全4276文字

 PCは映像や音声の入出力、データ転送などに用いる様々なインターフェースを備えている。こうしたインターフェースも進化と変化を繰り返しているが、その中で今、注目すべきは多くの機器で使われている「USB(Universal Serial Bus)」だろう。最近はUSB Type-CやThunderbolt 3の普及が進み、さらに最新規格「USB4」が策定され仕様が公開された。そこで今回は、USBの最新事情を整理しよう。

USB4の仕様が公開も、気になるThunderbolt 3との互換性

 2019年9月、USB4の仕様が公開された。USB4では新たに「Gen.3」の通信速度が規定され、通信に使う信号線が1組の「シングルレーン」で20Gビット/秒、2組の「デュアルレーン」で40Gビット/秒の転送が可能になった。

 またUSB4は、USB 3.2、DisplayPort、PCI Expressの信号をそのまま流せる。さらにUSB 3.2、USB 2.0、Thunderbolt 3(オプション)に対して後方互換性を確保している。USB Type-Cコネクターやケーブルを利用することで、USB PD(Power Delivery)などの拡張仕様も使える。

 ただしThunderbolt 3との互換性に関しては気になる点もある。USB4はThunderbolt 3の仕様をベースにしており、後方互換性を持つことが2019年3月時点でアナウンスされていた。ところが実際に公開された仕様書でThunderbolt 3互換モードは「Optional」と表記されている。かつThunderbolt 3互換モードのデータ転送速度はGen.2で10.3125Gビット/秒、Gen.3で20.625 Gビット/秒とあり、USB4のベース仕様とは区別されている。

 つまりUSB4はThunderbolt 3の技術をベースにしてはいるが同一ではなく、それぞれが独立した規格で、あくまでもUSB4がThunderbolt 3に対しての後方互換性を確保するという関係性だ。

USBの規格を決めている団体「USB-IF」のWebサイト。2019年9月にUSB4仕様が公開された
USBの規格を決めている団体「USB-IF」のWebサイト。2019年9月にUSB4仕様が公開された
(出所:USB-IF)
[画像のクリックで拡大表示]
USB-IFが2019年9月3日に公開したプレスリリースには、USB4のアーキテクチャーはThunderbolt 3ベースで、既存のUSB 3.2、USB 2.0、Thunderbolt 3との後方互換性を持つという記載がある(赤枠は筆者が挿入)。また仕様書では、Thunderbolt 3互換モードは「Optional」扱いという説明をしている
USB-IFが2019年9月3日に公開したプレスリリースには、USB4のアーキテクチャーはThunderbolt 3ベースで、既存のUSB 3.2、USB 2.0、Thunderbolt 3との後方互換性を持つという記載がある(赤枠は筆者が挿入)。また仕様書では、Thunderbolt 3互換モードは「Optional」扱いという説明をしている
(出所:USB-IF)
[画像のクリックで拡大表示]

 しかも、必ずしも全てのUSB4ポートがThunderbolt 3と互換性を持つわけではない。スマートフォンなどではThunderbolt 3との互換性を保つ必要性が薄いためにこのような措置を取ったと思われるが、PCでどのように実装されるかに関しては不安が残る。

 USB4に対応するPCや周辺機器が登場してくる時期は不透明だ。Thunderbolt 3を開発してきた米インテル(Intel)以外にとってはUSB 3.2からの技術的なアップデートが大きい上、高速転送が必要なユーザーは既にThunderbolt 3という選択肢があることもあり、登場までに時間がかかると思われる。余談だが、従来のUSB規格は「USB」の後に半角スペースが入っていたが、USB4ではスペースなしの「USB4」が正式な表記となっている。