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鮨おさむ/福岡市南区

博多の中心地から南へ車で向かうこと20分。どの駅からも遠い辺鄙な住宅街に博多屈指の人気店「鮨おさむ」。
武藤修シェフは29歳の時に修業先の「鮨しげ井」から平成3年にお店を引継ぎ開業、翌年より「鮨おさむ」として営業を開始し、平成9年に現在の店舗へ移り、現在に至ります。
まずはビールで。女将さんがワイングラスに丁寧に注いでくれ、それだけで美味しく感じます。店内の写真撮影は大歓迎という姿勢であり、ゲストに最大限楽しんでもらおうという心意気が伝わってきました。
まずは地元のウニ。味が濃くまったりとした舌ざわりに心躍る。付け合わせの海ぶどうやジュンサイなどもサッパリとして1皿目に最適。
2皿目はトラフグです。ゴリゴリにマッチョな歯ごたえのトラフグに、アカムツ(ノドグロ)など後ほど登場する食材の肝のソースが百花繚乱。ミョウガや芽ネギの食感も良く、カラスミの味覚のアクセントも素晴らしい。
肝ソースがとにかく旨く、1滴たりとも無駄にするまいとワカメを別皿で頂きます。肝の旨味はもちろんのこと、思い切りの良い酸味の強さが特筆すべき点でしょう。
日本酒をお願いすると、フルートグラスに並々と注いでくれました。これは、凄い。グラスで1,000円という価格設定ですが、これは1合近くあるのではなかろうか。
スペシャリテの「ミンククジラの畝須(うねす)」。内臓よりも上のおなかの部分であり、その上品な脂の甘味はまるで上質な豚肉を食べているかのようです。生姜醤油でキリっと頂き恵比寿顔。
おつまみセットが届きました。アンキモに奈良漬け、ヒラメの胃袋、アワビのツノ、カラスミ、イカ。完全に酒飲みを喜ばせにかかっている仕様であり、たっぷりの日本酒を携えた私得。ところで当店はツマミも握りも味が濃い目なので、酒飲みと下戸とでは印象がまるで異なるおそれがあります。
アカムツ(ノドグロ)を焼きます。アカムツやキンメなどの深海魚は日光の届かない寒いところに暮らすので、自然と脂の蓄えが大きくなる。その一番美味しい部分を全て掻っ攫う背徳感。
地元のお酒をもう一杯。ちなみに当店のPB「大吟醸おさむ」というものもあり、なんと久留米市の花の露が手掛けているそうな。
にぎりの前にシジミ汁で内臓を落ち着けます。これ1杯で何個分のシジミが投入されているのかと心配になるほどシジミの味が濃く、シジミよりもシジミの味がしました。
最初の第1カンはキス。キスと言えば天ぷらのタネというイメージが強いですが、なかなかどうして鮨にしても悪くないですね。ちなみにシャリは鮨米のために作られたという新潟県の「笑みの絆」に上越妙高の須弥山の天然水を、酢は京都の「富士酢プレミアム」を使用しているそうです。
トラフグ。やはりマッチョな食感であり、更に厚めにひかれているため噛み応え抜群。先の肝ソースは絶品ですが、コチラは昆布ので〆て、フグそのものの美味しさが引き出されていました。
アカムツ(ノドグロ)。こちらも先ほどの脂がジュワっとした味覚とは正反対。高貴さすら感じさせる上品な味わいでです。
イカは細かく包丁が入れらえており、舌先でとろけるような優しさがあります。
鉄分の強いマグロを思いきり漬けて強い味。ワサビではなく和カラシで迫力のある味覚を演出しています。
三位一体と称し、トロとヅケと中落ちを重ねて頂きます。複雑な食感に種々の味わい。これは抜群に美味しいですねえ。マグルであれば誰でも取り乱す美味しさです。
ガリはかなり甘めに仕立てられており、好みが分かれるところ。醤油を始めとして九州はかなり甘めの味付けが好きですね。
アジを昆布締めで。これがアジかとびっくりするような個体の大きさであり、どっしりとした味わいで私好み。
一転してサヨリはクリアな味わい。あの真っ黒な腹を持った魚がこんなにもピュアな味をクリエイトするだなんて、魚というのは面白い。
コハダはかなり強めに〆られています。先にも記しましたが、当店は全般的に味が強く食後は大変喉が渇くのでそのつもりで。
イワシはほんのりと温めて脂の甘味を引き出します。うーん、やっぱりこういう青魚って美味しいなあ。魚の美味しさは価格に比例するわけではないのだ。
車海老のかのこ握り。本来の江戸前仕事とはこのような造形らしいのですが、私は生まれて初めて出会いました。大口を開けて一口で頬張る歓びは何事にも代えがたい。
アナゴは品よく炙って舌の上でとろけます。ギトギトしたツメを塗るのがアナゴ料理の全てでは無いのである。
〆の巻物には中落とタップリの海ブドウが。あまり醤油を用いず海ブドウの塩気で攻める食べ方が面白かった。
ラストを飾るのは店主考案の「わさびいなり」。熊本産の南関揚げを丁寧に炊いて、生ワサビとゴマを合わせた酢飯を包んで、一口大に仕上げます。ジュワっと優しい味わいで〆にぴったり。
デザートは甘夏のゼリーでごちそうさまでした。

お会計はひとりあたり2万円を切る価格設定でリーズナブルかよ。ツマミもにぎりも酒も量が多く、美味しいものを心ゆくまで堪能できるお店です。大将も人懐っこく気楽な方なので、高級鮨屋特有の緊張感などは一切ありません。良い鮨屋を見つけました。福岡に来るたびに訪れたい好きなお店です。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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