SUBARUがタクシーメディアに注目する理由とは DOOHの新潮流

SUBARUは安全性訴求を軸にしたブランドイメージ構築にDOOH(デジタル屋外広告)を積極的に活用している。施策のなかでも中心となるのが、タクシーメディアでの広告展開だ。
 
11月28日、29日に開かれた「宣伝会議サミット2024」では、SUBARUの安室敦史氏が登壇。抱える課題やその解決のためのDOOHをはじめとするメディア戦略について、同社のマーケティング活動を支援するdofの石井岳氏、IRISの明石圭祐氏の2人を交えながら語った。

コンテンツを通じて広告を楽しく見てもらう

昨今DOOHの領域で、「ただ広告を広告として流すのではなく、コンテンツとして届けよう」とする潮流が生まれている。IRIS(アイリス)が運営するタクシーメディア「TOKYO PRIME」内の番組「ひみつのPRIME」もそのひとつだ。

現在約7万1000台のタクシーで配信されている「TOKYO PRIME」は国内ナンバーワンの設置台数を誇る。さらに利用者の属性も男女バランスよく、若年層にも広がってきているのが特徴のひとつだという。

スライド TOKYO PRIME メディア価値

タクシー広告の大きな特徴のひとつが、「じっくりと見てもらえる」こと。タクシーはオンとオフを切り替えられる空間であるため、ゆとりのある状態で映像を目にする人が多い。また、良くも悪くも閉じられたプライベートに近い空間で放映されるため、クリエイティブには工夫が必要だ。利用者はタクシーに乗っている間、至近距離で強制的に広告などを見ることとなる。そのなかで、鬱陶しいと思われず、忘れられず、かつきちんと理解してもらえるものとしなくてはならないからだ。そのためには、コンテンツを活用したり、乗車シーンに合わせた訴求をしたりと、何らかの工夫が求められる。

「ひみつのPRIME」はそのような背景から生まれた。IRISの明石圭祐氏によると「これまでは男性のビジネスパーソンが中心だったタクシーの利用者層が、タクシー配車アプリの発展により女性の利用者も増加している」という。

写真 人物 個人 明石圭祐

IRIS メディア統括 統括責任者 明石圭祐 氏

「近年は、学生などの若い層によるタクシー利用者も 珍しくなくなっています。こうした老若男女がタクシーを利用している状況の変化がある中、タクシーの広告主はまだBtoB企業の比率が高かった。そこで、老若男女が楽しめるコンテンツが必要なのではないかと思い、『ひみつのPRIME』のスタートに至りました。『ひみつのPRIME』があることで、広告主もBtoB企業からBtoC企業へと幅広く出稿してもらえるような媒体になることを目指しています」とdofの石井岳氏は話す。

「かつてのテレビでは『お茶の間』と いう言葉があり、『このCM面白いよね』といった会話が発生したり、周囲の人の多くが見ている番組が存在したりしていました。一方で、デジタルが強くなった近年、そうしたコミュニケーションが減少しています。そこで、何かひとつ人々の共通項となるようなメディアをタクシーでつくりたいという思いもありました」(石井氏)

写真 人物 個人 石井岳

dof プロデューサー 石井 岳 氏

ユーザーと非ユーザーとのギャップを埋める

「ひみつのPRIME」は、タクシーに乗車し、最初の広告が流れたのちに放映される1分間の番組だ。月替わりで、ゲストが今気になっているコト・モノを紹介するもので、視聴者に何かしらのインスピレーションを与えることを目指して制作している。さらに、番組の世界観と合致したタイアップコンテンツの放映も行う。

この番組を活用したマーケティング施策を行っているSUBARUは、なぜタクシーでの広告を決めたのだろうか。

同社には、車両の高額化などが影響し新車の購入者が減ったことで、販売台数が低下しているという課題があった。この課題を打開すべく、安室敦史氏を中心にマーケティング施策を検討してきたという。

「私が進めてきたのは、簡単にいうと『SUBARUのロイヤルユーザーは理解しているものの、まだ購入したことのないお客様は知らないこと』のギャップを埋めることです。ロイヤルユーザーの方々は『SUBARUの車は安全だ』というイメージを持っていただいているのですが、お客様以外でその印象を持っている方は極めて少ないのが現状。特に女性の認知度が低い現状があります。このギャップを埋めることが販売台数の増加につながると考え、安全性の訴求に注力しています」(安室氏)

写真 人物 個人 安室敦史

SUBARU 国内営業本部マーケティング推進部 宣伝課 課長 安室敦史 氏

これまでテレビCMも含めた多様な手法を活用してきたが、「ひみつのPRIME」のようなインフォマーシャルの反応率は、それらと比べても群を抜いて高かった。そこで、今回改めてSUBARUの安全性を形づくる運転支援システム「アイサイト」のPRコンテンツを制作することになった。

購入意欲が2.1倍に 広告出稿の大きな効果

今回の出稿の結果、3週間で再生回数は1500万回に達した。こうして多くの人に伝えることができただけでなく、認知度や購買意欲の上昇にも貢献。後日の調査によると、コンテンツへの非接触者と比較して、1.5倍の人がアイサイトを認知し、2.1倍の人がアイサイトを搭載したSUBARU車の購入意欲を持っていることが分かった。そして今回の出稿のターゲットであった40代女性からの好感度も、1.3倍上昇したという。

スライド SUBARU(アイサイト)の購入意向度

SUBARUはタクシー広告だけでなく、ゴルフカートへのサイネージ広告など多くのDOOH広告を出稿している。トライアルも含め、安全性の訴求に向けて試行錯誤を続けてきた。そのなかで安室氏が感じるのは、広告はただ見せればいいわけではないということだ。

テレビCMも、テレビ番組というリッチなコンテンツがあってこそ、受け入れられてきた。そのコンテンツを抜きにして、ただ広告だけ見せればいいという思想ではどんどん消費者に距離を置かれてしまう。そうした逆効果のような広告とならず、今後もSUBARUの安全性を人々にきちんと届けるためにも、「広告に接触する人の体験を重視して、クリエイティブの力を借りながらマーケティング施策を行っていきたい」(安室氏)と締め括った。

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お問い合わせ

株式会社IRIS

Mail:sales@tokyo-prime.jp
URL:https://www.tokyo-prime.jp/

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