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作家の読書道 第233回:岩井圭也さん

1997年の香港返還を題材にした『水よ踊れ』が話題となっている岩井圭也さん。少年時代から漠然と小説家になることを意識しつつ、理系の道に進み研究職に就いた後で新人賞への投稿を始め、作家デビュー。毎回まったく異なる題材を作品テーマに選ぶ岩井さんがこれまでに影響を受けた本とは? 1冊1冊に対する熱い思いを語ってくださいました。

その1「人生における第一作は紙芝居」 (1/7)

  • 永遠についての証明 (角川書店単行本)
  • 『永遠についての証明 (角川書店単行本)』
    岩井 圭也
    KADOKAWA
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  • ちあき電脳探偵社 PHP文芸文庫
  • 『ちあき電脳探偵社 PHP文芸文庫』
    北森 鴻
    PHP研究所
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  • 夢のズッコケ修学旅行 (新・こども文学館)
  • 『夢のズッコケ修学旅行 (新・こども文学館)』
    那須 正幹,前川 かずお
    ポプラ社
    1,100円(税込)
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  • ズッコケ三人組ハワイに行く (ズッコケ文庫)
  • 『ズッコケ三人組ハワイに行く (ズッコケ文庫)』
    那須 正幹,前川 かずお,高橋 信也
    ポプラ社
    660円(税込)
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  • ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス)
  • 『ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス)』
    藤子・F・ 不二雄
    小学館
    499円(税込)
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  • セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
  • 『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)』
    うすた京介
    集英社
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――いちばん古い読書の記憶から教えてください。

岩井:憶えているのは、5歳くらいの時に読んだ「スマーフ」の絵本ですね。アニメにもなっている青い小さな妖精のシリーズです。たしか当時よく通っていた児童図書館で借りました。母に訊いたらその頃、私が紙芝居を作ってその図書館で発表したことがあったそうです。サンタクロースの話で、トナカイが怪我をしてプレゼントを配りにいけなくなって、でも最後は不思議な光に包まれてすべてがうまくいくという話だったようです。それが自分の第一作になりますね(笑)。デビュー作の『永遠についての証明』も最後は光頼みだったので、その頃から変わってないんだな、と思って(笑)。
 紙芝居を作ったことはあまり憶えていないんですが、図書館で人の前で話をした記憶はなんとなくあるので、人に話を聞かせるのが好きだったのかもしれません。

――紙芝居ということは、絵も得意だったのですか。

岩井:いえ、馬を書いたら「犬ですか?」と訊かれたことがあります(笑)。でも小さい頃は描くのは好きでした。

――小学校に入ってからの読書生活は。

岩井:小学校3年生の時、小学館の雑誌「小学三年生」に北森鴻先生の『ちあき電脳探てい社』という連載があったんです(文庫の書名は『ちあき電脳探偵社』)。主人公の男の子の住む町にちあきという女の子が引っ越してきて、学校や町でちょっとした事件が起きるたびに彼女が解決するんです。ちあきの家にはスーパーコンピューターがあって、それと繋がったゴーグルをつけてバーチャルの世界に入ると人格も話し方も変わって、頭脳明晰になって事件を解決するという。これがあまりに面白くて、毎号、その連載のページだけ切り取って1冊の本の形にして保管していました。でも4年生になったら連載も終わってしまって、読めなくなったのが残念で。それで、自分でほぼほぼ同じ設定の小説を書こうとしました。

――連作ミステリってことですよね。書けました?

岩井:書けませんでした。でもクラスにどんな子がいるのか、キャラクターを考えていくのが楽しくて、30人分くらい考えました。たしか、教室で鉛筆がなくなる事件の話を考えたんです。盗んだ犯人が運動着を入れる袋に鉛筆を隠していて、運動着が汚れていたので発覚する...という内容でしたが、最後までは書けませんでした。その時に、自分にはゴリゴリの本格ミステリみたいな話を書くのは無理だと悟りました。

――その頃すでに作家になりたい気持ちはあったのでしょうか。

岩井:無邪気な気持ちとしてはありました。最初は漫画家もいいかなと思っていたんですが、中学生くらいの時に自分はどうも絵はそんなにうまくないから、文章のほうでいきたいな、と思うようになった気がします。

――文章は得意だったのでしょうか。

岩井:作文も読書感想文もそんなに好きではなかったです。書くことがないなあ、なんて思っていました。ただ、国語の成績はちょっとだけ良かったです。

――空想でいろいろなお話を作ったりはしていましたか。

岩井:そういうことは好きでした。でも、話を作る力はないので、アニメのオープニングによくあるような、格好いいキャラクターが格好よく動いているシーンを空想していましたね(笑)。

――小学生時代、他に好きだった小説や漫画はありますか。

岩井:那須正幹さんの「ズッコケ三人組」シリーズですね。『夢のズッコケ修学旅行』や『ズッコケ三人組ハワイに行く』とかが好きでした。
 漫画は『ドラえもん』がすごく好きで、全部揃えていました。派生作品で『ザ・ドラえもんズ スペシャル』というアニメや漫画があるんです。ドラえもんと同じネコ型ロボット7人組がいて、普段はみんな世界各地にいる。中国のドラえもんは「王(ワン)ドラ」、ロシアは「ドラニコフ」といった、その国っぽい名前がついていて。
 このあいだたまたまその漫画を読み返していたら、結構社会派なんですよ。妖怪のボス的な存在で、いっぱい目がついた百目王というキャラクターがいるんですが、その目の数って、人間が環境破壊などをおかした罪の数なんですよ。最後に倒される時も、「俺は復活するぞ」みたいなことを言っていて。もともと『ドラえもん』には社会派の部分がありますが、そういうところも含めて好きでした。
 他に好きだった漫画は、うすた京介先生の『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』。これは今でも大好きです。革命的に面白いんです。自分が小説を書くにあたって影響を受けているかというと分かりませんが。

――社会派といえば、岩井圭也さん新作『水よ踊れ』は、中国返還直前の香港を主な舞台とした青春小説ですが、別のインタビューで、返還のニュースがずっと記憶にあったと話されていましたよね。返還された1997年って、岩井さんは10歳くらいですよね。

岩井:そうです。ニュースを見てどう思ったかまでは明確に憶えていないんですが、なんとなく違和感があって、ずっとひっかかっていたんですよね。

――ニュースはよく見ていたのですか。

岩井:そんな立派な感じではないんですが、自分が選んだわけでなくても親が見ている番組は一緒に嫌がらずに見ていたと思います。選り好みしなくて、テレビならなんでもよかったんです。親が見るから相撲も見て一時期好きでしたし、ニュースも見ましたし。

――ごきょうだいは?

岩井:2つ下の妹がいます。それこそ妹が見るので、「セーラームーン」といったアニメも見ていました。

――外で活発に遊ぶ子どもでしたか、それとも家にいるのが好きでしたか。

岩井:超インドア派でした。小学校5年生の頃から剣道を始めたんですけれど、運動神経がよくないこともあって、まあ嫌いで。たまたま通っていた小学校の体育館で教えていたので親に「どう?」と言われ、友達もやっていたので始めたんですけれど、辛かったです。中学の時に一回辞めたんですけれど、結局再開して、なんやかんや言って大学院を修士で卒業する24歳まで続けたんですけれど。

――岩井さんは、大阪出身ですね。この連載をしていると、関西出身の方って多かれ少なかれお笑いの影響を受けている方が多い印象なのですが、岩井さんはどうですか。

岩井:厳密にいうと、宮城県で生まれ、3歳くらいの時に大阪に引っ越しました。そのまま高校卒業まで大阪にいました。やっぱり吉本新喜劇は毎週見ていましたし、今もM-1の季節になると血が騒ぎます。家族からM-1の時は一人でテレビを観る権利を与えられています。

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