然、そこは、恐らく何らかの編集過程でつけ加わったんだろうなということは容易に想像できるわけです。

 ここは、長官、僕は全く批判しているわけじゃなくて、ああいう出来事があったので、もう一回政府が基本姿勢をしっかり示しますということであれば、それはそれできちんと評価したいと思いますので、是非、ちょっとその経緯をお教え願いたいと思うんです。金曜日の一連の発言以降の出来事を踏まえて、やはりこの政府の基本方針をもう一回しっかりここで示すべきだろうという御判断で加えた、こういう経緯でよろしいのかどうか、お教えください。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 先生から、文章としてこなれていない、違和感があるという御指摘をいただきました。私自身としては、こなれていないのかな、違和感があるのかなというふうには、まあそれぞれのお立場や考え方があるんだろうと思いますが、繰り返し申し上げさせていただきますけれども、この文言、フレーズは、岸田内閣として、内閣の姿勢として大切にしているということで過去も発出させていただいているものでございまして、その流れの中において、所信表明演説の中で、内閣の基本姿勢、また私の基本姿勢として申し上げたところであります。

山岸委員 どうしても経緯はお答えいただけないようでございますので、残念ですけれども。

 ただ、いずれにしても、こういった表現をあえて特出しをして所信表明の中に書いていらっしゃるということは、当然、これを政府の政策として官房長官が取り組んでいくということの表明だというふうに思います。

 なので、じゃ、この表現を書いたことによって、昨年はこういう表現はなかったわけですね、今年あえてこういう表現を書いているということによって、具体的にどういう政策を政府として進めていくという意図の下にこの表現を書いているのかということについて具体的にお聞きしたいんです。これはつまり、政府として、今議論になっているLGBT法制、とりわけ、様々種類がありますが、少なくとも、超党派で進めている理解増進法、これについては国会とも協力をして政府自身も取り組んでいくという意思がある、その意思の表れであるというふうに理解してよろしいでしょうか。官房長官、答弁をお願いします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 政府として、多様性を尊重し、また、もちろん人権の問題、それぞれの人々が持つ生きがい、生き生きとした社会ということは、あらゆる政策分野にとって必要なものであるかと思います。こういった基本認識の下に、内閣のそれぞれまた大臣とも緊密に連携しながら、政策を実現をしてまいりたいというふうに考えております。

 そして、あわせて、先生からお話があったとおり、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えております。理解増進法案につきましては、現在、各党において議論が進められているところと承知をしております。まずは、これは議員立法としての動きでございますから、この動きに関して政府として見守ってまいりたいと考えております。

山岸委員 先ほど官房長官から、言葉も大事だが行動も大事という話がございました。言葉を書き加えた以上は、行動が伴わなければそれは有言実行と言えないと思いますので、是非とも実行に移していただきたいということをお願いを申し上げて、官房長官に関してはここまでで結構でございます。ありがとうございます。

 続けて、小倉大臣と少し議論させてほしいと思います。

 小倉大臣は私と同い年でございます。昭和五十六年、八一年生まれでございまして、私が新聞記者の時代には大変取材でもお世話になりました。こうして議論できる機会をいただいたことを本当にありがたく思っております。

 同世代ですから、やはり似たような問題意識を持っている部分も当然あるんだろうというふうに思って所信を拝見していましたが、一か所、おやっと思ったところがございました。それは、男女共同参画の部分のところでございまして、やはり昨年と表現が変わったところが一か所ございました。

 昨年は、大臣が違って、当時は野田聖子大臣でしたけれども、女性活躍の部分でこういうふうにおっしゃっております。「男女共同参画は、全ての人が生きがいを感じられる、個性と多様性を尊重する社会を実現するために極めて重要です。」とありました。今年、小倉大臣も同趣旨のことをおっしゃっているんですが、一か所表現が変わっておりまして、「女性活躍、男女共同参画は、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会の実現に重要であり、我が国経済社会の持続的発展に資するものです。」ということで、「個性と多様性」というところから個性が抜け落ちて、「多様性が尊重される社会」というふうになっております。

 小倉大臣、個性を削った理由を教えてもらえますか。

小倉国務大臣 記者時代に御担当していただいた山岸先生に質問していただけて、私も光栄に感じております。

 質問でございますけれども、どうしてこの部分の表現が変わったかということであります。

 私といたしましては、前段の、全ての人が生きがいを感じられるためには、当然、一人一人の個性が最大限大切にし生かされなければいけないと思っておりますし、後段の、多様性を尊重するためには、当然、一人一人の個性も尊重されねばならないと思っております。

 だからこそ、よりこの部分、表現をシンプルにするために変更はさせていただきましたが、こういう意味で、目指すべき方向性や基本姿勢につきましては、前回はもとより、これまでの政権の方針として変更はございません。

山岸委員 変更はないという御答弁でございました。ありがとうございます。

 かつてといいましょうか、今でもあるかもしれませんが、やはり自民党さんの中、いろいろ聞いていますと、いわゆる個性嫌いというんでしょうか、個人主義が社会を壊すみたいな論調というのがかつてはよくありましたし、今でも恐らくある程度はあるんだろうと拝察します。でも、小倉大臣からは、そういう立場とはもう変わってきているという話だと思います。

 であればなんですけれども、であれば、この表現は別に野田大臣のオリジナルじゃ全くなくて、安倍総理も実は国会で使っていた表現なんですね。二〇二〇年の予算委員会で、当時の岸田政調会長の質問に対して当時の安倍総理が、全く同じ言葉で、個性と多様性が尊重される社会というフレーズをお使いになっているんですね。なので、やはり今、先ほど長官とも議論したような様々な発言があって、日本社会の異質性みたいなもの、多様性を尊重しないとか、個を潰すみたいな、そういうふうに言われている日本社会の異質性に目が向けられている中で、あえて個性という単語を落とすということは、私は判断として別の道もあったんじゃないかなと思うんですね。

 そこで、大臣、もう一問、これは安倍政権でも使っていた表現でありまして、こういった言葉を不用意にといいましょうか、あえて変更するということは、かえって政府の方針に対して疑念というか不信を招く可能性もあるのではないのかと僕は思うんですけれども、違った判断もあり得たんじゃなかったかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

小倉国務大臣 私もこれは調べてみました。例えば安倍政権時代の担当大臣でありました方の演説は、むしろ、「社会、経済の多様性と活力を高める」という表現でありましたし、その後も、「多様な人々を包摂し、全ての人が幸福を感じられる、インクルーシブな社会」となりましたときもありますれば、「あらゆる人が暮らしやすい社会」となっているところもございます。恐らく、それぞれの大臣ごとの表現があろうかと思います。

 ただ、山岸議員の御指摘も踏まえて、様々な、私の演説を踏まえて感じられ方もあると思いますので、そこら辺は、より多くの方が、我々の基本姿勢や方針をしっかり伝えるためには、どういう表現の工夫の仕方があるのか、ここら辺は様々な御指摘を踏まえながら不断に努力は続けてまいりたいと思います。

山岸委員 ありがとうございます。

 我々五十六年生まれは、とかく、進次郎世代といって、小泉進次郎さんの後ろに隠れてまいりましたけれども、是非、小倉大臣、同世代のリーダーとして、共に頑張っていきたいと思っています。ありがとうございます。

 時間が残り少なくなってまいりましたけれども、岡田大臣、お待たせしました、済みません。小倉大臣、大丈夫でございます、ありがとうございます。

 万博の議論を少しさせていただきたいと思っております。

 万博、やる以上は成功してもらわなければいけないんですけれども、失敗は当然困るわけで、国民負担があってはいけませんから、困るわけでございます。

 しかし、今年、岡田大臣の所信を聞いておりましたらば、非常に強い危機感がにじむ表現になっているなとお見受けいたしました。こう表現されています。「二〇二五年の大阪・関西万博の開幕まで残り二年余りとなりました。一段と開催準備を加速していかなければなりません。」、こうおっしゃっております。

 非常に強い危機感かなと思いますけれども、一体何が今大臣の中の危機感の、ネックというか、原因になっているのか、その根拠を伺います。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 大阪・関西万博の開催準備につきましては、もう四年余り前、二〇一八年の十一月に開催国が日本に決定して以来、参加招請活動などを着実に実施してきたところであります。これまでに百四十二か国からの参加表明をいただくなど、目標の百五十か国の達成も見えてきた状況であります。

 また、政府の取組として、二〇二五年大阪・関西万博アクションプランを取りまとめておりますが、官民一体で進める必要のある空飛ぶ車など様々な施策の具体化に向けた検討を進めてきております。

 また、日本全国の万博にしていくための機運を高める観点から、昨年十二月に、アクションプランの改定で、万博がもたらすメリットを日本全国が享受できるようにするための万博交流イニシアチブというものも追加しまして、全国の交流人口の拡大を図ってまいります。

 そして、教育交流については、文科大臣とも意見交換して、修学旅行と校外学習を合わせて百二十万人の子供たちに万博に来てもらうという目標も具体的に設定しました。

 こうして、政府一丸となって、また地方自治体や民間企業とも連携して準備を加速しておるところでありますが、一方で、今年の四月からはいよいよ会場内にパビリオンの建設工事が始まるために、各国の出展準備を着実に進めていく必要がございます。また、万博交流イニシアチブを具体化し、全国的な機運をより一層盛り上げていく必要があると考えております。

 大阪・関西万博の開幕まで八百日を切った今、より一層の緊張感を持って、そしてまた、よりよい万博、すばらしい万博にしていきたいという強い意欲を持って、「一段と開催準備を加速」というふうに書かせていただいた次第でございます。

山岸委員 大変長く御答弁いただきましたけれども、いろいろやっていますという話なんだけれども、私は、実は一つネックになっているのがカジノの問題ではないかと承知をしております。

 私は、カジノ反対です。維新の会の皆さんもいらっしゃいますけれども、今、我々立憲民主党と維新の会は、国会では一致できるものは一緒にやろうと思っていますけれども、もちろん違いはあるわけでございまして、違うところはしっかり競い合っていくということだろうというふうに思います。

 そこで、今日はカジノの是非そのものは議論しませんけれども、現実として、万博の準備の妨げになっている部分があるんじゃないかという疑問がございます。本来、大阪のIRは二〇二四年の開業を当初予定していましたけれども、様々あって進んでおりません。今、国交省の方では整備検討委員会がございますけれども、こちらの議論も、去年の秋ぐらいには出ると言われていながら、もう年が明けて、進んでいないという状況でございます。

 このIR整備の遅れ、カジノの遅れが万博の整備にどのような影響を与えているのか。具体的には、追加にどういった事業が生じている、あるいは万博の準備の工期にどんな影響を与える、あるいは費用面でどういうふうな追加負担が生じるのか、この辺のところを国としても整理をして国民に示すべきじゃないかと私は思いますけれども、大臣、このIR整備の遅れが万博の事業にもたらす負の影響を今どういうふうに分析されていますか。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 IRの開業については、大阪の区域整備計画では二〇二九年頃の開業を想定しているということで、先ほど御指摘のありました二〇二四年とは計画が変わっております。

 そして、IRの予定地と大阪・関西万博の予定地は別の区画でございまして、御承知のとおりでございますけれども、IR開業に向けた進捗が万博会場の工期や費用などに直接影響を与えるものではない、このように認識しております。

 万博会場のパビリオン建設は四月から開始すべく準備を進めており、引き続き、政府として、工事の進捗管理等をしっかり行い、着実に準備を進めてまいりたいと存じます。

山岸委員 もう時間ですから終わりますけれども、間違っても追加の国民負担ということがないように、しっかり監督していただきたいというふうに思います。

 高市大臣、済みません、時間がなくなりました。また次回、お願いいたします。

 ありがとうございました。

大西委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大西委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。太栄志君。

太委員 神奈川十三区の太栄志でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 日々、地域を歩いて、国民の皆さん、また地域の皆さんの声を聞かせていただいておりますので、その声をベースとして、今日は各大臣の皆さんに質問させていただきます。

 そして、今日も、私のテーマとしての、子供の安全を守ること、そして国家の安全保障につながる外交・安全保障政策、このことをテーマに質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 まず最初に、後藤経済再生担当大臣に質問させていただきます。

 大臣は、先日の所信表明演説で述べられました。TPPに関して、海外活力の取り込みと経済連携の推進、TPP、正確にはCPTPPなどを通じた経済連携の強化において主導的な役割を果たす、そしてまた、飛びますが、イギリスの加入手続がよい先例となるように取り組み、その他の加入要請提出エコノミーが協定の高いレベルを満たす用意ができているか引き続き見極めてまいりますということを述べられております。

 まず、大臣にお伺いしたいのが、大臣がおっしゃったこの主導的な役割を果たすということなんですが、ここをもう少し詳しく教えてください。

後藤国務大臣 TPPは、交渉に当初当たっていた中からアメリカが抜けた後、TPP11として日本が中心となってまとめたという経緯もございます。また、こういうTPPをしっかりとしたレベルの高いものとして、これまで日本が主導してきて、引っ張ってつくってきた、そういう意味で、そのように申し上げています。

太委員 そういった形で、イギリスに替わって、我が国が主導して引っ張っていくということで、この自由貿易協定を広く拡大していくということだと思っております。

 それでは、具体的に聞いていきたいんですが、イギリスの国名が出ていましたが、イギリスと併せて、二〇二一年九月に中国がTPPに申請しておりますが、この中国の申請に対する我が国の立場、そこを教えてください。

後藤国務大臣 CPTPPは、今申し上げたように、市場アクセスの面でもルールの面でも高いレベルの内容になっております。

 中国の貿易慣行に関しては様々な意見があると承知をいたしております。我が国としては、加入要請を提出した中国がこうしたCPTPPの高いレベルを完全に満たす用意ができているかについて、引き続きしっかり見極める必要があるというふうに考えています。

 中国を含めて、加入要請を提出したエコノミーの扱いについては、他のCPTPP参加国ともよく相談する必要がありますけれども、我が国としては、戦略的な観点や国民の理解も踏まえながら対応していくことが必要だと思います。

太委員 戦略的な観点から、そして国民の理解を得ながらということで大臣のお話がありましたが、ここは私はまさに我が国の外交力が問われていると思っております。岸田総理は繰り返しおっしゃっています、新時代のリアリズム外交だということで。

 昨年末に安保関係の三文書、防衛力をしっかりと強化して我が国の抑止力を高めていくということが進んでおります。一方、今回の国家安保戦略も読ませていただく中で、残念ながら、外交的にどう中国と向き合っていくのか、そこがなかなか見えてこないと私は思っておりまして、そういった意味でも、このTPPは一つのきっかけにならないかというふうに思っております。

 もちろん、我が国としては、日米同盟は物すごく大事です。そういった意味で、この強固な日米同盟を生かしながら、自由とか人権とか民主主義、その価値を守っていく、そのことをしなきゃならないんです。

 ですが、一方で、中国は隣国です、最大の貿易相手国。中国とどう共存していくのか、その戦略がなかなか見えてこないと思っておりまして、東大の中国問題の専門家の川島真先生もおっしゃっています。今の政府に対中戦略が全く見えてこない、主体的にどう中国と関わろうとしているのかというのが見えてこないとおっしゃっていましたが、残念ながらそれが今現状だというふうに思っております。

 そういった意味で、では中国とどう向き合っていくのか。先ほど大臣少し触れられておりましたが、中国が満たしていないというか、CPTPPの加入に際して要求水準で何か問題となっている点、御指摘いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

後藤国務大臣 CPTPPは、市場アクセスの面でも、電子商取引、知的財産、政府調達、国有企業、衛生植物検疫などのルールの面でも高いレベルの内容になっています。中国がこうした高いレベルを完全に満たす用意ができているかについてしっかり見極めていく必要があるというふうに申し上げたとおりであります。

 その上で、加入手続の開始については、そもそも、加入手続の開始自身について、CPTPPの締約国のコンセンサスで意思決定をすることになっておりまして、現時点で具体的な評価を我が国が明らかにすることについては、今後のプロセスに影響を及ぼすおそれもあるため、そのことについては差し控えさせていただきたいと思います。

太委員 ありがとうございます。

 なかなか手のうちは明かせられないと思いますが、確かに、元々、TPP自体が対中国ということでアメリカが主導してやってきました。そういった意味で、国営企業に対して大変厳しい措置もありますし、あと、知的財産権の保護に関しても、なかなか中国には壁は大きいと思っております。

 ですから、私がまずお伝えしておきたいのは、まず、我が国としては、この加入条件に関しては決して妥協しない、ここは妥協してはいけないと思っております。それこそがまさにTPPの、高い、自由貿易のハイスタンダードだと思っておりますので、そこは譲らないとしながらも、ですけれども、ではここからどうしていくのかということでお伝えしておきたいのが、安全保障上、先ほども言いました、アメリカと我が国というのは死活的に大変重要な利益を共有しております。一方で、経済的には必ずしも一致しないところも多いと思っておりますので、そういった意味では、そこは、我が国としては、したたかに、岸田総理が言う新時代リアリズムで、情勢をしっかりと見据えながら対処しなきゃいけないと思っております。

 そういった意味で、今回、中国をどう我々の既存のルールに巻き込んでいくのか、取り込んでいくのか、そういった視点から、是非とも大臣には、TPPにせっかく加入したいと中国が意思表示していますので、中国にしっかりと国内改革、自己改革を促す。私はこれはいいチャンスだと思っていますので。中国の改革派に対してもずっと、これから人口が減っていく中で、どうイノベーションを起こして経済成長していくのか、彼らも真剣に取り組んでいますので、そういった意味で、我が方から手を差し伸べられないかというふうに思っています。

 大臣、そこをちょっと踏み込んで、私は、我が日本が中国のTPP加盟を後押しするということを、是非ともここは大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思っております。お願いいたします。

後藤国務大臣 先ほども申し上げたとおりで、TPPの加入手続では、加入を希望するエコノミーが加入要請を提出した後、TPP委員会でそのエコノミーの加入手続の開始の可否をコンセンサスにより決定する、そういう仕組みになっております。

 今、委員は我が国としての立場を求められたんだろうというふうに思いますけれども、今現在、英国について加入手続が進められているところでありまして、日本は、その英国のAWG、加入のワーキンググループの議長もいたしております。それに今のところしっかりと取り組んでいるところでありまして、中国を含む他の加入要請エコノミーの加入手続の開始の可否について特段意思は決定されておりませんので、今後のプロセスも決まっておりませんし、そこのところは慎重な発言を通させていただきたいというふうに思います。

太委員 大臣が一昨日おっしゃったように、まさに主導的な役割を果たしていく。やはり、RCEPに比べても、TPP、まだ人口でも四分の一ですか、あと、いろいろな意味でまだまだ規模は小さいです。そういった意味で、どう、中国、高いスタンダードを保ったままやっていくのか。是非とも我が国としてのチャンスに変えていただきたいと思っておりますので、この点。残念ながら、この間、政府の動きは全く、先ほど大臣おっしゃったように、イギリスに対しては働きかけているというのは分かりますが、中国に対してもう少し何らかの手を打っていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 もちろん、アメリカもそうです。アメリカにもう一回再加入してもらう。国内的には大変厳しい状況だと思いますが、そこも含めて、引き続き大臣の主導的な役割を果たしていただくという決意を行動で示していただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 後藤大臣は以上になりますので、どうぞ御退席いただければと思います。どうもありがとうございました。

 続きまして、子供政策についてお伺いさせていただきます。

 子供の命に直結をします通学路の安全確保、この点、私、これは三回目になりますが、同じテーマで聞きたいと思っております。

 こども家庭庁、いよいよ四月からスタートという中で、これは小倉大臣でよろしいんでしょうか、小倉大臣に、通学路行政も是非ともこども家庭庁で司令塔機能を果たしていただきたいと思いますが、この点の御見解、よろしくお願いします。

小倉国務大臣 太先生には、昨年も同様の御指摘をいただきました。交通安全対策の担当大臣としてお答えをさせていただきます。

 通学路の安全確保につきましては、これまでも文科省、国交省、警察庁など様々な省庁が関わっておりまして、交通安全の観点につき内閣府、犯罪から子供を守る観点につき内閣官房を中心とする取りまとめの下、的確に進められてまいりました。

 本年四月に創設するこども家庭庁へ移管する法律、事務の考え方については、一昨年の末に閣議決定をした基本方針において、法律の目的が主として子供の権利利益の擁護、子供や家庭の福祉、保健等の支援を目的とするものを移管する一方で、国民全体の教育の振興、福祉の増進、保健の向上等を目的とするものについては関係府省庁の所管としつつ、子供の視点から総合調整を行うこととされております。

 この点、登下校時の通学路における防犯も含め、防犯教育の推進など犯罪から子供を守るための対策については、主として子供の安全に関するものでありまして、こども家庭庁に移管することとされました。

 一方で、通学路を含めた交通安全につきましては、子供に限らず、交通安全政策全体の中でその向上を図ることが効果的であると考えておりまして、そのため、引き続き、交通安全対策基本法に基づく交通安全基本計画に従い、内閣府が取りまとめを行うこととされております。

 いずれにいたしましても、各行政分野において各々の政策目的を追求する中で、必要な場面でしっかりと調整をし密接に連携をすることが政府全体としての施策の充実、質の向上につながる場合もあると考えておりますので、子供政策の総合司令塔機能を担うこども家庭庁も含め、関係省庁と連携しながらしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

太委員 大臣もお話しされました基本方針の中では、登下校時の通学路における防犯に関してはこども家庭庁ですよね。そういった意味でも、私、これはそんな変な話じゃないと思っていますし、もちろん、通学路行政、道路行政になると、警察、また国交省、内閣府、いろいろと絡んできますので、もちろん文科省も。これはなかなか大変だと思いますが。

 改めて、この子供の問題、八街の事件、あれからもう一年ちょっとですか、一昨年になりますので一年半近くになりますが、今、岸田政権、いろいろと取組をなさっているというのはもちろん存じ上げていますし、危険通学路一斉点検をして、七万二千件のうち、大体六割ぐらいですか、解消してきているというのも分かりますが、これは私もやはり、地域で活動していても、一番言われるのがこの問題です。なぜかというと、対応が遅いから。もちろん、国も各自治体も予算が限られていますので大変です。ですけれども、だからこそ、子供を一つの軸にしながら予算をつけていくこと。

 いつも親御さんたちに言われるのが、どこに言っていいのか分からない、たらい回しになるということで、そういったことも含めて、やはり私は、この問題、こどもまんなか社会をつくるということですので、子供に過ごしやすいところというのは、大人にももちろん、シニアの皆さんにも安心して使える道路だと思いますので、そういった意味で、何とか突破口を開いていただきたいと思っております。

 それと絡めまして、これも前回も質問させていただきましたが、まさに、親御さんあるいは地域の方たちが、この場所が危ないと思って市役所に言っても、あるいは市議会議員とかに言っても、なかなか、ずっと、県道だからだとか国道だからだということで、たらい回しになってしまいます。それは、やはり私は行政とか政治に対する不信につながると思っています。

 そういった意味でも、この相談窓口を一元化していく、危険通学路の一一〇番を、これこそこども家庭庁の方で、司令塔として設置の方向に動いていただけないかと思っておりますが、ここをどうぞよろしくお願いいたします。

小倉国務大臣 太先生に言及いただきました八街市の死傷事故を受けて、緊急対策を策定をさせていただきました。まず、その着実な実施に努めたいと思っております。

 先ほど申し上げたように、交通事故に関しましては、当然、子供に対するリスクもありますれば、あるいは高齢者とか障害者とか、様々な方に配慮してそれぞれの交通安全を守らなければいけないということもありますので、やはり政府全体として取り組む必要があると思いますが、ただ、子供の目線から見てしっかり交通の安全を守る必要もあると思いますので、そういった視点から、こども家庭庁がしっかり関係省庁の一つとして関わっていくべきだというふうに私も感じております。

 御提案のホットラインのこども家庭庁への設置につきましては、情報提供者にとって一番効果的な提供相手がいずれかという観点などから考えるべきものだというふうに思っております。

 この点、地域によって状況は様々でありますものの、太委員も毎日のように地元を回っていらっしゃるのでお感じになっていると思いますが、既に、住民に近く、危険箇所の実態を熟知している地元自治体、教育委員会、学校、PTA、道路管理者、警察等において通学路の合同点検がなされており、また、こうした方々が把握された危険箇所については、こういった地元に密着をされている方々がきちんと相談した上で、警察官や防犯ボランティア団体等における重点的な警戒、見守り、ガードレールなど交通安全施設等の整備や歩道の設置など、地域の実情、緊急度に応じ対応がなされていると承知をしております。

 このような観点からも、地域から離れた国に窓口を置くことについては慎重な検討が必要と考えておりますが、いずれにいたしましても、関係省庁とこの点もしっかり連携をして、通学路の安全確保に努めてまいりたいと思っております。

太委員 大臣、ありがとうございます。

 いずれにしましても、私、やはり一番の問題は縦割り行政だと思っておりまして、四つの省庁、あと県と国と市、それぞれ、ずっとたらい回しになって放置されてしまう。いろいろな形で改善していただく方向に行っているというのは分かりますが、それでも、本来であれば、子供が安心して学校へ行けるという、これは最低限の条件、状況だと思っておりますので、そこへ向けて是非ともまた御尽力いただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 そして、次に移りたいと思います。次、これも少子化に関係することなんですが、保育士の処遇改善ということで。

 これも、先日も、本当に切実な、保育士の方から、御家族の方からも私はお声かけいただいたんですが、やはりコロナもあって、本当に今厳しい状況が続いているということで、それというのは、保育士の方だけじゃなくて、子供を預ける親御さんにとっても、安心して預けられない、こういった状況。

 もちろん、岸田政権の中で、ちょうど一年前、保育士の収入に三%程度の上乗せ措置ということで、月額九千円を行った。しかし、政府の配置基準以上に保育士を各保育園が雇用していることが多いために、月額九千円も結局薄まってしまっていて、十分に行き届いていない、そういった制度的な欠陥があります。そういった意味では、実際に働いている人たちにしっかりと届いていく、そういった支給に移すべきだと思っておりますので、この点に関しては是非とも御留意いただきたい。

 次もちょっと併せて質問させていただきたいと思います。

 そして、やはり保育士の配置基準の見直しについて取り組んでいただきたい。いろいろ動いているというのは分かっていますけれども、この制度自体が一九四八年からもう七十年以上ずっと続いている、そういった中で、一人当たり、保育士さん一人が受け持っている子供の数、これはやはり我が国はちょっと異常な数だと思っています。ドイツは一人当たり九名見る、ニュージーランド十名、イギリスでも十三名です。我が国は一人当たり三十名、三倍近く。

 これというのは、やはり子供のことを大切にしていない国というのを象徴している数だと思っていますので、そこも是非とも、大臣おっしゃっているとおり、この三月末までですか、に取りまとめる、骨太の方針に向けた子供政策の大枠を作っていくという流れがありますので、そこに是非とも、安全で質の高い保育の実現のために、保育士の処遇改善と人員配置基準の見直しを入れていただきたい、これをお願いをさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。コメントをいただけますか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 まず、保育士の配置基準のところでございますけれども、保育の質の向上等のためにも、保育士等の配置の改善を図っていくことは極めて重要だと考えております。御指摘のとおりでございます。

 令和五年度予算案においては、現場の保育士の負担軽減を図るため、大規模な保育所においてチーム保育推進加算の充実を行うほか、見落としなどによる園児の事故を防止するための支援員の配置を推進することとしております。

 現在、総理の御指示を踏まえ、小倉大臣の下で、関係府省会議を開催し、総理から示された基本的方向性に沿って議論を進め、まずは、三月末を目途として、子供、子育て政策として充実する内容を具体化することといたしております。取りまとめに当たりましては、社会全体の意識を変え、子供、子育てを応援するものとなるよう、個別の施策だけではなく、ライフステージを通じた施策のパッケージを示す必要があると認識をしております。

 今後幅広く議論を進めていくことから、現時点では個別の施策の是非を述べる段階にはないことを御理解賜れればと思います。三月末を目途として、小倉大臣の下、子供、子育て政策として充実する内容を具体化してまいります。

 また、処遇のところでございますけれども、保育所等の現場におきましては、公定価格上の配置基準を超える職員が実際に配置されていることは承知をしております。

 今般の保育士等に係る三%程度の処遇改善の補助額や加算額の算定に当たりましては、各施設の事情や職員配置状況は様々であり、地方自治体ごとに単独補助事業の実施状況も異なる中で、全国一律に統一的なルールに基づいて算定する必要があることから、これまでの処遇改善等加算と同様に公定価格上の配置基準に基づいて算定をするとともに、施設が職員を独自加配している場合でも、補助金の算定対象でない職員についても、柔軟な配分により一定の処遇改善を行うことを可能とする仕組みとしたところでございます。このため、各職員個人の改善額には、月額九千円程度に届かない場合やばらつきが生じ得るところでございます。

 いずれにしましても、今般の措置が保育士等の処遇改善に着実に活用されるよう、引き続き、事業者や地方自治体に対して丁寧に説明をするとともに、こちらも同様、三月末の取りまとめに向けて、小倉大臣の下、子供、子育て政策として充実する内容を具体化してまいりたいと思っております。

太委員 和田副大臣、どうもありがとうございました。

 是非とも、これは本当に、保育士の処遇改善、またこの配置基準の見直しということで、小倉大臣もいらっしゃいますので、是非ともこれは実現、三月末までにしっかりと入れて進めていただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 小倉大臣からありますか、もし一言、意気込みを聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

小倉国務大臣 和田副大臣が申し上げたとおりでございまして、三月末を目途に、しっかりとしたたたき台を作らせていただきたいと思います。

 その際、個別の政策というよりも、やはりパッケージで、子育て当事者に対して安心をしていただくたたき台を作る必要があると思っておりますので、それに向けて、様々な声を丁寧に聞きながら議論を重ねてまいります。

太委員 どうもありがとうございました。

 小倉大臣、あと和田副大臣に関しましては、これで私の質疑は終わりますので、御退席いただいて大丈夫です。

 それでは、続きまして、松野官房長官を中心に質問させていただきたいと思います。新たな安保関連の三文書の策定についてお伺いしたいと思います。

 まず、松野官房長官に、日米防衛協力のガイドライン、指針の見直しの必要性についてお伺いしたいと思っております。

 まず、ガイドラインの見直しは必要でしょうか。大臣の御見解をお願いいたします。

松野国務大臣 太先生にお答えをさせていただきます。

 日米防衛協力のための指針の見直しについては、同盟関係に関連する諸情勢に変化が生じ、そのときの状況を踏まえて必要と認める場合に両政府が適時適切な形で行うものであります。

 まずは、新たに策定した国家安全保障戦略等を踏まえ、今後の日米防衛協力の内容や日米の役割、任務、能力を含め、日米で幅広く議論をしていきたいと考えております。

 政府としては、直ちに日米ガイドラインの見直しが必要となるものと考えているわけではありませんが、いずれにせよ、日米ガイドラインの見直しの必要性についても不断に検討をしていく考えであります。

太委員 官房長官、同じことをまさに一月十六日の記者会見で述べられておりました。

 今、同盟関係に変化があれば見直すということなんですが、今回、反撃能力の保有を閣議決定した中で、これは同盟関係に変化が出たと思うんですが、どうなんでしょうか、ここは変化は出たということでよろしいでしょうか。官房長官、お願いいたします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 今回の安全保障戦略におきまして、特に反撃能力については、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していく考えであり、今後日米間で議論していくことになりますが、日米の同盟関係というのは今後ますます重要性を増していくものと考えております。

太委員 ちょっと違う答えだったと思うんですが。

 それじゃ、同盟関係に役割の方で変更があったという認識でよろしいでしょうか、官房長官。今のお話ですと、変更があったということでよろしいでしょうか。お願いいたします。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど官房長官からも御答弁されたとおり、政府といたしましては、まずは、新たに策定した国家安全保障戦略等を踏まえまして、今後の日米防衛協力の内容や日米の役割、任務、能力を含め、日米で幅広く議論をしていきたいというスタンスでございます。

 その上で、今御指摘のございました反撃能力につきましても、弾道ミサイル等の対処と同様に、日米が協力して対処していく考えでございまして、今後日米間で議論していくこととなるということでございます。

 そして、先ほど長官からも申し上げましたとおり、政府として、直ちに日米ガイドラインの見直しが必要となるものと考えているわけではございませんが、いずれにいたしましても、日米ガイドラインの見直しの必要性についても不断に検討してまいるという考えでございます。

太委員 ごめんなさい、ちょっと分かりづらかったんですが、もう一度明確にお答えいただきたいんですが、じゃ、同盟関係には、役割の変更はあるということでよろしいですね。もう一度、ごめんなさい、明確に、あるかないかでお答えください。あるということでよろしいですね。

 官房長官、これは官房長官のガイドラインに関する発言を受けての質問なので、どうかお願いいたします。今回、反撃能力の保有等を含めて、この安保三文書の改定において、日米の役割の変更があるのかないのか。どうかお願いいたします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 繰り返しになりますけれども、新たに策定した国家安全保障戦略等を踏まえ、今後の日米防衛協力の内容や日米の役割、任務、能力を含め、日米で幅広く議論をしていきたいと考えております。

太委員 ごめんなさい、もう少し明確に。

 防衛省の方でも構わないので、それで、変更はあるんですか、ないんですか、そこを明確にお願いします。今、官房長官、お答えになられなかったので、お願いいたします。

安藤政府参考人 御答弁申し上げます。

 今後日米の間でしっかり議論をしていくということになるところでございますが、先生が今御指摘もございました、いわゆる反撃能力のところについて申し上げますと、これまで、いわゆる敵基地攻撃につきましては、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存していると説明してきたところでございます。その上で、今後、我が国が反撃能力を保有することに伴いまして、これまでのように米国の打撃力に完全に依存するということではなくなるというところは、そのとおりでございます。

 他方で、従来から政府が御答弁申し上げているとおり、日米の基本的な役割分担は変更がない、また、米軍が打撃力の使用を伴う作戦に従事することは引き続き想定されるということも御説明してきているところでございます。

太委員 ごめんなさい、ちょっと分からなかったんですが、これは変更があったということですね。今、あったとお話しなされましたよね。それでよろしいですね。役割に関しての変更はあるということで理解しました。

 それなら、やはりガイドラインを変えましょうよという話だと思いますよ。

 官房長官は明確におっしゃいました。日米の役割に変更が出てきたら、あと、防衛政策の大枠の変更があった場合にはということで、ガイドラインをちゃんと見直すべきだということをおっしゃいましたので、あるということでよろしいですよね。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、まず、日米の間におきまして、新たに策定した国家安全保障戦略等を踏まえまして、今後の日米防衛協力の内容や日米の役割、任務、能力を含めまして、まず日米で幅広く議論をしていきたいということでございまして、いずれにしましても、日米ガイドラインの見直しの必要性についても不断に検討していくということでございます。

太委員 普通に考えても、役割が完全に変更になったというふうに認識できると思うんですよ。これは当たり前ですよね。盾と矛の関係、これまで米軍に矛を依存していた部分を、一部我が国が担うようになった。今の御説明にもありました、一部担うようになりました、打撃力を。ということは、ガイドラインを早急に変えなきゃ駄目じゃないですか。それなのに、今、整合性が物すごくなくなっていると思います。

 官房長官は、先ほど、現時点ではガイドラインの見直しをする必要はないと明確におっしゃっているし、一月十六日の時点でも、これは2プラス2の直後ですよね、十三日に終わりましたので。その時点でも、ガイドラインの見直しはしないとかたくなにおっしゃっていたので、私はこれは相当問題だと思っていました。

 この反撃能力の保有を政策決定した中で、日米同盟の中の役割、任務又は能力の、もう一度再定義をまさにしなきゃいけない。これは専門家の皆さんも言っていますよ。それなのに、なぜか、政府も、官房長官始め防衛省もこれを認めようとしないので、ちょっとおかしな議論になり始めていますので、ガイドラインを変更すると、官房長官、ここで明確に御発言いただけますでしょうか。官房長官、お願いいたします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 これは先ほど答弁をさせていただいたところでございますけれども、日米防衛協力のための指針の見直しについては、同盟関係に関連する諸情勢に変化が生じ、そのときの状況を踏まえて必要と認める場合に両政府が適時適切な形で行うものと考えております。

 まずは、新たに策定した国家安全保障戦略等を踏まえ、今後の日米防衛協力の内容や日米の役割、任務、能力を含め、日米で幅広く議論をしていきたいと考えておりまして、政府としては、直ちに日米ガイドラインの見直しが必要となるものとは考えているわけではありません。

太委員 官房長官、そんなに悠長に構えている時間はまずないと私は思っています。しかも、今お話しされたように、今、情勢は変わっていますし、まず、岸田総理大臣も所信表明演説で言っていますよね、今回のこの政策決断、日本の安全保障政策の大転換だと。

 前のガイドラインというのは二〇一五年でした。あのときに比べて、今回の三文書の中でも、各国、周辺国に対する脅威認識というのは相当変わっていますよね。中国に対しては、国際社会の懸念事項だったというのが前回、二〇一三年。二〇一五年を越えて、今回は、最大の戦略的な挑戦だということを言っていますし、北朝鮮やロシアに対しても、認識は、政府の使う言葉遣いも含めて相当変わっていますし、我が国の国際情勢というのは相当変わったという中で、しかも、日米の盾と矛の関係も、我が国が矛の一部を担うということで、これは大きく変わっています。

 そういった意味で、私は、早急にガイドラインを見直しをしていくということをしていただかなきゃいけない。官房長官、先ほども、直ちにというわけじゃないとおっしゃいましたが、私はそういうふうに悠長に構えていられないと思っていますし、しかも、政府から、幾つかの、これは産経新聞と、あと日経新聞も出ていますね、ガイドラインじゃなくて、日米の作戦計画の見直しをやっていこう、非公表でやっていこうということが出ています。

 まさに、今回、我が国にとって大きな政策転換でもありますので、そこは明確にガイドラインでこういった日米の役割分担をしていく、そして、任務、能力に関しても、どういった形でお互いに力を合わせてやっていくかということをしっかりと示さないことには、示すこと自体がまた周辺国に対する抑止力にもつながると私は思っていますので、そこを怠って何か中途半端に進めようとしていることが、官房長官、ごめんなさい、言い方が少し変わっているというのは分かりますよ、不断に検討していくとおっしゃっていますけれども、ですけれども、ここは早急に進めていきたい。

 それと、もう一つ。余り時間がなくなってしまいました。今回の我が国の三文書改定に際しての韓国の反応というのはどんな感じでしょうか。どうかお願いいたします。

石月政府参考人 お答えいたします。

 今回の三文書についての韓国側の反応でございますが、韓国外交部の報道官が、質問に答える形で、朝鮮半島を対象にした反撃能力の行使など、朝鮮半島の安保と韓国の国益に重大な影響を及ぼす事案については事前に韓国と緊密な協議と同意が必要であるということを述べたということを承知しております。

太委員 そうですね。韓国は大分抑制的な反応で、まさしく正論を言っていると私は思っております。まさに、韓国の憲法では、北朝鮮の領土も韓国の領土と規定されている。そういった中で、もし我が国が反撃能力を朝鮮半島に対して行使するのであれば、しっかり協議してくれということであります。

 今、さんざん、国際情勢が厳しいと政府も言っています。それであれば、やはりガイドライン、もちろんまず日米です、今回の大きな政策転換を受けて日米で進めるべき、明確に。

 さらには、やはりこの朝鮮半島有事、また台湾有事を決して起こさないためにも、この抑止力を高めるという観点からも、韓国を巻き込んでいく。朝鮮半島で何かあったときに、緊急事態に韓国と急いで協議するといったって、これはもう本当に手遅れです。だからこそ、今からそのことを、韓国も含めたガイドライン作成へ向けて進めていただきたいと思っております。

 官房長官、そこに関して御見解をいただければ。お願いいたします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 日米同盟は我が国の安全保障戦略の基軸であり、かかる観点から、日米の防衛協力についての一般的な大枠及び政策的な方向性を示すものとして、日米防衛協力のための指針を策定しています。

 現時点において、このような指針を日米韓三か国で策定するとの考えを有しているわけではありませんが、北朝鮮による核・ミサイル開発も含め、我が国や地域を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米韓の連携は重要であり、引き続き連携強化に向けてしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

太委員 官房長官、是非ともこれは前に進めていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 ごめんなさい、ほかにもあったんですが、最後に。

 今回の反撃能力の行使に際して、国会承認。これはもちろん、武力攻撃事態のときの防衛出動に際して国会承認というのを取るというのは、そういったたてつけになっているということは了解しております。しかし、より今回の政策転換において国民的な幅広い理解を得ていくためには、私は、政治がしっかりと反撃能力に際してコミットしていくという意思を示すためにも、例えば事態対処法などで法改正をして、明確に、今回、法律の中に明記すべきだと思っておりますが、この点に関して、官房長官、御意見をどうかお願いいたします。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 反撃能力も含め、我が国が武力行使を行い得るのは、武力の行使の三要件を満たす場合に限られます。実際の武力行使を行うために自衛隊に防衛出動を命じる際には、原則として事前の国会承認を求めることが法律上明記されています。また、事態対処法に基づいて定める対処基本方針についても国会の承認を求めることになっています。

 このように、反撃能力を含む我が国の武力の行使は、国内法の手続にのっとり、国会の関与を得て行われるものと考えています。

大西委員長 申合せの時間は過ぎております。一言。

太委員 どうもありがとうございました。

 ありがとうございました。以上です。

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今日は、まず最初に後藤大臣に、日本学術会議をめぐる問題について質問をいたします。

 菅政権以降の政権が行ってきた、学術会議が推薦する会員六人の任命拒否には、厳しい批判の声が寄せられてきました。任命拒否は直ちに撤回をすべきであります。

 それなのに、この六人の任命拒否をそのままにして、今国会提出予定の学術会議法案では、選考諮問委員会の設置や、会員以外による推薦を盛り込む法案を提出しようとしていることは極めて重大であります。アカデミーの独立性を侵害するものと言わざるを得ません。

 日本学術会議は、各国のアカデミーの設置形態について分析をし、その不可欠の要件として、学術的に国を代表する機関としての地位、そのための公的資格の付与、国家財政支出による安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、会員選考における自主性、独立性の五点を挙げています。このような要件は、アカデミーの独立性に不可欠であります。

 そこで、今回、政府の介入でクローズアップされたのが、会員選考における自主性、独立性の問題です。日本学術会議は、現会員による会員の選出、コオプテーションを基本とすることが適当だと述べてきました。この方式は、海外の多くのアカデミーで採用されている標準的な会員選考方式だと指摘をしております。

 学術会議事務局にお尋ねします。

 日本学術会議の各国アカデミー等調査報告書では、各国アカデミーにおける会員の選出方法についてどのように指摘しておりますか。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の各国アカデミー等調査報告書は、日本学術会議の国際協力常置委員会が、各国のアカデミーについて、設置の根拠、会員の人数、任期、選出方法、機能、予算等について調査を実施し、平成十五年に取りまとめたものと承知しております。

 会員の選出方法につきまして、同報告書では以下のとおり指摘しているところでございます。

 「各国アカデミーは、ほぼ全ての機関において、そのアカデミー内の会員により推薦・選出される方式(コオプテーション)を採用している。これは、アカデミー会員は学術上高い評価を得た者で構成されているべきであり、会員選出の判断はアカデミー会員のみによって可能であるという考え方に基づくと理解できる。」

 以上でございます。

塩川委員 今説明がありましたように、各国アカデミーは、アカデミー内の会員により推薦、選出される方式、コオプテーションを採用しています。

 後藤大臣にお尋ねしますけれども、このようなアカデミー内の会員により推薦、選出される方式というのは、民主的な国家のアカデミーにおいては不可欠の要件ではありませんか。

後藤国務大臣 今、コオプテーション方式のお話はさせていただいたとおりであります。

 そういう意味で、日本もコオプテーション方式を取っておりますし、今検討を、より国民の皆さんに理解され続ける学術会議であるためにどういうふうに考えていくのがよいのかという検討においても、このコオプテーション方式を前提として、より国民に理解されるという透明な仕組みをというふうに考えております。

 先ほどのお話の中で、世界の学術会議、アカデミーと日本の学術会議が非常に違いますのは、世界のアカデミーの中で、独立した民間団体ではなくて政府の組織そのものであるのは日本の学術会議だけでございます。

塩川委員 アカデミーの独立性のポイントとして、今言ったような会員選考における自主性、独立性と同時に、五つの要件ということも冒頭申し上げました。そこがやはり肝腎で、国を代表する機関としての地位を与える、そのための公的資格の付与、国家財政支出による安定した財政基盤、そして、活動面での政府からの独立に加えて、会員選考における自主性、独立性、この点で共通をしているという点が各国のアカデミーの特徴だということが重要であります。

 日本もコオプテーション方式を取っている、コオプテーションを前提として考えていくという話がありましたけれども、今回、政府が、日本学術会議の在り方についての方針の策定に当たって、各国のナショナルアカデミーの在り方についての調査を行っていると聞いております。そこでの会員選出方法については、どのような調査結果だったんでしょうか。

後藤国務大臣 御指摘のとおり、内閣府におきましては、昨年、米国、英国、ドイツ、フランスの四か国のアカデミーの在り方について調査を実施したところでございます。

 ナショナルアカデミーの設置形態には、それぞれの歴史的経緯を踏まえた多様性がありまして、アカデミーが国の機関であり、会員が公務員であるとされているのは、主要先進国のアカデミーの中では日本だけであると認識をいたしております。

 調査の内容については、今まだ、現在確認中という状況でありまして、詳細まで申し上げられない状況ではありますけれども、アカデミーが日本の特殊法人のような組織であるフランスにおいては、会員について大統領の認証が行われております。それ以外の、アカデミーが民間の団体である国においては、国は会員の選考に関与しておりませんけれども、私的な団体の会員選考が会員によって行われるのは当然のことであるとも考えられると思います。

塩川委員 コオプテーションを基本とするかどうかというのはその設置形態で問われているとなると、それ自身が世界標準から外れることになりかねないということを指摘をしておきます。

 そういった調査については、すぐ公表してもらえますか。

後藤国務大臣 今申し上げたとおり、政府の発表する調査ということでございますので、正確を期して、現在確認をしているところでございます。

塩川委員 是非直ちに出していただいて、それで議論に付していくということこそ、政府の行うべき姿勢だということを申し上げておきます。

 内閣府が示しています学術会議改正法案の概要では、会員及び連携会員以外の者で構成される選考諮問委員会を新たに設置をし、学術会議が会員候補者を選考するときや選考に関する規則を定めるときは、事前に同委員会に諮問する仕組みを導入するという話であります。

 この選考諮問委員会というのは誰が選ぶんでしょうか。

後藤国務大臣 詳細については検討中ではございますけれども、委員は、科学や科学の研究環境などについて広い経験と識見を有する者について、一定の手続を経て会長が任命をする、学術会議会長が任命することを想定をいたしております。

 学術会議は国費で賄われる国の機関として独立して職務を行うことから、国民から理解され信頼される存在であり続けるためには、運営の透明化にとどまらず、活動を担う会員、連携会員の選考についても、国民の目から透明かつ厳格なプロセスで行われることが必要であるということで、選考諮問委員会を諮問者として置くことについて検討中でございますけれども、その会長は、今申し上げたとおり、学術会議の会長でございます。会員を選考するのは会長でございます。

塩川委員 選考諮問委員会は誰が選ぶのかと。

後藤国務大臣 もう一度申し上げます。

 選考諮問委員会の委員は、学術会議の会長が選びます。

塩川委員 その際に、政府、総理大臣などの関与というのはどうなるんでしょうか。

後藤国務大臣 今、詳細についてまだ確定をしているわけではありませんけれども、今のところでは、一定の手続は考えておりますけれども、国側がその諮問委員の任命に関わるという、そういう前提で議論をしておりません。

塩川委員 一定の手続ということを含めて、政府側の関与というのはどうなのかといったことについて不透明なままであれば、これは理解が得られないということにもなります。そういう点でも、学術会員に対して真摯に説明も行っていく、そういったことこそ必要であると考えます。

 選考諮問委員会による会員選考への関与自身が総理大臣による任命拒否の正当化につながるのではないか、こういった懸念の声もあるわけですから、そういった声を真摯に受け止めていく必要があると思います。

 改めて、各国アカデミーが採用している、アカデミー内の会員により推薦、選出される方式が民主的な国家のアカデミーにおいて不可欠の要件だ、この点をゆるがせにはできない。その点で、選考諮問委員会がどういう位置づけになるのかといった点について、ここに口を挟むようなものになっては決してならないということを重ねて申し上げておきます。

 それと、法案は、日本学術会議に対して、政府等と問題意識や時間軸を共有することを求めています。

 この点について学術会議は何点か指摘をしておりますけれども、学術には一国に限定されない普遍的な価値と真理の探求という独自の役割があり、これには一国単位の利害には左右されずに、知の探求を通じて人類全体に奉仕するという意味が含まれている、また、政策決定に当たって学術は、政治や経済の観点からは抜け落ちかねない重要な知見を提出する可能性を有している、これらの知見は、必ずしも政府と問題意識を共有しないところからも得られるはず、さらに、中長期的な観点から物事を考える学術と、短期的な判断を常に迫られる政治的意思決定との間で、時間軸を共有できない場面が生じるのはむしろ当然だと指摘をしています。

 こういった指摘を真摯に受け止めるべきではありませんか。

後藤国務大臣 まず最初に申し上げるのは、問題意識等の共有というのは、政府等との結論の共有を求めているというわけでは決してないということであります。

 その上で、政府としては、学術会議が国費で賄われる国の機関であって、政府等への科学的助言を公務として行うことを役割とする機関である以上は、受け手側の問題意識や時間軸や現実に存在する様々な制約等を十分に踏まえながら審議等を行っていただく必要もあると考えておりまして、結果的にそれが学術会議の科学的助言の実効性を上げることにもつながるのではないかということも申し上げております。

 また、学術会議においても、課題設定等に当たって、多方面の関係者と十分な対話、意見交換を行いながら進めていくことの重要性を自ら十分に認識されて、文書にもされておられます。このような対話機能の強化に向けての学術会議の取組を後押しするため、必要な枠組みを整備していきたいということを申し上げている次第でございます。

 いずれにしても、学術会議に対しては、その独立した活動と何ら抵触することではないということについても、一層丁寧に御説明し、十分に御意見を聞きながら検討を進めるよう心がけてまいりたいと思います。

塩川委員 政府のこういった対応について、法案の内容についても、厳しい批判の声が寄せられているわけです。学術会議は国益のためではなくて、真理を探求し人類に貢献するために存在をする、その認識の上に独立性が担保されるべきといった意見や、軍拡を急ぐ政府と時間軸と問題意識を共有したら学術会議の本来的な存在意義がなくなるという指摘や、これまで軍事研究を否定する立場を取ってきた学術会議を改造する狙いがあるのではないのか、こういう指摘に対して真摯に受け止める必要がある。

 学術会議による懸念事項、また、このような批判の声に耳を傾けて、アカデミーの独立性を侵害する懸念のある法案については、立ち止まって再考すべきではありませんか。

後藤国務大臣 まず、個別の問題について、一つずつ御指摘についてお答えするべきではないということかもしれませんけれども、軍事的な国家を目指すということでもありませんし、我々、アカデミアに軍事研究を求めるつもりも一切ありません。

 デュアルユースの問題で、例えば、先端科学技術が将来軍事転用される可能性をしっかりと識別できる議論が今できるのかどうかとか、そういったことについては我々としても意見があるわけでありますけれども、そうしたことは、逆に、学術会議の方が、先端的分野においてはそういう議論はもう現実的に技術的にできないということを会長が発表されておられますし、そのことについては同じ方向だと思っております。

 いずれにしても、総会や声明において様々な御意見、御懸念が示されていることはよく承知しておりますから、しっかりと受け止めさせていただきたいというふうに思います。

 そして、学術会議の独立性について申し上げれば、今回の見直しにおいて、独立性に変更を加えるという考えは一切ない、三条をしっかりと守った運営をしていく、そのことは改めて申し上げたいというふうに思っています。

 学術会議においても、今回、より良い役割発揮に向けてに基づいて進めておられる改革があるわけですけれども、改革の必要性や方向性については、政府と問題意識は共有されているというふうに思っています。学術会議における改革の成果を着実にしっかりと法律に取り込むことで、今後、安定的な運用を担保しつつ透明性を確保する、そういう趣旨で法案を提出するということが必要であるというふうに考えております。

塩川委員 この間、学術会議をめぐる政府の対応として、政府方針が出され、法案の作業が進められている、これについて懸念や再考を求めるという学術会議の声があるわけであります。これこそ真摯に受け止めていくべきだということを申し上げておくものです。

 アカデミーの独立性の侵害、これが何を招くのかがやはり問われているわけであります。

 ロシアでは、二〇一三年に、プーチン政権の下、ロシア科学アカデミー改革法案が突如として提出をされて、科学アカデミー幹部会や研究所等が反対を表明したものの、同法が成立をする。その後、二〇二二年のアカデミー総裁選挙を始め、繰り返し、ロシア科学アカデミーに対する政府の介入がありました。

 佐藤学東大名誉教授は、アカデミー、学問の自由の侵害が戦争へと突き進む一歩だったと指摘をしています。そういう点でも、学術会議への介入が軍事への科学技術動員の動きと軌を一にするのではないのか、そういう危惧の念というのが強くあるということを正面から受け止めて、こういった介入をきっぱりとやめるべきだと。

 学術会議の独立性を言うんだったら、六人の任命拒否こそ撤回をすべきであります。直ちに任命をという声を求めている学術会議のその声に応えて、学術会議の独立性を口にするんだったら、この六人の任命拒否、直ちに撤回をして、任命をすべきではありませんか。

後藤国務大臣 政府としては、この任命問題については、これは既に総理の権限を行使して決着済みだというふうに考えております。

塩川委員 この任命拒否がそのままという点で、政府への信頼がそもそも失われているんですよ。そういう点でも、学術会議の独立性を言うのであれば、この任命拒否を直ちに撤回をして、六人の任命を行えということを強く求めておきます。

 以上で学術会議関連を終わりますので、後藤大臣、退席いただいて結構です。

 次に、新たな防衛力整備計画に関する財源確保についてお尋ねをいたします。

 我が党は、五年間で四十三兆円という大軍拡と、その財源確保には反対であります。この立場で質問いたします。

 防衛力整備計画期間中の二〇二三年度から二七年度までの財源確保は、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入、いわゆる防衛力強化資金、税制措置、国債発行などで行うとしております。

 そこで、今日は歳出改革についてお尋ねをいたします。

 この歳出改革というのはどのような改革を行うのかについて、説明をいただけますか。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 今、防衛力整備計画に関する財源確保のうち、歳出改革について具体的にどのように取り組むのかというお尋ねでございました。

 今般の防衛力強化の財源確保に当たりましては、国民の皆様の御負担をできる限り抑制するといった観点から、徹底した歳出改革は必要であろうと考えてございます。

 具体的には、従来の歳出改革の取組を継続をするということといたしまして、防衛費の増額に当たりましても、非社会保障関係費全体を見直すことで財源を確保してまいりたいという方針の下、令和五年度予算におきましては、非社会保障関係費の増加額を千五百億円程度とする中で、二千百億円の防衛関係費の増額を確保したということでございます。

 令和六年度以降におきましても、同様の考え方の下、毎年度の予算編成過程において検討してまいりたいというふうに考えてございます。

塩川委員 その説明だけだとさっぱり分からないんですよ。配付資料の二枚目の一番下の歳出改革、これを読み上げているわけですけれども、その解説をちゃんとしてほしいんです。この千五百億円と二千百億円の関係もよく分からないんですけれども、その点。

前田政府参考人 それでは、お答え申し上げます。

 この千五百億円と二千百億円の関係ということでございました。

 今回、令和五年度予算におきましては、骨太の方針等に基づきまして、経済、物価動向等を踏まえて柔軟な対応を行いつつ、これまでの歳出改革の取組を実質的に継続することとされてございます。

 したがいまして、社会保障関係費以外、非社会保障関係費の増加額につきましては、従来、プラス三百三十億円程度に抑えてまいりました。これに対しまして、令和五年度につきましては、消費者物価上昇率が、平成二十五年度から令和三年度まででございますが、過去平均の約四・五倍になると見込まれておりますことから、全体で三百三十億円掛ける四・五の千五百億円程度の増加にするという方針がございまして、その中で、防衛関係費以外の非社会保障関係経費につきまして一層の効率化、これが六百億円程度のマイナスでございます、を図ることで、防衛関係費の増額のうち、二千百億円程度に対する財源を確保した、こういうことでございます。

塩川委員 来年度の軍事費以外の非社会保障経費について、この一年間の歳出削減実績の、今言った、一層の効率化と言っていた六百億円と、それから物価上昇見込みに相当する千五百億円、これについては合わせて二千百億円ということで、防衛費、軍事費に回すということであって。ですから、来年度の軍事費以外の非社会保障経費について、この一年間の歳出削減実績六百億円を継続するとともに、物価上昇見込みの千五百億円分はそれ以外のところに回さずに、合わせて二千百億円の財源をつくり、これを軍事費に充てるということでよろしいですか。

前田政府参考人 来年度の物価上昇見込み等、物価、経済上昇の見込みというのは、また別途、それぞれの予算編成過程で検討することになりますけれども、基本的な考え方は先生のおっしゃるとおりでございます。

塩川委員 ですから、この一枚目でいうと、令和五年度の歳出改革のところが二千百億円、〇・二兆円になるんですけれども、更に各年度積み上げて、合計で三兆円になりますよね。これはどういう理屈でなるのか。

 つまり、来年度、二千百億円、物価上昇分を抑えるということと、この一年間で減らした六百億円、それを足し上げて二千百億円になりますから、そういう努力を今後も毎年度毎年度重ねていくということで、ですから、令和六年度でいえばそれが四千億円になり、令和七年度が六千億、令和八年度が八千億、そして令和九年度に一兆円になる、そういうことで、合計で三兆円でよろしいでしょうか。

前田政府参考人 今先生にお示しいただきましたこの図にございます三兆円強という数字でございますけれども、まさに先生のおっしゃるとおり、令和五年度では二千百億円、令和六年度は四千億円、令和七年度は六千、令和八年が八千、そして令和九年が一兆ということで、その二、四、六、八、十というのを全て足し上げれば三兆円になる、そういうことでございます。

塩川委員 それで、配付資料の四枚目、令和四年度の一般会計予算、歳出歳入の構成のところで、歳出の方ですけれども、非社会保障関係経費の中心というのは、ここにあるように、公共事業の六兆五百七十五億、それから文教科振費の五兆三千九百一億、そして防衛が五兆三千六百八十七億、その他が九兆円余りということになっています。

 来年度、五枚目ですけれども、令和五年度におきますと、防衛関係費がトップになりまして六兆七千八百八十億、そして、防衛力強化資金への繰入れ三兆三千八百六億円があるので、軍事費関連が十兆一千六百八十六億円になります。次いで、公共事業が六兆六百億円、文教科振費が五兆四千百五十八億円ということで、軍事費以外の非社会保障経費の多くを占めるのが公共事業費と文教費ということになりますけれども、ここまで軍事予算が拡大をしていく、先ほどのように、毎年度毎年度二千百億円を軍事費に差し出すために、それ以外の非社会保障関係費について、伸びは抑え込む、今までどおり削る分は更に継続的に削り込むということになれば、当然のことながら、非社会保障関係費の主要な経費である公共事業や文教費、これが増えるどころか削られるということですよね。

前田政府参考人 先生今御指摘ございましたように、この歳出改革によって、確かに非社会保障関係費の中で大きな割合を占めております文教費でありますとか公共事業費がどうなるのかということでございますけれども、歳出改革の対象につきましては、当たり前のことながら、何か特定の分野を念頭に置いているというものではございません。非社会保障関係費全体について見直すということでございます。

 今回の令和五年度予算案について、非社会保障関係費の内訳を見ますと、恩給関係費で三角二百五十二億円の減、エネルギー対策費で三角二百十七億円の減となる一方、科学技術振興費ではプラス百五十四億円の増となるなど、様々な増減がございまして、何か特定の分野を削減して防衛関係費の増額に充てるということではございません。

 その上で申し上げますと、今御指摘のございました文教関係費、令和五年度予算案におきましては、対前年度比でプラス百二十九億円の増額を実現いたしております。公共事業関係費につきましても、これまでに引き続き、安定的な確保を行うことといたしておりまして、前年度比でプラス二十六億円増の六兆六百億円を計上しているという次第でございます。

 今後とも、無駄を排除するなど、歳出改革を徹底してまいりたいと考えてございますけれども、同時に、現下の政策課題に対応いたしまして、国民生活を支えるために必要な予算というものはしっかり措置してまいりたいというふうに考えてございます。

塩川委員 資料の三枚目を見てほしいんですけれども、財務省の資料ですけれども、防衛関係費と他の非社会保障関係費の対前年度増減額の累積額ということで、説明があった骨太の歳出改革について、三百三十億円抑えるという、その積み上げというのが上から二本目の折れ線グラフの骨太の歳出改革目安で、この七年間で二千三百億円程度ということが抑える目安になっているわけですけれども、それを上回って、防衛費が四千億円程度増えている。一方で、公共は一千億円程度しか増えない、文教科振費は六百四十億円程度しか増えない、その他が大幅に減っているということが、これが今後、もっと一層、防衛費はウナギ登りに増えて、その結果、公共や文教が抑え込まれるということが当然出てくるわけであります。

 先ほど、文教費について、来年度増えていると言いますけれども、物価高騰の中では実質マイナスじゃないですか。まさに今、この仕組みにあるように、物価上昇分はもう見ませんよ、そういう理屈の中で抑え込まれているというのは、もう来年度に既に表れているんです。それをその次も、その次も、その次も重ねていけば、一層のこと、しわ寄せを受けるというのは当然のことじゃないでしょうか。

 政府は、子育て予算倍増などと言いますけれども、最も国民からの要望が高い教育費の負担軽減などが放置をされています。この大軍拡によって、文教費が増えるどころか大幅に減らされるんじゃないですか。

前田政府参考人 繰り返しの御答弁で恐縮でございますけれども、我々といたしましては、無駄を排除するという歳出改革は徹底して取り組む必要があると考えてございますが、現下の政策課題に対応して、国民生活を支えるために必要な予算というものはしっかりと措置してまいりたいというふうに考えてございます。

塩川委員 だから、このフレームでは増えないでしょう、しっかり確保できないでしょうということを言っているわけです。

 官房長官、お尋ねします。文科大臣もされておられますから、中身についてもよく御存じだと思いますけれども。

 でも、このフレームだと、どうやったって増やしようがないじゃないですか。ですから、この仕組みでは文教費は増やせないんじゃないのか。それとも、子育て倍増のお金というのは、文教費に入っていない、そもそも枠外だということを示しているということなんですか。お答えください。

松野国務大臣 塩川先生にお答えをさせていただきます。

 防衛費の規模等についての御議論もいただきました。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、国民の命を守り抜けるのか、極めて現実的なシミュレーション等を行い、必要となる防衛力の内容を積み上げ、導き出したものであると考えております。

 これらは、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を堅持した上で、あくまで国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要となるものであります。同時に、本予算において、一般歳出の約六割を社会保障や教育などに充てており、国民生活の向上に直結する経費など、必要な施策を盛り込んでいるところであります。

 今後とも、無駄を排除するなど歳出改革を徹底していきますが、同時に、現下の政策課題に対応し、国民生活を支えるために、必要な予算額はしっかりと措置をしていく考えであります。

 こうした内閣の方針について国民の皆様に御理解を深めていただけるよう、国会での議論も含め、引き続き丁寧な説明を行っていく考えであります。

塩川委員 説明になっていないんですよ。

 ではお聞きしますけれども、先ほども聞きましたけれども、このフレームだと教育予算を大幅に増やすという仕組みにならないわけですよね。ですから、政府が言っている子育て予算倍増というのは、こういうスキームだと、教育予算は入っていないということなんですか。子育て予算倍増には教育費は入っていないということなんでしょうか。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 子供、子育て政策は、最も有効な未来への投資であると考えております。これを着実に実行していくため、まずは、こども政策担当大臣の下、子供、子育て政策として充実する内容を具体化します。そして、その内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えていくということでございます。

塩川委員 答えていません。

 ですから、子育て予算倍増に教育予算は入っているんですかということについてお答えがないということは、教育予算に対してまともな手当てはしませんと言っているのと同じじゃないですか。このスキームだと、どうやったって増やしようがないわけですから。

 財務省の方が、この間、削減、効率化の取組をやってきましたというので、恩給費の話なんかも言いましたけれども、でも、この間の非社会保障経費の歳出改革というのも、大半が恩給費の減少ですよね。過去七年間で見た場合に、その他が大体三千億円ちょっと減っていますけれども、このうち恩給費が二千七百十一億円ですよ。つまり、下がっているといっても、恩給費が下がっているだけなんです。それは、やはりまともに削ることなんかできないからですよ。

 その際に、じゃ、恩給費、これからも減らし続けるのかといったら、今後の金額でいうと、来年度の恩給費というのは僅か九百七十億円なんです。これも傾向的には減っていくんでしょうけれども、そこから何千億も出てくるはずないじゃないですか。そうしたら、ほかのところを大幅に削り込むしかないんですよ。文教費を大幅に削るということにならざるを得ないというのが、この大軍拡なんじゃないのかと。このことについてまともに説明をしない。これでは国民の理解は得られないというのは当然であります。

 官房長官にお尋ねしますけれども、この歳出改革の仕組みでは、文教費を増やすどころか削るだけになると。こんな軍事費を減らして、教育など暮らしの予算を削る、こういう大軍拡そのものを撤回すべきではありませんか。

松野国務大臣 先ほど答弁させていただいた内容の繰り返しとなって恐縮でございますけれども、防衛費の規模については、現在の日本を取り巻く安全保障環境に対峙していく中で、必要となる防衛力の内容を積み上げて導き出したものであります。

 同時に、本予算においては、これも先ほど申し上げましたが、一般歳出の約六割を社会保障や教育などに充てており、国民生活の向上に直結する経費など、必要な施策を盛り込んでいるところであります。

塩川委員 この大軍拡は撤回をすべきだということを申し上げて、この問題は一区切りします。

 官房長官、ありがとうございました。

 最後に、環境省、小林環境副大臣にお尋ねをいたします。

 環境省は、東電原発事故の汚染土壌除去に伴う除染土の再生利用実証事業に取り組んでいます。所沢市の環境調査研修所や新宿御苑、つくば市の環境研究所の敷地内での実証事業を計画しております。いずれも、地元の住民の皆さんからは、反対の声、計画の撤回を求める声が上がっています。

 私が住んでおります所沢では、かつて産廃焼却によるダイオキシンが大問題となりまして、環境問題については皆さん大変危惧、懸念を覚えているところです。

 最近は、米軍の所沢通信基地に米軍の横田基地からの残土が持ち込まれると。米軍ですから、国内法令が適用されないということで、埼玉県の残土条例の適用除外で、汚染土壌かどうかの検査もできないと。こんな格好で持ち込まれる、これはおかしいじゃないかというような市民の大きな声が上がっていたわけであります。

 今度は環境省かと。市民の得られない、汚染土の再生利用実証事業は認められないということを申し上げておきます。

 そこで、小林環境副大臣は所沢市議会で説明をされたということですけれども、非公開だったということであります。市民の皆さんが広く関心を持っている問題について、改めて市民を対象に公開の場で説明を行う考えはありませんか。副大臣も大臣も出席をして、市民に対して公開の場で説明をする、是非やっていただきたいと思うんですが。

小林副大臣 塩川委員にお答えをいたします。

 環境調査研究所で計画をいたしております実証事業に関して、昨年十二月の十五日に、所沢市議会から説明を求める要望書が提出をされました。この要望書を踏まえて、先週、火曜日でありますが、一月三十一日に行われた市議会の研修会において、私が出席をいたしまして、この実証事業について詳しく説明をいたしました。

 この内容は、除去土壌の再生事業というものがどのようなものであるのかという、その前段、二〇四五年までに福島県に現在置かれている除去土壌を県外に搬出をするという約束をさせていただいている、これに基づいての事業であります。

 なお、この議員研修会は、主催者である所沢市議会事務局の判断によって非公開で行われたというものでありまして、その判断を尊重したというところであります。

 現在、近隣住民に対して説明会を行っておりまして、いただいた御質問、御意見がございますので、これに対して丁寧にお答えをして理解を求めている、このような状況でございます。

 以上です。

塩川委員 質問をした、大臣、副大臣が公開の場で市民に説明するということはやりませんかについて、お答えください。

小林副大臣 所沢市議会の要請にお応えをして参加をしたということでありますので、現在、大臣、副大臣が公開の場でということに関しては考えておりません。

塩川委員 まともな説明もしないで進めることだけ進めるというのは納得いかない、汚染土の再生利用実証事業は撤回すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

大西委員長 次に、阿部司君。

阿部(司)委員 日本維新の会、阿部司です。

 本日は、少子化対策についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 一九八九年、この年の出生率が公表されまして、一・五七だったそうなんですけれども、一・五七ショックと言われるように、関係者に衝撃が走りました。これを受けて、当時の経済企画庁が一九九二年に発行した国民生活白書のタイトルが少子化社会の到来、その影響と対応です。このとき政府は、少子化の影響やその後に起きる社会経済問題を把握、認識していたと言えます。この間、三十年近く、濃淡ありながらも、様々な少子化対策を実行されてきたことかと思います。

 そこで、まず、これまで政府はどれほどのリソースを投入してきたのか。過去三十年間の少子化対策に係る累計予算額を確認させてください。そして、その結果、現在の少子化状況がどのようなものになっているのか、こちらも端的にお答えをお願い申し上げます。

    〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕

北波政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の少子化対策関係予算でございますが、少子化対策として政府が取りまとめている少子化社会対策大綱の主要施策に従って整理を始めました、申し訳ございませんが、平成十六年度から令和四年度までの額というのをまずは合計をさせていただきますと、当初予算ベースで約六十六兆円ということとなります。これは過去十九年間という形になります。

 また、現在の少子化の状況、これを申し上げますと、令和三年の出生数は八十一万千六百二十二人、合計特殊出生率は一・三〇となっておりまして、さらに、昨年の出生率は八十万人を割り込むと見込まれておるところでございます。

阿部(司)委員 今、六十六兆円、約十九年間で投資をしてきたというお答えをいただきました。

 また、数字の方、資料もお配りしておるんですけれども、資料一の方を御覧いただきたいんですけれども、これはよくある出生数、合計特殊出生率の推移のグラフですけれども、こちら、一・五七ショック以降子供の数は減り続けて、二〇〇三年に少子化対策基本法が制定されて様々な政策が実施された以降でも増えておらず、ついには昨年八十万人割れとなって、更に減少するとも予想されているといった状況かと思います。

 資料二の方を御覧ください。こちらは諸外国の合計特殊出生率の動きになるんですけれども、これもよくあるグラフですけれども、先進国共通の課題となっておりますこの少子化、ただ、低下している中でも、合計特殊出生率を反転させている国は、政府が有効な少子化対策を実行したからだと言えるかと思います。フランスですとか、スウェーデンですとか。

 こうした様々なデータ、ファクトを見れば、私は、この二十年、三十年、ほぼ政権を一貫して担ってきた自民党政権の少子化対策が有効ではなくて、厳しい言い方をすれば失敗であったと総括すべきだと思いますが、これまでの少子化対策の総括を官房長官にお伺いいたします。

松野国務大臣 阿部先生にお答えをさせていただきます。

 これまで政府においては、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化など、ライフステージに応じて必要とされる支援を進めてきたところであります。

 この結果、少子化対策関係の予算額は、平成二十五年度の約三・三兆円から令和四年度には約二倍の六・一兆円へと大きく増加し、例えばいわゆる保育所待機児童は平成二十九年の約二・六万人から昨年は三千人まで減少するなど、一定の成果があったと考えています。

 一方で、少子化の背景には個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因があり、いまだに多くの方の子供を産み育てたいという希望の実現には至っていないと認識をしています。

 少子化が更に進展するなど、社会経済情勢は大きく変わるとともに、これまで取り組んできた政策強化の方向性から、今後、重点的、抜本的に取り組むべき政策の内容も変化しています。まずは、こども政策担当大臣の下、子供、子育て政策として充実する内容を具体化する方向を考えております。

阿部(司)委員 一定の予算額を投じて、ある程度ライフステージに応じて子育て支援を行ってきた、有効性はそれなりにあったといった御答弁だったかと思いますけれども、結局は、子供が減ってきているというのは、このトレンドは変わってきていないわけでありまして、この政策自体が課題に対してミスマッチはなかったのかどうか、また、そもそも投入するリソース自体が根本的に不足しているのではないか。ここを、失敗をしたのであれば失敗をしたと正面から受け止められるかどうかで今後の対策というものが変わってくると私は思います。

 次に、少子化自体の課題認識についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 昨年、我が国の出生数は八十万人を切ったと大きな衝撃をもたらしました。資料三を御覧いただきたいんですけれども、これもよくある人口構造のグラフになりますけれども、国立社会保障・人口問題研究所によりますと、二〇六〇年、我が国の人口は九千二百八十四万人になると推計をされております。

 今後四十年を経ずして我が国の人口が一億人を切ってくる、この推計について政府の御認識をお伺いいたします。また、少子化により何が一番問題になってくるのか、どう考えているのか、こちらの御見解もお願い申し上げます。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 急速に進展する少子化により、昨年の出生数は八十万人を割り込むと見込まれ、我が国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれていると認識をしております。子供、子育て政策への対応は、待ったなしの、先送りの許されない課題であります。このため、今般、岸田総理から小倉大臣に対し、子供、子育て政策の強化に関する御指示があったものと理解をしております。

 少子化の何が一番問題か、これはなかなか順序をつけ難いところでございますけれども、少子化の進行は、労働供給の減少、将来の経済や市場規模の縮小、社会保障機能や経済成長率の低下、地域社会の担い手の減少、現役世代の負担の増加、行政サービスの水準の低下など、結婚しない人や子供を持たない人も含め、社会経済に多大な影響を及ぼすものであり、国民全体で危機感を共有するべき課題と認識をしております。

阿部(司)委員 今御答弁いただきましたとおり、非常に危機的な状況かと思います。

 ただ、私、この少子化の問題でいうと、大変だ大変だと言っている割には、国民にどれだけその危機感を共有できているのかというのは、非常にまだ不十分なのではないかなと思っております。

 例えば、さっきの人口構造のグラフでいうと、二〇六〇年、生産年齢人口は四千七百九十三万人となっておるんですけれども、私、生まれたのが一九八二年ですが、この一九八〇年時点のグラフを見ると七千八百八十三万人、八千万人近くいたところが、四千万人強ぐらいに減って、要は働き手が半分になるという、これは結構衝撃的な数字かと思うんですけれども。翻ってみますと、お年寄りの方々、一九八〇年代は一千万人に満たなかった、六十五歳以上の方々ですね。それが、二〇六〇年には三千五百万人になってくる。

 こうした数字みたいなものをしっかりクリアに示して、整理をして、危機感というもの、こうしたことが非常に多大なるインパクトをもたらしてくるといったところを国民にしっかりと伝えていくこと、これは重要かなと思っております。

 また、この問題についてよく研究をされていらっしゃる方々、先生方の書籍なども拝読させていただいたんですけれども、例えば社会学者の山田昌弘先生は、一・五七ショック以降の、課題認識から十年、何ら手を打たなかったことが非常に致命的だと言っていらっしゃいます。

 私、この少子化の問題、さっきるる御答弁いただきましたけれども、社会から活力が失われていく。このグラフにもありますが、二〇六〇年に、二・六人に一人が六十五歳以上、四人に一人が七十五歳以上の社会になっていくというのは、これはかなりのインパクトかなと思っていまして、活力をいかに減退、減衰させないために取り組んでいくか、非常に重要になってくるかなと思います。

 こうした中、岸田総理は異次元の少子化対策を実施するとしておりますけれども、新たに仕切り直しをして次元の違う少子化対策に取り組むのであれば、これまでの政策の効果を十分に検証した上で、めり張りをつけて、効果的な政策を大胆に実施していくべきと思いますが、副大臣、御見解をお伺いいたします。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 これまで政府におきましては、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化など、ライフステージに応じた支援を進めてまいりました。

 少子化対策関係の予算額は大きく増加し、例えば、いわゆる保育所待機児童は平成二十九年の二・六万人から昨年は三千人まで減少するなど、先ほど官房長官からもお話がありましたとおり、一定の成果があったと考えております。

 一方で、少子化の背景には個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因があり、いまだに多くの方の子供を産み育てたいという希望の実現には至っていないという事実も認識をしております。

 総理の御指示を踏まえ、小倉大臣の下で開催している、こども政策の強化に関する関係府省会議において、総理から指示されました、その一、児童手当を中心とした経済的支援の強化、その二、幼児教育や保育の量、質両面からの強化と全ての子育て家庭を対象とした支援の拡充、その三、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実の三つの基本的方向性に沿って、有識者、子育て当事者、若者などからヒアリングを行い、まずは三月末を目途として、子供、子育て政策として充実する内容を具体化していきたいと考えております。

 子供政策の強化に関するたたき台の取りまとめに当たっては、社会全体の意識を変え、子供、子育てを応援するようなものとなるよう、個別の施策ではなく、ライフステージを通じた施策のパッケージを示す必要があると考えております。

 今後、幅広く議論を進め、様々な意見に耳を傾けながら、三月末を目途として、子供、子育て政策として充実する内容を具体化するべく、力を尽くしてまいりたいと思います。

阿部(司)委員 ライフステージごとに、様々、切れ目なく施策を用意していく、パッケージを用意していくというのは私も賛成です。

 しかしながら、これまで保育所を整備した、様々な子育て支援をしてきた、それでも子供が増えなかった、ここについてはしっかり検証を行っていく必要があるんです。

 私も今二歳の子供がいまして、保育園に預けていて、非常にありがたいんですけれども、果たしてそれだけで、結婚していない方が結婚をしようだとか、子供をつくろうと思うかどうか。ここに強いインセンティブを働かせないと、私は、これは少子化対策と本当に果たして言えるのかどうか、ここをしっかり検証していく必要があると思っております。

 要は、リソースもしっかり用意をした上でプライオリティーをつけていって、切れ目なくやるんですけれども、特に重要なところに資源を投入していく、この考え方が重要かなと思っております。

 資料四の方を御覧ください。こちらは家族関係社会支出の国際比較になるんですけれども、見てのとおり、我が国は、対GDP比で、少子化対策が進んでいるとされるフランス、スウェーデンと比較してかなり低いことが分かります。

 こうした状況で岸田総理が異次元の対策を打ち出したわけですけれども、通常、異次元と聞けば、予算規模も相当に大きなものになるだろうというふうに国民の皆さんも思われるのではないかなと思います。具体的に、現在の少子化関連予算の数倍の規模ですとか、GDP比でスウェーデン並みぐらいのものを私だったら想像してしまうんですけれども、異次元の少子化対策の予算規模とこの取組の期間、松野官房長官、お伺いをいたします。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 子供政策に関係する予算としては、現在、様々な整理があり、例えば、令和四年度における少子化社会対策大綱に基づく少子化対策関係予算は、当初予算ベース、国費のみでございますけれども、約六・一兆円となってございます。令和五年度のこども家庭庁関連予算案は、当初予算ベース、国費のみで四・八兆円、地方負担分も含めた公費ベースで八・一兆円というふうになっております。

 このように様々な整理があるところですが、岸田総理はこれまでも、期限、規模ありきではなく、子供の視点に立って、必要な子供政策が何かをしっかりと議論した上で、将来的に倍増を目指していきたいと述べられております。

 小倉大臣の下、まずは、期限、規模ありきではなく、三月末を目途として、子供、子育て政策として充実する内容を具体化するべく、議論を進めてまいりたいと思います。

阿部(司)委員 異次元で少子化対策を実施しますと、当然、多額の財源を要することになるかと思います。今、規模、期限、ちょっと考えずに、三月を目途にということだったんですけれども。

 この異次元の少子化対策の財源として消費税の増税を検討という報道が流れましたけれども、その後、官房長官の方が打ち消したように理解をしておりますが、異次元の少子化対策の財源として消費税を増税することはないと理解してよろしいかどうか、官房長官にお伺いをいたします。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 先ほど来申し上げてきたように、まずは財源よりも中身と。総理からの御指示の下、こども政策担当大臣の下に子供、子育て政策として充実する内容を具体化することとなっています。

 その上で、その歳出の内容に応じて、各種の社会保険との関係、国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、様々な工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えていく必要があると考えていますが、消費税については、これまでも総理が述べられているとおり、当面、触れることは考えていません。

阿部(司)委員 ありがとうございます。

 消費税について、今の時点では考えていないというふうに理解をいたしましたが、将来的には財源として含めることを検討するかもしれない、そういう理解でよろしいですか。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 消費税については、社会保障の在り方を含めて総合的に考えるべきものであり、具体的な期限を切って考えるものではないと考えております。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 次の質問に行きたいと思います。

 まず、いろいろと議論させていただいておりますけれども、ギアを上げて少子化対策をしていかなければならないというのは私も賛成ですし、皆さんも賛成だと思います。では、何に力を入れていくべきなのか、この点についてお話をさせていただきたいと思います。

 資料の五を御覧いただきたいと思います。こちらは未婚率と夫婦の子供数の状況というものなんですけれども、合計特殊出生率、これは有配偶率と有配偶者出生率に分解できると書いてあります。有配偶率、御夫婦がいらっしゃるかどうか。有配偶者出生率、これは御夫婦から生まれるお子さんの数のお話かと思いますけれども。

 この資料から、五十歳時の未婚の割合というのが、一九九〇年以降、男女共にかなりの急カーブで右肩上がりを続けていること、この点がまず特筆すべき点かなと思っております。夫婦の完結出生児数、これが、平均出生数が一・九人程度。例えば、一九七二年から二・二〇前後でずっと三十年ほど推移していたのが、近年ちょっと下がってきてしまっていて、二を割り込んで一・九まで来ている。この数値を見ると、端的に、結婚しない人がどんどん増えて、結婚していても、もうける子供数も徐々に減ってきているということが読み取れるかと思います。

 我が国は、婚外子、こちらが非常に少ないということを考えますと、少子化対策でいうと、夫婦のもうける子供の数を増やしていく、又は未婚者を減らしていく、この二つになってくるかなと思いますけれども、現状、夫婦の子供の数は減少しつつも、一・九人程度で安定的でありまして、一方、男女で未婚率が三割、二割であります。

 資料六になりますが、これは婚姻の状況に関するグラフになりますが、どんどん婚姻率が低下を続けている中、今後、少子化対策として未婚化対策に力を入れていくべきなのではないかなと思っております。特に、一九七二年は婚姻件数が百九万件だったのが、二〇二一年は五十万件ということで、半減をしているわけで、これは物すごい減り方だと思うんですけれども、より未婚化対策に力を入れていくべきというこの考えについて、御見解を和田副大臣にお願い申し上げます。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 若い世代の結婚をめぐる状況を見ますと、男女共に多くの方が、いずれ結婚することを希望しながら、適当な相手に巡り合わない、結婚資金が足りないなどの理由でその希望がかなえられていない状況にあります。また、若い世代が結婚しない理由の一つとして、結婚した後に子供を持つという希望が見出しづらいからではないかとの指摘があると承知をしております。

 このため、結婚の希望が希望する年齢でかなうような環境を整備するとともに、これから結婚しようとする若い世代が結婚や出産に希望を持てるよう、今まさに子育てしている方々への支援を充実することが重要と考えております。

 雇用の安定など若い世代の経済的基盤の安定を図るための支援、出会いの機会、場の提供、結婚資金や住居に関する支援などの地方公共団体が行う取組の支援、妊娠時から出産、子育てまで一貫した伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施などに取り組んでおります。

 なお、内閣府においては、地域少子化対策重点推進交付金を令和四年度第二次補正予算において前年度の約三倍に増額し、結婚に伴う家賃、引っ越し等の経費の支援に関するメニューの対象世帯の所得要件の緩和や、出会いの機会の創出等に関するメニューの補助率の引上げ、結婚支援コンシェルジュ事業の追加といった施策の充実を行ったところでございます。

 引き続き、結婚を希望する方々がその希望をかなえられるような環境整備に全力で取り組んでまいります。

阿部(司)委員 今、いろいろと、結婚したい方が結婚できるような対策というものを総合的に打っているといった御答弁だったかと思いますけれども、これはいろいろな複合的な理由があると思いますけれども、未婚化の原因は何なのか、こちらを和田副大臣に率直な御意見をお伺いできればと思います。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 先ほどの答弁とちょっと重複するところがございますけれども、若い世代の結婚をめぐる状況を見ますと、男女共に多くの方が結婚したいとしておりながらできない理由でありますが、適当な相手に巡り合わない、結婚資金が足りないなどの理由が多いということでございます。また、若い世代が結婚しない理由の一つとして、結婚した後に子供を持つという希望が見出しづらいといったことが挙げられております。

阿部(司)委員 今御答弁いただきましたけれども、私、いろいろと複雑なものが絡み合っていると思うんですけれども、一番大きいのは経済的な問題だと思います、これは。

 配付資料七を御覧いただきたいんですが、結婚相手に求める三条件という、一般社団法人リレーションシップ協会というところのデータですけれども、既婚の方も未婚の方も、これは女性のアンケートですけれども、最も重視しているのは経済力だということで。

 では、どの程度年収を求めているのかというと、資料八を御覧いただきたいんですが、こちらは青の棒グラフが男性、赤が女性となっていますが、明らかに赤の方の、女性の結婚相手に求める年収はかなり重視されているゆえに高いということで、四百万円、五百万円以上、五百万円から六百万円以上というところで、男性との大きな差がついているわけですけれども、要は、男性より女性の方が強く相手の年収を意識しているということで。ただ、実際、二十代の給与所得者の平均給与は三百四十二万円、三十代で四百三十五万円という数字が出ています。

 資料九になりますが、こちらは賃金の推移になりますが、こちらは実質賃金は減り続けておりまして、若者のインパクトが特に大きい話になっております。

 ここで、さっき、若者の経済的な見通しをよくしていくことも大事だといった御答弁がありましたが、若者世代の実質所得を上げて将来不安解消につなげる政策を大胆に実施すべきことが未婚化対策にも結びつくと考えますが、独身者が結婚を前向きに考えられるような、そうした経済的な不安を打ち消すような政策の方針、アイデアがございましたら、後藤大臣、是非御意見お願いします。

後藤国務大臣 今委員から御指摘ありましたように、結婚を希望する若者が安心して結婚ができるように、経済的基盤の安定を図るための環境整備をしていくことが重要でございます。そのためには若年世代の賃上げに取り組むことが必要でありまして、まずは足下の、この春の賃金交渉に向けて、政府としても、補助金における賃上げ企業の優遇、それから、生産性向上などへの支援、公正取引委員会や中小企業庁における大幅な増員による下請取引の適正化、価格転嫁の促進などに取り組んでいきます。

 それから、若い世代も含めて意欲ある個人の能力を最大限生かしていくということで、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつながる構造的な賃上げを実現していくことが重要だと考えていまして、意欲ある個人に対するリスキリング、職務に応じてスキルが適正に評価されて賃上げに反映される日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進める三位一体の労働市場改革、そうしたことに官民連携でしっかりと取り組んでいく必要があります。

 その他、正社員転換の取組を応援するキャリアアップ助成金、同一労働同一賃金の遵守を徹底していく、新たに労働基準監督署と労働局の連携、そうしたことも含めて雇用の安定を図って経済的基盤を確保することで、若者が将来にわたり展望が開けるようにしていきたいと思います。

阿部(司)委員 ありがとうございます。

 厚労副大臣にお伺いいたします。

 今御答弁ありましたが、正規と非正規の格差というものも縮めていく必要があると思いますが、どのようにお考えでしょうか。

羽生田副大臣 若い世代の非正規雇用労働者の未婚率は、特に男性で正規雇用に比べて顕著に高くなっております。雇用の安定を図り経済的基盤を確保することで、若者が将来にわたる展望を描けるようにしていかなければならないということは、非常に重要であるというふうに考えております。

 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差の解消は重要でありまして、同一労働同一賃金の徹底のために、新たに労働基準監督署と連携をして、待遇差が問題となり得る事案を把握し、労働局の指導につなげる取組を昨年十二月から始めたところでございます。

 また、正社員として働くことを希望する若い世代には、わかものハローワーク等における安定就労に向けた就職支援や就職後の職場定着支援、そして正社員への転換などを行う事業者へのキャリアアップ助成金の支援などを進めているところでございます。

 こうした取組を通じて、非正規雇用労働者の待遇改善や正社員化を推進してまいりたいと考えているところでございます。

阿部(司)委員 時間が来てしまいましたが、要は、お伝えしたかったのは、対症療法的なものじゃなくて、抜本的な税、社会保障、そして労働市場などの規制改革を強力に推進していくことが、私は非常に、最も重要なことだと思います。

 本当は移民の話も少ししたかったんですけれども、ちょっとまた次回に持ち越したいと思います。

 それでは、また引き続き御議論させていただければと思います。ありがとうございました。

藤井委員長代理 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。よろしくお願いいたします。

 まず、国葬についてお伺いいたします。

 昨年の安倍元総理に対する銃撃事件で受けた衝撃は、私自身、いまだに忘れることができず、改めて安倍晋三元総理に哀悼の誠をささげると同時に、民主主義、言論に対する暴力は断固として許すことはできないというふうに思っております。

 そして、その後、国葬が行われ、私も参列させていただきました。しかし、その実施決定の基準や法的根拠、説明が不十分であったこと、予備費で行われたことなどにより、国論を二分する議論となってしまったことは残念でなりません。

 昨年十月の内閣委員会で、この国葬に関しまして私は様々な問題点を指摘をさせていただき、また、維新の会として独自の法案も提出させていただきました。

 本委員会での私の質問に対しまして、官房長官から、有識者から意見を聴取し、論点整理を行っていくと御答弁いただきました。また、議運でも各会派の代表者会議が行われておりますが、政府の方でも、実際にヒアリングを行い、報告書の取りまとめなどもされたと伺っております。その中でどのような意見があって、それを受けてどのように検討しているのか、官房長官にお伺いしたいと思います。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 故安倍元総理の国葬儀に関して幅広く有識者から意見を聴取し、論点と意見を整理したものを昨年十二月に公表したところであります。

 論点と意見の整理においては、例えば、国会との関係に関し、国会との関係で特に問題はなかったとする意見や、国会が関係することが望ましいとする意見など、様々な意見が出されたと承知をしています。

 今後のスケジュールや一定のルールの在り方については、現時点で予断を持つことなく、まずは今回の論点整理も踏まえ、国会との関係など、どのような手順を経るべきなのか、引き続き検討してまいりたいと考えております。

岩谷委員 スケジュールに関して、今のところ、予断を持たずにということですけれども、しかし、いつまでもずるずると議論するわけにはいかないので、やはりスケジュールを決めるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 先ほど答弁させていただいたとおり、論点整理については十二月二十二日に公表し、内閣府ウェブサイトに掲載し、広く国民の閲覧に供するとともに、お問合せがあった方に対しては製本化したものをお渡しをしているところであります。

 また、衆議院からの御要請があったことから、一月十三日に衆議院議院運営委員会理事会において私から報告したところであります。

 有識者の方々からは率直に幅広い御意見をいただき、しっかりと論点を整理できたと考えており、論点整理に対する御意見や御指摘などがあれば、まずはそれからお伺いしたいと考えています。

岩谷委員 ちょっとお答えになっていなかったように思うんですが、あれだけやはり議論になった問題で、国民の皆さんの関心もありますから、是非スケジュールを早めに決めていただいて、いつまでに結論を出すということを決めていただきたいというふうに思っております。

 それに対しては、我々維新の会も独自に法案を出しております。この中で、あらかじめ国葬の基準を設けた上で、理由や費用の見込みなどを国会の承認を得ることとか、また、国葬を行った場合は、参列者数等、あるいは費用等について、その内容を国会に報告するというふうにされておりますので、是非その辺りも踏まえて御議論をお願いしたいと思います。

 官房長官、退席していただいて結構でございます。ありがとうございます。

 続きまして、公文書管理についてお伺いをいたします。

 公文書は、言うまでもなく、国民が正確な政府の情報にアクセスした上で、その情報に基づいて様々な判断を行うために必要不可欠なものであり、公文書の適正な管理というのは民主主義の根幹を支える極めて重要なものであることは論をまたないわけであります。

 ところが、平成二十八年には、陸上自衛隊のPKO部隊の日報について、当該日報が存在していたにもかかわらず、廃棄したとして開示しなかったいわゆる自衛隊日報問題や、森友学園問題では、国有地の売却等に係る協議記録について財務省及び国交省が保存期間を一年未満として破棄していたこと、あるいは、あろうことか決裁文書を改ざんしていたことなどが明らかになり、大問題となりました。

 また、関連して、近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが改ざんを命じられたことを苦に自ら命を絶たれるという痛ましい事件まで発生しており、これは民主主義を揺るがす極めて重大な問題であったと考えております。そして、これを重く受け止めて、課題の解決をすべきであると思っております。

 そこで、これらの問題の後、公文書の管理についてどのような改善が図られたのかをお伺いしたいと思います。

    〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕

岡田国務大臣 お答えいたします。

 公文書管理は、現在及び将来の国民への説明責任を全うし、委員御指摘のとおり、民主主義の根幹を支える極めて重要な制度であります。

 御指摘の一連の公文書をめぐる問題を受けて、政府においては、平成二十九年に行政文書の管理に関するガイドラインの改正、また平成三十年に閣僚会議決定を行って、適正な公文書管理のための必要な取組を行っております。

 具体的な取組としては、内閣府における独立公文書管理監の設置、各府省における審議官級の公文書監理官及び担当室の設置、また、保存期間を一年未満にできる行政文書の範囲の限定、決裁文書の事後修正は認めないことの明確化、不適切な公文書管理を懲戒処分の対象とする、これは免職を含むものでありますが、懲戒処分の対象とすることの明確化などの取組を行い、また、研修の充実強化、公文書管理のデジタル化のための制度整備などにも取り組んでおります。

 引き続き、適正な公文書管理がなされるようしっかりと取り組んでまいります。

岩谷委員 ありがとうございます。いろいろと御説明いただきました。

 先ほどの自衛隊日報問題でも、陸上自衛隊文書管理規則で保存期間が一年未満とされていた、また、森友問題の国有地の売却等の協議記録についても同様に保存期間が一年未満とされていたということで、そもそも、公文書の保存期間について、各府省で決めることになっていると聞いているんですけれども、各府省が判断すると、恣意的に、都合の悪い文書の保管期間を短くするとか、そういった不適切な事案が発生する可能性があるわけなんですけれども、先ほどの対策の中でも述べられていた気がするんですけれども、改めて、どういう対策か詳しく教えてください。

岡田国務大臣 お答えいたします。

 行政文書の保存期間につきましては、公文書管理法施行令及び内閣総理大臣が定める行政文書の管理に関するガイドラインにおきまして業務類型ごとに標準的な保存期間を示しておりまして、各省ではこれより短い保存期間は定められないということに現状なっております。

 また、政令やガイドライン、各府省の行政文書管理規則の策定、改正に当たっては、専門的知見を有する公文書管理委員会が第三者的な立場から審議しており、また、歴史的に重要な公文書については国立公文書館に移管され永久保存されることとなっております。

 加えて、行政文書の廃棄に当たっては内閣総理大臣の同意を得ることが必要となっておりまして、引き続き、こうした管理制度を適切に厳格に運用してまいりたいと存じます。

岩谷委員 それから、保存期間が過ぎた公文書というのは、国立公文書館に移すか、それか廃棄をするかを決めることになっているわけですが、仮に短い保管期間になっていても、公文書館に移管されていれば、廃棄されるという問題も発生しなかったわけであります。

 この点、保管期限を迎えた公文書を公文書館に移すか、それとも廃棄するかという判断についても各府省が判断していると聞いておるんですけれども、これも恣意的な運用が起こり得る可能性があると思うんですけれども、この対策、先ほどもちょっと述べられていたと思いますが、詳しく教えていただけますか。

岡田国務大臣 各行政機関が定める行政文書管理規則のひな形となります行政文書の管理に関するガイドラインがございまして、ここに、業務単位や政策単位で移管、廃棄についての具体的な判断指針を定めておりまして、これらは各府省の行政文書管理規則においても反映されてございます。

 なお、ガイドライン及び各府省の行政文書管理規則の策定に当たっても、専門的知見を有する公文書管理委員会が第三者的な立場から審議をいたしております。

 さらには、保存期間が満了した行政文書ファイルなどを廃棄しようとするときには、各行政機関において、委員御指摘のように恣意的な廃棄がなされないように、あらかじめ内閣総理大臣に協議し同意を得なければならないとされておりまして、その同意に当たっては、国立公文書館が専門的、技術的な見地から助言を行っているということでありまして、歴史的に重要な公文書が廃棄されるようなことがないように、こうした仕組みを適切に運用してまいりたいと存じます。

岩谷委員 ありがとうございます。

 今、保存期間の設定とかあるいは廃棄等について、国立公文書館なども関与して様々な措置が取られていることを御説明いただきまして、ルールとしては一定整えられたのかなと認識しております。

 しかし、問題はそれを担保するだけの人員、体制が整っているかどうかだと思います。幾らルールがしっかり整備されていても、それを担保できるだけの人員とか体制とか権限が公文書の管理機関になければ、まさに絵に描いた餅になるわけです。特に、日常的な監視とかチェックが行われているか、又はそれを可能にするだけの組織、体制、権限になっているかが私は重要だと考えております。

 この点、我が国は、独立公文書管理監も、総理に属する文書管理権限のうちの監察機能のみを担うにすぎず、独自の権限が法律上明記されているわけでもないので、専門家からは、内閣府の一部局としてではなくて、独立性を有する行政機関として、各省に並ぶ法的権限を法律によって付与すべきなどと指摘もされているところであります。

 あと、例えば、人員の話で申し上げますと、アメリカの合衆国国立公文書館記録管理庁、通称NARAは人員が三千人弱ということなんですけれども、済みません、あえてお伺いしたいんですけれども、日本の国立公文書館の職員数、これは何人ぐらいですかね、政府参考人でも結構です。

笹川政府参考人 お答え申し上げます。

 現在のところ、日本が百九十二名、それからアメリカ、最新かどうかは分かりませんが二千六百四十八名、そのように承知しております。

岩谷委員 ありがとうございます。

 そうですね、アメリカの方が二千六百四十八名に対して、日本の国立公文書館は百九十二名。私が調べたところでは、常勤の方に関しては五十名程度と伺っていますので、アメリカの十分の一もないわけなんですね。

 独立性の面でも人員の面でも、これではやはり、今の日本では、ルールはあっても日常的なチェックが徹底されるような体制になっているとは思えないわけなんです。

 そこで、我が国でも、アメリカのNARAのように十分な人員と体制を持って、各府省が作成、保有する全ての文書について管理及び監察を強大な権限を持って行う機関の設置が必要だと思います。

 この点、我々日本維新の会は、日本版NARAともいうべき国立公文書院を設置する法案も提出しています。このような、日本版NARAの設置についてどのように考えるか、大臣、お聞かせいただければと思います。

岡田国務大臣 お答え申し上げます。

 各国の制度については、それぞれ異なった歴史や経緯、背景があるところと存じますけれども、我が国においてもしっかりと公文書管理ができるよう、必要な体制整備は行わなければならないというふうに考えております。

 国立公文書館がその専門的な知見を生かして、歴史的に重要な公文書が廃棄されることのないようチェックを行い、活用していく、そういうことのために、令和十年度に新たな国立公文書館の開館が予定されておりまして、運営面での充実を含めて検討を進めているところでございます。

 公文書管理は大変重要な制度であり、内閣府と国立公文書館がその機能を十分に発揮し、各行政機関における適正な文書管理がなされるよう、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。

岩谷委員 今、令和十年度に新たな国立公文書館が開館というふうにお伺いしましたけれども、これは人員の増強というのも検討されているのか、どの程度の増強になるのかというのも分かれば教えていただければと思います。

笹川政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、令和十年の新しい体制に向けてどういった仕組み、運用をしていくか、その辺も含めて検討しているところでございます。

 したがって、そちらと併せて、どのような体制、予算が必要かというのを検討していくことになりますが、いずれにしても、しっかりとやっていきたいと思います。応援よろしくお願いいたします。

岩谷委員 是非応援をしたいとは思うんですが、検討中ということなので、やはりアメリカの十分の一以下という人員では全く話にならないと思うので、是非大幅な増員というのも検討していただきたいと思います。

 さらに、一歩進んで、我々日本維新の会は、公文書につきまして、ペーパーレスを原則として、改ざん等の防止のための高度な情報処理技術を活用することとか、行政文書ファイルを永久保存することとして、保存期間とか廃棄といった概念をそもそも廃止することなどを内容とする公文書管理法改正案を提出もしております。我々の提案どおりにしていただければ、廃棄や改ざんも起こり得ないわけなんですね。

 是非、政府として検討して、取り入れていただくようなお考えはないか、お伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 お答えを申し上げます。

 行政文書の適正な管理を一層推進する観点から、文書管理の電子化を進めることについては、委員と私ども、方向性を同じくするところでございます。

 政府としては、令和四年二月に行政文書の管理に関するガイドラインを改正し、行政文書について電子媒体により作成、管理することを基本としたところであります。

 一方、歴史的に重要な文書とまでは言えず、将来的に利用が見込まれないようなものまで一律に永久に保存し続けることについては、行政文書の体系的管理や効率的な行政運営の観点から慎重な検討が必要であると考えておりまして、例えば、電子メールを含めた日々大量に作成される行政文書の全てを常に整理、管理し、必要なときに速やかに活用できるか、こうした課題も存在すると考えております。

 いずれにせよ、御指摘のとおり、公文書の電子的管理の推進は重要な課題であり、関係大臣とも連携しながら、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

岩谷委員 ペーパーレス化の方向性は同じということですが、全てのデータを残すことは今のところ考えていないということだと思うんです。技術的に、恐らくデータの圧縮とか整理とかいうのも可能になってくると思いますので、引き続きこれは検討していただきたいというふうに思います。

 岡田大臣、退席していただいて結構でございます。ありがとうございました。

 次に、国有財産の売却について、行革に関連してお伺いしたいと思います。特に未利用の国有財産についてお伺いいたします。

 今週の火曜日に、新宿区戸山にある、二〇一一年に廃止された国家公務員住宅、旧若松住宅を我々維新と立憲さんの合同の行革・身を切る改革PTで視察をさせていただきました。これは非常に反響がありまして、幾つかのテレビニュースや新聞でも取り上げられまして、本日も大阪の毎日放送で放送される予定と聞いております。

 この若松住宅、敷地面積は六千四百平米、近隣に私の母校でもあります早稲田大学とか、学習院女子大学、東京女子医大などがあり、私も近くに住んで大学に通っていたので少しあの辺りは知っていますけれども、都心の一等地とも言える場所だと思うんですね。これが、廃止以来、実に十年間も廃墟のまま放置されている。その資産価値は簿価でも約四十億円と聞いていまして、土地の市場価格は五十億以上あるだろうと思われるわけなんですね。

 私は実は数年前までビル開発などを行う不動産会社も経営しておったんですけれども、この一等地の広大な土地を十年も塩漬けにして放置するというのは、民間の感覚ではあり得ないことです。もし経営者なら失格ですし、中小企業なら、借入れを起こして仕入れた土地だったら、利息とか元本の支払いで既に倒産していてもおかしくないような話なんですね。不動産は売るなり貸すなり開発するなりしないとお金を生まないわけですから、その機会損失は莫大だと思います。

 十年前に売っても今売っても同じだと思われるかもしれませんが、開発して賃貸で貸した場合は、十年といえば、不動産業者が、場合によっては、開発に投資した何十億円を、お金を回収して、後は利益が出るだけということもあるくらいの時間感覚なんです、十年というのは。

 すなわち、この物件を活用していれば得られたはずの数十億の利益が得られていないと考えますと、莫大な税金の無駄遣いとも言えるので、非常に問題だと私は思います。

 私は、この若松住宅は一刻も早く売却等をすべきだと思いますが、今後どうするか教えていただきたいと思います。

嶋田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、合同宿舎若松住宅、これは平成二十三年十二月に廃止がなされているものでございます。

 一般に、国有財産の有効活用のためには、境界確定協議あるいは土壌汚染の調査などの手続を行う必要がございます。

 本宿舎につきましては、廃止以降、人骨が出たといったような報道がありまして、平成二十三年十二月から二十四年八月にかけて発掘調査をし、その上で、平成二十六年六月から二十九年三月にかけて土壌汚染調査が行われております。また、その後、令和二年七月に一部省庁から本地における施設整備について御照会があり、残念ながら、令和四年十月にそれを方針変更するという旨の聴取を我々行ったという経緯があり、現在に至っているものでございます。

 いずれにいたしましても、委員おっしゃられるとおり、本地については、私ども財務省において、今後、公用、公共用の利用を優先する考え方を基本として、売却あるいは貸付けなども含めて有効活用を進めていきたい、このように考えております。

岩谷委員 この物件、現地に行ったら、落書きもあったりして、本当にぼろぼろのお化け屋敷のようになっていまして、まさに廃墟なんですね。民家も密接して立ち並んでおりまして、その後、報道を見ていますと、やはり近隣の方から、よくほっておきますよねとか、古くて怖い、お化け屋敷っぽいなどと言われているのを拝見しました。それは当然の声だと思うんですよね。

 これは一刻も早く売却又は活用を決定すべきですけれども、せめて、廃墟となった建物の取壊しだけでも先行して直ちに行うべきじゃないでしょうか。

嶋田政府参考人 お答え申し上げます。

 今、本財産については、今後、公用、公共用の利用を優先する考え方を基本としながら、売却又は貸付けなども含めて有効活用を検討するというふうに申し上げましたが、他方で、建物の解体撤去につきましては、こうした有効活用の検討とは別に、極力早急に対応できるよう、これについては速やかに検討を進めたいというふうに考えております。

岩谷委員 速やかに検討していただけるということで、是非よろしくお願いしたいと思います。

 こういった未利用の国有財産が、この旧若松住宅に限らず塩漬けになっているというのは、先ほど申し上げたとおり、機会損失で、相当な、この一件だけでも数十億の無駄だというふうに思いますので、これはやはり改めなきゃいけません。

 それで、何より、今、増税をするという話になっているわけですから、増税の前に、こういった使われていない国有財産をまずは売却とか定借という形で活用して、財源を生み出すべきだと思います。

 そこで、この旧若松住宅と同じように使われていない未利用の国有財産が、現状、日本全体でどれぐらいあるか教えてください。

嶋田政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省では、財務局等が管理しております一般会計未利用国有地のストックを取りまとめて公表しております。それによりますと、平成十一年度末時点のストックは一万四千九百一件、一兆八千百八億円ございましたが、不要な資産の売却を進めた結果、足下、大きく減少しておりまして、令和三年度末時点で二千七百三十二件、四千八百四十一億円となっております。

岩谷委員 これは約五千億の財産ですから、やはり、増税なんて言う前にまずこれを売却してよというのが国民の皆さんの声じゃないかと思うんですね。

 先ほどの答弁の中でも、行政機関が検討する場合は優先的にみたいな御答弁があったと思うんですけれども、国有財産を売却するしないとかの判断、どういう基準で判断しているかを教えてください。

嶋田政府参考人 お答え申し上げます。

 そもそも、国有財産法におきまして、例えば、民間に貸し付けた財産であっても、国において利用する必要が生じた場合には国が当該貸付契約を解除することができるといった、国利用を優先する規定が設けられております。

 その上で、利用主体が国以外の地方公共団体等であっても、例えば、緑地とか公園とかの整備など、特に公共性又は公益性の強い事務事業の用に供する場合には無償で貸し付けることができたり、あるいは、さらには、一定の場合には普通財産を無償で譲与するといったことが可能になっており、公用、公共用による利用を優先した、そういった法体系になっております。

 その上で、各省各庁の長が既存の国有財産を活用して庁舎等を整備しようとする場合には、国有財産法に基づいて財務大臣協議ということになります。その際には、財務省の訓令である国有財産総括事務処理規則に基づきまして、当該財産の必要性、立地条件、規模などが適当であるかどうかといったことに留意して審査する旨を規定しているということでございます。

岩谷委員 今お伺いしましたら、国有財産だから国の方でニーズがあれば国で活用してもらうのが当然というような発想に聞こえますし、法律もそうなっているというお答えなんですけれども、であれば、私はこの法律は変えるべきだと思いますね。

 やはり、売却で得られる利益と行政機関で使うことの有効性というのを比較考量して検討すべきだと思います。国有財産は行政機関のものではなくて国民のものですから、是非、発想を転換していただきたいと思います。

 申し訳ございません、時間が来てしまいました。谷公安委員長、済みません、また次回、質問させていただきます。御準備いただいた皆さんにおわびを申し上げまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、ババ幸子君。失礼しました。堀場幸子君。

堀場委員 済みません、馬場はうちの代表でございまして、私は堀場幸子と申します。

 初めてマスクを外して質疑をさせていただくんですけれども、内閣委員会における大臣の所信の質疑をさせていただきます。

 日本維新の会、堀場幸子です。

 本日は、大きく分けて二つお話をさせていただきたいと思っております。

 一つ目の話題は、女性の活躍についてお話をさせていただきたいと思います。

 小倉大臣の大臣所信の方をお伺いさせていただきまして、その中で、G7サミット及び各閣僚会合においてジェンダーの視点を取り入れた議論を進めるというふうな御発言があったかと思います。

 ジェンダーの視点とは何か、お答えいただければと思います。

小倉国務大臣 お答えいたします。

 近年、ジェンダー平等の考え方をあらゆる政策や制度に反映するジェンダー主流化の重要性が国際社会で共有されております。本年、我が国が議長国となりますG7においても、こうした国際的な潮流を引き継ぎ、更に発展させていくために、御指摘の取組を進めているところであります。

 ジェンダーの視点を取り入れた議論を進めるとは、経済や安全保障、労働など、あらゆる分野において、ジェンダー平等を実現することの重要性やその実現に向けた方法などについて議論を行うということと理解をしております。

 より具体的に申し上げますと、重要政策の意思決定層に女性と男性が共に参画し、多様な視点が反映されることの重要性を改めて共有すること、重要政策の検討に当たっては、女性と男性、それぞれへの影響を踏まえた上で政策を立案し、その効果を検証すること、さらに、ジェンダーギャップの現状と課題を把握し、その是正に向けた具体策を検討した上でベストプラクティスを共有することなど、様々な方法があると考えております。

 各分野の会合において、こうしたジェンダーの視点から、どのような形で議論を行い、ジェンダー平等の実現に向けた取組を進めていくかについては、まさに関係府省にて検討が行われているところでありまして、私の立場からも、こうした各府省の検討をしっかりと促してまいりたいと思っております。

 今回の取組を通じて、国内におけるあらゆる分野のジェンダー平等実現を進める重要な契機とするとともに、国際的なジェンダー平等の更なる機運醸成に貢献をしてまいります。

堀場委員 ありがとうございます。

 ジェンダー平等という表現をされていたかと思います。ジェンダーというのは、そもそも社会的であったり文化的につくられている性別のことであって、性別役割分担とか、そういったところでジェンダーによって不平等さがあるということを多くの、多くの場合は女性の方から声を上げているというのが現状なのかなというふうに思っています。

 ちょっと、パネルを用意すればよかったんですけれども、今で言われているジェンダーの課題というのは、男性が上にいて下に女性がいる、こういった形を横にしてほしい、男性と女性を平等にしてほしいというのが大きな課題であるというふうに認識しています。ただ、こういった国際的な会合とか、そういったところの様子をよく見ておりますと、ジェンダーというのは女性というイメージで、同じ意味で使われているパターンがあるのではないかというふうに少し感じることがあります。

 G7サミットにおいて、主要課題であるのは安全保障であるというふうに認識しています。そういった中で、WPS、ウーマン・ピース・アンド・セキュリティーの考え方、そういったものが非常に重要だと思っておりますけれども、女性というものと平和と安全保障というものなんですけれども、これについて少しお伺いをさせていただきたいと思っております。

 WPSの要請事項である紛争予防、紛争解決、和平交渉、平和維持活動、平和構築、ガバナンスの全ての段階の意思決定及び主体として女性の平等で十全な参画が求められているかと思っておりますけれども、なぜ女性が安全保障の分野で必要とされているのか、外務省さん、お答えいただいてもよろしいでしょうか。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、WPSについては、二〇〇〇年十月に、女性・平和・安全保障、WPSに関する安保理決議第千三百二十五号が全会一致で採択され、その後、これまで合計十の関連決議が採択されてきております。

 我が国としても、決議の趣旨に賛同し、これら決議を実施するため、WPS行動計画を二〇一五年に策定し、二〇一九年に改定しました。また、昨年十二月に開催した国際女性会議WAW!では、平和、安全保障への女性の参画の現状や、紛争下の性的暴力を始めとする諸課題につき議論したところでございます。

 女性が安全保障分野で必要とされる理由というお尋ねでございますが、米国の国際平和研究所の分析結果では、和平プロセスへの女性の参加により和平合意が十五年間持続する確率が三五%上昇することが判明しております。

 日本政府としても、こうした分析結果を重視しており、WPS行動計画の着実な実施を通じて、国際社会における和平プロセスや平和構築への女性の参画拡大に貢献してまいりたいと考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 女性というものは、男性に比べて協力的で、合意や妥協しやすい、そういったところ、達成しやすい、つまり、平和の構築に非常に貢献しやすいというのが女性の特性だというような言及がアメリカの研究であるというふうなことだと思います。

 このWPSのアジェンダというところでは、女性は、まず一つ目は、戦争とかそういったところで性暴力に遭う、非常にかわいそうな被害者としての一面を持っている、これが一つ目の女性に対するWPSの中での言われ方ですね。もう一つというのは、男性に持ち得ない女性の能力を理想化をしていて、そして、それがピースメーカー、つまり、平和を構築するのに非常に役立つというふうに定義されている、そういった研究も含めてあるということなんですけれども、私はちょっとそこに、危険だなと、危険とまでは言わない、注意が必要じゃないかなというふうに思っています。というのは、先ほども言いました、女性と男性というカテゴライズは、本当にそこだけでできるのかなというふうに思っています。

 多様な女性がいます。先ほどもありました、被害に遭っている女性もいれば、成功を目指して参加をしていく、そういった女性もいます。女性の経験というのは決して同じではありません。なので、女性だから、かわいそうな性被害に遭った人たちの気持ちが分かって、だからリーダーになるべきだという言説が多くのフェミニズムの中にあるというのは、私は少し注意が必要ではないかというふうに考えています。

 私自身は女性ですし、大学時代は、一九九七年に大学に入りましたので、その頃から女性学は非常に盛んになっておりまして、そこから、女性学という名前からジェンダー論に変わってきた、そういった時期にちょうど女子大学、大学院に所属しておりましたので、非常にこういった議論をたくさんしてまいりましたけれども、女性というものは常に何か同じものだというカテゴライズがあって、それが、女性の社会の参画ということに含めても、推進するべきだという強いエンパワーメントになっているということも含めて思っています。

 ただ一方で、平和構築の現場では、ジェンダーの規範によって女性が抑圧されているという現状も見逃すことは絶対にできないと思っています。男性が平和のために話をすることが不可能な状態ということもある、そういった現実もある中で、平和の構築や支援、合理的配慮というものを必要としている人の立場、弱い立場にいる人若しくはそこに心を向けられる人が行うことが重要だというふうに考えています。

 ここまでちょっとお話をさせていただいた上で、小倉大臣に御質問させていただきます。

 高度な紛争解決のスキルを持つ女性や女性リーダーというものを今必要とされておりますけれども、そういった女性リーダーがいるのか。恐らくいないと思うんですが、いないならば、どのように育成していくのか。若しくは、意思決定の場に女性がいない日本において、どのようにそういった人を育成していくことをお考えなのか、教えてください。

小倉国務大臣 私も、昨年の十二月のWAW!に参加をさせていただきましたが、WPS、我が国のみならず国際的にも非常に関心は高まっているというふうに思っております。

 また、委員御指摘のように、ジェンダー平等というのは、男性、女性、こういった性別を意識せずに、その人の個性とか能力を発揮する社会だと思っております。その妨げになるのが、まさに御指摘の固定的な性別役割分担意識でありましたりとか、アンコンシャスバイアス、こういったものではなかろうかと思っております。

 安全保障分野を含むあらゆる分野における女性の参画促進は、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会の実現、また、多様な視点の確保を通じた経済社会の持続的な発展につながるものと言えます。特に紛争下では、確かに女性や女児に対する性暴力などの課題が多く存在しており、そうした観点でも、女性の参画が重要であるというのは事実であります。

 他方で、国際分野においてリーダーとして活躍している女性という点で申し上げますと、確かに、例えば中満泉氏、国連事務次長兼軍縮担当上級代表の方でありましたりとか、水鳥真美氏、こちらは国連防災機関長を務めていらっしゃる方であります。そういった日本人女性は増えてきてはいるものの、御指摘の分野でリーダーとなっている女性は限られていることも事実であります。

 こちらも、恐らく、先ほど申し上げたアンコンシャスバイアスや固定的な性別役割分担意識というものがありまして、こういった防災とか安全保障、紛争における、それを専門とされる方というのが、なかなか後続が育っていかないという点もあるのではないかと思っております。

 こうした認識も踏まえて、安全保障分野におきましては、第五次男女共同参画基本計画において、行動計画を関係機関と連携しつつ効果的に実施をし、平和構築及び復興開発等のプロセスへの女性の参画を一層促進する旨が定められておりまして、外務省ほか関係省庁が連携をして取組を行っているところであります。

 私といたしましては、この第五次男女共同参画基本計画を所管をする立場から、安全保障分野を含むあらゆる分野における女性の参画が更に進んでいきますよう、関係閣僚ともしっかりと連携をしていきたいと思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 なかなか具体的な取組というのは難しいんだろうなというふうに思っています。なぜならば、その分野に関して女性が今までいたことがないので、そういうモデルもいないですし、どういう人がそれに適しているかということもまだよく分からないというのが日本中の考え方なのではないかなというふうに思っています。

 私もそうですけれども、恐らく、我が日本維新の会のジェンダーに対する考え方というのは、横にして平等というものを維持するというよりかは、いろいろなところに女性も男性も交じり合っていて、それが別に女性だからではなく、男性だからではなく、そういったところをインクルージョン、つまり多様性の社会というものを目指している、これがダイバーシティーであり、我が党が考えている方向性なんだというふうに私自身は理解をしています。

 次に、同じ女性なんですけれども、今度は、先ほど言っていた、女性の中で分断を生むとするならば、助けが必要な女性について御質問させていただきます。

 国内におけるあらゆる女性活躍の体制がいまだ整っていません。というのは、今お話がありました、リーダーも別にいないですし、もちろん国会議員も少ないですし、そういった、女性が活躍しようという体制がいまだ整っていない日本において、国際社会における議論を牽引することができるのかなというふうに考えています。

 大臣の所信の中で、女性の経済的自立に向けた取組を強化するというふうなお話がありましたけれども、具体的にどのようなことを指しているのか、また、どのような状態になったら女性は経済的に自立したと判断されるのか、教えてください。

小倉国務大臣 お答えいたします。

 女性の経済的な自立についてということでありますが、これまでの取組によりまして女性の就業者数が増えて、いわゆるM字カーブの問題は解消に向かい、女性役員数なども増加をしておりますが、他方で、我が国の女性活躍の現状は、御指摘のとおり、国際的に見て立ち遅れていると言わざるを得ません。本年の女性版骨太の方針二〇二三の策定、さらにはG7栃木県・日光男女共同参画・女性活躍担当大臣会合を見据え、更なる取組の加速が喫緊の課題であると認識しております。

 女性の経済的自立に向けた取組の強化につきましては、例えば、男女間賃金格差の是正、女性に多い非正規雇用労働者の待遇改善や正規化の促進、リスキリング、女性デジタル人材や女性起業家の育成、仕事と子育てを両立できる環境の整備など、あらゆる角度から検討を進めていく必要があると思っております。

 とりわけ、現在、女性活躍の更なる推進に向けた方策を検討するため、私の下に設置した女性活躍と経済成長の好循環実現に向けた検討会でありますとか、男女共同参画会議の下の計画実行・監視専門調査会において議論を進めているところでありまして、引き続き、様々な検討や取組を行ってまいりたいと思っております。

 女性の経済的な自立の定義でありますが、例えば、女性が長い人生を通じて経済的困窮に陥らないようにすることということが考えられる一方で、管理職等の政策方針決定過程への女性の参画など、全ての女性がその意欲と能力に応じて活躍できる環境ということも考えられるのではないかと思っております。

 どの程度が女性の経済的自立と言えるのかという点でありますけれども、私も、昨年の十月、G7に参加をしてまいりました。我が国が遅れているところもあれば、例えば女性の数理能力など、我が国の方が実は進んでいるところもございました。いずれの国にも言えますのが、ここでジェンダー平等が実現をできたという満足をしている国は一つもございませんで、我が国から見れば進んでいる国であっても、まだまだジェンダーギャップが存在をするという認識の下で不断の努力を続けているようでございました。

 そういう意味では、ここまで行けば自立が果たせたというような線はないと思っておりまして、不断に現状を踏まえまして更なる改善の取組が必要なのではないかというふうに考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 私どもは、先ほど言ったとおり、いろいろな支援が必要な人がいる、この人も困っている、この人も困っている、それは男性かもしれない、例えば性被害に遭われる男性もいらっしゃる、そしてDVの被害者としては男性もいらっしゃるし、助けてほしい人はいっぱいいらっしゃるんだろうなというふうに思っているんですが、ちょっと余り時間がないのでお話だけさせていただくと、困難を抱えた若年女性というふうなところにクローズアップをして、そこがたくさん、多いというところと、性被害に遭っているという現状を踏まえてだということは認識しているんですが、困っているという、困難さを抱えている若年女性というのは、なぜそこだけをクローズアップして支援するのか。これは必要なことだと分かっているんですが、女性の自立ということに関して言えば、どのようなことを必要としているのかということを、最後、厚生労働省、簡単にお答えいただいてもよろしいですか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年議員立法で成立をいたしました困難な問題を抱える女性への支援法の中では、困難な問題を抱える女性についての定義として、性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難を抱える女性というふうにされているところでございます。

 そこの中で女性になぜ限定されたのかということですが、やはり、女性であることにより、性暴力、性的虐待、性的な被害により遭遇しやすい状況にあることであるとか、あるいは予期せぬ妊娠など女性特有の問題が存在をすること、さらには、不安定な就労状況や経済的困窮、孤立など社会経済的困難に陥るおそれがあること、こういったものを踏まえて、議論の結果として、この法律が制定をされたものというふうに承知をしております。

堀場委員 ありがとうございます。

 そうですよね。先ほど、そういえば、この内閣委員会でも、女性の妊娠は二十代にはしやすいとか、生理についてもうちょっと知った方がいいとか、そういったお話もありましたけれども、私たち女性は月に一回必ず生理は来ますし、必ずじゃないですけれどもね、来なかったら、若い子であれば保健室に行って相談をしたりとか、自分の体については考える機会というのは非常に多いですし、それを知っていくということは、成長の過程の中で非常に大きなチャンスはあるかと思います。

 ただ、男性の方は、女性の生理について知らなかったり、生理痛があってしんどいことも知らなかったり、生理前にちょっと気分が悪くて切れやすくなっちゃったりとか、中学生とかだと、生理になりたてだと貧血になって倒れてしまったりとか、様々なことが起こる。

 自分の体の変化というものが非常にあるのが女性かもしれないですけれども、それがあくまでも皆同じ経験ではないということも含めて、女性が女性という一つのカテゴライズをするということがフェミニズムの中では非常に多く行われているけれども、そうではなく、自分の経験はあなたの経験ではないし、あなたの経験は自分の経験ではないということを女性はもっと認識をした上でこういった支援というものを構築していかなければならないんだろうなというふうに、私自身は自戒を込めて考えているところでございます。

 小倉大臣、ごめんなさい、ありがとうございました。

 時間がないので、次の質問に行かせていただきたいと思っております。

 新しい資本主義及び全世代型社会保障の構築について、後藤大臣の方にお伺いしたいと思っております。

 新しい資本主義とは何ですかという御質問なんですが、一緒に、労働移動の円滑化のための指針ということもお聞かせいただければと思います。

後藤国務大臣 現代の経済社会では、デジタル、グリーンといった新たな潮流が起こりまして、これまでにないスピードで変化が起きているというふうに認識しています。

 新しい資本主義では、こうしたデジタル化、グリーン化といった非連続的なイノベーションによって我々が直面する様々な社会課題を解決する、それを成長のエンジンへと転換して、成長の果実を分配して、更なる成長へとつなげる。この成長と分配の好循環を実現して、力強く成長する持続可能な経済社会を構築していくことが必要だと考えています。

 そのために必要なのが、まずは、我が国経済再生の鍵を握る構造的な賃上げの実現だというふうに思います。人への投資パッケージを五年間で一兆円に拡充して、リスキルを進める。それから、取組を抜本強化するとともに、本年六月までに、労働移動円滑化のための指針を考えていきたいというふうに考えています。

 労働移動の円滑化でございますけれども、それは、三位一体として実現する労働市場改革、これが必要と思います。第一には、意欲ある個人に対するリスキリングによる能力向上支援。第二に、職務に応じてスキルが適正に評価されて賃上げに反映される、日本型の職務給の確立。そして、成長分野への円滑な労働移動を進める。こうした三位一体の労働市場改革を本年六月までに、日本企業に合った職務給の導入方法を類型化して、モデルとしてお示しをしたいというふうに考えています。

堀場委員 ありがとうございます。

 私ども日本維新の会は、政府の言う、新しい資本主義若しくはそれの両輪となっている全世代型社会保障というこの二つで言われていると思いますけれども、私どもは日本大改革プランというものを言わせていただいております。

 御存じかと思うんですが、少し御説明をさせていただきますと、税制の改革、社会保障、そして成長戦略を一体とした改革のパッケージを言わせていただいております。

 税制の改革では、フェアでシンプルな仕組み、成長できる仕組み、そういうものを使って可処分所得を上げていく。社会保障では、チャレンジのためのセーフティーネット、子育てとか、経済的不安の解消とか、独立起業などでチャレンジをもう一回できるようなこと、そういったことを後押ししていくというようなことを考えています。これは、ユニバーサルな生活の保障への転換を考えているというところです。そのほかにも、成長のものであるならば、地方分権、労働市場改革、デジタル改革、規制改革といったものを通じて、日本社会の生産性を向上させていくということを言わせていただいているのが日本大改革プランでございます。

 ここのポイントは、国民一人一人というところがポイントなのかなというふうに、個につながっている。今までは企業で負担しているものが、個につながっていくというところなのかなというふうに思っています。会社主導、企業経由でやっていたことが、これが個につながるセーフティーネットというものを考えていくというやり方だと思っています。

 これはなぜそういうふうにするかというと、やはり、企業中心の社会保障だと企業負担が非常に重くて、賃上げをしてくださいと言っても、実際に上げるのは企業側ですから、国とか私たちが皆さんのお給料を上げてくださいねと一生懸命お願いをしたところで、なかなか上げていただけない。特に中小企業に対してそれをやるのは非常に酷ではないかというお話も一方である。なので、企業負担をできるだけ軽くしていきましょうというのが日本大改革プランだというふうに私は理解をしております。

 何で今このお話をさせていただいているかというと、少子化対策の議論も、私は実は、この日本大改革プラン、そして教育の無償化、そして医療とか介護の制度改革といったところで、大分やっていけるのではないかというふうに思っております。先ほどの、女性の、困難な女性というふうな定義を加えなくても、困っている人一人一人に合わせたセーフティーネットをしっかりとしいていくことで、できることがあるんじゃないかなというふうに思っているのが日本大改革プランでございます。

 後藤大臣にお尋ねしたいと思います。

 全世代型の社会保障ということと、私どもが考えている日本大改革プランについての御所見をお願いしたいと思います。

後藤国務大臣 今、日本大改革プランということで、非常に大きなお話を堀場議員されまして、そういう大きな社会制度を議論するということは大切なことだというふうに思って拝聴をしておりました。

 どの部分をどう分解して答弁させていただいたらとは思うんですけれども、社会保障のことについて、これまで伺っているところによれば、給付つき税額控除だとか、あるいはベーシックインカム、その提案をされているという認識をしております。

 このことについて少し申し上げるとすれば、我が国の社会保障は、病気等の人生における様々なリスクに対しまして、保険料を拠出することで、社会保険方式として、これを基本として対応をいたしております。こうした社会保険方式の理念に照らせば、国が全ての個人に対して最低限の所得保障を無条件に与えるベーシックインカムというのは、なかなか慎重な検討が必要であるというふうに思います。

 ただ、そのベーシックインカムという非常に新しい制度について導入を検討するとすれば、既存の制度との関係をどうやって経過的に調整をし、整理していくのか。給付の重複だとか、追加に必要となる財源も非常に多く必要ですし、既に支払った保険料積立金の経過的な調整をどうしていくのか、現実的に乗り越えていくべき課題はいろいろあるというふうに思いますが、一つの提案として、我々としても、ベーシックインカムということの考え方は勉強させていただけるものだというふうには思います。

 それから、給付つき税額控除につきましても、所得や資産の正確な把握など、様々な技術的な問題があると認識しています。

 政府の方も、社会保障制度を支える人を増やして、能力に応じてみんなが支え合う全世代型社会保障を構築することを目指しておりまして、人口減少、超高齢化社会の課題をどうやって克服していくのか、そういうことを真正面から考えて、取組を充実させていきたいというふうに考えています。

堀場委員 ありがとうございます。

 恐らく問題意識とかというのは、予算委員会等々を拝聴させていただきまして、問題意識、つまり、企業が負担しているものを減らしていかないとなかなか賃上げのインセンティブが働かないよねとか、人がしっかりと自分の人生をもう一度考えたときに、いつでも挑戦できるようにする、それは、企業が検証するのではなくて個に対してやっていこうというふうな、今やられているような方向性というものは一定同じ部分もあるんだと思うんですけれども、恐らく今、賃上げというものをどのようにインセンティブを働かせて実効性のあるものにしていくのかということの議論をもう少し私どもも含めて勉強させていただいて、そして進めていくことができるように頑張ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

大西委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、約四十分間の時間をいただきました。よろしくお願いいたします。

 今日は、大きく三つのテーマを取り上げさせていただきたいと思っております。まず初めに、本日の委員会でもたくさん議論がされております賃上げについて、そして全世代型社会保障、また最後、経済安全保障について、質疑を順にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、後藤大臣にお伺いしたいと思います。

 後藤大臣は所信演説の中で、新しい資本主義の実現に向けて、経済再生の鍵を握るのは構造的な賃上げだと述べられました。

 構造的賃上げというものをもう少しかみ砕いて私なりの解釈を申し上げますと、まずは技術開発や人への投資を行う、そして、それらによって生産性の向上あるいは付加価値の向上を実現する、またさらに、その価値を適正な価格へ反映をするとともに、取引量の拡大なども経て企業の収益性を向上させる、これによって賃上げを行う体力が企業につくことで持続的な賃上げが成立をする、こういったことをおっしゃっていたのではないかというふうに理解をしております。ただ、このこと自体は、やはり一般的な企業の収益性改善のプロセスとして広く知られていることなのではないかとも思います。

 そこで、まず伺いたいのは、これまでこのような構造的賃上げが実現されてこなかった理由として、政府はどこにボトルネックがあったと考えているんでしょうか。また、それを解消するために何を変えようとしているのか、その実効性をどう担保するかも含めて、御答弁をいただければと思います。

後藤国務大臣 今委員御指摘のように、我が国の一人当たりの実質賃金は、過去三十年間、他の先進国と比較して伸び悩んできました。この要因については、諸外国では経済成長とともに賃金が上昇してきた一方で、我が国においては、バブル崩壊後の長引くデフレと低成長とを背景に、企業は賃金を抑制して、家計は消費を抑制し、その結果、需要が低迷して、デフレと低成長が継続する悪循環に陥ったことが挙げられると思います。

 こうした悪循環の中で、企業の行動は慎重化しまして、収益増加や生産性上昇に見合う分配が行われず、賃金が伸び悩んできたものと認識をいたしております。

 こうした中、長年にわたり大きな賃上げが実現してこなかったという現実にしっかりと向き合って、意欲ある個人の能力を最大限生かしながら、企業の生産性を向上させ更なる賃上げにつながる、構造的な賃上げを実現する必要がある。それで、例えば、意欲ある個人に対するリスキリングによる能力向上支援をする、そして、職務に応じてスキルが適正に評価され賃上げに反映される日本型の職務給の確立を行う、そして成長分野への円滑な労働移動を進めるというような、三位一体の労働市場改革に官民連携で着実に取り組んでいくこととしておりまして、六月には、労働移動円滑化のための指針ということで、日本企業に合った形の職務給の導入方法を類型化して、モデルもお示しをしていきたいというふうに思っています。

 日本型の職務給については、職務に必要なスキルとそれに見合う給与体系を明確化することで、あらゆる働き方、労働者が自らの希望に従ってリスキリングを行って、成長分野への企業間、産業間の労働移動を行えるようにしたり、企業内であっても、社内の職務への公募制度、いわゆるポスティング制度等によりまして新たな職務に就けるようにする環境を整備するもので、これにより、持続的に賃金が上がっていくような、そういう労働市場やあるいは企業の体制をしっかりつくっていく、それが必要だというふうに考えています。

 それとともに、今先生からも御指摘あったように、民間投資を大胆に喚起するような成長分野における重点的な投資を行って、生産性を上げて付加価値を向上させるとともに、適切な価格づけを通じてマークアップ率を高めて、物価上昇に負けない賃上げ、コスト上昇の転嫁のできる適切な支払いをしっかり確保していく、こういう構造的な仕組みを、制度的に取り組んでいくことが必要だというふうに考えています。

浅野委員 丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 おっしゃるように、働く人々のスキルチェンジ、あるいはそれを適切に評価する制度整備、そして円滑な労働移動を実現するためのセーフティーネットも含めて、こうした三位一体の改革ということだと思うんですけれども、大臣も答弁の中で少し触れられましたポスティング制度というものもありますが、この労働移動という言葉の中には、企業内におけるそれぞれの人材の価値を発揮できるような配置転換という意味での労働移動と、企業や産業分野を超えた人の移動、産業構造転換というものが含まれていると思うんですね。

 とりわけ、企業内の部分については、労働者本人の意向ももちろん大事なんですが、人事担当者、上司であったり経営者であったり、こういった担当者によるコーチングやメンタリングというのも不可欠だと思います。

 やはり、ここでリスキリングの議論をする上で注意しなければいけないのは、自らのキャリア形成であったり、そのためのリスキリングを、労働者本人の自己責任にしてはいけないという視点だと思うんですね。

 ですから、これはちょっと更問いになるんですが、厚労省が職場における学び・学び直し促進ガイドラインというのを昨年の六月に定めたというふうに伺っております。ここには、経営者側に対しても、労働者と目的を共有したり、あるいは学び直しのための時間を確保したり、そしてそのための費用を支援したり、こういった様々な配慮をするようなことが明記をされております。

 この実効性を高めることもまた非常に重要な観点だと思っておりまして、これはちょっと、更問いになりますので、参考人でも構わないんですが、もし大臣が御答弁できるようであればお願いしたいですが、リスキリングというのは、労働移動の当事者となる労働者だけではなくて、経営者や管理者に対しても、コーチングやメンタリング、あるいはキャリアデザインのためのコンサルティングのようなスキルのリスキリングというものが必要なのではないかと思うんです。ここもちゃんと政府がしっかり支援をしていかなければいけないと思うんですが、ここについて見解があればお願いいたします。

後藤国務大臣 御指摘のとおりでありまして、リスキリングというのを、個人が、自分がやりたいことを適宜いろいろな今あるような支援プログラムを使って身につけるというだけでは成り立たないというふうに思っています。それは企業の方も、きちんとした、リスキリングをすることによってどういう職務に対する道が開けていくのか、それに対してどういう形で働いている方たちとそういう情報をシェアしていくのか、そういった仕組みが必要だと思います。

 そして、企業内のポスティング制度、こういうことをしっかりとやれるということは、実を言うと、会社の外との間の移動について同じ土壌をつくっていくということにもなっていきますので、そういう意味では、単にリスキリングを支援するとか、リスキリングに対する職務給をただ示すというだけじゃなくて、おっしゃったような、いろいろな形での目標設定、あるいはルール作り、そうしたことを企業も一緒になって考えていく、それがやはり成功への道だというふうに思っています。

浅野委員 大臣が同じ問題意識を持たれていることは分かりましたので、是非、リスキリング当事者への支援のみならず、それを支える管理者、経営者側へのリスキリングの支援というものも含めて、今後様々な制度内容の御検討をお願いしたいと思います。これはまだ、詳細、これから議論も深まっていくと思いますので、引き続き取り上げさせていただきたいと思います。

 続いては、中小企業の賃上げについて質問させていただきます。

 中小企業の多くが賃上げをしたくても賃上げができない、あるいはしないというような意向を持っているという調査結果を多数目にいたします。中小企業の賃上げを実現するためには、価格転嫁というものを政府が支援していく、推進していくということは認識をしているんですが、賃上げのために価格の上乗せをするというのもこの価格転嫁の中に含まれているのかどうか。政府は賃上げのための価格の上乗せも含めた価格転嫁を推進する立場という理解をしてよろしいのでしょうか。

 中小企業の中には賃上げ余力のない企業も多く存在する中で、やはり、今年中の賃上げが難しい企業に着目した施策も実施を検討すべきではないかと思うんですが、答弁をいただきたいと思います。

後藤国務大臣 今委員の御指摘された中小企業でありますけれども、我が国の雇用の七割近くを占めています。中小企業の賃上げが成功するか、鍵になるというふうに思っています。

 このため、中小企業が賃上げできる環境整備をどうやってつくっていくか、これは非常に大きな政策課題だと思っています。二つありまして、一つは生産性向上を強力に支援すること、それからもう一つ、今御指摘のあった、足下の物価高騰等を踏まえた価格転嫁対策をしっかりやっていくこと、こういうことがあると思います。

 具体的に、生産性向上について言えば、生産性向上のための補助金二千億円や、事業再構築補助金の五千八百億円、また、給与支給額が六%以上増加した場合には、補助上限や補助率の上乗せみたいなことを考えておりますし、中小企業の支援対策というのを厚くしていく必要もあると思います。

 それから、価格転嫁対策について言えば、やはり取引先と共栄共存をしていくということが大事ですから、今、パートナーシップ構築宣言ということで、一月末時点で約一万八千社がパートナーシップとしてサプライチェーン全体としての共存共栄を目指す宣言をしています。経団連企業でいえば四百九十社ぐらいはもう既にそういうことをしていますので、そういった形での共栄共存を目指していくパートナーシップ構築宣言のようなものをしっかりと社会に広げていく。

 また、価格転嫁対策について言えば、公正取引委員会や下請Gメンの大幅な増員等みたいなことも行いますが、政府の方は、例えば価格交渉、転嫁の状況について、親事業者約百五十社の交渉、転嫁の状況を一覧にして初めて公表するようなことをついこの間やりまして、そうしたことも進めていきたいというふうに思っています。

 こうした様々な、価格交渉促進月間の利用その他、的確な価格づけを通じてマークアップ率を高めて、物価上昇に負けない賃上げや、コスト上昇の転嫁のできる適切な支払いを確保していくということだと思います。

 企業のコストには物件費と給与費が入っていると思います。

浅野委員 ありがとうございました。

 今、最後に補足いただいた、コストには労務費ですとかそういったものも入っているということなんですが、昨日、衆議院の会館内で、国内の主な産業別労働組合の一つであるものづくり産業労働組合の皆さんが来られまして、価格転嫁の現状について説明を受けました。

 通告には間に合いませんでしたので口頭で申し上げますが、価格転嫁の協議を、協議というのは現場で今も盛んに行われています。原材料の高騰であったり部品価格の上昇を基にした価格転嫁の交渉というのを取り上げている企業、容認した企業ですね、これは九四%だそうです。だから、原材料とか部材価格の上昇に起因する価格転嫁というのは、ほぼほぼ、ほとんどの企業で交渉の中で取り上げられている。ではエネルギーコスト、電気代の高騰といったものも含めているかという質問については、六七%にその割合が下がっているということ。さらに、労務費ですとか固定費、いわゆる人件費も含めた部分について、価格転嫁の協議の場に取り上げているというのは四三%ということだそうです。

 これは比較的、どのような期間でやったのか、私はちょっと承知できていないんですけれども、数百社の企業にアンケートを取った結果だそうでして、一つ私は参考になると思っています。

 何が言いたいかといいますと、原材料とかエネルギー価格の反映をするための価格交渉というのは今、過半の企業でやられているんですが、人件費を引き上げるという部分を価格交渉の現場に持ち込んでいる企業というのはまだまだ少ないということなんですね。ですから、大臣がおっしゃったようなパートナーシップ構築宣言ですとか非協力企業の公表とか指導助言というものは進めていただきたいと思うんですが、やはり、交渉当事者がそういった協議の場で人件費のことを取り上げやすい環境整備というものもまた必要なのではないかと思うんですね。

 ですから、そういった部分でも、政府の情報発信ですとか、こういうこともしっかり協議してくださいという意思を表明するということが非常に大事だと思いますので、大臣には今後の情報発信の際にそこも是非意識をしていただければと思うんですが、もし御所見があればお願いします。

後藤国務大臣 考え方として、それをどういうふうに中小企業の皆さんに、あるいはサプライチェーンの中でのいろいろなレベルに浸透させていくかということは、これは大きな政策課題であるという認識を持ちつつ、一言申し上げれば、やはり、物価上昇に負けない賃金を確保していくということが実質賃金を確保するということになります。

 我々、三十年の反省を申し上げたときに、物価に負ける賃金、そして実際のコストアップを支払わないコストカット、こうしたことによって負のスパイラルに陥ってきたということを考えれば、やはり我々、諸外国、先進国のように、物価に見合った実質賃金にしていくということを基本と考えるような、そういう仕込みをしていく必要があるというふうに思っています。

 これをどのように社会、経済としてしっかりと受け止め、それをどうやって実現していくか、また一緒に考えながら進んでいきたい。それが、皆さんと一緒に実現していきたいと経済演説でも申し上げたことでありまして、しっかりそういう意識を持って取り組んでいきたいと思います。

浅野委員 ありがとうございます。

 続いて、予備費について伺いたいと思います。

 令和五年度の予算案に計上されている予備費は、コロナ、物価高対策予備費が四兆円。過去の予備費も未執行というものが目立ちますけれども、なぜ四兆円なのかというのを伺いたいと思います。昨年からの減額分、昨年は五兆円でしたので、この一兆円の減額分がそのままウクライナ情勢経済緊急対策予備費になっているなど、政府として予備費を五兆円規模維持したいという意図も感じ取れる予算案となっておりまして、少し詳しく聞いていきたいと思います。

 本日の資料一を御覧いただきたいんですが、何でこの予備費に懸念を持っているかといいますと、今回、予備費として、過去の予備費として執行された、例えば新型コロナ感染症基金ですとか緊急小口資金というものがあるんですが、それの余った分を国庫に返納して、それを決算剰余金として一般会計に繰り入れて、それが今回、防衛予算の財源に使われようとしている、こういうお金の流れがあるんですね。ですから、予備費を余りにも多く用意してそれを国庫に返納すると、それが一般財源化してしまうので、防衛予算にも転用できるようになってしまう。

 元々予備費は、財政法三十五条で、しっかり使途を決めなければ使えないことになっていますが、国庫返納というプロセスを経ることによって一般財源化してしまうという仕組みがあるようです。ですので、五兆円という莫大な規模の予備費を、やはりしっかりその必要性をきちんと丁寧に説明していただかないと、今、防衛予算の増額が議論される中で、政府の信頼というものが得られないのではないか、そういうふうに感じますので、なぜ四兆円という規模にしたのかをまず財務省に伺いたいと思います。

 その上で、今後のコロナ、物価高対策を検討する上で、どのような不確実性が予見されているのか、これは後藤大臣の御認識を伺いたいと思います。

金子大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 予備費等の件につきまして、根拠を質問をいただいたというふうに思います。

 予備費の性格上でありますので、確たる見通しというものを今現時点で述べるのは非常に難しいことではありますけれども、一方で、新型コロナの感染拡大、また、物価の高騰、国民生活や事業の活動に大きな影響を与えるもの、世界的な景気後退、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクは十分に注視する必要があると考えております。

 こうした点を踏まえまして、令和四年度当初予算と同規模の、不確実性への対応余力五兆円を確保すべく、今年度の二次補正予算で計上させていただきましたウクライナ情勢経済緊急対応予備費一兆円を引き続き計上するとともに、コロナ、物価予備費については四兆円を計上させていただくことといたしました。

 なお、コロナ予備費、またコロナ、物価予備費については、令和三年度四・六兆円、令和四年度四・九兆円の使用を決定させていただいており、今般のコロナ、物価予備費四兆円という金額は、使用決定の実績との関係では必ずしも過大ではないものだというふうに財務省では考えております。

後藤国務大臣 我が国の経済は、ウィズコロナの下で緩やかな景気回復が続いています。一方で、国民生活に身近なエネルギーや食料品を中心に物価上昇が継続していまして、国民生活や事業活動に大きな影響を与えています。

 こうした中、世界的な物価高騰は、依然として予断を許さない状況であります。また、欧米各国の金融引締め等が続く中で、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクもあります。ウクライナ情勢の行方についてもいまだ不透明でありまして、内外経済への影響は予見し難いものがあります。

 政府としては、こうした景気の下振れリスクに先手を打ち、我が国経済を民需主導の持続可能な成長経路に乗せていくため、総合経済対策、補正予算について進捗管理をし、更なる執行の加速を図っていくということで、今、対応中でございます。

 その上で、今後の経済、物価動向等を注視して、予備費の活用も含めて、必要な政策対応についてはちゅうちょなく取り組んでいく、そういうことで考えております。

浅野委員 過年度の予備費の、利用予定額が四・六兆と四・九兆なので、今回も五兆円というのはもっともらしいんですけれども、逆を言うと、五兆円、今年もそれと同じ規模の拠出を政府が考えているのであれば、それをしっかりと説明していただきたいですし、少しうがった見方をすれば、今年使ってしまえば次年度もそのぐらいの規模を計上することが正当化されてしまうような国会でのやり取りの慣習にもつながってしまいますので、これは今日だけではちょっと議論が足りませんが、今、予算委員会もやられておりますから、しっかりそちらでも議論を深めてまいりたいと思います。

 ただ、私が今日指摘をさせていただきたいのは、この資料の一にありますように、余った予備費をこういうプロセスを通せば一般財源化していろいろな用途に活用できてしまうというルートがあることが、財政規律上問題ではないかというふうに思います。ですので、ここについては、予備費は国庫返納しても、その後、決算剰余金の中には含めずに、国庫返納して改めて予算をしっかり計上すべきだというふうに思いますので、是非、今予算委員会が開かれておりますから、ここは政府に、きちんとした財政規律の下で、防衛費の予算についても、きちっとした財源、そして国民の信頼を得られるようなお金の流れで予算案の策定をしていただきたいということを今日は申し上げさせていただきたいと思います。

 続いて、ちょっと時間も迫ってきましたので、全世代型社会保障に質問を移したいと思います。

 全世代型社会保障において、働き方に中立的な社会保障制度の構築を進めるとありますけれども、全世代型社会保障制度構築会議の報告書、資料の二と三に一部抜粋したものが掲載してあります。働き方に中立的な社会保障制度、これを見ますと、つまるところ、この制度の対象を、現状はフルタイムで働く正社員というものをモデルとしているものから、短時間労働者やフリーランス、ギグワーカーなどにも広げて、全ての勤労者を包含する制度を目指すものというふうに解釈をすることができると思います。

 私が今日問いたいのは、あらゆる勤労者を包含する制度を目指すのであれば、中立的という表現よりも、包括的とか網羅的という言葉を使った方が適切なのではないかと思うんですが、なぜ中立的という言葉を選んだのか、政府の考えを伺いたいと思います。

後藤国務大臣 今御指摘の中立的という言葉は、社会保障制度等の在り方によって個人の働き方の選択や労働市場全体がゆがめられるべきでないという趣旨で用いたものであります。

 昨年十二月の全世代型社会保障会議の報告書においても、「雇用や働き方に対して歪みをもたらすことのない「中立的」な社会保障制度の構築を進め、制度の包摂性を高めることで、女性や高齢者をはじめ誰もが安心して希望どおり働き、活躍できる社会を実現していく必要がある。」とされているところであります。

 中立的という言葉自身は、例えば制度、税制でもそうですけれども、そうしたものが社会行動等に影響を与えないような、そういう中立性、経済的にいえば中立性命題みたいな、そういうことを念頭に置いて使っていることでありますけれども、先生御指摘のように、我々も包摂性を高めることでというふうに言っておりますので、先生の御指摘と中立的と我々が言っていることにそう大きな違いもないように私には思えます。

 同報告書では、こうした考え方に基づいて、被用者保険の適用拡大など、勤労者皆保険の実現に向けた各種の取組を着実に進めるべきであると指摘されておりまして、政府としては、報告書に基づいて必要な対応を着実に行ってまいりたいと考えております。

浅野委員 大臣の答弁で、包摂的という意味合いが含まれているということで、やはり懸念をしておりましたのは、中立的といいますと、ある特定の対象、複数の対象のどれにも偏らないという意味で中立的というものも元は使われますけれども、包摂的との違いは何かというと、包摂的はあらゆる全ての立場を含む言葉ですが、中立というと、全ての立場を含まなくても、一定の複数の者というものを特定すれば中立的というのは成り立ってしまうんですね。

 ですから、ある働き方や雇用に制限を設けようと思えば、その範囲の中で中立というのは成り立ってしまいますから、そうではないということを今日は確認させていただきたかったので、是非、そこの包摂的なという部分、できればそちらを使っていただいた方がいいのではないかと思いますが、確認はできましたので、是非その理念のとおりに制度の検討を行っていっていただきたいなというふうに思います。

 ちょっと関連してですが、就業調整についても伺いたいと思います。

 女性活躍や男女共同参画の観点から、夫婦の一方が就業調整をしている実態数、そして、なぜ就業調整をしているのか、その理由を政府はどのように把握しているのでしょうか。特に、年収の壁を理由とした就業調整のほか、各種行政支援策に係る所得制限を回避するための就業調整に関する実態についても、実態を把握しているものがあれば答弁に含めていただきたいと思います。

岩佐政府参考人 お答えいたします。

 まず、夫婦の一方が就業調整している実態数でございますけれども、総務省が公表しております就業構造基本調査の最新の結果によりますと、平成二十九年十月時点におきまして、配偶者がいる正規の職員、従業員以外の雇用者のうち就業調整をしております男性が約四十万人、女性は約三百八十六万人となっております。

田中政府参考人 厚生労働省の令和三年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の結果によりますと、配偶者がいるパートタイム労働者それから有期雇用労働者が就業調整をしている割合は一六・八%となってございます。

 さらに、配偶者がいる就業調整をしているパートタイム労働者及び有期雇用労働者、この割合を一〇〇としまして、就業調整をした理由を複数回答で調査しておりまして、その結果を高い順に三つ申し上げますと、一定額を超えると配偶者の健康保険、厚生年金保険の被扶養者から外れ、自分で加入しなければならなくなるからが五〇・八%と最も高く、次いで、自分の所得税の非課税限度額を超えると税金を払わなければならないからが四六・三%、一定額を超えると配偶者の税制上の配偶者控除がなくなり、配偶者特別控除が少なくなるからが三三・二%、この順となってございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 いわゆる年収の壁を理由とした就業調整が大変多くなっているということなんですが、本日の資料の四に掲載しておりますけれども、女性版骨太の方針二〇二二の中には「女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討」という項目がございまして、この中、少し字が小さいんですが、就業調整を選択する人を現行の社会保障制度が増やしているのではないか、こういった問題意識も記載されております。

 この検討とされたのが昨年の六月の資料でございますので、この間の検討状況について、大臣の方から答弁をいただきたいと思います。

小倉国務大臣 お答えをいたします。

 御指摘をいただきました昨年の六月に策定した女性版骨太の方針二〇二二、これを踏まえまして、昨年十二月には、男女共同参画会議の下に設置されました民間有識者から成る計画実行・監視専門調査会において、関係府省出席の下、社会保障制度、税制等の議論を行ったところであります。

 調査会においては、例えば、女性の就労を妨げる社会保障制度、税制等は男女間の賃金格差や少子化、高齢女性の貧困など様々な問題と関連しており、スピード感を持って見直しの検討を進めるべき、また、制度の改革は、雇用改革、年金、育児休業、税金など総合的に行っていくべきなど、様々な御意見をいただいたところです。

 こうした御意見を受け止めながら、女性版骨太の方針二〇二三の策定に向けまして、各府省一体で引き続き検討を進めてまいる予定です。

浅野委員 ありがとうございました。

 こちらについては、また引き続き議論を深めてまいりたいと思います。

 後藤大臣、小倉大臣はここまでですので、御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 ここからは、経済安全保障について、高市大臣にお伺いをさせていただければと思います。

 まず伺いたいのは、セキュリティークリアランスについてでございます。

 セキュリティークリアランスについては、高市大臣自身も高い課題認識をお持ちだと思うんですが、昨年から経済安全保障の議論をする中で、様々な必要性が議論されてまいりました。

 現時点において、制度の導入に向けたどのような課題があるのか、大臣の御認識を伺いたいと思います。

高市国務大臣 浅野委員がおっしゃるとおり、一定の経済に関する事項を含む重要情報を取り扱う者にセキュリティークリアランスを付与するという制度が日本にないということから、海外における政府調達、民間企業間の取引において、日本企業が不利な状況に遭うケースもございます。日本企業がビジネスチャンスを失ったり、共同研究から外されるようなことがあってはならないと考えております。

 その上で、どういう課題、論点があるかというお尋ねなんですが、セキュリティークリアランスという制度の性質上、例えばクリアランスの過程における調査項目の在り方、それから情報漏えい時の罰則も含めた情報管理ルールの在り方、さらには友好国の制度との整合性、つまり、有効なものにならなきゃいけませんので、こういった点について丁寧に議論を進めていくことが必要だと考えております。

浅野委員 ありがとうございました。

 続いて、少し話は変わりますけれども、技術や人材の流出対策について伺いたいと思います。

 日本から研究グループやエンジニアが他国に出て活動を行っているという報道を度々目にしております。我が国の研究予算や環境が他国に比べて劣っていることが指摘されているわけですけれども、これらの人材、技術の流出対策について、今後、経済安全保障の視点も含めてどのように対応していくのか。

 是非、大臣には、科学技術の担当大臣、そして経済安全保障の担当大臣として、双方の視点から御答弁いただければと思います。

高市国務大臣 我が国の技術的優位性の維持、確保、そして研究開発成果の軍事転用防止などの観点から、我が国が有する技術や人材の流出への対策を推進するということが重要でございます。

 人材流出の対策としましては、やはり研究者が腰を据えて研究できる環境をつくることが極めて重要だと考えております。そのため、若手研究者が腰を据えて独創的な研究を長期間行うための挑戦的研究への支援によって研究環境を整備するということとともに、日本の強みを有する研究機関を世界のトップレベル拠点として拠点化し、外国からも優秀な人材を我が国に引きつけるような取組も進めてまいります。

 技術の流出対策の取組としましては、外為法に基づく投資審査の強化や、いわゆるみなし輸出管理の強化、さらに、留学生、外国人研究者の受入れの審査強化のほか、研究インテグリティーの推進などに取り組んでまいりました。しかしながら、所管官庁と連携しながら、今後、必要に応じて対策は充実させていきたいと考えております。

浅野委員 時間が僅かになってきてしまいましたので、ちょっと質疑の順番を変えまして、重要物資の保全について質問をしたいと思います。通告の番号は十三になります。

 二〇二〇年十二月、中国では中国輸出管理法が施行され、軍用品やデュアルユース品などについて輸出を禁止できるような法律が制定されました。また、二〇二一年一月に公表されたレアアース管理条例案は、レアアースを戦略物資として位置づけ、採掘から輸出まで国が管理する内容となっておりまして、これによって、レアアースの輸出管理強化が今懸念をされております。

 このように、特定の国に大きく依存している物資について、今後どのように我が国がその資源を確保していくことを考えているのか伺いたいと思います。

 ちなみに、今朝の日経新聞には、レアアースについては、回収する技術を国内企業が開発をして、車のバッテリーから希金属を回収する技術、年間四万台分実施できるというような報道もありました。こうしたリサイクル技術を持つ国内産業の積極的な育成も一つの手段だと思っているんですけれども、現時点での大臣の御見解を伺いたいと思います。

高市国務大臣 昨年この委員会で御審議いただいて五月に成立した経済安全保障推進法に基づきまして、国民の生存や国民生活、経済活動にとっての重要性や外部依存性といった要件を満たす物資を特定重要物資に指定して、サプライチェーンの強靱化を図るべく作業を進めております。

 昨年十二月二十日に、レアアースを含む重要鉱物、肥料、また抗菌薬など、十一の物資を特定重要物資に指定しました。この具体的な対応につきましては、各物資の所管大臣が安定供給確保を図るための取組方針において定めております。

 例えば、外部に過度に依存する物資や原材料などについて、レアアース、バッテリーメタルの新たな有望鉱床の探査、開発、また製錬施設の整備、能力強化、省レアアース磁石の開発などを進めてまいります。そして、主要な肥料原料であるリン安と塩化カリの備蓄、また、抗菌薬の原材料及び原薬の国内製造設備の導入ですとか備蓄体制の整備といった、民間事業者による取組への支援を通じて特定重要物資の安定供給確保を図ることといたしております。

 そのための予算につきましても、令和四年度第二次補正予算において一兆円を超える額が措置されたところですので、現在、支援開始に向けた手続をできる限り速やかに進めているところでございます。

浅野委員 終わります。どうもありがとうございました。

大西委員長 次に、たがや亮君。

たがや委員 れいわ新選組で比較的波穏やかな、たがや亮と申します。よろしくお願いします。

 本日は、質問の機会をいただきましてありがとうございます。理事の皆様に御礼申し上げます。

 さて、今日は、日本経済のV字回帰に資する質疑をさせていただきたいと思います。

 日本は、二十五年以上のデフレに加えて、コロナ禍、戦争、円安、エネルギー、物価高の四重苦で、生活困窮者が更に続出しております。事業者の九九%を占める中小企業や家計を温め、個人消費を高めるための施策が急務と考えます。

 その観点において、現在は、輸入物価高、エネルギー高騰によるコストプッシュインフレであり、景気回復によるものではないインフレで、実質デフレ下であり、消費税は事業者、消費者にとっての足かせになっていると思います。そして、消費税の性質、本質について、政治家を始め事業者、国民の多くが認識を間違っているのではないかと考えております。

 そこで、まずこちらのパネル一を御覧ください。一般社団法人日本中小企業経営審議会という団体がありまして、昨年の十二月から今年の一月にかけて行った税に関する緊急アンケートで、千八十一社からの回答によると、景気回復のための消費税についてどう思うかという問いに対して、廃止すべき、四〇%、五%程度に引き下げるべき、三二%、現状で構わない、二五%、増税すべき、三%。廃止又は引下げが七二%で、引上げ容認は僅か三%です。

 これが事業者の生の声ですが、大臣、このアンケート結果についての所見をお伺いします。

後藤国務大臣 先般公表されました十二月の消費者物価の上昇率は総合、コアとも前年比で四%となりまして、国内企業物価の方は前年比で九・五%となるなど、今般の物価高は消費者の暮らし、そして中小事業者の経営に大きな影響を与えているというふうに考えています。中でも、中小企業につきましては、物価高による仕入れコストの上昇等、大変厳しい状況に直面していると認識しております。

 こうした中、政府においては、これまで、ガソリン等の価格高騰対策や、特に家計への影響が大きい低所得世帯に対する支援等、きめ細かな対策を重層的に講じてきております。

 さらに、総合経済対策、補正予算に盛り込んだ電気、都市ガス料金の負担緩和策が、今月請求分、一月使用分から開始されまして、本年九月までに、標準的な世帯で約四万五千円負担が軽減される等、対策を強化しています。

 また、中小企業対策等につきましては、引き続き資金繰り支援に万全を期すため、コロナ借換え保証制度の運用、パートナーシップ構築宣言の更なる宣言拡大、親事業者等の交渉……(たがや委員「手短にお願いします」と呼ぶ)はい。一覧にして初めて公表するなど、様々な対策をいたしております。

 これらの対策を推進することで、中小企業を含めて、日本経済全体の再生につなげてまいりたいと思います。

 なお、消費税については、社会保障制度を支える重要な財源であるために、政府としては減税を考えておりません。

たがや委員 大臣、手短な答弁ありがとうございます。

 大臣、やはり中小企業にとって消費税というのは重税感が強い税ですし、要するに、事業者は赤字でも消費税を払わなきゃいけない。法人税だったら利益のみに課税をされるんですけれども、消費税は利益に加えて人件費にまで課税されるというのが実態です。

 それゆえ滞納も多く、税の滞納分の約五割を占めるのが消費税。制度自体がもう破綻しているんじゃないか、そのように言わざるを得ません。この状況を鑑みれば、消費税自体、日本人になじまない税なんじゃないかとすら思ってしまいます。

 大臣の認識を是非改めていただき、消費税の廃止、少なくとも減税を検討していただければと思います。

 ありがとうございます。大臣、お忙しいでしょうから、これで大丈夫です。

 そこで、財務政務官に消費税の本質についてお伺いをいたします。

 直接税と間接税の定義を端的にお聞かせください。そして、消費税は直接税、間接税のどちらに分類されるんでしょうか。

金子大臣政務官 ありがとうございます。

 まず、一般的に、直接税とは、納税義務者と税を負担する者が一致することを予定している税でございます。一方で、間接税とは、税負担の転嫁が行われて、納税義務者と税を負担する者が一致しない予定をされている税のこととされております。

 その上で、消費税はどちらに当たるかという御質問でございましたけれども、消費税に関しては、価格への転嫁を通じて最終的には消費者が負担することを予定しているものでありまして、事業者が売上げに係る税額から仕入れに係る税額を控除して納税するという仕組みであるため、間接税に該当すると考えられております。

たがや委員 ありがとうございます。消費税は間接税なんですか、本当に。

 パネル二を御覧ください。向かって左側が消費税法の条文です。右側の方がその他の間接税の条文になりますけれども、黄色い部分、ちょっと読ませていただきます。

 消費税法の条文において、事業者は消費税を納める義務がある、そして、右側の方、入湯税、ゴルフ場利用税、印紙税、これらは、消費者が納めるものと記載されています。

 ということは、要するに、大事なことは、これは納税の主体はどこにあるかということなんです。この条文を見る限りは、消費税は事業者が納めるものとありますから、直接税なんじゃないですか。違いますか。政務官のおっしゃる間接税というのは、認識に間違いがないですかね。こういう認識が多くの国民に誤解を与えているのではないかと思います。

 次のパネル、パネル三ですけれども、こちらは平成二年、まあ、よく世間では消費税は間接税だから預かり税だと言われたりしますが、この平成二年の東京地裁の、当時の大蔵省の主張ですね。黄色い部分を読ませていただきますが、これは何の裁判かというと、民間が国を相手取って、仕入れ税額控除はおかしい、消費税を全額納めない事業者はピンはね、横取りだろうなどと訴えた裁判です。

 それの判決がもう出ていますけれども、こちらには、事業者が取引の相手方から収受する、受け取る消費税相当額は、あくまでも当該取引において提供する物品や役務の対価の一部である、事業者が取引の相手方から収受した消費税相当額の一部が手元に残ることになっても、税額の一部を横取りすることにはならないとあります。

 要するにピンはねではない、すなわち、益税、預かり税ではないと言っています。また、消費税は売上金の一部であり、預り金ではないということになります。

 そこで、政務官にお伺いします。消費税は、旧大蔵省が主張したとおり、預かり税じゃないですか。それでよろしいですか。

金子大臣政務官 ありがとうございます。

 多くの皆様方に誤解を与える答弁を過去ずっとさせていただいているのかもしれませんが、預り金的な性格でありまして、預かり税ではありませんというような答弁を過去ずっと財務省はさせていただいております。

たがや委員 じゃ、預かり税でないということでよろしいですね。よろしいですか。

金子大臣政務官 その認識で結構でございます。

たがや委員 じゃ、預かり税じゃないということで私の見解と一致しておりますので、要するに益税でないということですね。そういうことですね、益税には当たらないと。この辺は、後ほどの質問のインボイス、これのたてつけ、要するに、なぜインボイスが導入されるのかという根幹にも関わってきますので、大事なことなんですけれども。

 それでは、インボイスに関して質問させていただきます。

 パネル四ですね。こちらも先ほどの中小企業経営審議会のアンケート結果です。千八十一社のアンケートで、参考程度ですけれども、インボイスに関して、導入すべきでない、五七%、分からない、二七%、導入に賛成、一六%。大半が反対です。

 これを見ていただいた上で質問させていただきますが、そもそもインボイスはなぜ導入されるんですか。

金子大臣政務官 今般、消費税が一〇%に上がるに当たりまして、軽減税率制度を導入させていただきました。一〇%と八%の税率が二つ存在する中で、それぞれの事業者の皆さん方にしっかりとその税率に見合った税額分を御負担をいただくために、今回導入をさせていただくことになりました。

たがや委員 本当ですか、それ。今、要するに、益税もない、預かり税じゃないという話でしたよね。要は、税の公平性と今政務官言いましたよね、内容的には。税の公平性ですよね。よろしいですか。税の公平性というんだったら、そもそも益税がないんだから、消費税には益税という考え方がないんだから、論理破綻していませんか。どうですか。

金子大臣政務官 消費税は、価格への転嫁を通じて最終的には消費者に御負担いただくことが予定されている税でありまして、先ほどここを説明させていただきましたが、事業者の方々が消費税を価格に転嫁できることは重要であるというふうに考えております。

たがや委員 いや、何を言っているかちょっと分からないですね。今言った質問に答えていないです。もう一回ちゃんと。役人の方もちゃんと、政務官が恥かきますよ。私も、三十五年商売をやって消費税に苦しんでいますから、よく分かっているんです。

金子大臣政務官 先ほど、消費税の預り金ではないという判決に関しまして御指摘を賜りました。

 平成二年の東京地裁判決では、事業者が消費者との関係で預かった消費税を過不足なく国庫に納付する義務を負うものでないとされていますが、同時に、消費者が負担した消費税分は原則として国庫に全て納付することが望ましいというふうにされております。

 それを踏まえて、繰り返しになりますけれども、消費税は、消費税分が売上時に対価に含まれて、納税されるまでは事業者の下にとどまることから、預り金的性格を有するものであるというふうに財務省の方からは御説明をさせていただいているところであります。

たがや委員 根本的に会話が余りかみ合っていないと思うんですけれども、これ以上話しても平行線になりそうな感じもしますので。

 ただ、消費税というのは、例えば一〇%上げたからといって、じゃ、そのまま一〇%物価が上がるかといったら、上がっていないですよね。ということはどういうことかといったら、やはり商売人というのは、そういう行政よりも上手を行って、要はマーケットを見て価格を定めるわけですよ。要は、高所得者、中間層、それ以下の方、三つぐらいに分けて、この商品が幾らぐらいだったら売れるかというのを見定めて価格を決めるんですよ。

 だから、結局、消費税というのは、一〇%上げたからといって価格に一〇%乗るわけではなくて、大手企業や立場の強い企業は下に転嫁できる、だからいい。でも、必ずその一〇%はどこかにしわ寄せが来ているわけです。それが雇用に来たりとか様々なところに波及するわけですね。だから消費税というのは重い税なんです。基本私はこう思っていますよ、消費税に関しては、国のピンはね事業。要するに、プラス一〇%って感覚じゃないでしょう、だって。(発言する者あり)失礼もくそもないですよ。これは本当の話ですから。我々、全部転嫁できないんです、商売をやっていても。必ずどこかに吸収されていくわけです。そういうことを考えたら、消費税というのは本当に重いということをちょっと考えていただきたい。

 さらに、インボイスは、一千万円以下の小規模の事業者ですので、その辺はしっかりよく考えないと、今、自民党さんの中でも、片山さつきさんもこの間「朝まで生テレビ!」で言われていましたけれども、一緒に出演したときに。結構党内でももんでいるという話ですが、しっかりと手当てしていかないと、本当に亡国、棄民政策になりかねない、そう思いますので、しっかりとやはり自民党内でも議論を深めていただきたい、そのように思うんですけれども。

 そこで、じゃ、インボイスに関してですけれども、十月に制度導入に向けて、国税庁職員も税理士も事業者も混乱を来しています。絶対に混乱せずに、十月、今の時点でこんなに混乱しているのに間に合いますか。お聞かせください。

金子大臣政務官 インボイスを導入させていただくことに関しましては、もう既に数年前から決定をさせていただいていたことでございます。それに合わせて、令和五年度、本年度でありますけれども、税制改正で激変緩和措置を幾つか導入をさせていただく予定になっております。

 甘んじて、周知が弱いということであれば、しっかりとまた反省をした上で、また、国民の皆様方、事業者の皆様方に御理解をいただけるように、なお一層の周知活動を徹底してまいりたいというふうに思います。

たがや委員 そもそも、先ほどの議論の中で、インボイスの導入に大義がないというのはあるんですけれども、もし、このままいって、事業者がインボイスの理解が今のまま深まらなかった場合、十月に見切り発車を、それでもやるのか、それとも延期という部分も考えていくのか、ちょっとお聞かせください。

金子大臣政務官 ありがとうございます。

 仮定の話は余り申し上げることはできませんけれども、しっかりと、十月に実施ができるように、財務省、また国税庁、それぞれ準備をさせていただきたいというふうに思います。

大西委員長 申合せの時間が経過しております。

たがや委員 はい。じゃ、最後一言。

 消費税は中小企業に負担の大きい事業者税で、廃止、最低でも減税にするべきで、インボイスは更に弱い立場の方々の負担感が強いので、景気対策のためにも廃止すべきですが、まずは、様々調整が必要でしょうから、混乱していると判断したら迷わず一年延期すると強く申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

大西委員長 次回は、来る十五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十三分散会


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