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「根拠のない臨時情報を出すべきでない」学者は座長を辞退した 官僚や政治家たちが「地震ムラ」を維持しようと…

2024年8月17日 17時00分 有料会員限定記事
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<南海トラフ臨時情報を問う③>
 政府が8月15日午後5時に終了した、南海トラフ地震の臨時情報「巨大地震注意」の呼びかけ。自粛ムードを引き起こしたこの制度は、どのような経緯でできあがったのか。南海トラフ地震を巡り科学と政治の関係を問い続け、著書「南海トラフ地震の真実」で菊池寛賞を受賞した東京新聞社会部の小沢慧一記者が、問題点をたどった。(全3回の最終回です)

宮崎県南部で震度6弱を観測した地震と南海トラフ地震との関連調査のため、臨時開催された評価検討会=2024年8月8日午後5時31分、気象庁で

◆「臨時情報」誕生の経緯

 臨時情報は地震予知を前提にした大規模地震対策特別措置法(大震法)の「警戒宣言」に代わり、誕生した制度だ。経緯をたどると、予知が不可能だとわかった後も既得権益を維持したい官僚、自治体、政治家、研究者からなる「地震ムラ」の思惑が透けて見える。
 大震法は東海地震説を受け、1978年に制定された法律だ。東海地震の前兆現象を捉えると専門家たちで検討会を開き、東海地震につながりうると判断した場合は総理大臣が「警戒宣言」を出し、新幹線を止めたり、学校や百貨店などを閉じて地震に備える。

 東海地震説 1976年に神戸大の石橋克彦名誉教授(当時は東京大理学部助手)が「駿河湾で大地震が明日起こったとしても不思議ではない」として提唱した地震説。これを受け、1978年には地震予知を前提とした大規模地震対策特別措置法(大震法)が施行。東海地震の前兆が観測されれば総理大臣が強制力のある「警戒宣言」を発令するという仕組みが作られた。

 法律制定により地震予知は国家プロジェクトとなり、関係省庁や地震学者が大いに潤った。東海地震の震源を中心に観測機器が多数設置され、検討委員に選ばれることは地震学者としての成功を意味した。

◆大震法が存続する矛盾の中で

 ところが、95年の阪神大震災を契機に地震予知への批判が高まり、代わりに統計的に予測する「地震予測」にかじを切ったかのように見えた。ただ、内実を見ると看板をかけ替えたに過ぎなかった。
 地震予知ができないにもかかわらず、大震法は40年以上続いている。2016年の見直し検討時、新聞の社説などでは、その矛盾から大震法の廃止を求める声が上がった。
 だが大震法は廃止されず、警戒宣言...

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