春節で日本に多くの観光客 “オーバーツーリズム” 対策も

新年を旧暦で祝う中国では、旧正月の春節を29日に控え、28日から8日間の大型連休が始まり、多くの人たちがふるさとに帰省したり家族などと旅行に出かけたりして過ごします。
中国政府は、前後も含め期間中に移動する人は過去最多となる延べ90億人に上るという見通しを発表しています。
中国各地の空港や鉄道の駅は今月中旬から混雑が続いていて、27日も南部・広州の空港では大きな荷物を持った家族連れなどの姿が多く見られました。

日本各地に中国などから観光客

新千歳空港は観光客で混雑

新千歳空港では、北京や上海からの便が到着すると、大きなスーツケースなどを持った観光客が次々と降り立ち、早速、記念撮影をしたり旅行会社のガイドから説明を受けたりしていました。

上海から家族3人で訪れた40代女性
「スープカレーやおすし、焼き肉を食べるのが楽しみです」と話し、10歳の息子は「雪で遊んだりスキーをしたりしたいです」

上海からカップルで訪れた30代男性
「おすしやラーメンを食べたい。上海は雪がないので雪を見るのが楽しみです」

北海道 函館の観光施設に多くの人の列

冬場になるとサルが温泉につかって寒さをしのぐことで知られる「函館市熱帯植物園」では、開園前から多くの人が列を作りました。

午前9時半の開園時間を迎えると、観光客たちは温泉の中でくつろぐサルの様子を眺めたり、スマートフォンで写真に収めたりしていました。

北京から訪れた女性
「温泉に入るサルを初めて見ました。とてもかわいいですね」

園によりますと、今月に入ってから27日まで、去年の同じ時期のおよそ1.5倍にあたる2万9000人余りが来園し、このうちの4割を外国人観光客が占めているということです。

園長 “こんなに多くの人 びっくり”

函館市熱帯植物園 鈴木一郎園長
「連日こんなに多くの人が来るのは初めてで、びっくりしています。観光客が来てくれるのはうれしいが、ゆっくり見てもらうには人が多すぎるので、痛しかゆしという感じです」

青森 ウインタースポーツ楽しむ観光客増加

青森市の「八甲田ロープウェー」のふもとの駅は、雪景色やウインタースポーツを楽しもうという観光客で朝から混雑していて、チケットを購入する窓口には長い列ができていました。

運営会社によりますと、八甲田山系では3年前の冬の北京オリンピック以降、ウインタースポーツが目的の中国などからの観光客が増えていて、春節の大型連休では通常の1.5倍の人出を見込んでいるということです。

栃木 日光 温泉街やいちご狩り観光施設にも

栃木県日光市にある東武鉄道の鬼怒川温泉駅では中国などからの観光客が駅前を散策する姿や、大きなキャリーバッグを持って歩く姿が見られました。

また、温泉街から車で5分ほどの距離にあるいちご狩りが楽しめる観光施設にも客が訪れ、旬を迎えたいちごの味を堪能していました。

施設によりますと、中国などの東アジアのほか、東南アジアの観光客が年々増えているということで、ことしの春節の期間も台湾などから団体客の予約が入っているということです。

観光施設 石川正夫園長
「春節の期間は海外からのお客さんに大いに期待したい。おいしいいちごをたくさん作って話題となればうれしい」

東京大学ではキャンパス見学

東京・文京区にある東京大学の赤門近くには大型バスがとめられ、中国からの観光客が門の前で写真を撮ったり、キャンパスの様子を見学したりしていました。

2人の子どもと一緒に訪れた女性
「春節の休みを利用して家族旅行で日本を訪れました。東京大学は有名な大学なので、子どもたちに見せようと思って来ました」

中国人向けのツアーを企画 旅行会社の担当者
「アジアでも有名な大学なので、訪れてみたいという声は多いです。成田空港に着いてから一番最初に東京大学に来ました」

企業の担当者 “ものを買うより現地の習慣楽しむ”

中国からのインバウンド動向を分析し国内企業の支援などを行う企業は、春節の大型連休について中国に住む6383人にアンケートを行いました。

このうち15.9%にあたる1013人が日本に旅行に行くと回答し、旅の目的は多い順にグルメ、温泉、冬景色鑑賞だったということです。

「インタセクト・コミュニケーションズ」辰巳亮さん
はコロナ以前に多かった「爆買い」は落ち着いているとしたうえで「ものを買うよりも、現地ならではの習慣に親しみながら楽しむという考えが増えてきた」

「日本のパウダースノーが有名なので、スキーや雪景色、雪の中の温泉など、日本ならではの風景を楽しめる観光も人気だ。中国では子どもを連れて現地の有名大学に行くのは一般的で、東京に行ったら東京大学、北海道に行ったら北海道大学に行くというのは一般の感覚だ」

北海道 小樽 “オーバーツーリズム”の対策進む

北海道小樽市では、観光客が集中することで地域住民の生活に影響が出るオーバーツーリズムの対策が進められています。

小樽市によりますと、2023年度、市にはおよそ760万人の観光客が訪れ、一部ではオーバーツーリズムで住民の生活に影響が出ることが懸念されています。

映画のロケ地として知られる「船見坂」では、連日、国内外から観光客が多く訪れる一方、車道に出て写真撮影する姿が相次いで確認されているということです。

市は「春節」の大型連休が始まるのに合わせて警備員3人を新たに配置するとともに、日本語や英語、中国語など5か国語で、車道で撮影しないよう促す看板を掲示しました。

28日は午前中から多くの観光客が訪れて記念撮影を楽しんでいて、中国から訪れたという30代の男性は「中国では船見坂がとても有名で、写真を撮るために来ました」と話していました。

小樽市観光振興室 松本貴充主幹
「警備員が直接観光客に声をかけることで、車道での危ない行為の注意ができている。当面、配置を続けたい」

海外からの観光客が列車と衝突し死亡する事故も

小樽市のJR朝里駅周辺は、海を望むことができる眺めのよさに加え、中国で製作された映画のロケ地になったことから海外の観光客の間で人気を集めています。

これまで線路に立ち入る人が相次いで目撃されていましたが、今月23日には、朝里駅近くの線路内で写真撮影をしていた中国人の60代の女性が列車と衝突して死亡する事故が発生し、JR北海道では駅の警備員を増やしたということです。

28日は、警備員が駅のホームなどで写真を撮影する人たちに安全な場所に移動するよう呼びかけていました。

今後も海外の観光客の増加が想定されることから、JR北海道は朝里駅の近くにある小樽駅や銭函駅でも警備員を配置することにしています。

北海道美瑛町 人気スポットに警備員配置

北海道美瑛町の人気スポット「クリスマスツリーの木」には大勢の観光客が訪れて周辺の道路が混雑し、一時、町の観光協会の職員が交通整理にあたりました。

美瑛町の丘にある「クリスマスツリーの木」は畑にぽつんと1本だけ木がある風景が人気で、写真を撮影するために多くの観光客が訪れます。

最近は観光客による畑の踏み荒らしや、周辺の道路への路上駐車が問題になり、町の観光協会は交通事故やトラブルを防ぐため先月から警備員を配置して路上に車を止めないよう呼びかけています。

春節にあわせた大型連休初日の28日は午前中から周辺の道路が混雑し、レンタカーなどの路上駐車が絶えなかったため、警備員2人に加え、一時、観光協会の職員2人も車の誘導にあたりました。

中国・上海から訪れた観光客は「クリスマスツリーの木は上海でも有名で、中国で盛大に祝われる春節の機会にここに来られてうれしいです」と話していました。

観光協会は29日以降も、混雑状況によっては職員も加わって交通整理などにあたることにしています。

夜景が人気の函館山 スマートフォンで混雑状況を確認

標高334メートルの函館山は、山頂からの夜景が多くの観光客から人気で、春節に伴う大型連休初日の28日は中国や台湾などから訪れた多くの観光客の姿が見られました。

中国から来た20代の女性は「1時間ほど待ちましたが、夜景がよく見えず残念です。混み合っているので、あきらめたいと思います」と話していました。

また、東京から来た30代の女性は「春節のことを忘れていて、すごく混んでいたので驚きました」と話していました。

山頂の展望台では、観光客が撮影で長時間とどまることなどによる混雑が課題になっていて、市は今月から展望台の混雑状況をふもとの駅やスマートフォンで確認できるシステムの導入を始めました。

函館駅構内には電子看板=デジタルサイネージが設置され、山頂の展望台のほか、ふもとと山頂付近を結ぶロープウエーの駅など合わせて8か所の混雑状況がほぼリアルタイムに把握できるようになっています。

また、QRコードを読み込むとスマートフォンでも状況を確認できるようになっています。

静岡 熱海の老舗旅館 AI活用で業務効率化

外国人観光客が増加し、観光業の人手不足が大きな課題となる中、静岡県熱海市の老舗旅館では、業務の効率化を進めるとともに、人手の確保に努めています。

熱海市の老舗旅館では、春節の大型連休を前に宿泊の予約が連日ほぼ満室となっています。

人手不足が大きな課題となる中、この旅館ではAIを活用して従業員のシフトを作ったり、業務のマニュアル化を進めたりして効率化を図っています。

また、社員寮を改築するといった待遇改善を進めたところ、離職者が減り、就職希望者がコロナ前の3倍以上に増えたということです。

社長の内田宗一郎(51)さん
「観光産業は非常に有望なマーケットなので、多くの人がこの業界に入ってただけるように努力したい」

ホテルの客室単価 高騰続く

国内のホテルの客室単価を調べている調査会社によりますと、コロナ以降国内のホテルの客室単価は高騰を続けていて「物価高やインバウンドの増加に加え、国内需要の高さが価格を押し上げている」と分析しています。

アメリカの不動産調査会社「コスター・グループ」傘下の「STR」が日本国内のホテルの客室単価について調査したところ、去年1年間の平均は2万693円でした。

新型コロナウイルスの感染拡大前だった2019年と比べて6090円高く、およそ1.4倍となっています。

東京都内は2万9565円で、2019年と比べて1万546円高く、およそ1.5倍となっています。

調査会社は欧米などを中心としたインバウンドの増加や円安で海外旅行に行く日本人が減り、国内旅行の需要が高くなっていることに加え、物価高や人手不足でホテルが客室の稼働を制限していることなどが単価を押し上げていると分析しています。

石破首相 春節にあわせ祝辞

石破総理大臣は、中国の旧正月の「春節」が始まるのにあわせた祝辞で、国際情勢が厳しさを増す中、分断と対立を乗り越えられるよう、各国と対話を重ねる考えを強調しました。

29日からの「春節」を前に、東京 港区にある東京タワーは28日夜、中国で縁起のよい色とされる赤色にライトアップされ、現地で行われたイベントで石破総理大臣の祝辞が紹介されました。

祝辞では「能登半島地震に対し、世界各地から救援や義援金をいただいたことに改めて深く感謝申し上げる。世界各地でも自然災害が発生したが、一日も早く復旧し、よりよい1年となることを心よりお祈りする」としています。

そのうえで「国際情勢は厳しさと複雑さを増しているが、分断と対立を乗り越えるべく、日本は各国との対話や協力を重ね、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化を推進していく」としています。

また、自民党の森山幹事長はあいさつし「アジアの平和と、中国と日本の発展のために、お互いに頑張っていかなければいけない。特に、若い人たちの交流に力を入れ、友好の輪がさらに広がることが大事だ」と述べました。