松下電器産業のCIO(最高情報責任者)である牧田孝衞・役員(情報システム担当)は、2001年度から5年間のIT(情報技術)投資に対する効果が累計投資額を上回ったことを明かした。具体的には5年間で1733億円投資し、コスト削減などの定量的な効果が1784億円となった。
「IT革新全社プロジェクト」と名付けられたこのプロジェクトは、中村邦夫社長が社長就任から1カ月後の2000年7月に始動。開発や製造、販売、間接業務など、あらゆる組織を、市場の変化に即座に対応できる体制にすることを目指してきた。中村社長自らが本部長となって取り組んできた肝入りの改革である(「IT革新全社プロジェクト」の詳細は、5月24日発売の日経情報ストラテジー7月号の特集に掲載)。
牧田役員によると、今年度を含めた6年間で2103億円を投資する。これに対する効果が2276億円と見込んでいる。つまり173億円の“黒字”になる計算だ。
改革の前期ともいえる2001~2003年度までの中期経営計画「創生21」では、1153億円の投資に対して836億円の効果があった。「モデルケースとして先行導入したドメイン(事業会社)だけの効果なので、投資額の7割にとどまっていた」(牧田役員)と話す。
創生21を引き継いだ2004~2006年度までの中期経営計画「躍進21」について、牧田役員は「成果を刈り取る時期」と位置づけ、投資回収のペースを上げている。創生21では、事業再編といった本業の改革に取り組んでいたドメインが、新たにIT革新に取り組むなど全社に展開し始めている。
さらに、4月に行われた決算発表の席上で中村社長は、「今後も松下グループで400~500億円のIT投資を継続していく」と巨額の投資を継続することを宣言した。