日本テレビホールディングス(東京)の子会社化が決まったスタジオジブリ。鈴木敏夫社長を悩ませてきたのは、世界的な映画監督、宮崎駿氏の後継者だった。
育成に取り組もうとしたこともあるが、「ことごとく失敗に終わった。宮崎に続く有望な監督を見つける、育成するその困難さを知った」と語る鈴木氏。
難題は、子会社化により解決されるのか。宮崎氏は引退するのか。約1時間の会見で見えてきた「ジブリの未来」とは──。
◆会見詳報
ジブリ・鈴木社長の冒頭あいさつ(抜粋)
鈴木です。いつもの映画だと気楽にしゃべれるのですが、ちょっと違うと緊張する。
宮崎駿とぼくは、気がついたら出会って45年の付き合いです。とんでもない年数になってしまった。ジブリもスタートが1985年。そこから数えて38年。その中で、ジブリはどうなるのか。この問題はぼく自身が悩んできました。
ジブリはもの作りという仕事をやる一方で、会社を経営しなければならなかったのですが、宮崎が82歳、ぼくが気がついたら75歳。おわかりのとおり後期高齢者。ここから先は、ぼくが75であることを自覚するなら、一種、老害、そういうことも考えなきゃいけない年齢になったなと。
いったい誰にジブリを頼んだらいいか?
ぼくらが始めたときと違っていまのジブリは、ぼくらの想像を超えて大きい存在になった。それをいきなり息子だからといって、吾朗君に全部預けちゃうのは、これは、やっぱりこちらにとって虫のいい話で、それを受けざるを得ない吾朗君にはとんでもなくしんどい話。
彼も随分考えてくれました。その結果、出てきた結論が、ジブリはひとりの人間が背負うには、大きな存在になりすぎたということだった。
そういう中で、ぼくらが考えたのは、この先やっていくときに、やっぱり個人ではなくて、大きな会社の力を借りないと、やっぱりうまくいかないのではないか。そうしないと、ジブリで働いている人たちも安心して働けない。そんなことをつらつら考えた次第です。
そういう中で、ぼくらが抱えている問題、後継者の問題です。
ジブリと日本テレビは本当に、長いお付き合いです。ナウシカのテレビ放映から始まるんですが、お付き合いの長さたるや、40年近くなる。日本テレビさんにお願いするのは、もしかしたらご納得いただけるのではないか。これはファン含め、みなさんの、そういうお考えがあるだろうと、そう推測したわけです。
ジブリと日本テレビは本当に、長いお付き合いです。ナウシカのテレビ放映から始まるんですが、お付き合いの長さたるや、40年近くなる。日本テレビさんにお願いするのは、もしかしたらご納得いただけるのではないか。これはファン含め、みなさんの、そういうお考えがあるだろうと、そう推測したわけです。
というわけで今般、スタジオジブリは経営の部分を当面今の日本テレビさんにやっていただく。虫のいい話ですが、日本テレビさんに預けて、ぼくらは作品作りに没頭する。日本テレビさんからも「今まで通りジブリはやってもらって構わない。その中で両者の関係を深くしていこう」となった。
【一問一答、主な質疑】
Q 宮崎監督が会見に来ていないが、宮崎監督の受け止めは。
鈴木氏 宮崎とぼくとでつくった会社です。それを吾朗君に継いでもらいたいという考えをぼくは持ったのですが、最後まで反対したのが宮崎。なんでか。理由は簡単。宮崎という名前のもと、ジブリを支配するのは違うのではないかと。もっと広い目で、いろいろやったほうがいい。それが理由として大きかった。
というわけで、宮崎は、今朝改めて今日こういうことをやると説明したのですが、彼も納得していました。吾朗が継ぐことには「おれはやっぱり反対だ」と言っていました。
Q 老害というお話もされていた。今後のアニメ製作のイメージは。
鈴木氏 経営をどなたかにやっていただきたいと、かねがね考えていた。どういう体制で作品を作るかも大きな問題だった。
なかなかぼくも現場で、いろいろやってみたのですが、ことごとく失敗に終わりましてね。宮崎に続く有望な監督を見つける、育成するその困難さを知った。
ひとつだけ言い訳をさせていただく。「君たちはどう生きるか」という映画をつくったが、客観的に作品をみると「これ大変だな」と思った。同じものを要求されたら、今の若い人たち作れませんよね。それを強く感じました。
宮崎はいま、「君たちはどう生きるか」の興行成績をものすごく気にしている。かつてないくらいなんですよ。もし、支持してくれる人がいるのなら、企画までは考えていいかなとか、非常に謙虚にいっている。今そういう心境であることだけは間違いない。
Q 「...
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