「goo.co.jp」のドメイン名を巡る紛争の結論は,法廷に持ち越しとなった。ドメイン名の紛争処理機関が下した強制移転命令を不服として,「goo.co.jp」の登録者が裁判所に提訴したからだ。「ドメイン名の先願主義」という大原則を揺らがせた裁定に対しては,インターネット業界から批判の声も上がっている。
「goo.co.jp」の登録者である有限会社ポップコーンは2月16日,「goo.ne.jp」上で検索サイト「goo」を運営するNTT-Xを東京地方裁判所に提訴した。両者の間で争われていた「goo.co.jp」の帰属を巡る紛争で,国内唯一のドメイン名紛争処理機関「工業所有権仲裁センター」が2月7日,ポップコーンに強制移転を命じたからだ(表)。
ポップコーンは,ドメイン名に関する大原則である「先願主義による自由取得ルール」が,今回の裁定によって揺るがされたことを,提訴の理由に挙げている。同社の代理人は,「NTT-Xは『goo.co.jp』が登録済みということを知りながら,あえてgoo事業を始めたはずだ。それにもかかわらず,現在は宣伝の行き届いたgooのほうが有名だから,ドメイン名を差し出せと主張する。このような大企業の横暴を認める裁定は,到底看過できない」と憤る。ポップコーンはNTT-X(当時はNTTアド)が検索サイト「goo」を開設する半年ほど前に「goo.co.jp」の登録をすませ,Webサイトを開設していた。
こうしたポップコーンの主張には,賛同者も多い。JPNICが管理するドメイン名問題のメーリング・リストには,「今回の裁定に従うと,後から商標を登録し,その商標の知名度を上げれば,どんな既存ドメイン名でも奪えることになってしまう。これでは個人や中小企業は,自分のドメイン名を守れない」といった意見が頻出している。「アダルト・サイトだからダメというのは横暴」という声も,インターネット業界の各所から聞こえる。
もちろん工業所有権仲裁センターは,NTT-Xのgoo事業スタートや商標登録より前に,ポップコーンが「goo.co.jp」を登録した事実を踏まえた上で,移転命令を下している。ポップコーンが1999年9月ごろ,それまでの女子高生をテーマにしたものから,アダルト・サイトへの転送目的のものにコンテンツを切り替えたことが,移転裁定の決め手となった。仲裁センターは,「ポップコーンは,ユーザーが『goo.ne.jp』と間違って『goo.co.jp』にアクセスすることを狙い,サイトの内容を変更して商業上の利益を得ようとした。これによりNTT-Xの社会的信用が損なわれることを意を介していないことからも,『goo.co.jp』は不正な目的で使われている」と判断した。しかし,この判断は,ユーザーの間ではあまり理解されていない。
ここまで事態が紛糾した理由は,商標とドメイン名の優先順位や,ドメイン登録時のガイドラインが,きちんと明文化されていないことに尽きる。goo事件が浮き彫りにしたドメイン名の問題は,法廷だけでなく経済産業省やJPNICを交え,広く議論する必要があるだろう。
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表●「goo.co.jp」を巡るドメイン名紛争の経緯 |