東京女子医科大学の元理事長、岩本絹子容疑者(78)は東京・新宿区にあるキャンパスの施設建設をめぐって、大学の「建築アドバイザー」の肩書を持つ建築士の口座に実態のない業務への報酬として大学から資金を振り込ませ、1億1700万円の損害を大学に与えたとして、背任の疑いで13日逮捕されました。
認否は明らかにされていません。
警視庁によりますと、元理事長は建築士に専用口座を作らせて大学から資金を振り込み、事前に金額などを取り決めた上で自分に還流させていたとみられています。
今回の事件で元理事長に還流した疑いがあるおよそ3700万円は、当時の側近の職員が2回に分けて建築士から紙袋に入った現金の形で直接受け取り、元理事長に手渡しで還流させていたとみられることが捜査関係者への取材でわかりました。
建築士から職員への現金の受け渡しは、元理事長の自宅に近い江戸川区内の駅周辺で行われていたということです。
警視庁は資金の還流が発覚しないようにしていたとみて捜査を進めるとともに、建築士や大学の元職員についても任意で調べる方針です。
東京女子医大 元理事長 側近が手渡しで資金還流か
東京女子医科大学の施設建設をめぐり資金を不正に流出させたとして、大学の元理事長が背任の疑いで逮捕された事件で、元理事長が、大学のアドバイザーを務める建築士の口座にいったん振り込んだ金を、当時の側近の職員に直接受け取らせ、手渡しで自分に還流させていたとみられることが捜査関係者への取材でわかりました。
警視庁は金の流れが発覚しないようにしていたとみて調べています。
足立の病院めぐる報酬も還流か
今回の背任事件では、岩本元理事長が新宿区にあるキャンパスの施設建設をめぐり、大学の「建築アドバイザー」の肩書を持つ建築士の口座に実態のない業務への報酬名目で、大学から資金を振り込ませた疑いが持たれていますが、同じ建築士への報酬名目の支払いは2022年に荒川区から足立区に移転した医療センターの建設をめぐっても行われていました。
大学が設置した第三者委員会の報告書によりますと、この医療センターの建設をめぐって建築士には2021年にかけて、19回にわたり、あわせて1億8000万円余りが大学から支払われています。
警視庁はこれらの資金についても元理事長に還流していた疑いがあるとみて調べています。
関係先からは多額の現金や金塊2キロ
警視庁のこれまでの捜査で岩本元理事長の自宅や関係先からは多額の現金や金塊が見つかっているということです。
捜査関係者によりますと、2024年7月、元理事長が経営するクリニックの関係者が所有する東京・港区のマンションの部屋の捜索で、現金1億5000万円や金塊2キロが発見されたということです。
また2024年9月には元理事長の自宅やクリニックからスーツケースに入れられるなどした現金、およそ5000万円が見つかったということです。
警視庁はこれらの現金や金塊を押収し、建築士から還流した資金との関連などを調べています。
阿部文科相「極めて遺憾」
阿部文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で「公共性が高い学校法人で、理事長職にあった者が逮捕されたことは極めて遺憾だ。法人においては、昨年12月にまとめた改善計画を実行するとともに、捜査の進展によって事実関係が明確になれば、元理事長に対するさらなる責任追及について適切に対応する必要がある。文部科学省としても状況を確認し、必要に応じて指導や助言を行っていく」と述べました。