iPhoneの革新性は,アップル1社だけが作っているわけではない。例えば,世界中の多くの開発者がiPhoneの新しい活用法を生み出し,アプリケーション販売サイト「AppStore」を通してユーザーに届けている。こうした新しい活用方法の中でも,ソーシャルメディアへの影響は無視できない。パソコン画面上で楽しむためのツールだったソーシャルメディアが今,iPhoneと結び付いて実社会での人間関係を補強するツールに変貌しつつある。

TwitterとiPhoneの最強の組み合わせ

写真1●TIME誌6月15日号の表紙
写真1●TIME誌6月15日号の表紙
Twitterを表示したiPhone。

 米国の雑誌「TIME」の6月15日号の表紙は,新しい時代の始まりを象徴しているかのようだった(写真1)。「Man of the Year」(その年の顔)などを掲載することでも知られる同誌の表紙には,人物の代わりにiPhoneが描かれていた。そしてこのiPhoneの画面には,今,世界的に最も注目を集めているソーシャルメディア「Twitter」の画面が表示されていた。

 実際,iPhoneとTwitterの最強の組み合わせは様々なところで話題になってきた。2009年1月に,旅客機のエンジンが故障してニューヨークのハドソン川に不時着した「ハドソン川の奇跡」の時もそうだ。最初に不時着の様子を世界に伝えたのは,救出に向かうフェリーに乗っていたiPhoneユーザーがTwitterに投稿した写真だった。

 iPhoneとTwitterの組み合わせは,世界中の大勢の人々の日々の暮らしぶりを変えつつあり,日本でもiPhoneユーザーの多くがTwitterを愛用している。パソコンからTwitterを利用している人の書き込みは文字が主体なのに対して,iPhoneから投稿している人々は訪問先で撮った写真や動画,録音した音声,さらにはGPSを使った位置情報など,実に様々な方法で,この瞬間の現実の社会を切り取り,Twitterのタイムライン(投稿一覧)に投稿している。

 iPhone用Twitterクライアントには,「写真貼付」のボタンを用意しているものが多い。これを使うとiPhoneのカメラが駆動。写真を撮影してつぶやきを投稿すると,自動的に写真を写真共有サイトに投稿し,参照URLをつぶやきの最後に付加してくれるのだ。この機能は数十種類もあるiPhone用Twitterクライアントの定番機能で,今やこの機能を持たないクライアントを見つける方が難しいくらいだ。同様にiPhoneで録音した会話を,共有サーバーに投稿し,つぶやきの最後に参照URLを追加してくれるクライアントも登場している。

写真2●Twitterアプリ「TwitterVision」の画面
写真2●Twitterアプリ「TwitterVision」の画面
リアルタイムのパブリックな(公開型)つぶやきを位置情報に応じて世界地図上に表示する。つぶやきに位置情報が付けることによって,近くの情報を知るだけでなく,遠くで起こっている事柄に関心を持たせる作用もある。
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 さらに多くのTwitterアプリケーションが位置情報を利用し始めている。Twitterにつぶやきを投稿する際にユーザーが承認すると,「Core Location」というiPhoneのOSの機能で取得した位置情報をつぶやきの中に埋め込む。中にはGoogle Mapsなどの地図のURLを挿入できるものもある。これらを使えば,現在地周辺のつぶやきだけを絞り込み表示することも可能だ。様々な人のつぶやきを世界地図上に表示するアプリも登場しており,手のひらから世界とのつながりを感じられる(写真2)。

 iPhoneとTwitterという最強の組み合わせが普及するにつれて,1日中部屋に閉じこもっていてもTwitterの投稿を見ていれば,動き続けている世界とつながっている実感を持てるのだ。