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作家の読書道 第266回:君嶋彼方さん

2021年に第12回〈小説 野性時代 新人賞〉を受賞した『君の顔では泣けない』(応募時のタイトルは「水平線は回転する」)が話題となり、映画化も決定した君嶋彼方さん。ホラー文庫から広がっていった読書遍歴は? ドラマ好き、映画好きでもある君嶋さん、好きな映像作品や脚本家、監督についても教えてくださいました。

その1「ホラー文庫から読書を広げる」 (1/7)

  • ケータイ (角川ホラー文庫)
  • 『ケータイ (角川ホラー文庫)』
    吉村 達也
    KADOKAWA
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  • はらぺこあおむし
  • 『はらぺこあおむし』
    エリック=カール,もり ひさし
    偕成社
    1,100円(税込)
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    Amazon
    HMV&BOOKS
  • 地獄先生ぬーべー 1 (集英社文庫(コミック版))
  • 『地獄先生ぬーべー 1 (集英社文庫(コミック版))』
    岡野 剛,真倉 翔
    集英社
    715円(税込)
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    HMV&BOOKS
  • まもって守護月天! 1巻
  • 『まもって守護月天! 1巻』
    桜野みねね
    マッグガーデン
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  • ブラック・ジャック 1 (少年チャンピオン・コミックス)
  • 『ブラック・ジャック 1 (少年チャンピオン・コミックス)』
    手塚 治虫
    秋田書店
    499円(税込)
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    HMV&BOOKS
  • ブッダ 1
  • 『ブッダ 1』
    手塚治虫
    手塚プロダクション
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  • 火の鳥(1) (手塚治虫文庫全集 BT 155)
  • 『火の鳥(1) (手塚治虫文庫全集 BT 155)』
    手塚 治虫
    講談社
    935円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HMV&BOOKS

――いつもいちばん古い読書の記憶からおうかがいしております。

君嶋:小説でいうと、小学校3、4年生くらいの頃から角川ホラー文庫をよく読むようになりました。最初に手に取ったのはたぶん、吉村達也さんの『ケータイ』だと思います。高校生の主人公の携帯に夜中電話がかかってきて、出てみたら友達の断末魔が聞こえるという。電話がかかってきた子が次のターゲットになる、という話でした。たぶん書店で見つけて、裏側のあらすじを読んで選んだんだと思うんですよね。親が、携帯から断末魔が聞こえてくる小説を子供に薦めるとは思えないし(笑)。
吉村達也さんがきっかけで角川ホラー文庫を読むようになり、吉村さんだけでなく、新津きよみさん、朱川湊人さん、小林泰三さんといった方々の作品を読んでいくようになりました。僕は作家読みをするほうだったので、ホラー文庫で読んだ作家さんが他のレーベルから出している本も読んでいたと思います。正直、その頃はあまりどこの出版社から出ている本かということは意識していませんでした。
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズも、学校の図書館で読んだりしていましたね。もしかしたら読書体験で言えばそちらの方が先かもしれません。

――それまでも読書は好きだったのですか。絵本とか。

君嶋:小さい頃からよく読んでいたので言葉をおぼえるのが早かった、と親は言っていました。絵本は一時期一緒に住んでいた祖母がいろいろ買ってくれていて、大人になってから家には結構いっぱい絵本があったんだなと気づきました。なので最初から読書自体に全然抵抗はなかったし、漫画も読んでいたので、小説を読み始める土台はあったと思います。
祖母の好みだったのか、家には『はらぺこあおむし』のようなオーソドックスな絵本はそんなになかった気がします。印象に残っている絵本もいくつかあるんですが、うろ憶えで...。その中の1冊、アラステア・グレイハムの『フルムーンスープ すべては、このスープからはじまった』は、満月の日に一軒のホテルの中で起きるいろんな出来事を、1ページずつ描いていく絵本です。それとタイトルは忘れてしまったんですが、大きな木が出てくる話で、裏表紙でその木が擬人化されて走っているイラストが描かれた絵本があったんですよね。国内の作家だったと思います。もう1冊もタイトルを忘れてしまったんですが、それは海外の絵本で、図書館から借りた本を返さなきゃいけないのに返せなくて、そのための言い訳を色々といくつも考えるという内容でした。その3冊は今でも印象に残っています。

――漫画は何を読まれていたのですか。

君嶋:当時は『地獄先生ぬ~べ~』をずっと読んでいました。はじめて自分で買った漫画は『まもって守護月天!』という漫画でした。主人公が中学2年生の男の子で、親が海外を飛びまわっているので一人暮らしをしているんです。お父さんから送られてきたお土産の中から精霊の女の子が出てきて、同居するというコメディでした。
あとはよく図書館に行っていたので、そこで手塚治虫の漫画を読んでいました。『ブラック・ジャック』、『ブッダ』、『火の鳥』あたりです。

――国語の授業は好きでしたか。

君嶋:好きではなかったけれど得意でした。漢字やことわざが結構好きだったんですよ。中学1年生の時に漢検を受けて準二級に受かって、表彰されました。それで満足しちゃったので、その後は特に試験を受けたりはしなかったんですけれど。慣用句になぞらえた漫画が親戚の家かどこかにあって、それをかなり読み込んで無駄に知識がついていました。中学生で「四面楚歌」とか「臥薪嘗胆」とか、いろいろおぼえていた記憶があります。
でも授業はあまり好きではなかったです。自主的に読んだり調べたりするのは好きだったんですけれど、授業で「これをおぼえなさい」「あれやりなさい」と言われるとやる気が起きないというか。
学校の課題で憶えているのは、夏休みの宿題で各出版社が出している夏の文庫フェアの冊子から1冊選んで感想を書くというもので、僕は伊坂幸太郎さんの『ラッシュライフ』を選びました。何気なく読んだらめちゃくちゃ面白くて、そこから伊坂幸太郎さんにはまりました。たぶん高校生の時だったと思います。

――教室ではどういう子供だったと思いますか。

君嶋:相当浮いていたと思います。

――君嶋さんはデビュー当時から、お話も上手で親しみやすい印象なのに意外です。

君嶋:僕は中高一貫の男子校に通っていたんですけれど、自分では暗黒時代だと思っていて。全然友達もいなかったですし、本の趣味も誰とも合わなかったです。あと、運動神経がすごく悪かったんですね。あの時代の男子校って、運動神経の良し悪しでカーストが決まるというか。特にサッカーなどの集団競技の時に疎ましがられるんですよ。「あいつと一緒かよ」みたいに言われて、針の筵な感じで。なので、ひっそり息をひそめて過ごした6年間でした。でも、あの時期がなかったら小説家にならなかった気もするので...。

――部活は何かやっていましたか。

君嶋:写真部でした。デジカメはそんなに普及していなかったので、一眼レフで白黒を撮って、部室に暗室があったので自分たちで現像していました。

――何を撮っていたんですか。

君嶋:本当にいろいろです。毎年合宿も行っていました。富士山の麓の湖のそばに行って、まだ寒い朝の4時くらいに、明け方の富士をひたすら撮る、というのやらされていました。なぜか必ず仙台と京都にも行っていました。たぶん顧問の趣味です。
暗黒時代でしたが、部活は教室よりは話が合う人が多かったです。同学年より先輩や後輩のほうが話しやすくて、昼休みも教室から抜け出してみんなでこっそり部室に集まったりしていました。

  • ラッシュライフ (新潮文庫)
  • 『ラッシュライフ (新潮文庫)』
    伊坂 幸太郎
    新潮社
    555円(税込)
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    HMV&BOOKS

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