SCSKは2021年3月24日午後5時過ぎ、元社員が松井証券の顧客から約2億円を不正に出金した事件について会見を開いた。SCSKの谷原徹社長ら3人の役員が事件の経緯や被害状況を説明。谷原社長は「当社元社員の不正行為により被害に遭われた方々に深くおわび申し上げる」と謝罪した。

謝罪するSCSK役員。左から工藤敏晃常務執行役員金融システム事業部門長、谷原徹社長、福永哲弥取締役専務執行役員
謝罪するSCSK役員。左から工藤敏晃常務執行役員金融システム事業部門長、谷原徹社長、福永哲弥取締役専務執行役員
(撮影:日経クロステック)
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 SCSKは松井証券の証券取引システムの開発・運用を受託しており、元社員はプロジェクトリーダー(PL)を担当していた。同システムの本番環境と開発環境の両方にアクセスできる権限を持っていた元社員は、本番環境で顧客情報を含むバックアップファイルを作成して開発用システムに転送。開発用システムで210人分の顧客情報を抽出して私用のメールアドレスに転送することで、IDやパスワード、取引暗証番号など取引に必要な情報を不正に入手した。

 この情報を基に元社員は証券口座にログインして株式を売却。さらに偽造した本人確認書類で松井証券の顧客と同姓同名の銀行口座を開設し、株式の売却代金や預かり金を計15回送金した。

谷原徹社長
谷原徹社長
(撮影:日経クロステック)
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 一連の不正行為があった期間は2017年6月から2019年11月まで2年5カ月に及んだ。2020年1月に松井証券の顧客が身に覚えのない取引があったと同社に通報したことをきっかけに、事件が判明。元社員は2002年の入社以来、松井証券のシステムを専任で担当しており、「他社のシステムへの関与はない」(SCSKの福永哲弥取締役専務執行役員)。

 SCSKは事件判明後、金融機関から受注している全案件を調査し、同様の不正出金がなかったことを確認したという。