厚生労働省が新型インフルエンザ流行後の2010年にまとめた感染症対策に関する報告書の提言が、事実上放置されてきた。保健所の組織強化や人員増、PCR検査の体制強化が課題として明記されているが、新型コロナウイルスの感染拡大まで十分に実行されてこなかった。加藤勝信厚労相も国会で、報告書で求められた対応の遅れを認めている。 (村上一樹)
報告書は、政府の新型インフル対応を検証した厚労省の総括会議がまとめた。
国立感染症研究所や検疫所、保健所など感染症対策部門の組織や人員の「大幅な強化」の必要性を訴えた。感染研については、米疾病対策センター(CDC)など各国の感染症担当機関を参考にした組織強化を提言した。PCR検査体制強化も明記した。政府対応の記録に関しては、意思決定過程を可能な限り公開する重要性を指摘した。
こうした提言は新型コロナ対策には生かされなかった。
感染研は新規採用が抑制され、一九年度の研究者数は三百七人で一〇年度より十八人減った。安倍晋三首相は当初のPCR検査数の少なさを認め、その原因について「目詰まりがある」と語った。政府の専門家会議は各メンバーの詳しい発言内容を記録する議事録を作成していない。
加藤氏は十五日の参院決算委員会で、提言について「時間的な問題があり、まだ適用できていないものもある。今後に向けての対応として、しっかり活用したい」と対応遅れを認めた。一二年末から一四年九月まで厚労相を務めた田村憲久衆院議員も本紙に「(在任時は)最優先課...
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