「オーバーツーリズム」の京都・東山、敷地に無断侵入・欄干破壊…住人たちは何を思う?

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 大勢のインバウンド(訪日外国人客)らが訪れる世界遺産・清水寺(京都市東山区)周辺。課題となっている「オーバーツーリズム」について、住民らはどう感じているのだろう。「地元の本音」を知りたいと、現場を歩いた。(東大貴)

観光客で埋め尽くされた清水坂。オーバーツーリズム対策が課題となっている(1月30日、東山区で)
観光客で埋め尽くされた清水坂。オーバーツーリズム対策が課題となっている(1月30日、東山区で)

「写真禁止」

 1月30日、清水寺に続く参道「二年坂」や「 産寧さんねい 坂(三年坂)」は平日にもかかわらず、すれ違うのが困難なほど観光客であふれていた。周辺では車が人々の間をかき分けるように通り抜ける様子が見られ、危険を感じた。

 この時期は、中国の旧正月「春節」にあたり、中国人観光客の姿も目立った。江西省から訪れた程洪さん(60)は「東京や大阪も有名だけど、京都は特別。竹林(の 小径こみち )が有名な嵐山も訪れたい」と話した。

 参道を1本外れると、古民家が立ち並んでいた。全国屈指の観光地だが、生活空間は想像よりすぐそばにある。

「写真禁止」を呼びかける注意書き
「写真禁止」を呼びかける注意書き

 軒先に「写真禁止」を示す英語の注意書きを掲げる家もあった。付近では記念撮影用の着物をレンタルするビジネスが盛んで、住人の女性(39)は「古民家を背景に撮影しようと、無断で敷地内に立ち入る人がいる」と自前で対策を講じたという。

 周囲は民泊に姿を変えた古民家も多く、路上駐車も目立つ。住人の女性は古都の風情が失われると懸念し、「景観を守る手立てを講じてほしい」と訴えていた。

悪質な振る舞い

 悪質な観光マナーも問題となっている。近くの高台寺 塔頭たっちゅう岡林院こうりんいん は昨年9月、石橋の欄干の一部を壊される被害に遭った。頭上のモミジをカメラに収めようと橋に寄りかかる観光客が相次いだことが原因とみられ、親柱の一部も倒れた。

岡林院の石橋の親柱。一部が壊れたままだ
岡林院の石橋の親柱。一部が壊れたままだ

 飲みかけのペットボトルが地蔵の隣に放置されたこともあり、青山 公胤こういん 住職(40)は「観光客は快く迎え入れたいが、文化を損なったり地域に迷惑をかけたりせずに楽しんでほしい」と話す。

 食べ歩きも多く、「清水坂」で創業100年以上という清水焼専門店を営む女性(81)によると、店内では天ぷらを持った手で商品に触れたり、溶けたアイスクリームを落として立ち去ったりする外国人がいたという。

 中国語や英語で注意を呼びかける貼り紙を掲げて以来、こうした行為は減ったが、女性は「にぎわうのはうれしいけれど、一部の人にはモラルを持ってほしい」と求めている。

清水寺周辺の地図
清水寺周辺の地図

 今年は大阪・関西万博が開かれる。ただでさえ混雑している人気観光スポットには、今まで以上に観光客が押し寄せる可能性もある。地域住民の生活を考えれば、対策は急務だと感じた。

京都市は「分散化」呼びかけ

 京都市の観光総合調査によると、2023年の市内の観光客数は約5028万人、宿泊客数は約1475万人で、コロナ禍前の水準に戻りつつある。なかでも、外国人宿泊客は約536万人と過去最高となった。

 市はオーバーツーリズム対策として、観光客に場所や時間などの「分散化」を呼びかけているが、外国人が清水寺周辺や錦市場(中京区)などに集中する状況は解消されていない。

 市は新たな対策として、1人1泊あたりの宿泊税の上限額を1000円から1万円に引き上げる方針を示している。オーバーツーリズムに詳しい阿部大輔・龍谷大教授(都市計画)は「観光で得た利益を、京町家の修復や伝統芸能の人材育成、公共施設への投資に充てるなど、市民生活や街の魅力向上に生かす発想が重要。宿泊税の使い方を考える際、市民の意見を募るのも一案だ」と指摘する。

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