東京の夏が100年前と様変わりしたことが、気温のデータの「見える化」で示された。東京で観測された1900年以降のデータを暑い日ほど濃い赤に、涼しい日ほど濃い青になるよう色分けすると、近年になるほど、夏がより暑く、より長くなった傾向が、はっきりと浮かんだ。
特に今年、2023年は9月末まで平均気温の高い日が続き、異例の厳しさだった。健康や命に関わる暑さへの対策は急務となっている。(デジタル編集部・福岡範行)
◆100年前は26度未満ばかり
元にしたのは、気象庁が公開する皇居周辺で観測されてきた「東京」の6~9月の日々の平均気温だ。1901~2000年については、傾向を調べるために20年ずつ、日付ごとの平均値も計算。データからさまざまなグラフを作れるウェブサービス「Flourish」で可視化した。
1901~1920年の20年分の平均値では26度を超えた日は1度もなかったが、2001~2020年では26度を上回った日が4カ月間の半分を占めた。近年になるほど、赤色が濃くなり、幅が広がっている傾向も見られた。夏がより暑くなり、より長くなっている体感と重なる。
2021年からは1年ずつ載せた。今年、2023年は暑い日が2001~2020年の平均値よりも多く、残暑も長引き、異例だったことが読み取れる。最高気温では30度以上が5月17日から9月28日までに90回あった。1年間のおよそ4分の1が「真夏日」か「猛暑日」だったことになる。
◆世界でも過去最高を毎月、更新
今年の記録的な暑さは、世界的な傾向だ。
欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスの発表によると、世界の平均気温は6月から9月まで毎月、その月の最高記録を更新し続けた。
日本でも、気象庁は6~9月の平均気温が過去最高を大幅に更新したと発表した。
こうした暑さに温暖化がどの程度、影響したのかも分かりつつある。地球全体の気候シミュレーションして計算する手法「イベント・アトリビューション」の活用が進んだ成果だ。スーパーコンピューターを使い、地球規模の気象を大量に再現して分析する。
◆「涼しい夏はどんどん減る」
東京大の渡部雅浩教授(気候力学)がまとめ役を担う研究グループは、7月下旬~8月上旬に日本で記録されたような厳しい暑さの発生確率を計算した。
温暖化した地球と、していない地球を100個ずつ仮想。1個1個は偶然に左右されて暑くなったり涼しくなったりするので、実際の観測値より暑くなった頻度を調べて確率を求めた。
その結果、温暖化した現状でも、約60年に1度しか起きない異常気象だったと導き出した。一方、温暖化していない地球では、発生確率は「ほぼ0%」。高温を招くさまざまな要因が重なっても、「温暖化による気温の底上げがなかったら起こり得なかった」と結論付けた。
さらに、東京などの都市部は、緑地や水辺が減り、舗装道路や建物が増えたことで気温が下がりにくくなるヒートアイラ...
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