上空から調査や避難誘導

災害現場で活躍するドローン

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 災害時に活用できるツールとして、阪神大震災が発生した1995年には存在しなかった筆頭格は、被災地の上空を縦横無尽に飛び回れる小型無人機「ドローン」だろう。2016年の熊本地震以降、相次ぐ豪雨災害の被災地も含めて被害状況の確認や行方不明者の捜索などで活躍している。

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◆能登の孤立集落に医薬品

 元日の能登半島地震では、ドローン配送事業会社「NEXT DELIVERY」(山梨県)が石川県輪島市の孤立集落に医薬品などを届けた。約3・5キロの距離を片道8分で飛び、避難所の市立 鵠巣こうのす 小に輸送。他にも別の企業などが、市の国名勝「 白米千枚田しろよねせんまいだ 」の棚田に生じたひび割れの様子を調査したり、能登町では孤立した牧場に牛の飲み水を運搬したりした。

 上空から避難を呼びかける「スピーカードローン」も開発され、09年の豪雨災害で死者・行方不明者20人に上る被害が出た兵庫県佐用町では昨年12月、スピーカーを取り付けたドローンを使った防災訓練が行われた。

 県立佐用高校の校舎の一部が大地震で倒壊したとの想定で、「落ち着いて避難してください。周りに危ない物がないかを確認してください」と生徒ら約600人に呼びかけながら、グラウンドまで誘導した。

◆「犠牲者を一人でも減らす」

 災害時には、ドローン搭載のカメラで火災などの状況も確認しながら安全な避難経路を指示することにしており、外国語での案内も可能という。避難所では、食料や水の配給時間を上空からアナウンスする活用方法も想定している。

 訓練に参加した同町の久保正彦・元企画防災課長は「物を運ぶ、被害を知る、情報を伝える――という三つの観点からドローンは極めて有効だ。阪神大震災でドローンが使えたら、倒壊家屋の状況がすぐに把握でき、危険な場所を避けるよう伝えることもできたはず。犠牲者を一人でも減らすため、ドローンを活用していきたい」と話す。

 他の自治体でも、豪雪地域の住宅の屋根に融雪剤を散布したり、海でおぼれている人に浮輪を届けたりする試みも始まっており、活躍の場が広がっている。

◆民間資格「ドローン減災士」

 ドローンを災害現場や防災訓練などで活用できる知識や技術を認定する民間資格もある。「ドローン減災士」だ。

 防災研究者やドローン事業者らが2021年4月に設立した一般社団法人「ドローン減災士協会」(事務局:兵庫県佐用町、代表理事:木村玲欧・兵庫県立大教授)が認定。28道府県にある協会指定の教習所(ドローンスクール、開講準備中を含む)で講習を受け、資格試験に合格する必要がある。

 講習会は2日間コースと、ドローンが操縦できる国家資格「二等無人航空機操縦士」も合わせて取得する5日間コースがある。協会によると、資格取得者は19日現在、兵庫県を中心に全国で223人。自治体職員や大学生が多いという。

 協会の前田稔朗事務局長は「ドローン技術の社会的認知度をさらに高め、災害発生時に的確に活用できる人材を増やしていきたい」と話している。

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