輸出先を失った台湾産パイナップル、「応援購入」した日本で定着…シェア1%から9%に
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【台北=杉本要】台湾産パイナップルが日本市場で存在感を増している。中国が2021年に輸入停止したことを受けて、日本で「応援購入」の動きが広がった。その後も台湾農家が日本向け輸出のため設備投資を行うなどしており、日本の輸入パインに占める台湾産の割合は、20年の1%から23年は9%にまで高まっている。
パインは常温では日持ちしにくく、台湾と地理的に近い中国が輸出の9割を占めていた。21年2月下旬に中国政府が突如、台湾産パインの輸入停止を発表すると、日本や米国などで台湾産パインを購入する動きが広がり、日本の21年の輸入量は前年の約8倍に急増。台湾産パインのシェア(市場占有率)が高まった。
輸入増加の背景には、パインの安定供給に向けた台湾農家の取り組みがある。
台湾南部でパインを生産する農業組合代表・郭智偉さん(46)は22年以降、総額1億台湾ドル(約5億円)を投じて冷却設備や外気に触れずコンテナに積み込む装置を導入し、果肉を傷みにくくする「コールドチェーン」(低温流通)を整えた。「日本でおいしく食べてもらうには、鮮度を保つ投資が必要」と話す。
屏東県で果物を生産する潘志民さん(45)も昨年、カットフルーツが好まれる日本市場向けに自動ヘタ取り機などを本格稼働させたという。
こうした動きを支援するのが、パイン輸入のノウハウを持つ青果流通のファーマインド(東京)だ。同社は台湾当局と協定を結び、現地に社員を派遣して生産者に温度管理などを教えてきた。飯田克成常務は「国を超えた信頼関係を築き、世界中の作物を日本に届けていきたい」と話す。台湾農業部の陳駿季代理部長(臨時大臣)は東京都内で6日、「台湾パインが日本の消費者に受け入れられ、感謝している」と述べた。