今回のポイント テキストを読みやすくすることが最大の目的 まずテキストをHTML化して構造化すること HTMLタグは意味を持たせるものだけを使用する |
デザインについてざっと大筋の勉強をしてみましょう。デザインの根幹となる考え方はわずかに二つです。その二つとは「色」と「バランス」です。この二つを制することができたらデザインを制覇したと豪語してしまっても構いません。
Webデザインの場合はこの二大要素に加えて「読みやすさ」という要素を含めることができます(図1)。Webデザインというのは,そこに存在するコンテンツをいかに読みやすくしていくかが最大のポイントです。
図1●Webデザインの三つの要素。この三つがバランス良く構成されているのが良いページ |
近年,社会傾向として“活字離れ”が発生していると言われています。たしかに新聞や雑誌の発行部数は年々減少しています。しかし世間で何が起こっているのかといえば,実際には日本人は有史以降で一番文字を読む時代に突入しています。どこで字を読んでいるのかといえば,言うまでもなくサイトとメールです。
情報がインターネットを通じて無償で手に入る結果として,有償媒体である新聞や雑誌の発行部数が落ち込んでいるのであって,誰もニュースを見なくなったということではないんです。むしろ面白そうなヘッドラインをつまみ食いするようになって,ニュースを見る回数も増えているのではないかとすら思えます。
文字で情報を伝えるのがWebページの目的である以上,Webデザインというのは「いかにページ内容を読みやすくしていくか」というところが最大のポイントになっています。色と配置というのはすべてのデザインに通じる要素ですが,ここに文章情報の読みやすさも考慮するのがWebデザインです。
まず読みやすくすること,それを配置と色の工夫でセンスが良いと言われる形に昇華すること。これがWebデザインを学ぶ最終目的になります。いくら色のセンスに優れていても,ページ全体の色を真っ白にして文字を薄い灰色にしてしまったらテキストは読みにくくて仕方ありません。それはデザインではないんです。さらに今後は高齢化も進みますからユニバーサル・デザインも意識する必要が出てきます。デザインというのは,根幹となる目的(この場合は読みやすさ)を確実に果たしたうえで,見た人を感嘆させていくものです。
面白いのは「テキストを読ませる」のが大命題であるのに,Webページは文字を読ませる専門家であるはずの新聞などとは大きく方向性を変えているという点でしょう。新聞は今でこそ写真もカラーですが,もともとはすべてが白黒の世界です。現在の新聞を見ても,あちこちをカラフルに飾り立てて紙面を美しく見せようという方向には進んでいません。
これは雑誌も同様です。相も変わらず白い紙に黒いインクでテキストが印刷されているだけですね。しかしその新聞や雑誌を私たちは読みにくいと感じることはないわけです。新聞や雑誌は十分に読みやすい媒体です。つまりWebページの目的が「読みやすさ」にあるとしたら,私たちはまず新聞や雑誌の体裁を学ぶことから始めるのがいいわけです。
1995年から2000年あたり,いわゆる第一期のホームページ・ブームの時にWebデザイン論を語る本がたくさん出ました。そうした解説書では「紙媒体とWebは違うんだ。旧態然とした紙媒体の考え方はもう古い!」という論調のものが多くありました。私はこの考え方には同調できません。文章を読ませる専門家である新聞はWebよりも百年近く先行した歴史を持っていて,ほとんど形態が変わりません。新聞は数社がしのぎを削る世界でもあり,もしも読みにくいものだったとしたら,他社より優位に立つためにもどこかがすでに形を変えているはずです。新聞の読みやすさから学べることはWebページのデザインにも十分に当てはまるはずですし,またビジネス文書の体裁にも転用できるはずです。
だからといってWebページのデザイン・ベースとして新聞を模倣することから始めましょうねということでもないんですけどね。根幹である「読みやすさ」を念頭に置かない考え方は良くないということです。