プロジェクトで危機的な状況に直面したとき、やってはいけないことが少なからずある。日経SYSTEMS5月号(4月26日発行)の特集記事「プロジェクトの危機 その時どうする」の取材では、このように感じる指摘を、ベテランのプロジェクトマネジャー(PM)から受けることができた。

 特集記事で取り上げた危機的な状況には、「震災の影響によってプロジェクトが進められない」といったものに加えて、コストオーバーや納期遅延、品質の低下というものを含む。このとき、どのように対応すればよいかを、「人が足りない」「時間がない」「タスクが山積み」といった状況ごとに紹介している。

 記者はこの特集の事例取材で、コストオーバーや納期遅れ、品質の低下といった危機的状況での対応を、主に担当した。これらの危機的な状況は、PMやリーダーが「順調に進んでいる」と思っている中で、急に判明することが少なくない。このとき、プロジェクトはかなり緊迫した状況に陥る。本来進めるべき作業と並行させて、危機対応を進めていかなければならないからだ。

 「やってはいけない」ことは、こういった緊迫した危機対応の状況で、PMやリーダーがついやってしまいがちなものである。いずれも危機対応にはマイナスに働く。ここでは主な三つを紹介しよう。

「徹夜してもやりきれ」と言ってはいけない

 危機的な状況になると、誰もが「できる限り危機への対処の期間を短くして、プロジェクトを元の正常な状態に戻そう」と、考えるに違いない。危機が発生した状況でも、システム稼働時期が変わっていないということも少なくないからだ。PMやリーダーとしては、システムの稼働を目指すために、できるだけ危機対応の時間を短くし、プロジェクト本来の仕事に早く戻したいところだ。

 だからといって、メンバーに「危機対応を徹夜してもやりきれ」と言ってはいけない。「メンバーたちの体力が持たず、最終的には危機対応がままならなくなる」と、三井情報の増渕陽二氏(ビジネスソリューション事業本部 カスタマーソリューション二部 部長)は、説明する。

 危機対応はたいていの場合、見通しが立たない中で進める必要がある。そういった状況では、メンバーは試行錯誤しながら原因の特定や対応を進めることになるため、疲労が溜まりやすい。ここで、徹夜で対応することをメンバーに強いると、作業もはかどらず、メンバーの健康にも支障をきたす。

 「危機対応の計画を立てる際には余裕を持たせる必要があるし、『原因究明で一定のメドが立ったら、後の作業は明日に回す』といった指示を出して、メンバーをできるだけ休ませる必要がある」。増渕氏はこう指摘する。