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奈良屋町 青(あお)/呉服町駅(博多)

呉服町または中州川端駅から歩いて5分ほどの距離にある「奈良屋町 青(あお)」。本当にこの通りで良いのか?と不安になる裏路地に佇む真っ黒な古民家がそれです。一斉スタート1回転方式で、開始の15分前にドアオープン。
店内はシンプルながらセンスを感じる誂えであり、広い厨房をL字型のテーブル8席でぐるりと取り囲みます。

金田英之シェフはフランス料理を学んだのち、バンコクでは「ガガン(超有名店で現在は閉業。シェフが日本好きでよく西麻布で飲み歩いていた)」でインド料理にもタッチ。帰国後は六本木「龍吟(りゅうぎん)」で腕を磨き、2019年6月に当店を開業。
ビールやハイボールなど気軽な飲み物もありますが、オススメはアルコールのペアリング。シャンパーニュに始まり白赤ワインにビール、日本酒と多彩な組み合わせでゲストを魅了します。たっぷり注いでくれるのも灰皿テキーラ世代の我々としては嬉しい。7,700円という控えめな価格設定はもっと嬉しい。
スペシャリテの黒い球体。中には豚足にフォアグラ、トリュフが詰め込まれており、ジューシーでコッテリな味わい。いきなり胃袋をグっと掴んで来る魅力的な味わいです。
カリフラワーのムース(?)にイセエビとイカのタルタル。イセエビのお出汁から作ったジュレを敷き詰め、トリュフでスマッシュ。これはもう気が遠くなるほど美味しい。ネットリとしたエビとイカの甘味にキャビアの深みのある塩気。まさに金メダルな味わいです。
切子のような造形のカブ(だっけ?)。ものすご手が器用。私などイラチなので途中で放り投げて怒られるタイプです。中には海老のしんじょう。餡のベースはスッポンであり重層的な味覚。
シャリシャリと骨切りしているな、と眺めていたのですが、その物体はアナゴでした。かるーく炙って半レア状態でガブリ。むきむきマッチョな歯ごたえであり、煮たり蒸したり一辺倒の穴子の世界に一石を投じるひと品です。
迷いガツオ。こちらも軽く炙って食欲を誘う香り。肉厚で食べ応えがあり、アプリオリな美味しさを楽しみます。
タラの白子のおじや。ある意味で日本料理のお凌ぎ的な位置づけなのでしょうか、官能的な白子の味覚に炭水化物の優しい甘味が五臓六腑に沁みわたります。
茶碗蒸しにはたっぷりのアンキモを。これはもう、問答無用の美味しさですね。濃密にして濃厚。日本酒がガブガブに捗ります。
黒イチヂクの白和え(?)。白ゴマではなくマカダミアナッツを起用しており、凍って削ってファサーしたフォアグラも絶妙な取り合わせです。
ナスをサンマで包んでバリっと焼き上げます。ソースにはサンマの内蔵を用いており、メタリックな味わいが強固。味覚がランバダしています。
お口直しにガリなのですが、ショウガではなくシャインマスカットを用いています。ほんのりとした甘味にお酢の酸が響きオシャレな味わいです。
お肉料理は牛サガリ。ソースは割下や卵黄で、どことなくすき焼き風味なのが面白い。前衛的ながらどことなくノスタルジック。量も多く食べ応えもしっかり。
〆の炭水化物はワタリガニのスパイスカレー。ココナッツの独特の甘味にスタイリッシュな香辛料、ワタリガニの旨味が加わりセンス溢れるひと皿です。この料理だけスピンオフしてカレー屋でも始めてもらいたいところです。
飴細工で造形した洋ナシのカトラリーでカンカン割ると、、、
中にはヨーグルトソースが詰まっていました。追加でブルーチーズのアイスクリームに洋ナシそのものを投入し、実に遊びのあるデザートが完成。日本料理店(?)でここまで手の込んだ甘味が出るのは珍しい。先のカブにせよ飴細工にせよ、手先が器用な方である。
お茶菓子はわらび餅。「空気でできていますので」と煽られましたが、本当に空気のような食感(なんやそれ)であり、四角い形を保っているのが不思議。

以上を食べ、お料理だけだとツェーマンゲーセン。お酒のペアリングに税サなどを含めて支払額はひとりあたり2.7万円。福岡での食事としては中々の価格設定ですが、その上を行く食後感があり大満足。

シェフは人懐っこい柔らかな雰囲気ですが、遅刻者は無視してさっさとコースを始めたり、インスタに夢中なキャバ嬢には塩対応であったりと、緩急ある客あしらいに大物の風格を感じました。近い将来、日本いや世界中からゲストが訪れる予約困難店になること間違いなし。オススメです。

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