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 生成AI(人工知能)のブームで建設ラッシュが続くデータセンター。サーバーメーカーは好況に沸くが、その裏で「資源枯渇」のリスクが顕在化しようとしている。サーバーを冷やすための「水」について専門家は「緊急措置」が必要だと警鐘を鳴らし、送電線やネットワークケーブルに必須の「銅」は2024年5月に史上最高値を更新した。国際エネルギー機関が4年で電力消費量が2倍になると予測するなか、貴重なエネルギー資源から生み出す電気が不足する恐れも高まってきた。

 「水」「銅」そして「電気」。需給バランスが崩れれば価格高騰は必至だ。第1回のテーマは水不足。データセンターの冷却に大量の水が必要となり、枯渇リスクが高まっている。

 世界気象機関(WMO)が「観測史上、最も暑い夏」と認定した2023年に続いて、2024年も記録的な猛暑となった。欧州連合(EU)の気象情報機関によれば、月ごとの世界平均気温は2024年6月まで13カ月連続で過去最高記録を更新し続けた。

 空調が効いた涼しい部屋で過ごしたい。こまめな水分補給が必要だ──。こう考えるのは人間だけではない。データセンターも冷却のための大量の「水」を欲している。生成AIブームを背景にデータセンター需要が増大するなか、水不足リスクが顕在化しつつある。

 大規模データセンターを稼働する巨大テック企業の水消費量は既にうなぎ登りに増えている。米Microsoft(マイクロソフト)が2024年5月に公表した環境報告書によれば、2023年の同社全体の水消費量は前年から144万立方メートル(m3)(23%)増えて784万4000m3となった。同社は、データセンター事業の拡大を水消費量増加の要因としている。

マイクロソフトの水使用量の推移
マイクロソフトの水使用量の推移
(出所:マイクロソフト)
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 なぜデータセンターに大量の水が必要なのか。従来型データセンターの多くは、住宅やオフィスと同じように空調機から冷たい空気を送り込んでサーバールームごと冷やす方法を採用している。一般的には、サーバールームの壁面などに設けた空調機から冷たい空気を送り込み、サーバーの熱を回収した暖かい空気を天井から回収する。

 データセンターには、暖かい空気を再び冷やす冷却システムが必要だ。冷却システムには主に、(1)暖かい空気から熱を回収した水の冷却にクーリングタワー(冷却塔)やチラー(電気を使って冷媒を圧縮することで水を冷やす装置)を利用するタイプと、(2)外気によって自然冷却するタイプの2種類が存在する。

 (1)は2つの水循環回路から成る。1つはサーバールームにある空調機に冷水を送り込むための回路で、チラーとサーバールームを循環する。もう1つは熱を回収する回路で、サーバールームの天井などに設置された熱交換器(暖かい空気から熱を水に映す)とクーリングタワーを循環する。前者は閉鎖回路で基本的に水を消費しないが、後者はクーリングタワーで水が蒸発するため、水が大量に消費される。