6日午前2時すぎ、茨城県の鹿島港から東に30キロ余りの沖合で、北茨城市の大津漁協に所属する総トン数80トンの「第八大濱丸」が転覆しました。
漁船には乗組員20人が乗っていて17人が救助されましたが、このうち50代と60代の男性2人が死亡しました。
また、40代から70代の3人が海に投げ出され、半日以上がたった今も行方不明となっていて、海上保安庁の巡視船や航空機、それに警察や県のヘリコプターなどが捜索しましたが見つからず、巡視船2隻が夜通しで捜索することにしています。
大津漁協などによりますと、漁船は3隻で船団を組んで5日昼ごろ、北茨城市の漁港を出発したあと、現場の海域でイワシの巻き網漁を行っていて「網船」という網を巻き上げる役割を担っていたということです。
鹿島海上保安署によりますと、当時、現場の海域は晴れていて波も穏やかで、乗組員は「水揚げの際に網に魚が多く入ったため徐々に船体が傾いた」と話しているということです。
漁船は転覆後に沈没したとみられ、鹿島海上保安署は、網に魚が多く入り船がバランスを崩して転覆した可能性もあるとみて、詳しい原因を調べています。
また、国の運輸安全委員会も7日以降、事故調査官3人を現地に派遣し、事故の原因を調べることにしています。
鹿島沖で漁船転覆 2人死亡3人不明「網に魚多く入り船傾いた」
6日未明、茨城県の鹿島港の沖合で漁船が転覆し、乗組員2人が死亡したほか3人の行方が分かっておらず、海上保安庁は夜通しで捜索を続けることにしています。
県旋網漁協「大規模なイワシの群れが海の中に」
今回の事故について、茨城県内の巻き網漁業者を取りまとめている県旋網漁協の益子知樹専務理事が6日午後、NHKの取材に応じ「昨晩がことし最初の操業で、漁がどうなるかを期待しながら出港したと思う。県内の巻き網漁業の転覆事故はあまり起きたことがなく、非常に衝撃を受けている」と話しました。
益子専務理事によりますと、巻き網漁業では網船と呼ばれる船が網を使って魚をとり、運搬船に魚を積み込むなど、2隻から3隻ほどの船が船団をつくって、それぞれの役割を果たしながら漁を行うということです。
また、巻き網漁業のリスクとして多くの魚が網に入って船体が傾いてしまうことがあり、通常は、船頭などの判断で、魚を逃がしたり網を切ったりして、危険を回避するとしています。
その上で「12月中旬ぐらいから1日当たりのイワシの水揚げ量がかなり多く、けさもまとまった量が水揚げされているので、ある程度、大規模なイワシの群れが海の中にあったと思う」と述べ、魚が多く網にかかったことが今回の事故に影響しているのではないかと指摘しました。
別の漁船の船長「イワシが多いと大きな力加わる」
転覆した漁船の近くで操業していたという別の漁船の船長は「一緒の時間帯に操業することもあり、きょうもその漁船の船団が見えていました。私たちは先に銚子漁港に着きましたが、無線から『大変だ、助けてくれ』と声が聞こえ、事故があったことを知りました。知り合いも行方不明になっているかもしれないので心配です」と話していました。
また、イワシの巻き網漁について「網を引き上げる際、海中に潜ろうとするイワシもいて、そういったイワシが多いと大きな力が加わり、重さが増すようなことがあります。きょうの漁でもそうしたイワシが多いように感じられました」と話していました。
救助された乗組員の様子は
6日午前6時前、転覆した漁船の乗組員が千葉県の銚子漁港に到着しました。
乗組員たちの中には救命胴衣を身につけている人もいて、漁船から下りたあと、消防隊員らに付き添われながら消防本部が設置したテントに案内されていました。
このあと、救助された乗組員たちは毛布を肩にかけて次々とバスに乗り込み、午前6時半ごろにバスが病院へ向けて漁港を出発していきました。
救助にあたった漁業者「寒さで震えていた」
大津漁協の組合員で、6日朝も鹿島沖で漁をしていた漁業者の大熊和也さん(54)は午前2時ごろ、緊急の救助要請を無線で聞いて現場に向かいました。
大熊さんによりますと、現場に到着した際には3人の乗組員が救命ボートに乗っていて、自分たちの船に引き上げて銚子港まで運んだということです。
大熊さんは「一刻も早く助けたいという思いでした。救助した乗組員のうち2人は応答がなく、心臓マッサージなどをしました。もう1人は、意識がかろうじてあった状態で寒さで震えていたので、毛布をかけたり、お湯が出るシャワーを浴びせたりしました」と当時の様子を語りました。
また、大熊さんは行方不明となっている男性の1人と親交があり、イワシがとれる場所について連絡を取り合っていたということで「ことしもこれから頑張っていこうと話してお互い漁に出たあとの事故でした。とにかく早く見つかってほしいです」と話していました。
漁協の組合員「3人の無事を祈るばかり」
転覆した漁船が所属する茨城県北茨城市の大津漁協の組合員の男性(71)は「新年早々に起きたショックな事故で、漁は何が起きるかわからないと感じました。行方不明となっている3人の無事を祈るばかりです」などと話していました。
大津漁協「ベテラン多く優秀 捜索に全力」
転覆した漁船が所属する大津漁業協同組合の鈴木徳穂組合長と坂本善則専務理事が銚子市内で取材に応じ「行方不明者が3人いるので、その方たちの捜索に全力をあげたい」と述べました。
その中で、転覆した漁船の操業の経緯について「5日正午ごろに大津漁港を出航したあと、2回目の操業を行っていて、6日午前2時ごろに事故を起こしたと連絡が入った。ことしになって初めての漁で、いわしの漁獲目的で出漁していた」と説明しました。
また「乗組員はベテランの方が多く優秀な漁労長だったので、操船ミスなどは考えにくいが、原因については海保の調査の結果を待ちたい」と話していました。