【SA-6】(えすえーろく)
旧ソ連が開発した、中距離地対空ミサイル。
NATOコードはSA-6「ゲインフル」、ロシアでは2K12「クープ」と呼ばれている。
1959年に開発がスタート、トロポフ設計局が製作を担当し1967年に量産が開始された。
1983年に量産が終了したため現在では生産されていない。
アメリカのMIM-23「ホーク」に性能が酷似していると言われている。
車両構成はSA-11「ガドフライ」やSA-10「グランブル」と同じで、発射機はZSU-23-4「シルカ」と同じASU-85空挺戦車のコンポーネントを流用した2P25を台車として使用しており、キャタピラで自走出来るが水陸両用では無い。
しかし、全車両NBC兵器防護能力を持ち赤外線夜間暗視装置も装備している。
発射機にはミサイル(3M9シリーズ、一段式の統合ロケット・ラムジェットエンジンを搭載、弾頭は59kgのHE破片弾頭)を3発搭載し、誘導方式は初期誘導~中間誘導は指令誘導だが終端誘導はセミアクティブレーダー誘導になり、最速マッハ2.8で高度8,000mまで到達でき最大射程は23㎞である。
SA-6のレーダーは1S91「ストレートフラッシュ」で、出力25kW、索敵距離75kmのG/Hバンド火器管制レーダーである。
ただ、初期型の地対空ミサイルのレーダーでECMには弱いため、ミサイルは航空機搭載ECMによるジャマー(電磁妨害)への対策としてある程度のECM耐性を備えると共にレーダー波が届かなくなった時のために画像誘導を可能にしていた。
輸出もされており、主にシリア・イラク・エジプト・アルジェリア・リビア・アンゴラ・旧ユーゴスラビア・ポーランド等計22ヶ国に輸出された。
なお、輸出型はZRK-SD 2K12E「クヴァドラート」と言う。
現在、ロシア軍ではSA-11の実戦配備に伴い徐々に退役している。
実戦ではシリア軍が第四次中東戦争で初めて実戦投入し、多数のイスラエル軍航空機を撃墜し、西側陣営に衝撃を与えた。
その後のレバノン侵攻でも使用された。
またイラク軍がイラン・イラク戦争・湾岸戦争で使用し、イラク戦争でもフセイン政権時代の旧イラク軍のエリート部隊『共和国防衛隊』などが使用した。
なお、旧ユーゴスラビア軍はコソボ紛争でNATO軍機を1機撃墜している。
スペックデータ
2P25発射機
乗員 | 3名 |
全長 | 7.38m |
全高 | 3.45m |
全幅 | 3.18m |
戦闘重量 | 14.0t |
エンジン | V-6R 4ストローク直列6気筒液冷ディーゼル(出力240hp) |
最大速度 | 44km/h(路上) |
航続距離 | 260km |
装甲 | 9.4mm |
兵装 | 3M9地対空ミサイル3連装発射機×1基(携行弾数3発) |
生産台数 | - |
3M9ミサイル
全長 | 5.8m |
直径 | 0.33m |
翼幅 | 1.24m |
発射重量 | 599kg |
飛翔速度 | マッハ2.8 |
有効射程 | 3,700~24,000m |
有効射高 | 50~12,000m |
推進方式 | 固燃ロケットモーター+ラムジェット) |
弾頭 | HE 破片効果弾頭(59kg) |
誘導方式 | 無線誘導/セミアクティブレーダー誘導 |
バリエーション
- 2K12「クーブ」(SA-6A):
初期生産型。
- ZRK-SD 2K12E「クヴァドラート」(SA-6): 初期生産型の輸出型。
- 2K12「クーブM1」(SA-6):
初期型の発展型。有効高度30~8,000m、有効射程4,000~23,000m。
- 2K12「クーブM2」(SA-6):
M1型の発展型。有効高度20~8,000m、有効射程4,000~25,000m。
- 2K12「クーブM4」(SA-6):
M2型の発展型。
全長5.7m、重量599kg、炸薬重量56kg。有効高度30~14,000m、有効射程4,000~24,000m。
誘導方式はセミアクティブレーダー/赤外線誘導。
- SA-N-3「ゴブレット」:
「シュトールム」と呼ばれる艦対空ミサイル型。キエフ級等に搭載。
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