ウクライナ情勢をめぐっては、2月のアメリカ・トランプ大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談が激しい口論となり、アメリカがウクライナへの軍事支援を停止する事態にも発展しています。
ヨーロッパの対応が焦点となる中、マクロン大統領は5日夜、テレビで演説を行い、ロシアの脅威がヨーロッパに差し迫っているとして、「フランスの核の抑止力を、ヨーロッパの同盟国などにも拡大することについて戦略的な議論を始める」と述べ、フランスの核兵器による抑止力、いわゆる「核の傘」を、ヨーロッパに広げることについて、検討を始める考えを明らかにしました。
この検討についてマクロン大統領は、2月会談した、ドイツの次の首相に就任する見込みとなっているメルツ氏からも要請があったとしています。
一方でマクロン大統領は、核兵器の運用に関する最終的な決定権は、引き続きフランスの大統領のみが保有すると強調しています。
また、マクロン大統領は「アメリカが私たちの味方であり続けると信じたい。しかし、もしそうでなくなった場合にも備える必要がある」と述べ、フランスを含むヨーロッパ各国が防衛力を強化し、ウクライナへの支援を継続する必要があると強調しました。
そのうえで、フランスやイギリスが中心となって検討している、停戦後のウクライナへの、平和維持の部隊の派遣などについて議論するため、来週、各国の軍の責任者をパリに集め、会議を行うとしています。
マクロン大統領 “仏保有の核抑止力を欧州に拡大 検討へ”
フランスのマクロン大統領は5日、ウクライナ情勢をめぐってテレビで演説を行い、ロシアの脅威がヨーロッパに差し迫っているとして、フランスが保有する核兵器による抑止力を、ヨーロッパにも広げることについて、検討を始める考えを明らかにしました。
ロシア外務省「パリの野望が表面化」
ロシア外務省は、フランスのマクロン大統領が、ウクライナ情勢をめぐりロシアの脅威が差し迫っているとして、フランスが保有する核兵器による抑止力をヨーロッパにも広げる考えを示したことを受けて、6日、声明を出しました。
この中で、EU=ヨーロッパ連合が開いた特別首脳会議に触れ、「ウクライナ危機とロシアとの対立に焦点を当てた会議の前夜、フランスのマクロン大統領は、今後の基本的な流れを作ろうとして、極めて攻撃的な反ロシア演説を行った」と指摘しています。
そのうえで「アメリカの『核の傘』に代わる独自の『核の傘』を提供することで、ヨーロッパ全体の『核の後援者』になろうというパリの野望が表面化したものだ」として、マクロン大統領の発言に強く反発しています。
また「パリでは、いまだにわが国の重要な利益を考慮するつもりはなく、西側諸国が望む決定を強要することを目指していると、われわれは、改めて確信している」として、マクロン大統領のロシアに対する姿勢を批判しています。
フランス保有の核弾頭数 世界で4番目に多く
ストックホルム国際平和研究所の報告書によりますと、2024年1月の時点で、フランスが保有する核弾頭の数は290発とみられ、ロシア、アメリカ、中国に次いで4番目に多くなっています。
世界の総数は推計で1万2121発で、ロシアとアメリカの2か国だけで全体のおよそ9割を占め、イギリスも225発を保有しているとしています。
フランスは、第2次世界大戦後に核兵器の開発を進め、
▽1960年、当時、フランス領だった北アフリカ アルジェリアのサハラ砂漠で初めての核実験を実施し、南太平洋のフランス領ポリネシアにあるムルロア環礁でも核実験を繰り返しました。
東西冷戦が終結すると削減にかじを切り、
▽1996年には、核兵器の材料になる核分裂性物質の生産終了を宣言
▽2008年には、核弾頭の数を東西冷戦時代の半分にあたる300発以下に抑えると表明しました。
また、地上発射型の核ミサイルも廃棄していて、現在保有するのは、潜水艦や航空機から発射するタイプだとしています。