2012年2月3日、“シリコンバレー流”のユーザー・インタフェース(UI)やユーザー体験(UX)、ブランドのデザインをテーマにしたトークセッションが、デジタルガレージ本社で行われた。
登壇したのは、米エバーノートでクリエイティブディレクターを務めるゲイブ・キャンポドニーコ氏(写真1)。米アップルでの勤務経験も持つ同氏は、この数年にわたるエバーノートのアイコンのデザインからブランド構築までの数々の経験談を語った。
同氏が講演で指摘したUIとUX、ブランド構築のポイントは、以下の9点にまとめられる。
1)最初から編集に着手してはいけない
最初の教えは、「いきなり編集に着手してはいけない」。同氏がデザインする際に心がけているのは、できるだけたくさんの情報を収集すること。そのために同氏は、たくさんの人に会うのだという。
エバーノートには創業時から参加することになったので、同氏はまず企業ロゴを考えることになった。多くの社員に会って「何をやる会社なのか」「どんな意義を持つサービスを提供するのか」「社員は何に熱意を感じるのか」「何を目指しているのか」をひたすら聞きまくった。
そこから見えてきたのは同社が“永遠”を大切にしていること。そして別のコンセプトとしては、データを記録するためのノートが多数あること。たくさんの入り口から入ってきたデータが集まることで価値が出てくるということが見えてきたのだ。
2)他の事例を徹底的に調べる
ロゴを作製する場合、気になるのは「目立つこと」。当たり前ではあるが、徹底的に他社の事例を調べてみることが重要だ。
エバーノートのロゴには象が描かれているが、これは「象は決して忘れることがない」という逸話から導かれたもの。“永遠”を大事にする社風と、ほかのIT企業が使っていないからという理由で象を採用することはすんなり決まったようだ。
しかし強く配慮する必要があるロゴがあった。米国の共和党のロゴだ(写真2)。印象が似てしまわないよう、デザインでは“星”を排除し、色を共和党ロゴが使っている赤と青とは違う色を採用することにした。ハイテク企業を調べてみると、緑を使っている企業が少なかったことから、最終的に緑色に落ち着いた(写真3)。
ほかに注意した点としては抽象度があったという。シンプルにするために、抽象度を高めたところ、「クジラに見える」という人もいた。結局、中間的なところに落ち着いたのだという。
こうして、ユニークなロゴを作った効果は絶大だったようだ。同氏が大きなメリットの一つとして挙げたのが、米アップルの発表会で紹介されることが多いこと(写真4)。同社がたくさんロゴが並んだ画面を作る際に、高い確率でロゴが入るのだという。このほかにも「思いがけず使われることが多い」(同氏)のは、緑色を採用する会社が極端に少なかったからだろうと分析している。