ドイツの総選挙は安心材料となったが、ユーロは反発せず
みなさん、こんにちは。
今月(2月)最大のイベントといえるドイツの総選挙が、2月23日(日)に開催されました。
最大野党の保守党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第1党で、メルケル前首相が退任した2021年以来の政権復帰を確実にしました。
「極右」と称される反移民の「ドイツのための選択肢(AfD)」は第2党に躍進。
ショルツ首相の中道左派の与党、社会民主党(SPD)は大敗。
次期首相就任が見込まれるメルツCDU党首は「われわれは勝利した」と宣言。しかし、単独過半数には届かず、SPDとの連立が有力視されています。
難民受け入れ数の大幅削減やユーロ圏から脱退することを求めているAfDが、第一党はさすがに無理でしたが、かなり票を伸ばしたのが大きく報道されました。
AfDのワイデル氏は次の選挙でCDUを追い抜くと言っていますが、それはちょっとむずかしいかもしれません。
AfDは現在、旧東ドイツ全域(ベルリンを除く)で第一党ですが、西ドイツでは今のところCDU/CSUが完全に優勢だからです。
結果として、ドイツの選挙結果は相場にとって安心材料となりましたが、
しかし、相場環境を一変させるものにはならず、ユーロ強気派にとってはちょっとショックな展開となりました。
なぜなら、今回ウクライナ停戦の可能性が高まった局面でも、
ユーロ/円、ユーロ/スイススイスフランを筆頭としたユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の上昇は限定的だったからです。
それに加え、ドイツの総選挙の結果が安心材料となったにもかかわらず、ユーロの反撃は一時的なものに終わっています。
それは「ユーロに強気」な参加者にとって、「反撃の引き金のカード」はかなり使い果たしたように見えてしまいます。
そのため、ユーロ/米ドルの強気派にとって、最後の反撃ののろしは米ドル安の流れになること。
それでは、今後大きな米ドル安の流れになるかどうかを検討してみましょう。
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ベッセント米財務長官の「米10年債利回りは時間とともに自然に低下するはずだ」という発言は、米ドル安を意味する
米ドル安の流れになるためには、まず米金利の低下が重要になります。
米10年債利回りの日足を見てみると、以下のとおりです。

(出所:TradingView)
そもそもトランプ2.0は、インフレ高止まりで、米金利はじり高推移と言われていました
確かに米10年債利回りを大まかにみると、昨年(2024年)11月のトランプ大統領の勝利から上がり始めました。
しかし、今年(2025年)の1月14日(火)に4.8069%に到達後、一転して弱含みに推移しています。
この要因はベッセント米財務長官の一連のコメントが影響しています。
例えば、ベッセント米財務長官は2月25日(火)に、Bloombergのインタビューで下記のようにコメントしています。
「トランプ政権が経済政策について、政府の役割を減らすことに注力している」
「民間セクターはリセッションに陥っている」
「われわれの目標は経済の再民営化だ」
「トランプ氏の政策が実行されれば、米10年債利回りは時間とともに自然に低下するはずだ」
「自身とトランプ氏は米国債の『魅力を高める』ことにも注力している」
(出所:Bloomberg)
当初トランプ2.0は、米金利高と言われていましたが、ベッセント米財務長官によれば「米10年債利回りは時間とともに自然に低下する」ということになります。
これは米ドル安を意味することになります。
実際、今年に入ってのドルインデックスは上値の重い展開となっています。
結果、トランプ2.0は「米金利高=米ドル高」ではなく、ベッセント米財務長官がコメントするように、少なくとも本稿執筆時点(2月26日時点)で「米金利安=米ドル安」という流れになっています。
ただ、ECB(欧州中央銀行)の連続利下げが予想されているユーロは、他の主要通貨に対して弱いため、年初からのユーロ/米ドルの上昇(ユーロ高・米ドル安)は限定的です。
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ユーロ/円の下値余地が拡大! 155~156.00円の重要サポートを下抜ければ、150円に向かって下落が加速する可能性高まる
ただ、日銀がタカ派に転じている円は別です。年初来の円は米ドルに対してもっとも値を上げています。

よって、安心材料となったドイツの総選挙結果でも反発しないユーロを売って、日銀の早期利上げの思惑も拡大している円を買う。
つまり、ユーロ/円の下値が拡大していることになります。
こうしたことに着目して、欧州の銀行は、ユーロ/円プットオプション(ユーロ売り・円買い)のロングを推奨するところが増えてきました。
2023年以降のユーロ/円は、株安による一時的な急落を除くと、155~156.00円レベルが重要なサポート領域となっています。仮にこの水準を下回ると、150円に向かって下落が加速する可能性が高まります。

(出所:TradingView)
このコラムで何度か取り上げているスイスフラン/円に加え、ユーロ/円の動向にも注目です。
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