うんこで救える命がある 石井洋介
医療・健康・介護のコラム
潰瘍性大腸炎「19歳で人工肛門、現在医師」の僕が今、伝えたいこと
安倍首相が、持病の潰瘍性大腸炎の悪化により辞任を表明されました。「病気があるなら、総理大臣になるべきではなかった」「会食ばかりしていたから病気が悪化した」など、批判の声が散見されましたが、ここには多くの誤解が含まれています。
潰瘍性大腸炎とはどういう病気か
以前も書きましたが 、僕は安倍首相と同じ潰瘍性大腸炎の当事者で、急性増悪時に大腸を全て摘出し、一時的に人工肛門となりました。19歳のときです。現在は人工肛門を閉鎖し、医師として働くなど、疾患の影響がほとんどない生活を送っています。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症を起こし、びらんや潰瘍ができる病気です。病変は、肛門に近い直腸から、連続的に大腸全体に広がっていく性質があります。
特徴的な症状は、下血や下痢、軟便です。炎症の範囲が広がると、腹痛や発熱を起こします。自分の免疫が、腸粘膜を攻撃してしまうことで炎症が起きるのが原因とも言われますが、まだはっきりとは分かっていません。完治させられる治療法も見つかっておらず、国の指定難病にもなっています。
日本では16万人以上の患者さんがいるとされる潰瘍性大腸炎は、指定難病の中で最も患者数が多い疾患です。初めて発症する年齢は、30歳以下の比較的若い時であることが多いのですが、年配になってから発症する方も一定数います。詳しい情報は、 難病情報センターのサイト もご参照ください。
寛解と悪化を繰り返す
この病気の最大の特徴は、寛解期(調子が良い時)と活動期(悪化している時)を繰り返すことです。たとえ真面目に治療を行っていても、節制をしていても、急激に体調が悪くなってしまうことはあるのです。
現在、潰瘍性大腸炎を完治に導く内科的治療はありませんが、炎症を抑える薬物療法は、この10年程で大きく進歩しました。僕が治療していた頃に比べると飛躍的に選択肢が増え、寛解期を長期に維持できる可能性が高くなっています。
定期的な検査や治療は必要ですが、すぐに命にかかわる疾患ではないため、寛解期であれば疾患がない人と同じように仕事や日常生活を送れますし、妊娠や出産も可能です。もちろん、会食も可能です。活動期にも治療の選択肢は様々あり、入院せずに病気と付き合う方法を見つけられる可能性は十分にあります。
潰瘍性大腸炎の患者は、首相だけでなく、スポーツ選手やタレント、外科医と、様々な職業に就いています。僕が診ている潰瘍性大腸炎の患者さんにも、大企業の管理職など様々な方がいます。就業に制限をかける医学的な必要性はありません。
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「病人は病人らしく、わきまえて過ごすべきだ」というのは違うと思う。潰瘍性大腸炎もしくはあらゆる難病・障害による就業制限はないけれど、障害枠で作業...
「病人は病人らしく、わきまえて過ごすべきだ」というのは違うと思う。潰瘍性大腸炎もしくはあらゆる難病・障害による就業制限はないけれど、障害枠で作業労働をしているのではなく、社会的に責任ある仕事をしていれば、責任に応じた判断能力を維持するための体調管理は誰でも求められる。例えば脳神経外科医が今日は持病の調子が悪くて手術失敗しました、と言われて亡くなった患者の遺族は納得できるか?大型トラック運転手が持病の潰瘍性大腸炎が悪化してトイレに急ぎたかったと注意不足で子供を轢き殺して、仕方がないねで済ませられるか? そうした現実の問題に向き合わず、言葉の上っ面で「現在、治療している患者さんをも傷つける言葉だ」という医師がいる方が、色々抱えながら社会で生きている患者を傷づける言葉です。できない部分から目を逸らす上っ面では、「病気の特徴を知り、その人の能力が最大限発揮されるよう、協力し合える社会」は実現しません。
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私もそうです。
にのみん
私も潰瘍性大腸炎の患者です。 今現在は寛解期ですが、薬はマックスで服用しています。 どの病気もそうだと思いますが、辛さや苦しみはなってみなければ...
私も潰瘍性大腸炎の患者です。
今現在は寛解期ですが、薬はマックスで服用しています。
どの病気もそうだと思いますが、辛さや苦しみはなってみなければわからないものですよね。
本人だってなりたくてなったわけじゃないし。
健康な人からはなかなか理解されないものでしょうね。
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