NTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTデータ,NTT持ち株会社の3社が,ユーザー認証や課金管理など,SaaSサービス用のプラットフォーム機能群を開発した。今夏から,NTTコムとNTTデータそれぞれのSaaS基盤に導入する。将来は,双方間で認証情報を流通させるなど連携強化も進める計画だ。
今回開発したのは,「SaaS基盤共通機能群」と呼ぶプラットフォーム機能である。グループ3社がそれぞれ開発した要素技術を組み合わせ,6種類の機能を完成させた(表1)。NTTコムやNTTデータは,順次この6機能をそれぞれのSaaS基盤に導入していく。これらの基盤を利用するSaaS事業者は,認証システムや料金回収の仕組みなどを自ら開発しなくても,短期間で自社サービスに組み込めるようになる。
ネットワークとの連携機能では,インターネット接続だけでなく,NTTコムの企業向けVPN(仮想閉域網)サービスでもアクセスできるゲートウエイを用意した。通信品質やセキュリティを高め,SaaSサービスの利用シーンを拡大する狙いだ。
SaaS事業者が支払うプラットフォーム料金は,「サービスを利用するエンドユーザー1IDごとに月額数百円の負担で,必要な機能を選んで利用できるようにすることを考えている」(NTTコムの原隆一・ビジネスネットワークサービス事業部長)。
コムとデータで別々の市場を開拓
機能を共通化したものの,NTTコムとNTTデータの事業展開は異なる(図1)。NTTコムは,プラットフォーム・サービス(PaaS)の「BizCITY for SaaS Provider」の一部として,SaaS事業者向けに提供する。2009年9月に認証基盤機能の提供を始める。BizCITYでは,NTTコム自身の「Salesforce over VPN」をはじめ9社がサービスを提供中。今回の機能強化で,3年後をめどに20社程度までパートナを増やしたい意向だ。
一方,NTTデータは主に同社が提供しているSaaSサービスへ適用する。企業ユーザーにソリューションとしても販売する計画だ。同社のSaaS基盤「VANADIS SaaS Platform」に共通機能が載るのは,10月ころとなる。
双方のプラットフォームに共通機能群ができたことで,今後は両社の事業連携も視野に入る。具体的には,認証強度のレベルが共通になったことでシングル・サインオンが可能になるという。一方のSaaSサービスにログインすれば,再ログインせずにもう一方の基盤上のSaaSサービスを利用できるようになるとしている。