36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
水素エネルギー分野の電子制御システムを手がける中国スタートアップ「溯馭技術(Suyu Technology;SEEEX Tech)」がこのほど、プレシリーズAラウンドで累計1億元(約21億円)近くの資金調達を完了した。電子制御装置大手の拓邦股份(Topband) や架橋資本(Bridge Capital)、江蘇金橋基金などが共同出資し、既存株主の呉江東方国有資本も追加出資した。
溯馭技術は2021年に設立され、江蘇省蘇州市に本社を構える。水素エネルギー活用シーン向けの統合電子制御プラットフォームや、水素電力システムの総合ソリューションの開発に注力し、中国政府から「国家ハイテク企業」、蘇州市から「ユニコーン育成企業」に選定されている。
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが加速するなか、今後は電力が中心となり、風力・太陽光発電、水素エネルギー、リチウム電池が大規模スマートエネルギーシステムを構成するようになるとされる。新エネルギーで発電した電力を送配電するには、信頼性の高い蓄電システムが必要になるが、従来のリチウム蓄電池では長期的な電力貯蔵に限界がある。一方、水素エネルギーは電力や熱エネルギーの長期かつ大規模貯蔵に適しており、再生可能エネルギー比率の高い電力網の安定運用を支える重要な存在として注目を集めている。
溯馭技術の若手創業者(31歳)・董震氏は「水素エネルギー産業チェーンにおいて、電子制御システムは『神経系』に相当し、エネルギー変換効率やさまざまな利用シーンへの適応性を左右する」と述べる。同社は2023年、複数のシステムを統合する電子制御アーキテクチャの開発に成功し、業界で初めて安全基準「クラスⅢ」認証を取得した。
ハードウエア面では、高周波電子部品を高度に集積することで電力密度が20%向上。独自技術によって、単体での出力範囲は1ワットから1キロワットまでカバーし、複数機器を接続すれば出力を1テラ(テラは1兆)ワット級にも対応可能だ。ソフトウエア面では、中国初のエンドユーザーによるプログラミング可能なプラットフォームを構築し、幅広い電池技術に対応できるようにした。
同社の製品は、水素蓄電をはじめ、ドローンなどの「低空経済」やシェアモビリティ、電動船舶、工業分野など多岐にわたる。すでに国家電力投資集団(SPIC)、東風汽車(Dongfeng Motor)、変圧器大手の特変電工(TBEA)、リチウムイオン電池の億緯鋰能(EVEエナジー)などと提携しており、計3000セット近くの製品が導入済みだという。
低空経済の分野では、標準化された水素動力モジュールと航空機の開発プラットフォームを構築した。プラットフォームは二次開発に対応しており、モジュール化によってさまざまな出力ニーズに応じた機体構成を可能にしている。例えば、マルチコプター型ドローンが100キロ以上の荷物を積んで1時間以上の飛行が可能になるようサポートする。2024年には、同社が段階的な検証を進めていた製品「スマート安全水素動力ドローン」が、第49回ジュネーブ国際発明展で金賞を受賞した。
シェアモビリティ分野では、車両の開発・保守・改良を包括するクローズドループのエコシステムを構築し、標準化されたアシスト二輪車用の動力システムを提供する。20社以上の燃料電池スタック企業、10社以上の水素貯蔵システム企業およびシャシー(車台)メーカーと戦略的パートナーシップを結び、上海市や蘇州市を含む「長江デルタ」の複数地域で、水素エネルギーを動力源とする二輪車の導入・運用を進めている。サービス開始からわずか5カ月間で、延べ4万人以上が利用したという。
また、寒冷地などリチウム電池の動作に適さない環境向けに、水素発電システムも開発した。高い演算能力が求められるデータセンターなど向けにも、高電力密度ニーズに応じた製品展開を進めている。
溯馭技術は現在、産業化基地とグリーン水素エネルギーモデル基地の建設を計画中で、水素の製造や貯蔵、発電、熱電併給(CHP)といった各プロセスを網羅し、産業の川上と川下の共同発展を後押ししていく方針だという。
*1元=約21円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録