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ゲームメカニクスの
 設計・検証ツール
Machinationの紹介
GCS2013 2013.6.13 湊 和久
今日はこの本の話をします!
翻訳・監修をさせていただきました。
今日はこの本の話をします!
翻訳・監修をさせていただきました。
どんな本?
 海外におけるゲーム研究やゲームデザイン研究は、多くの議論、論文、書籍を経てある程度体系化されつつ
あります。それは、数多くの名作の解析や、新しく作るゲームのデザインの足がかりに用いられています。しか
し、ゲームには「作って動かしてみないと分からない」ところも多く、本書でも「紙と鉛筆によるペーパープ
ロトタイピング」「Unityなどを用いたソフトウェアプロトタイプ」など、今日有効とされるプロトタイプ手法
を紹介しています。一方で、どんな速度で開発を行ってもソフトウェアのプロトタイピングのコストは決して
小さいものではありません。
 著者の一人である ヨリス・ドーマン氏は、ソフトウェアプロトタイピングにコストを割き始める前の段階
で、ゲームメカニクスをモデル化し、視覚化して検証するために、「マキネーション」と名付けた新しい視覚
化手法を提唱しています。さらに、それを実際に動的に動作させるツールも開発しました。
 デジタルツールを用いることで、ソフトウェアプロトタイプが出来あがらないとゲームデザイナーが検証し
にくかった駆け引きや数値調整に関わる要素を、「動くダイアグラム」を用いて高速に検証することができる
ようになっています。その要素の変更やゲーム構成の組み替えも容易で、AIプレイで瞬時に10,000回プレイさ
せて統計データを取り、ゲームデザインの偏りや、仕様変更の影響効果を測定することも可能です。
 本書は、前半部で海外で蓄積したゲーム研究の議論を簡単に振り返り、後半に向かってマキネーションを活
用し、前半部の知識を土台にしてゲームをデザインしたり、既存のゲームを実際に解析することを行っていま
す。
 また著者達は、マキネーションで要素間の影響を可視化できることを利用し、ゲームメカニクスの「デザイ
ンパターン」集を作りました。ゲーム開発の現場で「この要素をあれでこれしよう」と各人が好きな言葉で話
していた仕組みに、定義と名前をつけてくれました。
長
い
!
どんな本?
端的に言うと?
既存のゲームメカニクスをモデル化したり、ゲーム開発
前に自分のデザインするゲームをモデル化することで、
良質な知識を身につけたり、チームレベルの開発人員
を巻き込まないと検証できないことを事前に検証し試
行錯誤することが可能だ。しかしこれまで、自習方法
を含めよい手法がなかった。本書の著者が開発した専
用ツールを用いれば、それが可能になる。使い方だけ
でなく、これまでのゲーム研究の知見もまとめられて
いる。
長
い
w
端的に言うと?
すっごいざっくり言うと
ゲームメカニクスの記述を自然言語ではなく視覚言語
で行おうという提案
Machinationの紹介
それがMachinationだ!
↑モノポリーをモデル化してマキネで描いたもの
しかも動ーく!
↑マキネ上で白熱するモノポリー対戦の図
しかも統計できる!
↑マキネ上で100回オート対戦を行いルールの偏りによる必
勝法がないか解析中の図
しかも無料!
↑これは解説書であって、使うのは無料で、マニュアルも公
開されています
紙と試作ソフトの間
ペーパーはプレイテストが大変で、ソフトウェアプロ
トはなんだかんだで時間がかかる
ゲームメカニクスの5分類
Physics(物理)
Internal Economy(内部経済)
Progress(進行)
Tactical Maneuver(戦術的な操作)
Social Interaction(社会的インタラクション)
ゲームメカニクスの5分類
Physics(物理)
Internal Economy(内部経済)
Progress(進行)
Tactical Maneuver(戦術的な操作)
Social Interaction(社会的インタラクション)
プロトタイピングの目的
“Find Fun”=面白さを見つけることを早期にやる
プロトタイピングの目的 (※)
ただし天才に限る
僕(凡人)にとっては……
“Find Sucks”=今から時間を使って作ろうとしている
ゲームが実はクソゲーであることを先に知る
それを証明しましょう!
実演
「ソウルパクリファイス」
壮大なダークファンタジースト
ーリー
大地から魔法源ソウルを吸い上
げて召喚獣を召喚
シンプルながら駆け引きのある
奥深い戦闘システム!
「ソウルパクリファイス」
壮大なダークファンタジースト
ーリー
大地から魔法源ソウルを吸い上
げて召喚獣を召喚
シンプルながら駆け引きのある
奥深い戦闘システム!
→嫌な予感が…
→嫌な予感が…
→嫌な予感が…
仕様
戦闘エリアに有限リソース「ソウル」が200存在する
対戦するプレイヤーはソウルを自分のMPに自動チャ
ージする
プレイヤーはチャージしたMPで2種類の召喚獣を召
喚する
仕様
ソウル2を消費してイフリートを召喚すると、対戦プ
レイヤーに定期ダメージを与える
ソウル5を消費してアンドロを召喚すると、ソウルを
収穫する速度が向上する
対戦相手のHPをゼロにしたほうが勝ち
DEMO
Machinationを使ってみます
完成図
あれ…おもしろくない
ソウルの有限性がゲーム性に影
響を与えてない
ひたすらイフリート呼べば勝て
るじゃんこれ
HP消費して敵のイフリートを倒
すメカニクス追加してみるか
あれ…おもしろくない
ソウルの有限性がゲーム性に影
響を与えてない
ひたすらイフリート呼べば勝て
るじゃんこれ
HP消費して敵のイフリートを倒
すメカニクス追加してみるか
→嫌な予感が…
DEMO
完成図
HPを削った必殺攻撃があんま駆
け引きになってないじゃん
よし第3のパラメータSPを追加
しよう
ダメージを受けるとSPが溜まり
イフリート一掃!
HPを削った必殺攻撃があんま駆
け引きになってないじゃん
よし第3のパラメータSPを追加
しよう
ダメージを受けるとSPが溜まり
イフリート一掃!
→嫌な予感が…
→嫌な予感が…
HPを削った必殺攻撃があんま駆
け引きになってないじゃん
よし第3のパラメータSPを追加
しよう
ダメージを受けるとSPが溜まり
イフリート一掃!
→嫌な予感が…
→嫌な予感が…
仕様は足し算だよ兄貴!
HPを削った必殺攻撃があんま駆
け引きになってないじゃん
よし第3のパラメータSPを追加
しよう
ダメージを受けるとSPが溜まり
イフリート一掃!
→嫌な予感が…
→嫌な予感が…
仕様は足し算だよ兄貴!
→敗戦の予感が…
DEMO
完成図
証明完了
証明完了
クソゲーでした
うまくモデル化すれば色々扱
えます
RPGのスキルツリーへ
のポイント投資
進行型ゲームのロック&
キーメカニズムなどなど
Machinationの良いところ
「優秀な企画Aさんのエクセ
ル活用術」も勿論素晴らしい
Machinationならではの良い
ところを強いて挙げるなら…
Machinationの良いところ
「優秀な企画Aさんのエクセル活用術」は属人性のテク
Machinationは、標準化・汎用化を試みており、マニュ
アルも本もある
誰でも使い始めたり引き継ぐことができる
デザイナーの世界で、エンジニアと同じようなアプロー
チをしている
この本のお得なところ
欧米の主たるゲームデザイン
の議論もカバーしている
他の専門訳書・専門洋書に進
む前にさっくり読める
メカニクスのデザインパター
ン集が付録
ちょっと宣伝
印税1銭も入らないので安心して買ってください!
ちょっと宣伝
印税1銭も入らないので安心して買ってください!
テキスト
COMING
SOON
ご静聴ありがとうございました!
Twitter: @minahito
http://d.hatena.ne.jp/minahito_carp/

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