鉄道の駅のホームから時刻表が姿を消しつつある。西武鉄道では管内で3駅を残すだけとなった。今春、鉄道各社の多くが運賃を引き上げただけに、本紙「ニュースあなた発」には、読者から「運賃を値上げしてサービスを下げるのか」との不満の声が寄せられている。(須藤恵里)
鉄道の時刻表 1872(明治5)年、新橋—横浜間に日本で初めて鉄道が開業したときから駅に掲示していた。国の鉄道運輸規定では「鉄道ハ停車場ニ(中略)旅客列車ノ出発時刻表ノ摘要ヲ掲示スベシ」と駅での設置を義務付けている。「日本鉄道史 幕末・明治編」(中央公論新社)によると、時刻表通り規則正しく運行するために、鉄道開業に伴い西洋式の定時法を導入し、日本人の時間感覚を大きく変えたという。
東京都練馬区に住む女性(60)は1年前、自宅近くの西武池袋線石神井公園駅のホームで異変に気付いた。昨日まで時刻表が掲示されていた案内看板に観光ポスターが貼られていたのだ。「電光掲示板は直近の列車しか分からない。時刻表なら一目でぱっと分かるのに…」
西武鉄道の広報担当者は本紙の取材に「スマートフォンの普及で時刻表のニーズが少なくなり、固定費削減の観点から撤去を決めた」と説明する。
西武鉄道によると、ホームの時刻表は2022年春に一部の駅で試行的に撤去し、現在は91駅のうち、西所沢駅など3駅にしか残ってない。広報担当者は「改札付近に時刻表を掲示しており、窓口では紙の時刻表を渡している」と強調するものの、「再設置してほしいとの声も一部にある」と利用者に不満があることを認める。
西武鉄道に先立ち、時刻表の撤去や削減を進めてきたのがJR東日本だ。19年に南武線の複数の駅でホームから撤去すると、沿線の東京都稲城市で市会議員らが問題視。市もJR東日本に訴えたが、再設置には至っていない。
ホームから撤去するのは、設置を義務付ける国の規定に違反しないのか。国土交通省は「掲示の場所や方法に具体的な規定はなく、ホームではなくても改札付近に掲示したり、電光表示で案内したりしていれば問題ない」との見解だ。
今春、鉄道各社が相次いで運賃を値上げした。ホームドアなどバリアフリー設備の充実を値上げの理由に挙げているが、新型コロナウイルス禍での乗客減による収益の悪化が背景にある。時刻表の撤去もコロナ禍と無関係ではない。
しかし、冒頭の女性は疑問を投げかける。「スマホを使えない人もいる。鉄道会社は...
残り 1066/2131 文字
この記事は会員限定です。
- 有料会員に登録すると
- 会員向け記事が読み放題
- 記事にコメントが書ける
- 紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)
※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。
カテゴリーをフォローする
おすすめ情報
コメントを書く
有料デジタル会員に登録してコメントを書く。(既に会員の方)ログインする。