リチウム(Li)の市場価格が高騰する中、Li以外の電池内キャリアを使う蓄電池技術の開発が急速に進んでいる。既にナトリウム(Na)イオン2次電池は量産が始まりつつあり、亜鉛(Zn)や鉄(Fe)を使う技術がそれを追う。これまでやっかいものだった二酸化炭素(CO2)をエネルギー媒体とする技術も登場。さらには、Liイオン2次電池(LIB)の数倍から10倍といった超高エネルギー密度を実現する技術の実用化も見えてきた。
この約20年間、リチウム(Li)イオン2次電池(LIB)は蓄電池の代名詞に近かった。だが、2021年半ば以降、急速に“脱リチウム”の動きが顕在化している。表面に見えているのは量産化が始まりつつあるナトリウム(Na)イオン2次電池(NIB)、そして亜鉛(Zn)や鉄(Fe)を使う電池である。さらに水面下では炭素(C)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、そしてフッ素(F)といった元素を電池内キャリアとして使うさまざまな次世代蓄電池技術の開発が大きく進んでいる。中には非常に高いエネルギー密度を実現できそうな技術もあり、かつては机上の空論だった“LIBの10倍のエネルギー密度"さえも現実味を増してきた。
Li価格は約1年半で16倍に
この動きの大きな背景にはやはり、Liの供給のひっ迫がある。1年以上も高騰を続ける炭酸リチウム(Li2CO3)の価格は2022年3月初頭時点でついに2020年末の価格の16倍を超え、収束の気配はまだない。EVの台頭に加えて、ロシアがウクライナに軍事侵攻したことなどでニッケル(Ni)、AlやZnも大幅に値上がりしているが、その上げ幅は2年で3倍弱ほど。Liの高騰ぶりは突出している。
この状況に最も危機感を抱いているのは中国かもしれない。同国はさまざまな金属資源の多くを産出し、資源に強い国という印象だが、Liの産出量割合は2016年時点で世界全体の約6%、埋蔵量でも約22%と例外的に低い注1)。2021年末時点でLi2CO3の中国国内需要の7割を輸入に頼っていることが、中国メディアでしばしば指摘されている。