JR西日本の岡山、山口エリアに現在も根を張る国鉄型車両、115系。岡山エリアでは新型車両による置き換えが進められていますが、同社は、現在も「湘南色」をまとう3両編成2本の「最後の営業運転乗車ツアー」を2月1日に開催しました。このツアーをもって、湘南色の国鉄型車両がまたひとつ、記憶の彼方に旅立ちます。今回は、その湘南色が歩んだ歴史を、簡単に振り返ってみましょう。
湘南色は、オレンジ色と緑色のツートン。国鉄の正式な色の名前では、前者が「黄かん色(おうかんしょく)」、後者が「緑2号」と呼ばれていました。その歴史は、1950年に登場した国鉄80系電車に遡ります。
80系電車は、それまで客車列車で運転されていた中・長距離列車を電車に切り替えるために投入された車両。同形式はデビュー当時、湘南へ向かう東海道本線の列車を中心に運用されたことから、「湘南電車」のあだ名がつきました。そして、湘南電車がまとうオレンジと緑のツートンも、「湘南色」と呼ばれるようになったのです。
湘南色は後発の113系や115系にも引き継がれ、その勢力は、東海、近畿、中国方面や信越方面など、さまざまな直流電化路線に広がっていきました。
そして湘南色は、国鉄時代末期に誕生したステンレス車両の211系にも波及。JR化後もこのカラーは複数の車両で採用されていますが、JR東日本のE231系、E233系などは、緑色がそれまでのものより明るい色合いとなっています。
そして2009年、JR西日本は鋼鉄製車両の塗装を単色に順次変更する方針を発表。113系や115系も例外ではなく、全車両が単色になる予定でした。しかし、同社は2017年、湘南色のまま残っていた一部の車両を、単色化の対象外としたことを明らかにします。その対象が、岡山エリアを走る115系2本。今回のツアーで使用される、3両編成のD-26・27編成でした。この時期にはJR他社でも車両の世代交代が進み、この2本はいつしか、JRが保有する鋼鉄製の国鉄型車両のなかで、湘南色を維持する最後の生き残りとなっていました。
余談ですが、湘南色の115系D-26・27編成は、車内の大幅なリニューアルが実施されておらず、国鉄時代によく見られた寒色系の内装やボックスシートがそのまま残されています。外観はもちろん、車内にも漂う、どこか懐かしい雰囲気。それを色濃く残すこの2本は、まさに「国鉄の生き証人」と呼べるでしょう。
JR西日本の115系湘南色編成が引退すると、同カラーの鋼鉄製車両はJRから消滅。全身が湘南色の車両は、しなの鉄道115系の3両編成1本(S3編成)、天竜浜名湖鉄道TH2100形の1両など、一部の私鉄にごくわずかに残るのみとなります。