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アプリリアRS457(6MT)

よみがえれ、青春 2025.02.24 試乗記 青木 禎之 イタリアのアプリリアから、排気量457ccの2気筒エンジンを搭載したスーパースポーツ「RS457」が登場。“中免”では乗れないちょっと半端な軽量スポーツだが、その走りはネガを覆すだけの魅力を秘めているのか? 個性的で前のめりなライドフィールに触れた。
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+57ccのゆううつ

「57ccくらい、なんとかしてくれよォォォ」という嘆きの声が日本全国の“中免”フルカウル好き、そしてインポーターの口から発せられたであろうスポーツバイクが、アプリリアRS457だ。その名のとおり、アルミのツインスパーフレーム(!)につられた並列2気筒エンジンの排気量は457cc。最高出力47.6PS/9400rpm、最大トルク43.5N・m/6700rpmを発生する。

「アレッ!? 意外とパワー出てないんだな」と感じたアナタは、「59馬力」や「53馬力」といった上限馬力(自主規制値)を恨めしく思っていた世代ですね!? 令和ニッポンのベストセラー「カワサキ・ニンジャ400」のスペックが、398ccの排気量から48PSと37N・mだから、RS457のアウトプットは「スポーティーに標準的」といえる。

実はアプリリアにとって大事なのは、457ccの排気量ではなく、47.6PS(35kW)というピークパワーの数値で、これは欧州で19歳以上の若者が取得できるA2ライセンスの上限にあたる。つまりRS457は、日本の“原二”にあたるA1ライセンス向けの「RS125」と、“限定解除”たるAライセンス所持者が乗れる「RS660」の間を埋めるモデルというわけだ。

アプリリアRS457の日本での価格は85万8000円。カワサキ・ニンジャ400が77万円だから、円安の折、ずいぶん頑張ったんじゃないでしょうか。ボディーカラーは、今のところ試乗車の「赤+黒」のみだ。

アプリリアがリリースした新型のスーパースポーツモデル「RS457」。排気量457ccの軽量・コンパクトなモデルで、同社のMotoGPマシン「RS-GP」を思わせるグラフィックが用いられている。
アプリリアがリリースした新型のスーパースポーツモデル「RS457」。排気量457ccの軽量・コンパクトなモデルで、同社のMotoGPマシン「RS-GP」を思わせるグラフィックが用いられている。拡大
フロントまわりの造形には、レースで培われたエアロダイナミクスを採用。ウインカーを内蔵したフルLEDヘッドランプの下には、ダブルフェアリングへと空気を通すエアロエレメントが設けられている。
フロントまわりの造形には、レースで培われたエアロダイナミクスを採用。ウインカーを内蔵したフルLEDヘッドランプの下には、ダブルフェアリングへと空気を通すエアロエレメントが設けられている。拡大
2重構造のフェアリングには、スリット状のスプリットと、フレームにつながる特殊なスポイラーを採用。空力性能のアップに加え、走行時の風圧やエンジン/ラジエーターが発する熱気をそらし、ライダーの快適性を高める効果がある。
2重構造のフェアリングには、スリット状のスプリットと、フレームにつながる特殊なスポイラーを採用。空力性能のアップに加え、走行時の風圧やエンジン/ラジエーターが発する熱気をそらし、ライダーの快適性を高める効果がある。拡大

強烈な個性を放つパラツイン

随所にサーキットからのフィードバックが感じられる空力フォルムをまとったRS457。800mmと最近のスポーツモデルにしては低めのシート高が、純正オプションのローダウンシートの恩恵でさらに20mmマイナスされていて、足短家族の一員(←ワタシです)には大変ありがたい。

シートにまたがると、最初に目に入るトップブリッジがレーシーに肉抜きされていて気分がアガる。細部って大事ですね。その先のメーターは、5インチのカラー液晶タイプ。RS457には、グリップとスロットルを電子的につなぐライドバイワイヤシステムが採用され、ディスプレイ内のメニューを使って、3種類のライディングモード、トラクションコントロールから好みの設定を選択できる。ちなみに、アディショナル装備ながらクイックシフターの装着も可能だ。

アグレッシブな外観とは裏腹に、乗車してみると前傾は控えめ、ステップ位置も低くて全体に無理がない。セパレートハンドルの左右グリップ間がやや広く、気持ち肩を怒らせて胸を開く感じが、いかにもイタリアン。

よくも悪くもこのバイクのキャラクターを決定づけるのが新開発の水冷2気筒ツインカムで、トラクション確保に有利とされる270°のクランク角を持つ。不等間隔のビートがアイドリング時からワイルドで勇ましい。ボア×ストローク=69×61.1mmのショートストロークユニットながら、低回転域でのトルクの厚さが出足のよさに直結していて、信号が青に変わるたび、乗り手はニンマリすることでしょう。

最新の2気筒らしく、フライバイのスロットル操作にトルクがまとわりついてくるかの“つきのよさ”が特徴で、3000rpmも回しておけば街なかで痛痒(つうよう)を感じることはないし、5000rpm以降は「このバイクを自在に操れるのでは!?」との幻想を乗り手に抱かせる。エンジンをフルスケール回しても爆発的なパワーの盛り上がりはないが、それがかえってRS457の扱いやすさにつながっていると思う。

欧州のA2ライセンスで乗れるモデルとしては、極力軽量につくられたという「RS457」。乾燥重量は159kgだ。
欧州のA2ライセンスで乗れるモデルとしては、極力軽量につくられたという「RS457」。乾燥重量は159kgだ。拡大
フルカラーの液晶ディスプレイには、車速やエンジン回転数といった走行情報に加えて、ライディングモードやトラクションコントロールなどのセレクト状態も表示。ライディングモードは「エコ/レイン/スポーツ」の3種類で、トラコンの介入度合いも3段階から選択できる。
フルカラーの液晶ディスプレイには、車速やエンジン回転数といった走行情報に加えて、ライディングモードやトラクションコントロールなどのセレクト状態も表示。ライディングモードは「エコ/レイン/スポーツ」の3種類で、トラコンの介入度合いも3段階から選択できる。拡大
軽さやコンパクトさに加え、内部摩擦の低減が徹底的に追求された457cc並列2気筒エンジン。3000rpmで最大トルク(43.5 N・m)の82%を発生する、力強い特性も特徴だ。
軽さやコンパクトさに加え、内部摩擦の低減が徹底的に追求された457cc並列2気筒エンジン。3000rpmで最大トルク(43.5 N・m)の82%を発生する、力強い特性も特徴だ。拡大
シート高は、フルカウルのスポーツモデルとしては親しみやすい800mm。試乗車にはオプションで用意されるローシートや、パッセンジャーシートカバーが装備されていた。
シート高は、フルカウルのスポーツモデルとしては親しみやすい800mm。試乗車にはオプションで用意されるローシートや、パッセンジャーシートカバーが装備されていた。拡大
タイヤサイズは前が110/70ZR17、後ろが150/60ZR17。ブレーキは前がφ320mmのシングルディスクとラジアルマウントの4ピストンキャリパー、リアが220mmのディスクとシングルキャリパーの組み合わせで、ボッシュ製の2チャンネルABSが搭載される。
タイヤサイズは前が110/70ZR17、後ろが150/60ZR17。ブレーキは前がφ320mmのシングルディスクとラジアルマウントの4ピストンキャリパー、リアが220mmのディスクとシングルキャリパーの組み合わせで、ボッシュ製の2チャンネルABSが搭載される。拡大
サスペンションは、前がプリロード調整機構付きのφ41mm倒立フォーク。リアが同じくプリロード調整機構付きのモノショックとスチール製スイングアームの組み合わせだ。トラベル量は、前が120mm、後ろが 130mm。
サスペンションは、前がプリロード調整機構付きのφ41mm倒立フォーク。リアが同じくプリロード調整機構付きのモノショックとスチール製スイングアームの組み合わせだ。トラベル量は、前が120mm、後ろが 130mm。拡大
親しみやすさと前のめりなライディングの楽しさを併せ持つ「アプリリアRS457」。日本ではちょっと半端な排気量がネックだが、興味の湧いた人は、ぜひその走りに触れてみてほしい。
親しみやすさと前のめりなライディングの楽しさを併せ持つ「アプリリアRS457」。日本ではちょっと半端な排気量がネックだが、興味の湧いた人は、ぜひその走りに触れてみてほしい。拡大

積極的に走りを楽しみたい人にオススメ

試乗する前は、アプリリアRS457をして「コンパクトなスーパースポーツ」とのイメージを抱いていて、実際、ウデ自慢がサーキットに持ち込めば相応の走りを披露するに違いないのだが、公道を行く限り、いい意味で「普通のスポーツバイク」として接することができる。ハンドリングに過敏なところはないし、足まわりも、個人的には「もう少しソフトにしてもいいかな」と感じたが、街乗りから山道峠道を含むツーリングまでそつなくこなす。昭和なキャッチフレーズをつけるなら、「やんちゃなボーイズレーサー」といったところでしょうか。

気になるのは、やはり457ccという排気量。本来のターゲットたる若年層は、「せっかく大型二輪免許を取ったのだから」と本車をパスしてしまいそう。アプリリアからのニューカマーゆえ、もともとコアなファン狙いでマスを追わないという考え方もありますが……ちょっともったいない。

いっぽう、「大型バイクに疲れちゃった」とダウンサイズモデルをお探しの年配の方々に、せんえつながら一言。RS457は、あまり人とかぶらないうえ一定のブランドイメージがあるので「いい選択肢なのでは」と考えがちだが、前述のとおりエンジンの主張が存外強い。根がスーパースポーツなので、街でも山でも出先でも、乗り手をせきたてて、のんびり走ることを許してくれない。だから、パワーを抑えたディフュージョンモデルというより、ある種の回春バイクとして付き合う覚悟が必要かもしれない。それはそれで楽しいんですけどね。

(文=青木禎之/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資/車両協力=ピアッジオグループジャパン)

アプリリアRS457
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アプリリアRS457(6MT)【レビュー】の画像拡大
 
アプリリアRS457(6MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=1982.5×760×--mm
ホイールベース:1350mm
シート高:800mm
重量:159kg(乾燥重量)/175kg(燃料90%搭載時)
エンジン:457cc 水冷4ストローク直列2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:47.6PS(35kW)/9400rpm
最大トルク:43.5N・m(4.4kgf・m)/6700rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:21.3km/リッター(WMTCモード)
価格:85万8000円

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アプリリアからミドルクラスの新型スーパースポーツ「RS457」が登場

青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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