- メルカリの「ビットコイン取引」利用者は、その手軽さゆえに「税金がかかる」という事実を忘れがちだ。
- しかし、仮想通貨(暗号資産)を売却したり、メルカリの決済で「ビットコインで支払う」を選択した場合、確定申告が必要になる可能性がある。
- それは、一般的なサラリーマンなら年間で20万円、専業主婦や学生なら48万円を超える利益が出た場合だ。
メルカリの「ビットコイン取引」であっても、税金と無関係ではいられない。
約2年前、2023年3月9日にサービスインした、このメルカリグループの仮想通貨(暗号資産)取引サービス(現在はイーサリアムの取引も可能)。当時、300万円前後だった1ビットコイン(BTC)は現在、約1500万円前後を推移している。単純計算で約5倍だ。
この高騰に気を良くして、利確した人も少なからず存在するだろう。だが、利益が増えれば増えるほど、果たすべき義務も発生する。納税だ。
特にビットコインに代表される仮想通貨の取引には、一般的な株式投資と異なり、特定口座のような自動的に納税してくれるシステムがない。税制が異なり、そうした仕組みを構築するのが難しいからだ。それは、もちらんメルカリの「ビットコイン取引」とて、例外ではない。
端的に表現すると、一般的なサラリーマンなら、昨年(1月1日〜12月31日)中に仮想通貨で20万円を超える利益を得たら、納税の義務が生じる。それは、換金のみならず、仮想通貨で直接商品を購入した分も含まれる。
本記事では、メルカリの「ビットコイン取引」ユーザーに特化した、確定申告について知っておくべき真実をまとめていく。
「ビットコイン取引」で、最も注意すべき点
メルカリの「ビットコイン取引」は、メルカリユーザー向けに設計された仮想通貨取引サービスだ。生体認証登録および本人確認が済んでいれば、簡単にメルカリアプリ内で仮想通貨の売買ができるようになっている。
特に、手数料無料(ただしスプレッドにより間接的に手数料が引かれる)である点や、口座開設のハードルの低さが大きな強みだ。さらに、最近ではイーサリアムをメルコインで“保有”しているだけで、毎月一定のメルカリポイントがもらえるサービスも加わった。仮想通貨投資の敷居がさらに下がったといえるだろう。
実際、メルカリの「ビットコイン取引」は、2024年5月段階で220万口座を突破し、国内トップクラスに成長した。しかし、こうした手軽さゆえに「仮想通貨取引で一定の利益を得る=税金がかかる」という意識なく取引をしている人も少なからず存在している可能性は高い。
メルカリの「ビットコイン取引」において、最も注意すべき点——。それは、”日本円に直接変えたわけではなくても損益認識され、場合によっては税金がかかる”という点ことだ。
ビットコインなどの仮想通貨を買って、「保有しているだけ」なら税金はかからない。だが、購入した仮想通貨を売却したり、メルカリでの買い物の決済に「ビットコインで支払う」を選択して使用した場合、その時点の仮想通貨の価格が購入時より高くなっていれば、その差額が利益とみなされる。
仮想通貨には、どんな税金がかかるのか?
仮想通貨の利益は原則、「雑所得」として区分される。総合課税の対象となるため、給与所得など他の所得と合算して課税されるのだ。所得税には「累進課税」が適用されるため、所得が増えれば増えるほど税率が上がる仕組みとなっている。
税率は5%から最大45%、さらに住民税10%が加わる。例えば、給与所得が高い人がさらに仮想通貨取引で利益を得た場合、その税負担は大きくなる。
1BTCは2024年11月に、1500万円を超えるという大きなマイルストーンを打ち立てた。メルカリのビットコイン取引が始まった当初からのユーザーのなかには、それを受けて「今こそ売却すべきか」と考えた人もいるだろう。しかし、利益を確定する際には、税金が発生することを念頭に置いておかなければならない。
たとえば、一般的なサラリーマンの場合、仮想通貨取引で年間20万円を超える利益が出た場合。また、専業主婦や学生など被扶養者に該当する場合は、48万円を超える所得が出た場合、確定申告が必要となる(ただし、その他の理由により確定申告が必要な場合はこの金額以下でも申請、金額に応じて納税をする必要がある)。
利益の計算方法は、以下のとおりだ。
[ 仮想通貨における利益の計算方法 ]
たとえば、
- 1BTCが1000万円の時に、0.001BTC(1万円分)を購入し、
- 1BTCが1500万円に値上がりした際、0.001BTCを使って決済した
としよう。その場合、利益を導く計算式は、
(売却価格−平均取得単価)×売却枚数 =利益
となる。
上記の前提だと、(1500万円−1000万円)×0.001=5000円 が利益となる。
※上記の例は実際の価格と異なる。
しかし、確定申告の経験がない人は、自分で損益を計算して、確定申告をする必要性に気づかず、未納となるケースも少なくない。確定申告を怠ると、税務署から無申告加算税や延滞税が課されるリスクがあるのだ。
実際、国税庁は令和5事務年度、仮想通貨取引者535件の実施調査を実施し、申告漏れ等の違反件数は491件だったと発表している。これは取引額が多い人のみを対象としているわけではなく、いつあなたも対象になるかはわからない。
「ビットコイン取引」ユーザーがやるべきこと
メルカリで仮想通貨取引を行う人がやっておきたいことは、以下2点だ。
①取引履歴の記録を残しておく:まず、損益計算および税務調査対策に、取引履歴(購入、売却、使用など)を記録しておこう。 ビットコイン取引の回数が多い場合は、メルカリのマイページ画面から取引報告書のダウンロードできる。これを活用すれば、以外に簡単だ。
②利益を計算しておく:利益(実現損益)を認識していないと、確定申告が必要かどうかの判断はできない。そのため自分で計算しておくことが必要だ。
なお、仮想通貨の利益を確定申告にて申請するにあたって、一番大変な作業は利益(実現損益)の計算である。そこで、活用したいのが仮想通貨の損益計算ツールだ。「仮想通貨(または暗号資産) 損益計算ツール」などのワードで検索すると、いくつか候補が出てくる。
これらは、①でダウンロードした取引履歴データを反映するだけで、利益(実現損益)を自動計算してくれる仕組み。そのため、そこに表示された金額を確定申告書に記載するだけでいい。
まとめ
メルカリの「ビットコイン取引」は、メルカリユーザーが簡単に仮想通貨の取引ができる画期的なサービスだ。しかし、その手軽さゆえに税金や利益管理に対する意識が薄れがちになる。ビットコインが高騰する今こそ、正確な損益管理と確定申告を怠らないようにしたい。
監修:村上裕一 村上裕一公認会計士事務所・代表税理士。大手監査法人・税理士法人での豊富な経験を積んだ後、Web3(ブロックチェーン、暗号資産・仮想通貨、NFT、ブロックチェーンなど)の専門税理士として、多くのクライアント(個人及び企業)を支援。株式会社pafinの仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」のブログも監修。監修した記事は、「仮想通貨(暗号資産)の税金基礎と計算方法、対策も解説」など。