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鳥かど/目黒


ハワイから帰国し、最初に迎えるきちんとした食事。和食でも食べに行こうかなあと思っていた矢先に「今夜、鳥かどの予約があるんだけど、行けなくなったから、代わりにどう?」との連絡。渡りに船とはこのことです。
権之助坂を下り、目黒川を渡ってすぐ右の路地。前の店舗のものでしょうか、ビストロのような入り口に戸惑います。
6年連続ミシュラン1ツ星、食べログ焼鳥部門日本一の声価を保持し続ける「鳥しき」。その分店が2017年1月に満を持してオープン。
警抜なインテリア。私の知る限り世界で最もカッチョエエ焼鳥屋です(写真は食べログ公式写真より)。コの字型のスタイリッシュな内装は81を想起させる。
ビールで乾杯。小さなグラスで680円と割高ではありますが、お店の格から考えればこんなものでしょう。

「○○(予約してくれた女の子の名前)のやつ、今夜の予約取るために150回ぐらい電話したらしいですよ。かわいそうに」彼女のためにも心行くまで楽しみます。
お通し。一葉落ちて天下の秋を知る。素晴らしい野菜の群れである。玉ねぎの甘さよ。肉味噌まで完璧に美味しかったです。
ササミとモモ。ササミは半生を通り越して95%生ですね。表面数デニールに軽く火をとおしたのみ。生焼け原理主義者の私には堪らない調理です。

一方、モモはしっかりとした焼き加減。香ばしく、それでいて瑞々しい。火入れには頂点があるということを知らしめる1本でした。
脇に大根おろしがおかれ、グラニテのように口の中をサッパリさせてくれます。
私は日本酒、連れはグラスワイン。いずれも800~1,000円程度です。
かわ。あまり好きな素材ではないのですが、初めて美味しいと思えました。焼き目にグラデーションがあり、カリカリからグニュグニュまで様々な食感を楽しむことができます。
すなずり。サックリとした歯の入りにザラザラと印象的な舌触り。美味しい。思い切りの良い味付けに酒が進む。
ポテトサラダ。一般的な冷やしたタイプではなく、温製です。敷かれているのは確かな味のそぼろ肉。鶏への拘り。信念が感じられます。
ししとう。最高品質。素材そのものが良く、奇をてらわずシンプルな調理は好感が持てます。
軽い串には軽い酒。美味しいですね。個人的に獺祭はとても好きなのですが、メジャーになりすぎて注文するのは逆にダサいみたいな風潮になっているのが残念。
つくね。サイコロキャラメルの角を円くしたような面白い形状。なんこつが少し加わりコリコリとした食感。個人的には粘度のあるタレと卵黄で食べるほうが好きなのですが、まあそれは人それぞれ。
レバーペーストのパテ。最中の生地というかミルクせんべいというか、羽根のようにかるい外皮にこれまた軽い味わいのパテ。レバーが苦手な人はこれを食べるといい。
うずらの卵。万亀の火入れとは対極をなし、卵黄はトロトロに液状化現象。半熟を至上とする私には最高の1本。どうやって調理するんだろ、これ。
連れはワインをグラスで適当に注文し、ブラインドで飲んで何かを当てる遊びを続けているのですが、ソーヴィニョン・ブランを用いたピノノワールの赤という珍しいワインに巡りあうことができました。
澤屋まつもとの守破離。色があり、微発泡。ガツンと爽やかで芳醇な香りです。
ハツ。猛々しい味わいにノックアウト。これは本当に美味しかった。野性味がありつつも、繊細。鶏さんありがとな。
ギンナン。ホクホクとした食感で箸休めにちょうど良い。当店は鶏肉に限らず、脇を固める食材まできちんと美味しいのが凄い。
よだれ鶏でしょうか。恐ろしく新鮮でピュアな鶏肉。まるで刺身のように繊細。そこへマグマのような暴力性を持つタレをちょこんとして味を開花させる。本日一番のお皿です。
日本酒が止まらない。全種類制覇してしまいそうな勢いです。連日満員御礼で量は出るのだから、もう少しラインナップの拡充を願います。まあ、先のワインを見る限り、それほど酒に興味がない店なのかもしれません。
食道。密度高くギュウギュウに串が打たれており、独特の弾力性と共に食べて楽しい1本です。野趣溢れる脂の1滴1滴まで美味しい。クセになりそうな味。
手羽先。これは普通。食べ辛い。当店に限らずですが、手羽先って串に刺して食べる必要はあるのか、という疑問が常に脳裏につきまとう。
ちぎも。オールデンのようにボッテリとした外観。光沢の良さに思わず見惚れてしまいます。ただし味は期待したほどではなく、そこそこ美味しいレバーといったところでした。
これにて日本酒コンプリート。

〆のゴハンに親子丼かウドンかを選ぶことができるのですが、ひとつづつお願いして取り皿で分け合います。今、「鶏皿」と誤変換されてわろてる。
親子丼。絶句するほど旨かった。こういう普通の家庭料理をプロ中のプロに作ってもらうの大好き。卵の質と火の通り、鶏肉の弾力と肉そのものの味の濃さ。全てが完全に調和し、小泉純一郎と小泉進次郎のような芯の強さを感じました。
うどんは稲庭タイプ?決してオマケのサイドメニューといったことはなく、鶏ベースのスープが実に美味しい。麺も中々凝っていて、麺そのものが美味しい。いやはや大したお店である。
ちなみに先の鶏スープ、親子丼を注文した場合は別皿で頂けます。

しっかりとした基礎に裏打ちされた素晴らしい焼鳥屋でした。なるほど現代の焼鳥業界のヘゲモニーを得たのは当然の成り行き。おまけに安い。ひとりあたり11,000円で済みました。結構飲んでこの値段ですから、料理の値段は6,000円程度ではないでしょうか。その値段でここまで美味しい料理を提供できるのは見事です。

従業員の立ち振る舞いは改善の余地あり。飲み物を注文しても忘れられたり、常に切羽詰った雰囲気であったりと、優雅さに欠ける部分が多々ありました。また、店主は仮借ない方で、厨房の串の打ち方に対する不満を客の目の前でぶちまけるので、聞いていて気持ちの良いものではありません。

客層は独特。本気のうまいもん好きが集まっていると印象。ここで働くと鍛えられるだろうなあ。

いずれにせよ、デビュー半年でこのレベルにまで仕上がっているのですから、今後が楽しみで仕方がない。また来ます。


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