食事中のネコを下から観察して 猫種による食べ方のちがいを解明
現在、家庭で飼育されているほとんどのイエネコの食事は、「総合栄養食」とよばれる、ネコ専用につくられたドライフードです。総合栄養食には必要な栄養が過不足なく、バランスよく配合されており、健康なネコが適切な量を食べているかぎり、栄養面での問題は基本的にはありません。しかし、ヒトにとって最適な栄養バランスは個々人の年齢やライフスタイルによりそれぞれであるように、ネコにとっても最適な食事というものは、それぞれのネコにより異なります。また、栄養面以外でも、猫種によって異なる、最適なフードのポイントがあるのです。
舌の裏側を使うペルシャ猫
ポイントの一つがキブル(フードの粒)の形です。「すべては犬と猫のために」という理念のもと、科学と観察を通じて栄養学に基づいたペットフードを開発・提供しているロイヤルカナンは、猫種ごとの顎の形や食べ方に適したキブルの形状を考案・設計しています。
ロイヤルカナンがキブルの研究に取り組むきっかけは、ペルシャ猫がドライフードを食べにくそうにしているというブリーダーとの対話でした。そこでガラス板の上にフードを置き、下から撮影するという方法でペルシャ猫の食べ方を観察してみました。
その結果、写真のようにペルシャ猫は舌の裏側でキブルをとらえていることがわかりました。そのため、取りこぼしも多く、ほかの猫種にくらべて食事に時間がかかっていたのです。
鼻ぺちゃネコにはアーモンド型
ペルシャ猫のように頭蓋骨の長さに対して鼻の長さが短い、いわゆる鼻ぺちゃのネコを短頭種といいます。舌の裏側でキブルをとらえる短頭種のネコが、ストレスなく食事するために最適なキブルの形とはどのようなものでしょうか。ロイヤルカナンはさまざまな形のキブルを試作し、ブリーダーの協力のもと、ネコの「食べやすさ」を検証しました。その結果、短頭種のネコには、アーモンド型のキブルが最適だと判明したのです。
猫種によって食べ方がちがう
短頭種以外のネコはどうでしょうか。ロイヤルカナンがさまざまな猫種について食べ方を観察した結果、食べもののとらえ方は、大きく3種類に分けられることがわかりました。舌の表面でとらえる「舌上式」、くちびるではさむようにとらえる「口唇式」、ペルシャ猫のように舌の裏側でとらえる「舌下式」です(イラストの左から順番に舌上式、口唇式,舌下式)。そしてほとんどのネコは、1種類ではなく複数のとらえ方を組み合わせて食べていました。
早食いのネコにはゆっくり噛ませる
鼻が長くとがっているシャム猫は、フードの約30%を切歯(前歯)でとらえて、ほとんど噛まずに飲み込みます。このため早食いで、吐き戻しが多くなる傾向があります。このようなシャム猫のために工夫されたキブルが、真ん中に穴のあいたチューブ型のものです。穴をあけることで、キブル一つの体積はふやさずにサイズだけ大きくし、ネコが飲み込む前に砕くことを促し、早食いを防ぐ効果があります。
配慮すべきケアポイントのちがい
猫種ごとのちがいは、もちろんキブルの形だけではありません。下の図は7猫種について、配慮すべきケアポイントと最適なキブルの形をまとめたものです。
下記に示した注意ポイントについて、色が濃いほど配慮が必要です。たとえば長毛種であるペルシャ猫は、美しい毛を保つために、皮膚の健康が重要です。そこで「ペルシャ猫用」として販売されているフードには、健康を維持することで皮膚のバリア機能を保持することに役立つ成分が配合されているのです。
このように同じ総合栄養食でも、猫種の特徴に基づいてさまざまな工夫が凝らされています。「うちのネコ」にはどういったタイプのフードが向いているのか、ペット専門店やブリーダーの方などにも相談して、いろいろと試してみるとよいでしょう。
この記事は、科学雑誌Newtonの増刊号「Nyaton」(ニャートン/ 2025年2月15日より全国の書店やオンラインで発売)から抜粋要約したものです。
「Nyaton」は、ネコの最新情報満載の増刊号です。三毛猫にオスが少ない遺伝的な理由や暗闇で目が光るしくみ、狩りに有利な鋭い聴覚と嗅覚、また、ネコの好きな味の食事や必要な栄養、飼い主に無関心そうなネコの本当の気持ちなど、さまざまな「ネコの秘密」を科学的にわかりやすく解説しています。
https://www.newtonpress.co.jp/separate/extra_nyaton202502.html
取材協力(PR):ロイヤルカナン ジャポン合同会社
ロイヤルカナンは、栄養学に基づいて犬と猫の健康を実現する企業です。ブリーダーや獣医師などの専門家と協力しながら、犬種・猫種、年齢、身体のサイズ、ライフスタイル、健康状態により異なる栄養ニーズにきめ細やかに応える、 個々の犬と猫に最適な栄養バランスのフードを開発しています。ペット、人々、地球を尊重し、責任ある持続可能な方法でビジネスを実践しています。
監修:井上 舞
ロイヤルカナン ジャポン合同会社 サイエンティフィックコミュニケーション&アカデミックアフェアーズ マネジャー。獣医師、ねこ医学会理事。
ロイヤルカナンについて:https://www.royalcanin.com/jp/
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