第1回ある42歳の死…無職、独身、両親の他界 誰にも引き取られない遺骨
壁にかかった額縁に、数枚の写真が収められている。
母親らしき女性と並ぶ幼児、水着姿の少年、父親とみられる男性の姿もある。
写真が飾られた6畳間で2022年、1人の男性が亡くなった。
室内に食べ物はなく、通帳の残高は百数十円。財布に現金は残っていなかった。
大阪府警などによると、遺体はこの家で一人暮らしをしていた男性。事件性は低いとされた。
遺体が発見されたのは、死亡から1年以上が経った23年10月のこと。腐敗し、白骨化していた。
独身で両親は他界し、きょうだいはいない。亡くなった当時、職に就いておらず、近所付き合いもなかったという。婚姻歴もなかったようだ。
年齢42歳。現役世代の「孤独死」だった。
警察庁は昨年、全国の「孤独死」の統計を初めて公表しました。1~6月は3万7227人。生産年齢人口(15~64歳)の「現役世代」が23.7%(8826人)を占め、高齢者に限った問題ではない実態が浮かびました。親族や近隣住民など関係者への取材から男性が42歳で亡くなったときの状況や生前の姿を追いました。
淀川が近くを流れる大阪府北部の街に、築60年ほどの青い瓦屋根の民家がある。玄関先には人の背丈を超える草が生い茂り、メーターには「ガス止」と表示されている。
「警察官、来てください」。遺体を見つけ、110番通報したのは裁判所の職員だった。家が競売にかけられていたが、持ち主の男性と連絡がつかなかったため訪れていた。玄関を入ると、青いシーツがかけられた布団で男性が倒れていた。
DNA型鑑定の結果、42歳の男性とわかったが、死亡から時間が経ち、解剖をしても死因が特定されることはなかった。
鉄工所経営の父、教育熱心な母
一枚の写真がある。学生服を…
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